| Writer:NTT東日本 北森 雅雄(Masao Kitamori)

業務改善助成金の手続き5ステップ!3つの支給要件や生産性向上に役立つツールも紹介

業務改善助成金の手続き5ステップ!3つの支給要件や生産性向上に役立つツールも紹介

近年、新型コロナウイルス感染症の蔓延や円高による原材料物価高により、国内産業の疲弊が深刻になっています。そこで政府は、国内産業を活性化させるために、補助金や助成金制度を整備しています。自社でも、事業継続や改善のために支援制度を利用しようと考えている方は、多いのではないでしょうか。

しかし、政府の支援制度は、対象者や適用条件が細かく設定されています。そのため、自社の状況にあった支援制度を探さなければいけません。そこで、今回の記事では業務改善助成金について、助成率や支給条件を解説します。業務改善助成金の申し込み方法が理解できる内容になっているので、ぜひ最後までお読みください。

1.業務改善助成金とは?2つのコースも解説

業務改善助成金の手続き5ステップ!3つの支給要件や生産性向上に役立つツールも紹介

業務改善助成金は、国内産業の活性化を目的とした施策です。では、業務改善助成金はどのような会社が対象となるのでしょうか。本章では、助成金制度の概要と支給コースを詳しく解説します。

業務改善助成金とは

業務改善助成金は、国内企業の生産効率向上と賃上げを条件に費用の一部が支援される制度です。最低賃金引上げにより大きな影響を受ける会社(最低賃金700円以下の都道府県にある会社)を援助する目的で、2011年に設けられました。

なお、本助成金の令和4年度申し込み締切は、2023年1月31日までです。また、本助成金は予算が決められているため、申し込み期間内に募集が締め切られる可能性があります。

業務改善助成金の2つのコース

業務改善助成金は、通常コースと特例コースの2種類の支給方法が用意されています。

通常コース

通常コースは、生産効率向上に役立つ設備投資最低賃金の引上げを条件に、費用の一部を助成する支給方法です。なお、特例事業者は、対象となる経費が拡大される優遇措置が用意されています。

特例コース

特例コースは、新型コロナの影響で売上高が減少した事業者か、原材料費の高騰で利益が低下した会社が対象の支給方法です。加えて、過去一定期間に最低賃金を30円以上引き上げた会社が対象とされます。なお、特例コースは生産効率の向上に役立つ設備投資に加えて、業務改善に関係する出費の一部が助成されます。

2.【コース別】業務改善助成金の助成率

業務改善助成金の手続き5ステップ!3つの支給要件や生産性向上に役立つツールも紹介

業務改善助成金は、コース・賃上げ額・労働者数によって、助成率と上限金額が異なります。本章では、助成率や金額上限について、コースごとに詳しく説明します。

通常コース

通常コースの助成率は、以下のとおりです。

費用ごとの助成率

  • ・~869円:90%
  • ・870~919円:80%(90%)
  • ・920円~:75%(80%)

※()は生産性要件を満たした場合

また、助成上限は以下のとおりです。

最低賃金(同事業所内)引き上げ額 賃上げ対象の人数 助成上限額(従業員30人未満の事業所:それ以外)※
30円~ 1 60:30
2~3 90:50
4~6 100:70
7~ 120:100
10~ 130:120
45円~ 1 80:45
2~3 110:70
4~6 140:100
7~ 160:150
10~ 180
60円~ 1 110:60
2~3 160:90
4~6 190:150
7~ 230
10~ 300
90円~ 1 170:90
2~3 240:150
4~6 290:270
7~ 450
10~ 600

※:単位:~万円

上記のとおり、費用額が大きくなると助成率は低くなります。また、賃上げ額と対象人数が多いほど、上限金額は大きくなります。

特例コース

特例コースの助成額は、以下の式で求められます。

助成額(千円未満の端数切り捨て)=生産効率向上のための設備投資にかかった費用×0.75(0.8)

※()は最低賃金920円未満の場合

また、助成上限額は以下のとおりです。

賃上げ対象の人数 助成上限額(単位:~万円)
1 30
2~3 50
4~6 70
7~ 100

なお、特例コースの助成対象は、生産効率の向上に役立つ設備投資の費用だけではありません。業務改善計画に計上された関連する経費(広告宣伝費用・事務用品や椅子の購入など)が、助成されます。

