介護サービス事業では、現在人手不足が深刻な問題となっており、現場で働くスタッフの負担はますます増えるばかりです。日々の介護業務に追われていると「スタッフの負担を減らすためにも、業務を効率化させたい」と考える方がいらっしゃるのではないでしょうか。
一方で「効率化ばかり優先してサービスの質が落ちてしまうのでは?」と不安に感じている方がいるかもしれません。しかし、介護の業務効率化に取り組むと、人手不足を解消できるだけでなくサービスの質を向上させる働きがあります。
そこで、本記事では介護の業務効率化の内容と具体的な方法について解説します。是非、介護業務の効率化を進めたいと思っている担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次:
厚生労働省が重要視する「介護の業務効率化」とは一体どんな取り組みでしょうか。この章では、介護の業務効率化とガイドラインの内容について解説しまので、ぜひ参考にしてみてください。
介護の業務効率化とは、業務にかかる負担を軽減することで、サービスの向上や労働環境の改善、人材確保を目的とした取り組みです。具体的には、事務作業のペーパーレス化、業務マニュアルの作成、チームで一つの業務にあたるといった方法が介護業務の効率化にあたります。
厚生労働省では、介護の業務効率化を促進させるため、介護事業向けに「介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン」が制定されました。
ガイドラインでは、事業サービスごとに介護サービスにおける生産性向上の捉え方、具体的な取り組み方法などが記載されています。具体的な取り組み方法とは、以下のような業務改善です。
なぜ厚生労働省ではこのような業務改善を行うべきだと制定しているのでしょうか。一つひとつ解説します。
事業所が非効率的な手法で業務を遂行していては、介護人材の確保はますます難しくなっていきます。介護の業務効率化を行うことで人材の確保が容易になり、育成・強化を行えるようになります。スタッフの育成を行うためにも、介護の業務効率化は必要不可欠です。
介護サービスは、1つのチームで業務にあたることが基本です。チームへのリスクを最小限におさえながら効率よく業務をこなすには、チーム全体の意識改革・マニュアルの見直しが必要となります。
職員・スタッフ全員が情報を共有していくと、チーム全体のコミュニケーションを充実させることが可能です。職員同士の繋がりを深めるには、介護施設全体が働きやすい職場作りへと変化させていく必要があります。
業務負担の大きな介護業界では、情報共有や事務作業に時間をとられることが多いです。業務負担を減らすためにも「利用者ごとの介護記録を共有する」「記録方法・書式を統一する」など、チーム全体で対策する必要があります。
また、情報共有にICTを導入するなど、作業を簡略化していく取り組みが重要です。このように、厚生労働省でも介護の業務効率化・改善について重要視していることが分かります。
介護サービスの現場では、業界ならではの問題を多く抱えています。特に、以下のような問題が起こりやすいと感じているのではないでしょうか。
なぜこのような問題が起こりやすいのか、その原因・課題について解説します。
厚生労働省が公表している「第8期介護事業計画に基づく介護職員の必要数について」によると、2040年度には280万人の介護職員を確保する必要があると推計されています。
人手不足が常態化している介護業界において、スタッフの確保は急務です。介護スタッフの人手不足が解消されなければ、1人あたりの担当業務が増えて、よりサービスの質が低下する可能性があります。
高齢人口とともに、要介護者も増加傾向にあります。更に、核家族の増加により要介護者のケアが難しくなっているため、施設への入所を望む方が増えています。要介護者が今後増加し、入所者が増えていることを考えると人手不足は深刻化していく一方です。
ここでは、介護業務を効率化する5つの方法について解説します。
自社で取り入れられるかイメージしながら、本章の内容を確認してみてください。
介護施設では、介護保険法により介護記録を記入することが義務付けられています。従来の介護記録は紙媒体で記録することが基本ですが、時間と手間がかかり介護者をサポートする時間を圧迫してしまう問題がありました。
また、従来の介護記録では利用者の体温・血圧記録など一度メモをしてから転記するという二度手間が発生することも、職員にとって負担に感じる事務作業です。
