人材不足や働き方改革などの影響を受け、製造業における生産性向上はますます大きな課題となっています。しかし、具体的な取り組みが進んでいないという企業は多いのではないでしょうか。
今回の記事では、生産性向上に取り組む手順や具体的な手法について解説します。どのような取り組みから始めたら良いか理解できる内容になっているので、ぜひ最後までお読みください。
目次:
製造業における生産性向上とは、投入コストを最小限に抑え成果を最大化することを指します。投入コストの具体的な例は、以下のとおりです。
投入コストに対して成果が大きくなるほど、生産性が高い状態と言えます。この章では、製造業の生産性向上を目指す取り組みを、以下の5ステップに沿って解説します。
一つひとつ確認していきましょう。
計画や施策の方針を明確にするため、生産性向上に取り組む目的を設定します。設定した目的を社員へ共有することで、1つのゴールに向かって企業全体で取り組めます。製造業が生産性向上へ取り組む目的の例は、以下のとおりです。
生産性向上の取り組みを成功させるためには、はじめに明確な目的の設定が重要です。
ボトルネックとは、製造ラインのなかで業務の停滞や生産性の低下を引き起こしている工程を指します。製造業におけるボトルネック工程の例は、以下のとおりです。
工程ごとに時間や生産量を数値化し、ボトルネックとなっている部分を洗い出します。見える化した業務プロセスは社員と共有し、改善案を作成するため担当者にヒアリングを行いましょう。
ボトルネック工程が見つけられたら、改善のための具体的な計画を作成します。たとえば、業務プロセスの見直しによって「材料在庫が多い」ことがわかったとします。この場合、ツールを導入して在庫や仕入の変更を把握することで、不要な倉庫の解約や光熱費の軽減につながるでしょう。
改善策が具体的になった段階で、計画を実行するために必要なツールを選定します。以下のポイントで改善を図る場合は、新しいITツールを導入することで効果的な問題解決が可能です。
NTT東日本では、どのようなツールの導入が必要か、自社に合う業務効率化の手法をまとめた資料を提供しています。業務効率化の具体的な取り組みやITツールの選び方が知りたい企業の方は、ぜひ参考にしてみてください。
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計画を実行する前に、成果目標を具体的な数値で設定しましょう。ただし、達成不可能な目標設定はかえって社員のモチベーション低下を招きます。無理なく実現可能と考えられる範囲で、数値を設定することが大切です。
生産性向上のためには「現場の作業員の理解」と「企業全体で目標達成に向かう姿勢」が大切です。計画の実行には期間を設定し、定期的に成果を確認します。期待する成果が見られない場合は、施策の見直しを検討しましょう。
製造業における生産性向上に効果的な手法には、以下のようなものがあります。
自社で取り入れられる手法がないかイメージしながら、確認してみてください。
5S活動とは、以下の5つの視点から職場環境を整備することを指します。
整理 | 不用品の処分 |
整頓 | 使いやすい配置ルールの決定 |
清掃 | 清掃の徹底・機材の点検 |
清潔 | きれいな状態の維持 |
しつけ | きれいな使い方ルールを習慣化 |
5Sの徹底によって製造工程のムダをなくし、生産性の向上を目指せます。作業員にとっては働きやすい労働環境が整備されるため、モチベーションのアップにつながるでしょう。
作業ごとのムダのチェック・改善によって、不要なコストを軽減できます。まずは、各作業が本当に必要か検討しましょう。次に、スムーズに作業が進んでいないと考えられる部分を改善します。たとえば、時間がかかりすぎている工程や、作業員によって品質の差が大きい箇所は改善ポイントとなるでしょう。
製造ライン内のボトルネック工程の改善は、生産性向上に効果的な取り組みです。以下のポイントを見える化することでボトルネックとなっている部分が分かりやすくなります。
ボトルネック工程は製造ライン全体に大きな影響を与えるため、原因解明と改善を繰り返すことが重要です。
段取りの改善によってムダな作業時間がかかっている工程が見直され、不要なコストを低減できます。
例えば、機械を停止せずに行う「外段取り作業」では、作業が終了する前に必要な材料や機材を準備しておくことが重要です。機械を停止して行う「内段取り作業」では、時間を短縮するために対応人数を増やすなどの対策が考えられるでしょう。
作業者の動きや導線がスムーズになるよう、生産ラインや設備の配置を見直しましょう。レイアウトを変更する際は、現場で働く作業員の意見を取り入れながら進めることが重要です。
