健康経営の導入にあたって「自社に合うやり方が分からない」とお悩みの担当者の方は多いのではないでしょうか。進め方が分からないときは、参考事例が参考になります。
そこで本記事では、健康経営の事例やメリットについて解説します。基本の進め方を4つの手順で紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
目次:
健康経営とは、従業員が病気になるリスクを下げて生産性の高い経営を目指す手法です。多くの企業が注目しはじめた背景には、従業員の高齢化などが関係しています。
少子高齢化が進む現代の日本は、働き手となる労働力不足が問題となっているため、若手の採用がしづらくなっています。企業は健康管理を取り入れて、従業員が長く働ける環境を整えていくことが重要です。
優良な取り組みを実行している企業には、政府による「健康経営銘柄」「健康経営優良法人」の制度で選定されます。選定された企業は「従業員の健康を気遣う会社」といった証明ができるので、社会的な評価やイメージアップに有効です。
さらに健康経営優良法人の大規模部門では、上位500に選ばれると「ホワイト500」に認定されます。健康経営銘柄は上場企業のみが対象ですが、ホワイト500の制度によって有名な企業以外でも注目されるようになりました。
人員不足や長時間労働など、日本には企業活動における様々な問題があります。改善に向けて取り組まれる「健康経営」には、どのような効果が得られるのでしょうか。
本章では、健康経営で得られる以下のメリットについて解説します。
健康経営によってどんな効果が得られるか、気になる方はぜひご覧ください。
健康経営の1番のメリットは、生産性の向上です。従業員が不健康なまま作業をしていても、パフォーマンスが最大化できません。
従業員が健康であれば、仕事に対して前向きになれます。例えば、ミスをして落ち込んでも、良い方向に切り替えやすくなるでしょう。
結果的に生産性が上がるだけでなく、従業員は「会社の役に立っている」といった自尊心の向上にも繋がります。意欲的に仕事をする従業員が増えれば、活気が出て企業全体の雰囲気が良くなります。
社内のコミュニケーションが活発化し、自分の意見も言いやすい環境になると業務の情報共有もしやすくなるでしょう。健康経営は、風通しの良い職場を目指す企業にもおすすめの手法です。
少子化などの理由で働き手が不足しているため、従業員に長く勤務してもらいたいと考える企業が多いでしょう。一方で、以下のような理由により離職に繋がるケースが増えています。
離職者や休職者が多い企業は、健康経営に取り組むべきでしょう。なぜなら、健康経営を導入すれば、健康トラブルが減少し離職率の低下に繋がるからです。
例えば、過度な残業や規定時間外の労働は、従業員の負担となります。利益が出たとしても、従業員が離れていく原因になるので対策が必要です。
また健康経営に取り組み、従業員が定着すれば採用コストや医療費なども削減可能です。コストを削減できれば、従業員の給与や賞与の増加にも繋げられるでしょう。
企業に「働きやすさ」や「風通しの良さ」を求める求職者は多いでしょう。健康経営に力を入れている企業として良い印象が広まれば、入社希望の求職者が増えて人材確保に繋がります。
また健康経営優良法人に選定された企業は、取り組みの証明として「認証マーク」を取得できます。従業員を大切にしている証明にもなるので、企業としての信頼度が高まるでしょう。
健康経営に関する実際の取り組みをSNSやホームページで発信すれば、関係企業にも良いイメージを与えられます。投資家などから注目されることもあるので、株価の上昇や売上アップも期待できるでしょう。
実際に健康経営に取り掛かろうと思っても「何から始めればいいの?」と悩む方は多いです。対策に悩んだときは、取り組み事例が参考になります。
そこで本章では、以下5つの健康事例の取り組み事例を解説します。
事例をお探しの方は、本章の内容をお役立てください。
労働時間が長くなると、従業員の疲労が蓄積して良いパフォーマンスが発揮されません。過重労働がきっかけで、身体のトラブルや精神障害などを発症する恐れもあります。
労働時間の見直しに関する、具体的な対策事例は以下のとおりです。
適切な働き方に向けて、上記のような対策を実行できれば残業時間の削減に繋がります。なかには「定時でパソコンを強制的にシャットダウンする」という事例もありました。
またコストは発生しますが、RPAによる定型作業の自動化や効率化に向けたシステムの導入も、対策としては有効です。残業や過重労働が問題となっている企業は、健康経営による労働時間の見直しを実施しましょう。
従業員の健康問題を把握するのに、定期検診は欠かせません。定期検診は従業員に対して、年に1回の実施が労働安全衛生法で定められています。
定期的な健康診断でリスクを早期に発見し、重症化を予防できます。また定期健診には必須検査項目があり、費用は会社が負担するのが原則です。
しかし健康経営の取り組みにより、以下のような検査も会社負担としているケースが増えています。
このようなオプション検査の受診は、とくに法律で義務化されていません。費用は個人負担としている企業も多いため、受診しない従業員も多いでしょう。
できれば必須項目以外の検査も、企業側が費用補助を行うことが望ましいです。受診率を高めて、重症化予防を図りましょう。
テレワークなどの普及により、運動不足に悩む労働者が増加しています。運動不足が原因で、肩こりや頭痛などの身体的トラブルや、意欲の低下など精神疾患の症状が出る恐れがあります。
従業員の運動不足は業績に影響する可能性もあるので、軽視せず対策していく必要があります。運動機会の提供に関する健康経営の事例は、以下のとおりです。
