| Writer:NTT東日本 北森 雅雄(Masao Kitamori)

中小企業が健康経営に取り組むメリット・デメリット9選【導入への5ステップも解説】

中小企業が健康経営に取り組むメリット・デメリット9選【導入への5ステップも解説】

近年「健康経営」が注目を集めつつあります。健康経営とは企業が従業員の健康を促進し、生産性を高める施策です。中小企業の担当者の人のなかには「健康経営を目指しているが、どのように取り組んだら良いのかわからない」とお悩みの方が、いらっしゃるのではないでしょうか。

健康経営に取り組むことで、人手不足の解消や職場環境の改善などが期待できます。人手不足が深刻な中小企業こそ、健康経営への取り組みが必要です。

今回の記事では、健康経営の概要やメリット・デメリットなどを解説します。取り組む方法についても紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

1.健康経営とは?中小企業の課題も解説

中小企業が健康経営に取り組むメリット・デメリット9選【導入への5ステップも解説】

近年、健康経営に注目する経営者が増えています。そこで、最初に健康経営の概要を解説します。なぜ中小企業が取り組むべきなのかも解説するので、健康経営の重要性を確認しましょう。

健康経営とは

健康経営とは、経営理念に基づいて企業が積極的に従業員の健康促進に取り組み、生産性を高めることを指します。今までは「健康管理は自己責任」という考えが主流でしたが、従業員の高齢化や深刻な人手不足、国民医療費の増加などを背景として、健康経営に関心をもつ経営者が増えています。

従業員の健康促進のためには、快適な職場環境や充実した福利厚生制度、ワークライフバランスの向上などを積極的に行うことが大切です。健康経営は、企業における労働安全対策や労務管理という観点から、リスクマネジメントや法令順守の手法の1つとしても関心を集めています。

健康経営が必要な中小企業の課題

中小企業が健康経営に取り組むべき大きな理由は、大企業と比べて人手不足が深刻化しているためです。人気がある大企業は応募者が求人数を超えることが多いですが、中小企業は例年応募者が少ない傾向があります。応募者が求人数3分の1にも満たないこともあり、深刻な人手不足に悩む中小企業は多いです。

参照元:経済産業省「深刻化する人手不足と中小企業の生産性革命」

中小企業は従業員が少ないため、心身の不調で休む人が増えると事業にダメージを与える可能性があります。従業員数を確保するためには、新たな人材を探すことはもちろん、すでに働いている人の定着率を上げることも大切です。そのためには、ワークライフバランスの向上が欠かせません。

2.【企業側】中小企業が健康経営に取り組むメリット3選

中小企業が健康経営に取り組むメリット・デメリット9選【導入への5ステップも解説】

健康経営には従業員のパフォーマンス向上や人材の確保など、企業におけるメリットがあります。そこで、この章では健康経営に取り組む企業側のメリットを解説します。健康経営に取り組むことでどのような変化があるのか、確認しましょう。

従業員のパフォーマンス向上につながる

健康経営には、従業員のパフォーマンスが向上するメリットがあります。経済産業省の調査で、企業が従業員の健康へ投資をしていると感じている人は、健康状態だけではなくパフォーマンスも良いことが分かっています。

参照元:経済産業省ヘルスケア産業課「健康経営の推進について」

また、精神的な不調を抱えている従業員はパフォーマンスが低く、企業への利益貢献度が高くありません。実際に、精神的な不調によって休職した従業員が多い企業は、売上利益率の低下が大きいという調査結果が出ています。従業員のパフォーマンスが改善されると、生産性の向上につながり良いサイクルが生まれ、中長期的な企業成長が期待できます。

参照元:独立行政法人経済産業研究所「企業における従業員のメンタルヘルスの状況と企業業績-企業パネルデータを用いた検証-」

人材が確保しやすくなる

ワークライフバランスを重視する方が増えていることもあり、健康経営によって従業員の定着率上昇、さらには人材確保がしやすくなります。健康経営度が高い企業ほど離職率が低く、さらには応募者が集まりやすい傾向があります。

