2021年8月1日より改正された薬機法により、医薬品などの製品に同梱していた紙の添付文書が原則廃止となり、電子データとして閲覧することが基本となりました。ただ、どのような対応をすべきかなど、詳細がよく分からないという方は多いのではないでしょうか。
そこで今回の記事では、医薬品の添付文書の電子化の概要やメリット・デメリットについて解説します。今後は添付文書の電子化に対応していく必要があるため、関係者の方はぜひ最後までお読みください。
目次:
薬機法が改正されたことで、医薬品などの製品の添付文書の電子化が義務化されました。ここでは、電子化の概要と、施行スケジュールについて解説します。概要について分かりやすく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
2021年8月1日に改正された薬機法により、医薬品などの製品に同梱される紙の添付文書が原則廃止になりました。今後、添付文書は電子データとして提供・閲覧する必要があります。
ただし例外があり、一般消費者向けに販売されている医薬品については、継続して紙の添付文書が同梱されます。一般消費者は従来と変更はありませんが、医療関係者は電子化への対応が必要です。
薬機法の改正により、医薬品の添付文書は電子化されますが、2023年7月31日までの間は経過措置期間となっています。この期間中は、電子化された添付文書と従来の紙の添付文書の同梱の併用が認められています。
経過措置期間後の2023年8月1日からは、紙の添付文書は廃止され、電子化された添付文書のみ使用できます。添付文書が電子化されれば、製品の容器や被包にバーコードやQRコードなどの符号が記載され、その符号から添付文書を閲覧する必要があります。
一般消費者向けの医薬品は、電子化後も紙の添付文書が同梱されます。一方で、医師や薬剤師などは添付文書の電子化に業務を対応させる必要があります。
従来の紙の添付文書では、運用面の課題を抱えていました。ここでは、この課題を2つ紹介します。自社でも同様の課題が発生していないか、確認してみてください。
従来の紙の添付文書には、内容が最新ではない場合があるという問題があります。添付文書は頻繁に内容が改訂されますが、その度に添付文書の更新が必要です。しかし、在庫の医薬品などに同梱されている添付文書の内容が更新されてない場合があります。
そのため、記載内容が改訂される度に添付文書を差し替える必要があり、作業効率の低下の原因となっています。
これまでは、医薬品のほとんど製品に紙の添付文書が同梱されていました。そのため、医薬品の分だけ紙媒体が必要になります。
また、医薬品などが医療機関や薬局に納品されると添付文書が増えていき、紙媒体が浪費されていました。さらに、古くなった添付文書は破棄する必要があり、ゴミになるという問題もあります。
改正薬機法により電子化された添付文書は、スマートフォンやタブレット端末などで閲覧することになります。従来は紙の添付文書が同梱されていましたが、電子化後は医薬品の外箱などにバーコードやQRコードなどの符号が印字され、その符号を使って閲覧します。
また、印字された符号には、添付文書の他に以下のような情報も組み込まれ、電子化された添付文書と同じ方法で閲覧可能です。
関連文書も同様に閲覧できます。
ここでは、添付文書を電子化するメリットを3つ紹介します。添付文書の電子化において、メリットを知っておくことで現場の理解を得られやすくなるので、ぜひ参考にしてみてください。
添付文書を電子化を導入することで、常に最新の内容が入手可能です。添付文書は、最新の情報を反映させるため、頻繁に改訂が行われます。ただ、従来の紙の添付文書の場合、使用頻度が低い医薬品や在庫の医薬品については、情報が更新されないことがあります。
添付文書が電子化されれば、従来のような紙の添付文書の入れ替えの必要がないため、使用頻度に関係なく最新の情報が入手可能です。
最新情報が入手できないことが原因で、誤った情報で薬物治療されることが防げます。他にも、災害時でも確実に情報が提供できることも期待されます。
添付文書を電子化すると、従来の紙の添付文書は原則廃止になります。そのため、紙資源や印刷代が削減可能です。従来はほとんどの医薬品に紙の添付文書が同梱されていますが、入れ替えの際に古くなった文書は破棄する必要があります。電子化により、紙の添付書類を破棄するためのコストが削減できます。
紙の添付文書は適切に保管する必要があり、紛失するリスクもありました。添付文書を電子化すれば、保管する必要がないため紛失リスクもなくなります。
また、紙は経年劣化することがありますが、電子化すればその心配はありません。添付文書をデータとして保存しておくことで、保管の手間が軽減され最新情報への更新も容易になります。
添付文書の電子化には、メリットが多い一方で不便な点も存在します。ここでは、このデメリットを2つ紹介します。添付文書の電子化移行に予期せぬトラブルが発生しないように、ぜひ本章の内容を参考にしてみてください。
電子化された添付文書は、閲覧にスマートフォンなどの機器を使う必要があります。そのため、電子機器を使うのが苦手な方などは適切な情報が得られない可能性があります。
そのため、スマートフォンなどを使った添付文書の閲覧方法について理解してもらうなど、業界として電子化の普及に取り組むことが重要です。
他にも添付文書の電子化に伴い、医療機関にスマートフォンやタブレット端末などを準備する必要があるなど、導入時にコストがかかるのも課題の1つです。
従来の紙の添付文書は、医薬品の情報を知らせる役割の他に、医薬品を破損から守る緩衝材としても使われています。そのため、紙の添付文書をなくすと、別の方法で医薬品を破損から守らなければなりません。輸送時の破損を防ぐため、梱包や輸送方法の見直しが必要になります。
紙の添付文書の代わりに別の緩衝材を使うのか、より破損しにくい輸送方法を導入するのか、などの検討が必要です。
薬機法の改正により、医薬品などの添付文書の電子化が義務化され、従来の紙の添付文書は廃止されます。ただし2023年7月31日までの経過措置期間中は、紙と電子化の併用が可能です。
添付文書を電子化するメリットには「最新の情報が入手できる点」「紙資源や保管のコストが削減できる点」があります。また、紛失のリスクも軽減可能です。
ただし、電子化により機器の取り扱いに慣れていない方へのフォローが必要になるなど、情報格差の広がりを防ぐ必要があります。また、紙の添付文書は緩衝材として使われていたため、新たな梱包・輸送方法を導入する必要があります。
添付文書の電子化には、システムやツールの導入が必要ですが、さまざまな書類がペーパーレス化できる「AI-OCR」の導入が最適です。ツールの導入を検討する際は、ぜひ以下の資料をご覧ください。
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NTT東日本 ビジネス開発本部 北森雅雄
NTT東日本に入社後、自治体向けのシステムエンジニアとして、庁内ネットワークや公共機関向けアプリケーションなどのコンサルティングからキャリアを開始。
2018年から現職にて、プロダクト(SaaS)開発、デジタルマーケティング全般のディレクションに従事。
2022年に業務のデジタル化を分かりやすく発信するオウンドメディア(ワークデジタルラボ)のプロジェクトを立ち上げ。
NTT東日本にかかわる、地域のみなさまに向けてデジタル化に役立つ情報発信を展開。