運動で健康状態が改善されれば、仕事に対する意欲や集中力向上に繋がります。元気に働く従業員が増えることで、求職者や投資家に良い印象を与えられるでしょう。
自分のストレス状態を把握できず、ため込んでしまう従業員もいます。ストレスを放置していると、睡眠障害のほかにうつ病などの精神疾患に繋がる恐れもあります。
そこでストレスチェックを実施し、従業員に自分の健康状況を自覚してもらうことが大事です。従業員が50人以上の企業は、法律によりストレスの測定が義務付けられています。
しかし従業員側は受ける義務はないため、回答率が低いなどの問題が挙げられます。なかにはプライバシーの問題から「ストレスチェックを受けたくない」「正確に答えたくない」と考える人もいるでしょう。
回答率を高めるためには、従業員が安心してストレスチェックを受けられる工夫が必要です。担当者は第三者が閲覧できないように、管理を徹底していきましょう。
健康経営の取り組みは、従業員の協力が必要不可欠です。従業員に健康経営の考え方を理解してもらうためには、セミナーの受講が有効です。
セミナーでは健康経営の根拠となるデータや注目されている背景などを、外部の専門家から学ぶことができます。また事例も交えながら健康経営について学べるセミナーも多いので、理解しやすいのもメリットです。
セミナーの種類は様々ですが、以下のような内容で実施されています。
また健康意識を高めるために、ストレスチェックや健康診断の結果が悪い社員には、医師による面接指導を受けてもらうのもおすすめです。医師や外部の専門家からアドバイスを受けることで、健康経営に対する意識向上が目指せるでしょう。
健康経営の担当者は「具体的なやり方が知りたい」と思われるのではないでしょうか。進め方はシンプルなので、複雑に考える必要はありません。
そこで本章では、健康経営の基本の進め方について、以下の4ステップで解説します。
今回案内する手順を、ぜひ役立ててみてください。
はじめに、健康経営に取り組む目的や基本情報を整理しておきましょう。目的などを明確にしておくことで、従業員への共有や意思表明がスムーズに進みます。明確にしておきたい内容は、以下のとおりです。
スケジュールや体制については、できる限り具体的に決めておくのが理想です。しかし、この時点で固めすぎてしまうと「スタートに踏み切れない」といった問題が出る可能性があります。
そこで、体制については「どの部署にするか」「プロジェクトチームの発足を検討しているか」まで、スケジュールについては「実施予定の内容」を決定するくらいで十分でしょう。
目的や情報を整理したら、健康経営の実施を表明しましょう。事前に整理した基本情報を提示すると、企業が求めていることを理解してもらいやすくなります。
表明は社長や組織のトップが行うことで、企業の姿勢や従業員への想いをしっかり伝えられます。組織のトップが健康経営の重要性を理解したうえで、今後のビジョンや方針を示しましょう。
社内に表明するタイミングは、全体会議や朝礼など全ての従業員が集まる場が理想です。メールやポスターなどによる宣言では、真剣さが伝わりづらいので注意しましょう。表明日を決めたら社内報などで事前に周知を徹底し、できる限り全従業員に参加してもらうようにします。
健康経営の取り組みを展開していくために、体制作りをしていきます。プロジェクトチームの発足や特定の専門部署を決定し、担当者を選任しましょう。
担当の知識が足りない場合は、健康経営アドバイザーの資格を取得させるのもおすすめです。資格保持者が主導すれば、従業員の信頼を得やすくなるなどのメリットがあります。
資格取得が難しい場合は、健康経営アドバイザーを外部から招く手段もあります。また健康経営は、社内全体で取り組む必要があるため、会議などでも議題として取り上げて進歩状況や体制を共有していきましょう。
健康経営に取り組む前に、様々なデータから具体的な課題分析を行いましょう。分析対象になるデータは、以下のとおりです。
これらのデータを集めて、取り組むべき課題を明確にしていきます。部署によって「残業時間が多い」「健康診断の受診率が低い」などの課題を見つけることも可能です。
具体的な課題が決まれば、取り組みを実行しましょう。定期的に途中経過を共有すれば、従業員の意識向上にも繋がります。
健康経営の取り組みは、残業削減や労働環境の改善など様々です。単純作業の繰り返しや書類のやり取りなどの業務を「効率化したい」と考えている企業も多いでしょう。
自社に合う効率化の手法をお探しの方は、NTT東日本が提供する「業務効率化の手法まとめebook」がおすすめです。人的コストも抑えられる、以下のITツールをご用意しております。
このようなツールを活用し、予算に合わせた業務効率化に繋がる解決方法をご提案します。労働環境の改善は、健康経営の取り組みの1つなのでぜひ参考にしてください。
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健康経営は、従業員が病気になるリスクを下げて経営向上を目指す手法です。従業員の健康管理ができるだけでなく、生産性の向上や従業員の定着率アップに繋がります。
健康経営の取り組み事例は、以下のとおりです。
今回紹介した事例を参考に、活気のある企業づくりを目指しましょう。
NTT東日本 ビジネス開発本部 北森雅雄
NTT東日本に入社後、自治体向けのシステムエンジニアとして、庁内ネットワークや公共機関向けアプリケーションなどのコンサルティングからキャリアを開始。
2018年から現職にて、プロダクト(SaaS)開発、デジタルマーケティング全般のディレクションに従事。
2022年に業務のデジタル化を分かりやすく発信するオウンドメディア(ワークデジタルラボ)のプロジェクトを立ち上げ。
NTT東日本にかかわる、地域のみなさまに向けてデジタル化に役立つ情報発信を展開。