健康経営を進めることで、優秀な従業員を確保できる可能性が高くなるでしょう。人材が多く確保できれば、長時間労働の改善や福利厚生の充実に取り組む余裕ができるため、さらに生産性の向上が期待できます。

企業イメージの向上につながる

「健康経営優良法人」として認定されると、企業のイメージアップにつながり、人材確保や融資の審査が優位になります。健康経営優良法人とは、経済産業省が健康経営に取り組んでいる優良な企業を選ぶ制度です。

認定されることで、従業員の健康促進に取り組んでいる企業として社会的な評価を受けられます。社会的な評価が高まれば、将来的に株価上昇のメリットが期待できます。また、健康経営に関するメディアの露出が増え、自社をアピールする場を増やすことが可能です。

3.【従業員側】中小企業が健康経営に取り組むメリット2選

中小企業が健康経営に取り組むメリット・デメリット9選【導入への5ステップも解説】

健康経営は、企業側だけではなく職場環境の改善や体調管理の面で従業員側のメリットがあります。そこで、この章で従業員側のメリットを理解し、周知するときの参考にしてみてください。

職場環境が改善される

健康経営の取り組みは、従業員の健康促進だけではなく、労働環境の改善も含まれます。働きやすい職場で作業ができれば、従業員のパフォーマンス向上につながるでしょう。

パフォーマンスが良くなると、従業員のモチベーションと自信の向上にもつながり、充実感を得ながら仕事ができます。職場環境の改善によって、これまでよりも集中して作業をこなせるようになれば、結果として作業時間の短縮やコストカットにもつながります。

健康維持につながる

健康経営への取り組みによって、従業員が健康を意識するようになります。仕事が忙しいと健康管理をする余裕がなく、後回しにしてしまう方もいるでしょう。しかし、企業がサポートをすることで、仕事と健康維持の両立が可能です。企業のサポート内容として、健康に関するセミナーの開催や、内勤が多い職場でのウォーキングなどが挙げられます。

また、身体的な健康だけではなく、精神面の改善への取り組みも大切です。労働環境の見直し・改善やストレスチェックなどを行うことで、メンタルの不調を抱える従業員を減らせます。

4.【企業側】中小企業が健康経営に取り組むデメリット2選

中小企業が健康経営に取り組むメリット・デメリット9選【導入への5ステップも解説】

健康経営には取り組みの効果が分かりにくかったり、コストや手間がかかったりと、注意が必要な点があります。この章では、健康経営に取り組むときに企業側が気を付けることを解説します。これから健康経営に取り組む企業の方は、デメリットについても理解しておきましょう。

取り組みの効果が分かりにくい

健康経営の取り組みは、営業利益とは異なり成果を具体的な数字で表すことが難しいため、効果が分かりにくいデメリットがあります。定着率や離職率などは数値で表せますが、従業員の健康状態だけが理由とは限りません。健康経営は数値判断が難しいですが、長期的に取り組むことで効果を感じられるので、データを収集・評価しながら進めていくことが大切です。

コストと手間がかかる

健康経営は、長期的にデータを収集し管理する必要があるため、担当者の手間がかかります。また、収集するデータはセンシティブな内容を含む個人情報のため、企業によってはデータを収集・管理する設備投資が必要になるケースがあります。

収集したデータの分析や健康に関するセミナーの講師など、社内に経験・知識のある人がおらず外部に依頼する場合はさらにコストが必要です。健康経営に取り組むときは、どのくらいの費用が必要かなどを事前に検討した上で進めることをおすすめします。

5.【従業員側】中小企業が健康経営に取り組むデメリット2選

中小企業が健康経営に取り組むメリット・デメリット9選【導入への5ステップも解説】

健康経営では、労働時間外の拘束やセンシティブなデータの提供など従業員側の注意点があります。この章では、従業員側のデメリットについて解説するので、健康経営を進めるときには十分に理解を得た上で行いましょう。

労働時間外の拘束が増える

健康経営に取り組むときには、企業が従業員の健康状態を把握することが必要です。健康状態を確認するためにストレスチェックや健康診断に加え、医師との個別面談を行ったりセミナーを実施したりと、労働時間外の拘束が増える可能性があります。

