近年、新型コロナウイルス感染症の蔓延や円高による原材料物価高により、国内産業の疲弊が深刻になっています。そこで政府は、国内産業を活性化させるために、補助金や助成金制度を整備しています。自社でも、事業継続や改善のために支援制度を利用しようと考えている方は、多いのではないでしょうか。
しかし、政府の支援制度は、対象者や適用条件が細かく設定されています。そのため、自社の状況にあった支援制度を探さなければいけません。そこで、今回の記事では業務改善助成金について、助成率や支給条件を解説します。業務改善助成金の申し込み方法が理解できる内容になっているので、ぜひ最後までお読みください。
目次:
業務改善助成金は、国内産業の活性化を目的とした施策です。では、業務改善助成金はどのような会社が対象となるのでしょうか。本章では、助成金制度の概要と支給コースを詳しく解説します。
業務改善助成金は、国内企業の生産効率向上と賃上げを条件に費用の一部が支援される制度です。最低賃金引上げにより大きな影響を受ける会社(最低賃金700円以下の都道府県にある会社)を援助する目的で、2011年に設けられました。
なお、本助成金の令和4年度申し込み締切は、2023年1月31日までです。また、本助成金は予算が決められているため、申し込み期間内に募集が締め切られる可能性があります。
業務改善助成金は、通常コースと特例コースの2種類の支給方法が用意されています。
通常コースは、生産効率向上に役立つ設備投資と最低賃金の引上げを条件に、費用の一部を助成する支給方法です。なお、特例事業者は、対象となる経費が拡大される優遇措置が用意されています。
特例コースは、新型コロナの影響で売上高が減少した事業者か、原材料費の高騰で利益が低下した会社が対象の支給方法です。加えて、過去一定期間に最低賃金を30円以上引き上げた会社が対象とされます。なお、特例コースは生産効率の向上に役立つ設備投資に加えて、業務改善に関係する出費の一部が助成されます。
業務改善助成金は、コース・賃上げ額・労働者数によって、助成率と上限金額が異なります。本章では、助成率や金額上限について、コースごとに詳しく説明します。
通常コースの助成率は、以下のとおりです。
費用ごとの助成率
※()は生産性要件を満たした場合
また、助成上限は以下のとおりです。
最低賃金(同事業所内)引き上げ額 | 賃上げ対象の人数 | 助成上限額(従業員30人未満の事業所:それ以外)※ |
30円~ | 1 | 60:30 |
2~3 | 90:50 | |
4~6 | 100:70 | |
7~ | 120:100 | |
10~ | 130:120 | |
45円~ | 1 | 80:45 |
2~3 | 110:70 | |
4~6 | 140:100 | |
7~ | 160:150 | |
10~ | 180 | |
60円~ | 1 | 110:60 |
2~3 | 160:90 | |
4~6 | 190:150 | |
7~ | 230 | |
10~ | 300 | |
90円~ | 1 | 170:90 |
2~3 | 240:150 | |
4~6 | 290:270 | |
7~ | 450 | |
10~ | 600 |
※:単位:~万円
上記のとおり、費用額が大きくなると助成率は低くなります。また、賃上げ額と対象人数が多いほど、上限金額は大きくなります。
特例コースの助成額は、以下の式で求められます。
助成額(千円未満の端数切り捨て)=生産効率向上のための設備投資にかかった費用×0.75(0.8)
※()は最低賃金920円未満の場合
また、助成上限額は以下のとおりです。
賃上げ対象の人数 | 助成上限額(単位:~万円) |
1 | 30 |
2~3 | 50 |
4~6 | 70 |
7~ | 100 |
なお、特例コースの助成対象は、生産効率の向上に役立つ設備投資の費用だけではありません。業務改善計画に計上された関連する経費(広告宣伝費用・事務用品や椅子の購入など)が、助成されます。
生産効率を向上させた事業者が助成金を申し込む場合、助成率が割増されます。生産効率向上の優遇措置が設けられたことで、以下のような施策が進めやすくなりました。
なお、生産効率を向上させたと認められる条件は以下のとおりです。
また、生産効率の計算式は以下のとおりです。
(動産・不動産賃借料+営業利益+減価償却費+租税公課+人件費)/(雇用保険被保険者数)
生産性要件は、条件が細かく設定されている一方で、助成率が優遇されます。助成率をより高くしたい方は、ぜひ生産効率の向上に取り組んでみてはいかがでしょうか。
業務改善助成金には、3つの支給条件が設定されています。支給条件をすべて満たさなければ、助成金は交付されません。本章では、支給条件について詳しく解説します。
業務改善助成金の給付を受けるためには、賃上げ計画を策定し実行しなければいけません。また、賃上げ計画の策定と実行の条件は、コースによって異なります。
