近年の電子化の推進により、給与明細のデータ化を検討する企業が増えています。ただ、給与明細の電子化にはさまざまな手順や要件があり、導入に関してお悩みの方は多いのではないでしょうか。
今回の記事では、給与明細の電子化のメリットや注意点、導入に必要な手順について解説します。電子化の手順などの詳細が分かる内容になっているので、ぜひ参考にしてみてください。
目次:
平成18年度の税制改正により、給与明細の電子化が認められました。ただ、どのような形で電子化すれば良いかよく分からない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ここでは、給与明細の電子化の概要について解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
給与明細の電子化とは、紙で発行していた給与明細を電子データで交付することです。電子化された給与明細は、専用のシステムなどで簡単に交付できます。
近年、テレワークなどの柔軟な働き方が求められますが、紙の給与明細は手渡しや郵送が必要です。給与明細を手渡す方法は効率が悪く、テレワークの推進の妨げになっていました。この問題を解決する方法が、給与明細の電子化です。
電子化された給与明細は、国税庁により交付方法が定められていて、以下の3つの方法で交付できます。
この中では、電子メールやインターネット経由での閲覧が多く使われています。
電子化された給与明細が法的に問題ないか不安に思う方がいるかもしれませんが、平成18年度の税制改正によって、給与明細の電子化が認められました。
ただし、給与明細の電子化には条件があり、従業員の同意を得ることが義務づけられています。もし従業員が同意を拒否した場合は、紙で給与明細を交付することになります。
給与明細の電子化には、企業側と従業員側のメリットがあります。ここでは、企業側から見たメリットを2つ紹介します。給与明細の電子化を社内で理解してもらうため知っておく必要があるため、ぜひ参考にしてみてください。
従来の給与明細は、交付するために紙や印刷代、郵送代などのコストがかかります。給与明細を電子化すれば、このコストが削減可能です。従業員の数が多い大企業であれば、コスト削減効果は膨大になります。
また、紙の給与明細の発行には、印刷や封入・投函作業などの業務にかかる人件費も必要です。電子化することで、これらのコストを大幅に減らすことができます。
給与明細を電子化することで、発行に伴う印刷や配付などの業務を削減できます。また、配付先を間違えるといったミスの発生も防げます。電子化された給与明細は、メールやインターネット経由で交付できるため、場所を問わず発行業務が可能です。
また、発行した給与明細は電子データで保存するため検索がしやすく、年末調整などで給与情報を参照する場合に、素早く情報を見つけられます。
ここでは、給与明細の電子化の従業員側のメリットを2つ紹介します。従業員の理解を得るために必要な情報ですので、ぜひ参考にしてみてください。
従来の紙の給与明細は、紛失したり捨てたりした場合、過去の情報が閲覧できません。また、保管していた場合でも、確認するために過去の明細を探す必要があるなど、不便な点があります。また、給与明細は個人情報であるため、流出しないよう適切に扱う必要があります。
給与明細が電子化されれば、過去の給与情報もすぐに閲覧可能で、紛失する心配もありません。管理も容易なため、従業員側の負担は軽減されます。
紙の給与明細の場合、確認するためには給与明細の実物を手元に用意する必要があります。給与明細が電子化されれば、出張など外出先でも確認できます。
企業側のシステムがスマートフォンやタブレット端末での閲覧に対応していれば、業務用のパソコンがなくても給与明細が確認できます。
給与明細の電子化にはメリットだけでなく、懸念すべき点があります。ここでは、この懸念点を4つ紹介します。給与明細の電子化の導入でトラブルを発生させないために、ぜひ参考にしてみてください。
電子化された給与明細は、インターネット経由で交付されることが多いため、情報漏えいのリスクがあります。メールで交付する場合は送信ミスの可能性があり、インターネット経由で閲覧する場合は、セキュリティ対策を行う必要があります。
また、電子化された給与明細を社外からアクセスする場合の取り扱いをルール化するなど、情報漏えいを防ぐための方法についての検討も必要です。
給与明細を電子化するためには、対応できるシステムの導入が必要です。このシステムの導入には、初期費用と利用料がかかります。外部のシステムを導入する場合、料金体系が利用者数に応じた課金型である場合が多く、従業員数が多くなると増加します。
そのため、給与明細を電子化することで削減できるコストから、費用対効果を検討する必要があります。事前に初期コスト・利用料・サポート費用を調査し、必要なコストを計算してからシステムを選定しましょう。
電子化された給与明細を確認するには、パソコンやスマートフォンなどの端末が必要です。もしパソコンやスマートフォンがない従業員がいる場合は、従来通り紙に印刷して交付する必要があります。
電子化の導入時には、閲覧できない従業員がいる場合の対応にかかるコストについて検討が必要です。
給与明細の電子化は、税制改正により法律で認められています。ただし条件として、従業員の同意を得ることが義務化されています。もし同意が得られない場合、従来どおり紙で交付する必要があります。