しかし、ITツールの導入により、利用者の体温・血圧を測定するとともにデータを送信できるようになるため、紙媒体で行うよりも手間が省けます。
介護業界では、業務の交代制度が導入されており、スタッフ間での引継ぎが頻繁に行なわれます。頻繁に行われるからこそ介護業務を「見える化」し、スムーズな情報共有が重要です。
引継ぎを行う場合は、次のスタッフが円滑に業務を遂行できるよう、気付いたことも情報共有するとトラブルを回避できます。
介護スタッフのスキルを向上させることは、利用者がもつニーズに的確な対応ができることに繋がります。組織の有無に関わらず、すべてのスタッフのスキルを向上させるには、マニュアルを作成したり定期的な研修を開催したりして、介護技術の標準化を図ると良いでしょう。
職員によってスキルや知識に差があると、経験豊富な特定のスタッフに業務負担が生じやすいです。
業務負担の偏りが起きてしまうと、特定のスタッフのワークライフバランスが崩れて本来の業務をこなせない可能性があります、
また、経験に差のあるスタッフ間でケアの質に差が出ると、利用者に不満が溜まりクレームに繋がる可能性があります。経験の有無に関わらず、すべての介護スタッフが同じ水準でケアを提供できるように業務を平素化していきましょう。
長時間労働に陥りやすい介護業界では、ワークライフバランスが崩れることが多いです。ワークライフバランスが崩れてしまうと心身に不調をもたらし、スタッフの離職につながります。
介護スタッフのワークライフバランスを見直し、特定の職員に過度な負担が生じていないかなどを考え、業務軽減をはかるようにしましょう。
介護の業務効率化を行うと、以下のようなメリットがあります。
自社の課題を解決できるかイメージしながら、本章の内容を確認しましょう。
介護の業務効率化が進むと、スタッフの負担を軽減して適切な労働時間で働けるので、過度なストレスがなくなり離職率を下げることが可能です。
離職率が下がると、スタッフの入れ替わりが減るので採用・教育コストを削減できます。他にもスタッフ同士の繋がりが強くなり、組織力の向上にも繋がります。
業務に追われているとスタッフ間のコミュニケーション不足、入所者へ満足なケアができないなどの悪影響があります。
しかし、業務効率化が進むと、スタッフ一人ひとりのモチベーションが向上し、質の良いサービスを提供できるようになります。
介護とは「利用者本人が自分らしく生きるため、できることは自分で行える」ように介護スタッフがサポートすることが目的です。
介護業務を効率化することでスタッフが利用者に対応できる時間が増え、利用者一人ひとりに合わせたサービスを提供できます。また、利用者に寄り添うことができると、満足度の向上にも繋がります。
介護業務の見直しを行うことで、人手不足や過重労働といった問題点の改善が期待できます。「業務効率化の手法まとめebook」では、業務効率化ができるポイントを予算別にまとめており、自社に合った業務効率化のノウハウを学べるようになっています。
また、業務効率化に有効なITツールも紹介されているので、ITツール導入時にも役立つ方法がまとめてあります。介護業務の効率化を進める際にも役立つので、ぜひ参考にしてみてください。
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介護業務の効率化は、厚生労働省も重要視している課題として注目されています。事務作業のICT化、情報共有の見える化、スタッフ一人ひとりの業務改善・意識改革などで効率化を図ることが可能です。
介護業務の効率化を図る方法は「業務効率化の手法まとめebook」に分かりやすくまとめられています。自分たちで1から業務効率化対策を行うよりも、ノウハウがまとめられた資料を参考にすると、よりスムーズに見直しできるでしょう。介護現場の業務改革を検討している方は、ぜひご覧になってみてください。
NTT東日本 ビジネス開発本部 北森雅雄
NTT東日本に入社後、自治体向けのシステムエンジニアとして、庁内ネットワークや公共機関向けアプリケーションなどのコンサルティングからキャリアを開始。
2018年から現職にて、プロダクト(SaaS)開発、デジタルマーケティング全般のディレクションに従事。
2022年に業務のデジタル化を分かりやすく発信するオウンドメディア(ワークデジタルラボ)のプロジェクトを立ち上げ。
NTT東日本にかかわる、地域のみなさまに向けてデジタル化に役立つ情報発信を展開。