人手不足や長時間労働が大きな問題となる医療現場にとって、業務の効率化は重要な課題です。そこで今回の記事では、業務効率化ツールであるRPAに焦点を当て、医療現場での活用方法を解説します。「どのような業務にRPAを活用できるのか知りたい」「医療現場での導入例を知りたい」という方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次:
RPA(Robotic Process Automation)とは、定型化された繰り返しの業務を自動化するツールです。RPAが代わりに業務を行ってくれるため、人手不足の解消や業務効率の改善が期待できます。RPAで自動化できる業務の例は、以下のとおりです。
また、RPAには以下の3つの種類があります。
RPAは、種類により動作する環境や自動化できる業務に違いがあります。例えば、クラウド型はインターネット上で行われる作業を自動化します。一方でデスクトップ型やサーバー型は、自社のローカルシステムで行う作業の自動化が可能です。
業務効率化につながるRPAですが「医療現場でも活用できる場面がイメージできない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。RPAで自動化できる医療現場の業務は以下のとおりです。
1つずつ解説していきます。
RPAを利用することで、カルテや問診表など紙媒体での記録を電子データとして取り込む作業を効率化できます。
通常、既存のカルテを電子データとして取り込むには「カルテのスキャン」と「スキャンした情報の登録」作業が必要が必要です。また、既に電子カルテが活用されている場合でも、他院からの診療情報提供書や患者の問診票に対しては、電子化作業が必要になります。
RPAで自動化できるのは、カルテの振り分けや管理などの「スキャンした情報の登録」作業です。RPAを利用すると、人の行う作業は「書類のスキャン」だけになるため、業務の削減効果が期待できます。
RPAを活用することで、レセプト(診断報酬明細書)のデータ入力とチェック業務を自動化可能です。レセプトは、多くの医療機関で電子化されています。一方ほとんどの医療機関で、レセプトの電子データを請求システムへ転記する業務は手作業で行われているのが現状です。
このようなデータの転記業務は、RPAで代替できます。また、助成対象期間であるかの確認や、受給者番号が誤っていないかの確認など、エラーのチェック作業がRPAにより自動化可能です。
RPAの活用により自動化できる、検査時の作業は以下のとおりです。
血圧測定の結果など、基本的なデータの取得はRPAで代替できます。また、RPAの特徴として、定型化された業務や複数システム間での作業を行えることが挙げられます。そのため、データの転記作業は自動化可能です。データの取得と記録を自動化することで、一人当たりの作業量が減り、職員への負担の軽減が期待できます。
入院期間の管理や管理者への報告などの定型業務をRPAで置き換えることで、より効率的な病床の割り当てが実現されます。RPAを活用することで、ベッドの管理を自動化できるため、業務の削減が可能です。
また、RPAの特徴として「人為的なミスが起らない」という点が挙げられます。ベッドの使用状況をRPAで管理することで、空き状況や入院期間の変更などの見落としが防止できるため、効率の良い病床の割り当てが可能となります。
RPAは、予約情報をスケジュールに転記、管理する作業の自動化に活用できます。RPAによる予約管理の自動化を行うことで、忙しい時間帯でもリアルタイムに予約状況が更新されるため、急な変更やキャンセルへの対応が容易になります。
実際には、Webと電話による予約方法を併用しているケースがあるでしょう。その場合は、Webからの予約を管理システムに自動で転記して、電話で受けたときは手入力するなどの使い方がおすすめです。管理を一本化することで、複数システムを併用することによる予約の重複や見落としを防止できます。
さまざまな業務に活用できるRPAですが、具体的にどのような効果があるのでしょうか。この章では、医療機関でRPAを導入するメリットとして以下の3項目について解説します。
1つずつ解説していきます。
RPAで定型的な業務を代替することで1人当たりの事務作業量が減り、人でないとできない業務に時間を使えるようになります。繰り返しの多い事務作業やデータの入力業務は、RPAへの置き換えが有効です。RPAによる業務の代行により、コミュニケーションや専門的な知識が必要な「人が行うべき仕事」に人員を割り振れます。
また、RPAの特徴として24時間365日稼働できることが挙げられます。夜間も休まず業務を行えるため、人手不足の解消が期待できます。
RPAで問診表の作成や院外処方箋の受付など、事務の一部を代替可能です。繰り返しの多い定型業務や事務作業をRPAで代替することで、人は人にしか行えない業務に注力できます。
また、RPAを取り入れることは専門性のある人材の有効活用に繋がるでしょう。誰にでも出来る業務をRPAに任せることで、人材を専門的な知識が必要になる業務に集中できます。
RPAを導入することで、人為的なミスを防止できます。医療に関わる事務作業では、ミスの防止は重要な課題です。
