昨今、テレワークが普及し、オフィス以外で仕事を進められるように環境を整えている企業が増えています。そんな中、休暇中に仕事をするという働き方である「ワーケーション」が注目されています。
しかし、新しい働き方であるがゆえに、環境整備や管理体制の構築に難しさを感じる企業が多いため、どのように克服して推進するかが重要です。そこで今回の記事では、ワーケーションのデメリットと導入のポイントを紹介します。ワーケーションの導入を考えているが、悪影響がないか心配している企業の方は、ぜひ参考にしてください。
ワーケーションは徐々に広まっている新しい働き方ですが、なぜ、導入する企業が増えているのでしょうか。ここではワーケーションが持つ特徴と、注目されている背景を紹介します。
ワーケーションとは働き方の1つで、休暇中(バケーション)にリモートで仕事(ワーク)をする方法です。場所に縛られずに自由に仕事ができるのが特徴で、2000年代にアメリカで始まりました。
ワーケーションの場所としては、リゾート地や温泉街などの観光地が一般的で、仕事以外の時間は休暇を楽しめます。「余暇を楽しみながら仕事をする」という働き方は日本人にはまだ馴染みがありませんが、徐々に多くの企業で導入され始めています。
方法次第ではオフィスで仕事をするよりも、高い生産性が期待できる働き方です。ほかにも普段とは違う環境で仕事ができるためモチベーション向上につながったり、新しいアイデアが浮かんだりと、多くの効果が期待できます。
ワーケーションが注目され始めたきっかけとして、2020年から国内で流行した新型コロナウイルスによるテレワークの普及があります。
テレワークは、パソコン・スマートフォンなどの端末とインターネット環境があれば、時間や場所に縛られず好きな場所で仕事ができる働き方です。ワーケーションは、テレワークの特徴を活かし、旅行先のホテルやカフェなどでリモートで業務を進めて、仕事以外の時間で休暇を楽しめます。
また、コロナ禍で観光業が打撃を受けているのに対し、国が積極的にワーケーションを推進しているのも普及の要因です。さらに、ワーケーションは日本の会社員の有給休暇取得率の低さを改善できるとして注目されています。
ワーケーションの導入は、従業員だけでなく企業側にとっても大きなメリットがあります。ここではワーケーション導入の4つのメリットを紹介します。
ワーケーションの導入は、従業員のライフワークバランスの実現に近づけます。ワーケーション中は、従業員の都合に合わせて働く場所と時間を決められます。したがって「午前中に仕事をして、午後は家族と観光地巡り」といった過ごし方や「平日に休みを取って土日に仕事をする」などの働き方が可能です。
ワークライフバランスの実現は、従業員にとって企業を選ぶ上で重要なポイントです。仕事以外の時間をしっかりと確保できれば、心身の健康が保てたり充実感を得られたりと、従業員満足度の向上につながります。
日本は世界的に見ても、いまだに有休消化率が低い企業が多いのが現状です。従業員としても、有給や長期休暇の取得は「同僚に迷惑がかかる」「嫌がられる」といったネガティブなイメージがいまだに残っています。
ワーケーションでは休暇を取りながら仕事を進められるので、従業員が罪悪感を持たずに有給や長期休暇を取得できる環境作りが可能です。会社がワーケーションを積極的に推進すれば、社員の有給取得率の向上につながります。
従業員の長時間労働は集中力の低下につながり、生産性が下がる可能性があります。また、ずっと同じ場所で時間に縛られて仕事をする環境は、社員のモチベーション低下につながるでしょう。したがって、生産性とモチベーションを保つには、ある程度のリフレッシュが必要です。
ワーケーションは、しっかりとしたオンオフの切り替えによる、生産性向上の効果があります。さらに、従業員は休暇を楽しみながら仕事ができるため、モチベーションの向上にもつながるのが魅力です。
また、非日常的な体験から新しい発想やアイデアが生まれる可能性が高まると期待されています。
ワーケーションを導入している会社は、以下のようなポジティブなイメージを持たれます。
従業員には、働きやすい環境をアピールでき、離職率の低下・優秀社員の定着化につながります。さらに、求職者にも同様の訴求ができ、採用強化が可能です。取引先にも「新しい取り組みを積極的に行っている会社」であるとアピールできます。
ワーケーションにはメリットだけでなくいくつかのデメリットが存在します。デメリットも把握した上で、効果が期待できる場合に導入するのがおすすめです。ここではワーケーション導入のデメリットを3つ紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
ワーケーションは、同僚や上司の目の届かない場所で働くスタイルなので、仕事の進み具合を把握しづらいのが難点です。さらにワーケーション中の従業員は業務時間が不規則になる可能性が高く、正確な勤務時間の把握が難しい特徴があります。