そのため、電子化について従業員から理解を得ることも大切です。給与明細の電子化は企業側のメリットが多いのですが、従業員側にとって不都合かもしれません。導入前には、従業員側にも「管理が容易になる」などのメリットがあることを説明し、理解を得るようにしましょう。
給与明細を電子化するためには、必要な手順があります。ここでは、その手順について紹介します。知っておくことで電子化をスムーズに導入できるため、ぜひ参考にしてみてください。
電子化された給与明細を交付するためには、事前に従業員の同意を得ることが、法律で定められています。すべての従業員から同意を得るため、電子化同意書を締結する必要があります。
この同意書は、紙の書類でも可能ですが、電子化で導入するシステムが決定している場合は、そのシステム上で同意を取ることがおすすめです。
従業員から同意が得られれば、電子化に対応できるシステムを導入します。システムには種類があり、給与明細の発行機能のみのものと、給与計算システムに発行機能が組み込まれたものがあります。
それぞれ初期費用や運用コストが異なるため、予算や自社に必要な機能などからシステムを選定する必要があります。
電子化された給与明細は、インターネット経由で交付されます。そのため、不正アクセスやウイルス対策などのセキュリティ対策が必要です。給与明細は個人情報なので、給与情報の漏えいや、金額などのデータの改ざんを防ぐ必要があります。
また、交付した給与明細はデータとして保存する必要があるため、バックアップ対策も必要です。システムが社外からの閲覧に対応している場合、従業員のセキュリティ意識の向上や情報の取り扱いの注意事項について周知する必要があります。
電子化に対応したシステムの導入が完了すれば、電子化された給与明細を交付します。給与明細は、メールやインターネット経由での閲覧など、複数の方法で交付可能です。
どの方法で交付するかについては、自社の状況や従業員の雇用形態に適したものを選びましょう。システムを導入することで、紙の給与明細と比較して交付に必要な業務が大幅に削減できます。
給与明細の電子化では、注意すべきポイントがあります。ここでは、この注意点を2つ紹介します。電子化の導入において重要な情報ですので、ぜひ参考にしてみてください。
給与明細の電子化は、法律により従業員の同意が義務化されています。そのため、従業員の同意がなければ給与明細の電子化ができません。もし同意しない従業員がいる場合は、紙で給与明細を交付することになります。
紙の給与明細が必要な従業員がいると、電子化後の新たな業務フローと従来の業務フローの両方が必要になり、管理が複雑になってしまいます。
すべての給与明細を電子化するために、従業員に電子化のメリットを説明し、同意を得ることが重要です。
給与明細には、従業員の個人情報や給与情報など重要な情報が記載されています。そのため、この個人情報の取り扱いに注意が必要で、社内のセキュリティ対策が重要です。
給与明細をメールで交付する場合は、ハッキングや誤送信に注意する必要があります。インターネット経由で閲覧する場合は、データの流出や閲覧のためのパスワードの漏えいにも注意しなければなりません。システム管理者だけでなく、従業員のセキュリティ意識の向上が必要です。
給与明細の電子化には多くのメリットがありますが、対応できるシステムの導入が必要です。もしシステムの導入にお悩みなら「freee人事労務 for おまかせ はたラクサポート」がおすすめです。
「freee人事労務 for おまかせ はたラクサポート」では、電子化された給与明細の交付だけでなく、給与計算や年末調整などにも対応しているため、システムを導入することで給与関連の処理を一括して行えます。
また、従業員の個人情報の管理や勤怠の管理、人事情報も管理できるなど、従業員の個人情報を総合的に管理できます。
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給与明細の電子化は税制改正により法律で認められています。電子化された給与明細の交付は、メールやインターネット経由での閲覧により行われます。
給与明細を電子化することで、紙や印刷代などのコストが削減でき、従来の給与明細の交付に必要な業務も削減可能です。ただし、対応するシステムの導入が必要で、初期費用や運用コストがかかります。また、インターネット経由で交付するため、情報漏えいなどのセキュリティ上のリスクがあります。
給与明細を電子化することで、業務の効率化やコスト削減など長期的に見るとメリットが多いため、システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
NTT東日本 ビジネス開発本部 北森雅雄
NTT東日本に入社後、自治体向けのシステムエンジニアとして、庁内ネットワークや公共機関向けアプリケーションなどのコンサルティングからキャリアを開始。
2018年から現職にて、プロダクト(SaaS)開発、デジタルマーケティング全般のディレクションに従事。
2022年に業務のデジタル化を分かりやすく発信するオウンドメディア(ワークデジタルラボ)のプロジェクトを立ち上げ。
NTT東日本にかかわる、地域のみなさまに向けてデジタル化に役立つ情報発信を展開。