データの入力業務などの単純作業の繰り返しでは、入力ミスや見落としなどのヒューマンエラーが起こる可能性があります。しかし、RPAによる置き換えを行うと機械が作業を行うため、ミスの発生を防止可能です。
導入することでさまざまなメリットを得られるRPAですが、医療機関で利用する際には気をつけるべきポイントも存在します。この章では、RPAを利用する際の注意点を3つ紹介します。
1つずつ解説していくので「RPAの導入で気を付けるべきポイントを知りたい」という方は参考にしてみてください。
RPAは、作業工程を明確にした上で設計しなければ正しく動作しません。人間が行っていた作業を代替するためには、曖昧な工程で作業していた部分や、個人差のある判断基準を統一する必要があります。そのため、RPAの導入にはマニュアルの作成や評価指標の設定が必要な場合があります。
RPAを導入する際には見積もりをとって、コストに見合った効果を得られるか判断しましょう。また、検討しているサービスに相談窓口が設置されている場合は、利用してみるのもおすすめです。
RPAを運用していると、エラーが生じるケースがあります。RPAの操作に習熟している社員がいなければ、迅速な改善対応は難しいでしょう。
RPAを利用する際には、トラブル発生時の対応や、担当する人員を決定してから導入する必要があります。また、専門的な知識を持った人材の確保が難しい場合には、トラブル発生時の相談窓口を設置しているサービスや、訪問サポートを行っているサービスを利用しましょう。
RPAは一度運用を開始すると全ての作業を自動で行うため「どのような操作を実行しているのか」担当者以外には分からない可能性があります。実行内容が分からなければ、エラーが発生した際の対応は困難です。
また、RPAの運用が属人化していると、業務内容の変更に対応できない可能性があります。職員全体がRPAで行われている作業を理解するためにも、具体的な業務内容を明記した管理計画や利用サービスの運用サポートを活用しましょう。
RPAは医療機関のさまざまな業務に活用できますが、実際に導入することで、どれほどの効果があるのでしょうか。この章では医療機関におけるRPAの導入事例を3つ解説します。
「RPAがどのような場面で活用されているのか知りたい」という方は、ぜひ参考にしてみてください。
自動的にデータをチェックするRPAを導入した医療機関では、ヒューマンエラーの防止が実現しました。この医療機関では、データをチェックするRPAを応用し、CTスキャンを受ける患者の腎機能の検査結果の確認するシステムを導入しています。その結果、検査数値の見落としやチェック漏れの防止が実現しました。
自動でデータを転記するRPAを導入した医療機関では、時間外労働の大幅な削減を達成しています。この医療機関では、翌日の手術に必要な「術前評価表」の準備を職員が手作業で行っていました。データの転記は、誰にでもできる簡単な作業ではあるものの、長時間残業の大きな原因です。RPAを導入し、転記作業を自動化したことで職員の負担軽減が実現されています。
RPAを導入して副傷病名の登録を自動化した医療機関では、登録漏れの防止と職員の時間外労働の削減を実現しました。
医療機関では、患者の支払い金額の決定の際に「副傷病」の情報が必要です。副傷病の有無により患者の支払い金額が変動するため、入力漏れは病院の経営に関わります。そのため、副傷病の登録は単純作業ではあるものの、ミスが許されない時間のかかる作業でした。
この医療機関では、患者の副傷病を自動で登録するRPAを導入を行って登録漏れの減少を達成しています。また、登録作業が自動化されたことで職員の負担は軽減され、長時間労働の解決にも繋がりました。
医療機関でRPAを導入する場合には「おまかせRPA」の利用がおすすめです。「おまかせRPA」はNTT東日本がサポートを行っているRPAツールで、Windows上で動作する作業を自動化します。
導入・運用時のサポートやトラブルが発生した際の訪問対応など、充実したサポート体制をとっています。そのため「初めてRPAを導入する」「専門的な知識のある人材がいない」などの課題を抱える医療機関でも安心して導入できます。
「おまかせRPA」についての詳しい情報は、以下の資料を参考にしてみてください。
専門的な知識が必要となる業務の多い医療機関でも、以下のような定型作業はRPAを活用して自動化できます。
業務を自動化することで、長時間労働や人手不足の解消が可能です。また、RPA以外にも、さまざまな業務効率化の手法があります。業務効率化手法について詳しく知りたい方は、以下の資料をご参考ください。
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NTT東日本 ビジネス開発本部 北森雅雄
NTT東日本に入社後、自治体向けのシステムエンジニアとして、庁内ネットワークや公共機関向けアプリケーションなどのコンサルティングからキャリアを開始。
2018年から現職にて、プロダクト(SaaS)開発、デジタルマーケティング全般のディレクションに従事。
2022年に業務のデジタル化を分かりやすく発信するオウンドメディア(ワークデジタルラボ)のプロジェクトを立ち上げ。
NTT東日本にかかわる、地域のみなさまに向けてデジタル化に役立つ情報発信を展開。