また、社員の働き方が把握できずに人事評価がしづらいのもデメリットの1つです。成果を数字で示せる業務なら問題ありませんが、数値化しにくくプロセスが重要視されている部署であれば、正確に評価するのが難しいです。
ワーケーションでの滞在先で、大事な書類やパソコンを紛失した場合、会社や取引先の機密情報が漏れてしまう恐れがあります。また、ホテルやカフェのフリーWi-Fiを使ってインターネットに接続するのは、セキュリティ面で不安があるでしょう。
情報漏洩した場合、損害賠償請求を受けたり、会社の信用を落として取引が縮小したりと、会社の存続の危機に関わる恐れがあります。自社だけでなく外部にも多大な迷惑をかけてしまうので、セキュリティ対策を十分に整えておく必要があります。
ワーケーションの導入には環境整備が必要で、その分のコストがかかります。例えば、社外で仕事をするためのノートパソコンや連絡用のスマートフォンを準備しなければなりません。
さらに、遠隔でも密なやりとりができるようチャットツールやオンライン会議用のビデオツールなどの導入が必要です。近年、多くの企業でこのようなツールの導入はすでに進んでいますが、一から取り入れる場合は導入費用や月額利用料が発生するため、大きなコストになるでしょう。
まずは環境整備のために必要なツールを洗い出し、予算を考慮した上で導入を検討するのがおすすめです。
ワーケーションの導入には、デメリットをどのように克服して進めるかが重要です。ここではワーケーション導入のポイントを紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
ワーケーション中でも、正確な勤怠管理は必要です。旅行先だとしても「フルタイム勤務なのか」「短時間勤務なのか」「深夜に働いているのか」など、細かく時間単位で把握する必要があります。
例えば、労働時間把握のために、クラウド上で管理できる勤怠システムの導入や、出退勤の報告のルール化などが考えられます。ほかにも、事前にワーケーションに関するルールや禁止事項を設定しておきましょう。ワーケーション中の有給休暇の取得ルールや発生した費用に関する規定なども決めておけば、従業員も安心して利用が可能です。
休暇中の勤務であっても、正しく公平に人事評価できる制度の再構築が必要です。以下の給与改定までのプロセスを見直し、再構築しましょう。
例えば正確に評価をするために、目標管理制度の導入が有効な手段の1つです。具体的な数値で計れる目標を設定し、達成の基準を明確にすれば、プロセスと成果の両方で従業員を評価できるようになります。
ワーケーションはセキュリティ上での危険性が高いため、情報漏洩を防ぐために以下のような対策が必要です。
上記のような徹底した対策を行い、情報漏洩が発生しないよう努める必要があります。しかし、いくらルール化や環境整備をしたところで、実際にワーケーションを利用する従業員の意識が低ければ意味がありません。従業員一人ひとりにセキュリティ対策の重要性を理解してもらえるように、研修や社内テストの実施なども有効な手段の1つです。
セキュリティ対策の1つとして、ペーパーレス化の推進を検討中の方は、以下の資料をぜひご覧ください。ペーパーレス化推進のポイントや事例、進め方などを紹介しています。ペーパーレス化に向けて有益な情報が詰まっているので、ぜひ参考にしてみてください。
「【稟議にそのまま使える】ペーパーレス化推進ガイドブック」の資料ダウンロードはこちら
ワーケーションとは、休暇中にリモートで仕事をする働き方です。場所に縛られずにリゾート地や温泉街などの観光地で、自由にリモートで仕事ができるのが特徴です。徐々に多くの企業で導入され始めています。
ワーケーションには従業員満足度のアップや、生産性・やる気の向上につながるというメリットがあるものの、以下のようなデメリットも存在します。
そのため、ワーケーションを導入する際には勤怠管理体制の確立や人事評価制度の見直しが必要です。さらに、書類のデータ化やVPN構築などのセキュリティ対策を万全に行えば、安心してワーケーションを推進できます。
ワーケーションの導入に向けて、社内のペーパーレス化を推進したい方は、以下の資料をぜひ参考にしてみてください。
「【稟議にそのまま使える】ペーパーレス化推進ガイドブック」の資料ダウンロードはこちら
NTT東日本 ビジネス開発本部 北森雅雄
NTT東日本に入社後、自治体向けのシステムエンジニアとして、庁内ネットワークや公共機関向けアプリケーションなどのコンサルティングからキャリアを開始。
2018年から現職にて、プロダクト(SaaS)開発、デジタルマーケティング全般のディレクションに従事。
2022年に業務のデジタル化を分かりやすく発信するオウンドメディア(ワークデジタルラボ)のプロジェクトを立ち上げ。
NTT東日本にかかわる、地域のみなさまに向けてデジタル化に役立つ情報発信を展開。