データ分析や改善、ロボットによる自動化など、IoTの導入は、製造業の生産性向上に効果的な施策です。たとえば、以下のように業務にIoTを導入することで、より少ない人数で製造ラインを運用できます。
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製造業において、生産性向上への取り組みには以下3つのメリットがあります。
それぞれ順番に解説します。
生産性向上の取り組みによって、同じ稼働時間で多くの製品が製造可能になります。販売量が増加することで、企業は利益の増大が期待できます。販売量が増加すると取引の規模を拡大できるため、企業の成長につながるでしょう。
生産性向上に取り組むことで工程や作業時間のムダをなくし、コストを軽減できます。たとえば、適正に在庫管理できれば、借りている不要な倉庫は解約できるでしょう。コストの軽減は、企業の利益増大につながります。
作業員の配置換えや新しいマニュアルの周知によって、安定した品質の製品を供給できます。品質が安定した商品を販売することで、顧客満足度の向上につながります。
この章では、製造業で生産性向上の取り組みを行った事例を紹介します。自社の取り組みの参考にしてみてください。
株式会社大和は介護施設や病院、シニア個人向けにチルド食品を販売する企業です。製造工程の工数管理に課題を感じており、多種品目少量生産製造ラインのPDCAを改善しました。対象工程の成果は、以下のとおりです。
生産性 | タクト:6.87→5.33秒 |
時間 | 3.75→2.95h/日 |
生産量 | 1863→2368個/日 |
製品数が多く品種ごとに配置する人数の変更が必要で、製造ロスコストや遅延が発生していました。改善に取り組んだ結果、一番のロス作業であったラベル貼付エラーは、ラインを改造して13.6%以上の生産性向上に成功しています。また、作業員の負担を軽減するためにタブレット端末を導入し、改善前は手書きで書き込みをしていたデータの一括管理を可能にしました。
参照元:食品製造業の生産性向上事例集
株式会社山神の主力商品は、ほたてフライや冷凍ほたてなどの加工品です。注文量増大に対応するため、機械の導入による一部工程の自動化に取り組みました。機械導入による生産性向上の成果は、以下のとおりです。
生産性 | 352.4% |
人数 | 7名→4名 |
生産量 | 198.8% |
自動パン粉付け機を導入し、生産量が198.8%改善しています。手作業と同等の見栄えや風味を保つため、メーカーとの会議や社員を含めた試食会を行い品質改善を繰り返しました。
また、1日1時間以上かけていた清掃時間を短縮するため、洗浄機械を導入して業務効率化を図っています。取り組みの結果30分の清掃時間短縮に成功し、ふき取り検査による結果は導入前と比べて良好になりました。
参照元:食品製造業の生産性向上事例集
キユーピー株式会社は、マヨネーズなどの調味料を主力とした食品メーカーです。AI異物検査装置・電磁波虫検出装置の導入によって、生産性向上と検査精度の向上に取り組みました。先進技術導入による生産性向上の成果は以下のとおりです。
生産性 | 125% |
人数 | 4→3名 |
時間 | 同時間 |
生産量 | 同数量 |
異物混入を防ぐため、食品メーカーでは人手・目視による検査に多大な労力を費やしています。検査作業の人手不足や収益低下といった課題を解決するため、AIを活用した原料検査装置を開発しました。AI学習工程のクラウド化などによって、開発した装置を活用した人員・工数の軽減に成功しています。
参照元:食品製造業の生産性向上事例集
製造業の生産性向上は、取り組む目的を明確にすることから始まります。生産性向上を成功させるためには、自社に合う方法に沿って取り組みを進めることが重要です。必要に応じてITツールやテクノロジーを活用し、効率的な課題解決を図りましょう。
自社に合う業務効率化の手法は「【自社に合った業務効率化の手法がわかる】業務効率化手法のまとめebook」でわかりやすく解説しています。業務効率化の具体的な取り組みやITツールの選び方が知りたい企業の方は、お気軽にNTT東日本にご相談ください。
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NTT東日本 ビジネス開発本部 北森雅雄
NTT東日本に入社後、自治体向けのシステムエンジニアとして、庁内ネットワークや公共機関向けアプリケーションなどのコンサルティングからキャリアを開始。
2018年から現職にて、プロダクト(SaaS)開発、デジタルマーケティング全般のディレクションに従事。
2022年に業務のデジタル化を分かりやすく発信するオウンドメディア(ワークデジタルラボ)のプロジェクトを立ち上げ。
NTT東日本にかかわる、地域のみなさまに向けてデジタル化に役立つ情報発信を展開。