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健康経営とは「従業員が健康であることが業績向上に繋がる」という考え方です。従来の企業経営は、業績を最優先する傾向がありました。
しかし現代は、健康経営の推進により「従業員の心身の健康が会社の発展に繋がる」という考えが浸透しはじめています。健康経営が特に注目されるようになった代表的な要因は、2019年に順次施行されている「働き方改革」があります。
多くの企業が健康経営に取り組みはじめますが、所定労働時間を超えた無理な働き方を続けている企業が存在するのも事実です。いわゆるブラック企業と呼ばれる会社は、少なからず存在しています。
実績を優先し時間外労働などで収益が見込めていたとしても、長期的に良い成果を出すのは難しいでしょう。将来的にも組織の価値向上を目指すには、従業員の健康管理が必要です。
少子高齢化や働き方改革などの問題から、健康管理に力を入れている企業が増えています。健康経営には、施策の評価を受けられる制度が2つ設けられています。
それが政府による「健康経営銘柄」と「健康経営優良法人」の制度です。そこで本章では、2つの制度の概要について解説していきます。健康経営に欠かせない、認定制度について理解しておきましょう。
経済産業省は健康経営に取り組む優良な企業に対して、株式市場で「健康経営銘柄」として紹介する仕組みを構築しました。東京証券取引所と共同で取り組まれている健康経営銘柄の選定は、2014年から毎年実施されています。
優良な企業の選定は、以下の項目が実行できているかを評価します。
健康経営銘柄に選ばれるためには、8〜10月に行われる調査を受けなければいけません。2021年に選定された企業のなかには、TOTO株式会社や花王株式会社などの上場会社があります。
選定基準をクリアすれば、企業価値を重視する投資家からの関心を向けることができます。健康経営銘柄に選定されれば、企業の株価上昇やイメージアップが期待できるでしょう。
健康経営優良法人とは、積極的に健康課題に取り組む企業に対して日本健康会議が顕彰する認定制度です。この制度には、大・中小規模の法人部門があります。
さらに上位500に選ばれた法人を、大規模部門では「ホワイト500」中小部門では「ブライト500」と呼びます。この制度により「戦略的に従業員の健康管理に取り組んでいる企業」として注目が集められるようになりました。
また、選定された事実を証明できる認定マークが付与されます。認定マークは名刺や発行物などに活用できるため、社会的な評価や信頼性を高めるのに有効です。
マークのデザインや使用時の注意点などについては、健康経営優良法人ロゴマニュアルを参考にしてみてください。
健康経営が社会的に注目されていますが、実際に企業にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。本章では、健康経営の取り組みで得られる、主なメリットを4つ解説します。
健康経営について調べている企業担当者は、ぜひ確認してみてください。
生産性を向上させるには、従業員が健康状態を維持する必要があります。なぜなら、従業員が健康問題を抱えながら業務に取り組んだとしても、良いパフォーマンスは発揮されないからです。
健康日本21の調査によると、特に以下の心身の不調が生産性に影響していると紹介しています。
例えばメンタル面が不調のまま仕事をしていると、やる気がなくなり作業効率低下に繋がる可能性があります。心身の健康問題を解決すれば、従業員のモチベーションを高く保てるので、おのずと生産性UPに繋がるでしょう。
また従業員が健康でいることで、社内に活気が出て雰囲気も良くなります。従業員が前向きに業務に取り組めるようにサポートを行い、経営サイクルを好循環させましょう。
健康経営がもたらす効果に、離職率の低下が挙げられます。従業員が健康になると退職者が減る理由は、以下のとおりです。
健康経営を通じて心身ともに健康維持できれば、仕事に対して前向きになる従業員が増えます。例えば、取り組みにより業績が向上すれば給与や賞与UPにも繋がります。
結果としてモチベーションが上がり、離職率低下に繋がるでしょう。また離職率が高い企業は「給与が低い」「残業が多い」「職場の雰囲気が悪い」などと推測されやすいので、人材確保にも影響が出ます。
企業の印象が悪いと、人材採用に悪影響があるので注意が必要です。健康経営に取り組み離職率を減らせれば、無理に採用を増やす必要もありません。
健康経営の取り組みは、リスクマネジメントに有効です。理由は、従業員の健康問題を早期に察知しやすくなるので、病気などによる欠員の発生を防止できるからです。
従業員の健康管理を疎かにしていると、身体だけでなくメンタル面にも影響が出る可能性があります。心身ともに不調の状態のままでは、労働力や生産性の低下に繋がります。
企業としては、優秀な人材を失う恐れもあるので注意が必要です。新しい人材を雇うにも、コストや労力が掛かります。
このようなリスクを最小限にするために、健康経営は役立ちます。企業の負担を避けるためにも、積極的に健康経営に取り組みましょう。
健康経営の認定制度である「健康経営優良法人」に選定されれば、社会的な評価を受けられます。認定制度により「従業員の健康を大事にする企業」であることが可視化されるためです。
認定を受けた企業はメディアに掲載されることもあるので、自然と会社をPRできるメリットがあります。企業の取り組みがPRできると、求職者や関係企業に良いイメージを与えることも可能です。
いわゆるホワイト企業であると証明されるので、人材確保にも役立ちます。もちろん健康経営の課題を導入するだけでも企業や従業員にとってプラスになりますが、せっかくであれば認定取得を目標としてみるのがおすすめです。