コース | 条件 |
通常 | 賃上げ計画を策定 最低賃金を引き上げる 就業規則などに賃上げについて明記 |
特例 | 就業規則などに、賃上げ額を最低賃金とする旨を明記 |
業務改善助成金は、事業の生産性向上と賃金引上げを支援する制度です。本記事では、業務改善助成金の支給要件や特例コースについて解説します。厚生労働省への申請方法をわかりやすく解説しているので、これから手続きする方はぜひ参考にしてみてください。 |
なお、就業規則などが用意されていない事業所が特例コースを選んだ場合は、賃金額についての申出書を提出する必要があります。
業務改善助成金の給付を受けるためには、生産効率の向上に役立つ業務改善の実施が求められます。そのため、生産効率の向上に役立つ以下のような取り組みを行い、その費用を支払わなければいけません。
ただし、以下のように経費として認められない項目があります。
上記のような経費は、生産効率向上に役立つ取り組みの費用として認められないため注意が必要です。
不交付事由がある場合、申し込みが却下されたりあとから取り消されたりする可能性があります。主な不交付事由例は、以下のとおりです。
上記のような不交付事由がないことを確認してから、申し込みましょう。
実際には、どのような手順で業務改善助成金を利用すれば良いのでしょうか。業務改善助成金の手続きは、5ステップで完了します。本章で、業務改善助成金の手続きを詳しく解説します。
まずは、業務改善計画と賃上げ計画を記載した交付申請書を作成し、労働局に提出しましょう。交付申し込みの際は、以下の添付書類を提出する必要があります。
なお、添付書類と申請書の提出先は、労働局の雇用環境・均等部です。
業務改善助成金の申し込み後は、業務改善や賃上げを実施しましょう。書類提出後、労働局の賃金課室が申請の審査を行います。審査によって申請内容が適正と判断されると、助成金の交付決定通知が届きます。交付決定通知が届いたあとは、業務改善計画と賃上げ計画のとおりに、設備投資と賃上げを行いましょう。
業務改善や賃上げの実施後は、事業実績報告書を作成し労働局に提出しましょう。報告書には、業務改善計画の成果と賃上げ状況を記載します。なお、事業実績報告の際は、報告書に加えて以下の添付書類を提出する必要があります。
報告書の提出先は、申し込み時と同様に労働局の雇用環境・均等部です。
事業実績報告書の提出後は、助成金支給申請を行いましょう。報告書の審査は、労働局の賃金課室が行います。審査で報告書の内容が適正と判断されると、助成金額が確定し事業主に通知されます。通知を受けたあとは、支払請求書を提出しましょう。なお、支払請求書の書式は、通常・特例の両コースともに様式第13号を使用します。
助成金の交付を受けた事業主は、翌年度の4月30日までに、労働局長へ受給後の解雇や賃金を賃金状況報告書にまとめて提出しましょう。報告を怠った場合や状況を偽った場合は、交付決定が取り消されたり支給した助成金が回収されたりする可能性があります。なお、賃金状況報告書には、助成金額の確定通知に記載されている文書番号を記入する必要があります。助成金額の確定通知は、紛失しないように注意しましょう。
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また、業務をRPAに代行させることにより、作業時間短縮・人的コストの削減・業務品質向上が期待できます。加えて、コア業務(事業利益に直結する非定型業務)へのリソース(人材や予算)集中が可能です。
「おまかせRPA」の導入により生産効率が向上させれば、業務改善助成金の支給条件を満たせます。なお「おまかせRPA」は、インターネット環境のみで利用可能です。また、パソコン1台から導入できるため、予算に応じて導入規模を調整できます。
業務改善助成金は、国内企業の生産効率向上と最低賃金の引上げを支援するための施策です。業務改善助成金には、コースが通常・特例の2種類用意されており、それぞれ対象者や助成率が異なります。また、支給条件が細かく決められているので、申し込み前に確認が必要です。
なお、生産効率向上に役立つ業務改善策に悩んでいる方には、NTTの「おまかせRPA」の導入をおすすめします。「おまかせRPA」はロボットによる業務自動化ツールであり、導入によって作業時間や人的コストの削減・業務品質向上が期待できます。
NTT東日本 ビジネス開発本部 北森雅雄
NTT東日本に入社後、自治体向けのシステムエンジニアとして、庁内ネットワークや公共機関向けアプリケーションなどのコンサルティングからキャリアを開始。
2018年から現職にて、プロダクト(SaaS)開発、デジタルマーケティング全般のディレクションに従事。
2022年に業務のデジタル化を分かりやすく発信するオウンドメディア(ワークデジタルラボ)のプロジェクトを立ち上げ。
NTT東日本にかかわる、地域のみなさまに向けてデジタル化に役立つ情報発信を展開。