3.生産性要件を満たせば助成率が割増される

業務改善助成金の手続き5ステップ!3つの支給要件や生産性向上に役立つツールも紹介

生産効率を向上させた事業者が助成金を申し込む場合、助成率が割増されます。生産効率向上の優遇措置が設けられたことで、以下のような施策が進めやすくなりました。

  • ・従業員の能力開発
  • ・意欲の向上
  • ・働き方改革
  • ・業務の効率性や成果を高める設備の導入

なお、生産効率を向上させたと認められる条件は以下のとおりです。

  • ・助成金申し込み時の直近会計年度の生産効率が、3年度前に比べて1〜6%(あるいは6%〜)伸びている
  • ・生産効率の算定対象期間中に、事業主の都合による離職者が発生していない
  • ・金融機関から一定の事業性評価を受けている

また、生産効率の計算式は以下のとおりです。

(動産・不動産賃借料+営業利益+減価償却費+租税公課+人件費)/(雇用保険被保険者数)

生産性要件は、条件が細かく設定されている一方で、助成率が優遇されます。助成率をより高くしたい方は、ぜひ生産効率の向上に取り組んでみてはいかがでしょうか。

4.業務改善助成金の3つの支給要件

業務改善助成金の手続き5ステップ!3つの支給要件や生産性向上に役立つツールも紹介

業務改善助成金には、3つの支給条件が設定されています。支給条件をすべて満たさなければ、助成金は交付されません。本章では、支給条件について詳しく解説します。

賃金引上げ計画の策定と実行

業務改善助成金の給付を受けるためには、賃上げ計画を策定し実行しなければいけません。また、賃上げ計画の策定と実行の条件は、コースによって異なります。

コース 条件
通常 賃上げ計画を策定
最低賃金を引き上げる
就業規則などに賃上げについて明記
特例 就業規則などに、賃上げ額を最低賃金とする旨を明記
  • ・賃上げ計画を策定
  • ・最低賃金を引き上げる
  • ・就業規則などに賃上げについて明記
業務改善助成金は、事業の生産性向上と賃金引上げを支援する制度です。本記事では、業務改善助成金の支給要件や特例コースについて解説します。厚生労働省への申請方法をわかりやすく解説しているので、これから手続きする方はぜひ参考にしてみてください。
  • ・就業規則などに、賃上げ額を最低賃金とする旨を明記

なお、就業規則などが用意されていない事業所が特例コースを選んだ場合は、賃金額についての申出書を提出する必要があります。

生産性向上に役立つ業務改善を実施する

業務改善助成金の給付を受けるためには、生産効率の向上に役立つ業務改善の実施が求められます。そのため、生産効率の向上に役立つ以下のような取り組みを行い、その費用を支払わなければいけません。

  • ・機器・設備の導入
  • ・コンサルティングの利用
  • ・人材育成・教育訓練の実施

ただし、以下のように経費として認められない項目があります。

  • ・単なるコスト削減を目的とした出費
  • ・職場環境を改善するための出費
  • ・通常業務に関する出費

上記のような経費は、生産効率向上に役立つ取り組みの費用として認められないため注意が必要です。

不交付事由がない

不交付事由がある場合、申し込みが却下されたりあとから取り消されたりする可能性があります。主な不交付事由例は、以下のとおりです。

  • ・賃金引き上げ日の前後9ヵ月間に事業者の都合によって、従業員を解雇した・退職者がでた・給料引き下げた
  • ・過去に本助成金を利用した事業者が、過去に決めた最低賃金より低い金額を今回の賃上げ計画で定めた
  • ・同じ年度内に同一の取り組み内容で、国・地方公共団体から他の補助金を交付されている
  • ・不正受給行為により助成金の不支給措置がとられている
  • ・過去に労働関係法令の違反により送検された
  • ・暴力団と関係がある
  • ・労働保険に加入していない
  • ・直近2年間の労働保険料・消費税・地方消費税・法人税(個人は所得税)を滞納している

上記のような不交付事由がないことを確認してから、申し込みましょう。

5.業務改善助成金の手続き5ステップ

業務改善助成金の手続き5ステップ!3つの支給要件や生産性向上に役立つツールも紹介

実際には、どのような手順で業務改善助成金を利用すれば良いのでしょうか。業務改善助成金の手続きは、5ステップで完了します。本章で、業務改善助成金の手続きを詳しく解説します。

交付申請書を提出

まずは、業務改善計画と賃上げ計画を記載した交付申請書を作成し、労働局に提出しましょう。交付申し込みの際は、以下の添付書類を提出する必要があります。

  • ・登記簿謄本(法人の場合)
  • ・直近2年間の消費税・地方消費税・法人税(個人の場合は所得税)の納税証明書
  • ・直近2年間の労働保険料申告書と納付書の写し
  • ・売上高や利益率が減少した・過去一定期間に賃上げを実施したことを証明する書類(特例コースの場合)