健康経営の取り組みを進めるにあたって「気を付けることは何?」と考える担当者は多いのではないでしょうか。そこで本章では、健康経営における以下3つの注意点を解説します。
注意点を理解して、ぜひ健康経営に役立ててください。
健康経営は短期的な取り組みではないため、「なかなか前に進まない」と感じる人もいるでしょう。成果が出るまで、根気よく継続する必要があります。まずは健康管理の課題を可視化し、その上で中長期的なスケジュールを設定していくことが重要です。
健康経営は社内全体で行う取り組みなので、企業のトップや影響力のある人が積極的に意識づけを行う必要があります。効果を実感しやすくするために、目標を決める際は数値化しておきましょう。
健康経営に取り組むには、膨大なデータを集める必要があります。ストレスチェックなどのデータ収集で起こりやすい問題点は、以下のとおりです。
データ収集は時間や労力がかかるため、効率よく進めていく必要があります。例えば、簡単にデータをまとめられる高性能アプリやITツールなどを導入するのがおすすめです。
コストを掛けずに自社でアンケートを作成する方法もありますが、データを集める際に膨大な労力が必要となります。健康経営を導入する際は、データ取集に労力が掛かる点に注意しましょう。
健康経営の導入をすると、従業員は課題が増えて負担に感じる可能性があります。従業員の許容範囲を超える取り組みを強要しないよう注意しましょう。従業員が取り組む具体的な課題は、以下のとおりです。
健康に繋がることでも、課題が増えすぎると従業員のストレスに繋がるため配慮が必要です。健康経営の課題に取り組む際は、事前に従業員の理解を得ると不満が出にくいでしょう。全ての課題に取り組むのは大変なので、優先順位を決めて様子を見ながら進めるのがポイントです。
健康経営を導入する必要がある企業には、いくつかの特徴があります。そこで本章では、健康経営を導入するべき企業の特徴は、以下のとおりです。
ぜひ自社の特徴と比較してから、導入を検討してみてください。
従業員の高ストレス者の割合が多い場合は、健康経営を導入するべきと言えます。ストレスチェックとは、2015年に職場環境の改善を目的とした制度です。
50人以上の従業員が在籍している企業には、ストレスチェックが義務化されています。ストレスチェックは、職場の環境や健康状態を調べるために、アンケート形式などでデータ収集を行います。
主なアンケート内容は「職場での働きやすさ」や「メンタルヘルスの不調など」についてです。ストレスチェックの結果が悪いということは、精神的に疲労している状態なので改善が必要です。社内に相談窓口の設置をするなどして、従業員が気軽に相談できる環境をつくりましょう。
離職率が高いなどの理由で、常に人手が足りていない企業は健康経営の導入をするべきです。人手不足の状態で業務をこなしている従業員は「自分が欠けたら作業が回らない」といったプレッシャーを常に感じています。
他の人に頼ることができず負担を抱えている状態では、体力も精神状態も悪化する一方です。また残業が多いなど長時間労働が常態化している場合も、人員が定着しない理由の1つです。
健康経営は業務環境の改善に役立つため、従業員の負担が大きい企業は取り組むべきでしょう。また健康経営優良法人に認められれば、企業が従業員を大切にしていることが可視化されるので、求職者からの印象も良くなり人材確保にも繋がります。
加齢に伴い健康面での不安が高まるので、中高年以降の従業員が多い企業は健康経営に取り組むべきです。今まで健康だった人でも、年齢を重ねると体調に変化が出やすくなります。特に、中高年が掛かりやすい代表的な病気は以下のとおりです。
働き盛りの30代でも、高血圧などの生活習慣病には気を付けなければいけません。はじめは軽度でも、乱れた生活を続けていると心筋梗塞などの命に関係する病気を引き起こす可能性もあります。
病院に通う従業員が増えると、国民医療費が増加します。その結果、加入先の健康保険組合などが財政危機となれば、企業が支払う保険料も増加し経営を圧迫しかねません。従業員の健康を守るためにも、早期の診断と対策に取り組みましょう。
健康経営の導入には業務効率化が有効ですが「進め方が分からない」とお悩みの企業は多いのではないでしょうか。効率化する手法は様々ですが、自社の予算や状況に合わせて選ぶことが大事です。
NTT東日本が提供する「業務効率化の手法まとめebook」は、予算別で自社に合う業務効率化の手法が分かります。例えば、以下のお悩みに関係する、ITツールのご提案が可能です。
従業員の勤務状況やデータの収集などをデジタル化できるので、健康経営を効率よく進めることができます。自社に合うツールをお探しの企業担当者は、ぜひチェックしてみてください。
「【自社にあった業務効率化の手法がわかる】業務効率化の手法まとめebook」の資料ダウンロードはこちら
健康経営とは「従業員の健康を大切にして業績向上を目指す」という考え方です。認定制度で取り組みが認められれば、社会的な評価を受けることができます。他にも健康経営を導入するメリットは、以下のとおりです。
健康管理を進めていくには、従業員の協力が必要です。無理な課題を押し付けても従業員の負担が増えて逆効果なので、理解を得ながら取り組みましょう。
NTT東日本 ビジネス開発本部 北森雅雄
NTT東日本に入社後、自治体向けのシステムエンジニアとして、庁内ネットワークや公共機関向けアプリケーションなどのコンサルティングからキャリアを開始。
2018年から現職にて、プロダクト(SaaS)開発、デジタルマーケティング全般のディレクションに従事。
2022年に業務のデジタル化を分かりやすく発信するオウンドメディア(ワークデジタルラボ)のプロジェクトを立ち上げ。
NTT東日本にかかわる、地域のみなさまに向けてデジタル化に役立つ情報発信を展開。