労働時間外の拘束が増えることに従業員が不満を持つ可能性があるので、十分に説明を行い理解を得ることが大切です。

センシティブなデータの提供

企業が健康経営に取り組むにあたって、従業員は健康診断やストレスチェックの結果などを知らせなくてはいけません。センシティブな内容であまり人に知られたくない情報が含まれているため、懸念を抱く従業員がいる可能性があります。情報提供を依頼するときには管理方法や使用使途を明確にし、従業員に安心して健康経営の取り組みに参加してもらうことが大切です。

6.中小企業が健康経営に取り組むための5ステップ

中小企業が健康経営に取り組むメリット・デメリット9選【導入への5ステップも解説】

中小企業が健康経営に取り組む方法を、ステップごとに分けて解説します。これから健康経営に取り組む中小企業の担当者の方は、スムーズに進めるためにも参考にしてみてください。

社内外へ健康宣言を行う

健康経営に取り組むことを決めたら、社内外へ健康宣言を行いましょう。健康宣言とは、経営理念のなかで健康経営について明文化し、取り組む姿勢を示すことを指します。健康経営に取り組む上で、経営者が重要性を理解し、理念を周囲へ示すことが大切です。併せて具体的な施策を示せば、従業員へ「何をするのか」が伝わります。

健康宣言事業に参加することで健康づくり支援策のサポートを受けられるので、施策を進めやすくなります。企業にとってもメリットがあるので、社内外への健康宣言をして取り組む姿勢を示しましょう。

体制を整える

健康経営の方針が決まったら、中心となる部署もしくは担当者を決めて体制を整えましょう。健康経営の効果を高めるためには、専門家に依頼したり担当者に研修を受けてもらったりすることが大切です。施策を検討する段階から経営層を巻き込んで話せる体制が作れたら、企業全体として取り組みやすくなるでしょう。

現状の把握と目標設定

健康経営の施策を検討する上で大切なのは、現状を把握し課題を見つけることです。健康診断・ストレスチェックの結果や労働時間など、様々なデータを分析して課題を見つけましょう。課題の把握ができたら、解決に向けて目標を設定します。具体的な目標を設定することで、より健康経営を効果的に進められます。

具体的な対策を検討・実施

目標が決まったら、達成に向けて具体的な対策を検討していきます。例えば、生活習慣病に悩む従業員への食生活をサポートする取り組みや、メンタル面での不調を抱える人向けの相談窓口の設置などが挙げられます。具体的な対策を決めたら、従業員に周知し実施していきましょう。

取り組みの評価を行う

対策を従業員に周知し実施を促したら、定期的に取り組みの評価を行うことが大切です。取り組みの効果は経営層にも確認してもらい、修正すべき点があれば改善していきましょう。効果を検証するときは、PDCAが機能する体制を作り、継続していくことが必要です。

7.まとめ

中小企業が健康経営に取り組むメリット・デメリット9選【導入への5ステップも解説】

健康経営は、企業が従業員の健康を促進し生産性を高めることを指します。人材不足や従業員の高齢化などに伴い、健康経営に注目する企業が増えつつあります。特に中小企業は大企業に比べて人材不足が深刻なため、定着率のアップや新たな人材の確保が必要です。

健康経営によって従業員の健康をサポートしたり働きやすい環境を作ったりすることで、人材不足の解消だけではなく、モチベーションや企業イメージの向上などが期待できます。健康経営の一環として労働環境を改善する際は、業務効率化も重要です。自社にあった業務効率化を知りたい方は、以下のURLから資料がダウンロードできるのでぜひご覧ください。

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この記事を書いた人

NTT東日本 ビジネス開発本部 北森雅雄

NTT東日本に入社後、自治体向けのシステムエンジニアとして、庁内ネットワークや公共機関向けアプリケーションなどのコンサルティングからキャリアを開始。

2018年から現職にて、プロダクト(SaaS)開発、デジタルマーケティング全般のディレクションに従事。

2022年に業務のデジタル化を分かりやすく発信するオウンドメディア(ワークデジタルラボ)のプロジェクトを立ち上げ。
NTT東日本にかかわる、地域のみなさまに向けてデジタル化に役立つ情報発信を展開。

北森雅雄 masao kitamori

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