なお、添付書類と申請書の提出先は、労働局の雇用環境・均等部です。

業務改善や賃金引上げを実施

業務改善助成金の申し込み後は、業務改善や賃上げを実施しましょう。書類提出後、労働局の賃金課室が申請の審査を行います。審査によって申請内容が適正と判断されると、助成金の交付決定通知が届きます。交付決定通知が届いたあとは、業務改善計画と賃上げ計画のとおりに、設備投資と賃上げを行いましょう。

事業実績報告書を提出

業務改善や賃上げの実施後は、事業実績報告書を作成し労働局に提出しましょう。報告書には、業務改善計画の成果と賃上げ状況を記載します。なお、事業実績報告の際は、報告書に加えて以下の添付書類を提出する必要があります。

  • ・引上げ前6ヵ月と3ヵ月後分の全労働者の賃金台帳
  • ・就業規則や意見書の写し
  • ・業務改善の費用を証明する書類(領収書など)
  • ・業務改善の取り組みを確認できる写真
  • ・入社や離職の状況を確認できる書類

報告書の提出先は、申し込み時と同様に労働局の雇用環境・均等部です。

助成金支給申請書を提出

事業実績報告書の提出後は、助成金支給申請を行いましょう。報告書の審査は、労働局の賃金課室が行います。審査で報告書の内容が適正と判断されると、助成金額が確定し事業主に通知されます。通知を受けたあとは、支払請求書を提出しましょう。なお、支払請求書の書式は、通常・特例の両コースともに様式第13号を使用します。

賃金状況報告書を提出

助成金の交付を受けた事業主は、翌年度の4月30日までに、労働局長へ受給後の解雇や賃金を賃金状況報告書にまとめて提出しましょう。報告を怠った場合や状況を偽った場合は、交付決定が取り消されたり支給した助成金が回収されたりする可能性があります。なお、賃金状況報告書には、助成金額の確定通知に記載されている文書番号を記入する必要があります。助成金額の確定通知は、紛失しないように注意しましょう。

6.生産性を向上させるならNTTの「おまかせRPA」がおすすめ

業務改善助成金の手続き5ステップ!3つの支給要件や生産性向上に役立つツールも紹介

業務改善助成金の支給条件を満たすために生産効率を向上させたい方は、NTTの「おまかせRPA」の導入がおすすめです。「おまかせRPA」なら、パソコン(Windows端末)上のさまざまな業務を自動化できます。

また、業務をRPAに代行させることにより、作業時間短縮・人的コストの削減・業務品質向上が期待できます。加えて、コア業務(事業利益に直結する非定型業務)へのリソース(人材や予算)集中が可能です。

「おまかせRPA」の導入により生産効率が向上させれば、業務改善助成金の支給条件を満たせます。なお「おまかせRPA」は、インターネット環境のみで利用可能です。また、パソコン1台から導入できるため、予算に応じて導入規模を調整できます。

「おまかせRPA」の詳細はこちら

7.まとめ

業務改善助成金の手続き5ステップ!3つの支給要件や生産性向上に役立つツールも紹介

業務改善助成金は、国内企業の生産効率向上と最低賃金の引上げを支援するための施策です。業務改善助成金には、コースが通常・特例の2種類用意されており、それぞれ対象者や助成率が異なります。また、支給条件が細かく決められているので、申し込み前に確認が必要です。

なお、生産効率向上に役立つ業務改善策に悩んでいる方には、NTTの「おまかせRPA」の導入をおすすめします。「おまかせRPA」はロボットによる業務自動化ツールであり、導入によって作業時間や人的コストの削減・業務品質向上が期待できます。

「おまかせRPA」の詳細はこちら

この記事を書いた人

NTT東日本 ビジネス開発本部 北森雅雄

NTT東日本に入社後、自治体向けのシステムエンジニアとして、庁内ネットワークや公共機関向けアプリケーションなどのコンサルティングからキャリアを開始。

2018年から現職にて、プロダクト(SaaS)開発、デジタルマーケティング全般のディレクションに従事。

2022年に業務のデジタル化を分かりやすく発信するオウンドメディア(ワークデジタルラボ)のプロジェクトを立ち上げ。
NTT東日本にかかわる、地域のみなさまに向けてデジタル化に役立つ情報発信を展開。

北森雅雄 masao kitamori

ページ上部へ戻る