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ガバメントクラウド対象サービス「Azure」の強みと移行手順

ガバメントクラウドサービスは、2025年度末までに移行完了が推奨されている政府共通のクラウドサービスの利用環境です。政府が認定するクラウドベンダーは現在4つあり、AWS、Azure、Google Cloud、Oracle Cloud Infrastructureが採択されています。

本記事では、クラウドベンダーのうちの一つであるAzureについて、強みとガバメントクラウドへの移行手順を解説します。

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1.ガバメントクラウド対象サービスとして「Azure」が採択される

ガバメントクラウドとは、中央省庁や独立行政法人など、国のすべての行政機関や地方公共団体が共同となり、行政システムをクラウドサービスで利用できるようにしたIT基盤です。ガバメントクラウドにより行政機関や地方公共団体のシステムやデータが連携されれば、行政手続きのオンライン化やサービスのワンストップ化などが実現できるため利便性が高まるほか、システムやサーバーを導入する必要がなくなるため、運用コストの削減も期待されています。

ガバメントクラウドを運用していくにあたり、デジタル庁は政府が定めるセキュリティ評価制度(ISMAP)を満たした以下の4つのクラウドベンダーを、ガバメントクラウド認定事業者として契約しています。

  • AWS(Amazon Web Services)
  • Google Cloud
  • Microsoft Azure
  • Oracle Cloud Infrastructure

本記事では4つのベンダーの中から、Azureについての強みや移行手順を解説します。Azureは一度落選したものの、2022年10月のデジタル庁の発表にて、ガバメントクラウド認定事業者として採択されました。

なお自治体は、2025年度末までに住民基本台帳や選挙人名簿管理などの基幹業務である、20業務を移行しなければなりません。ガバメントクラウドに移行する際に、どのクラウドサービスを選択するかは非常に重要であるため、ガバメントクラウド認定事業者それぞれの特徴や強みを知っておくとよいでしょう。

ガバメントクラウド認定事業者について知る前に、ガバメントクラウドの概要や自治体の活用メリットなどを知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

関連記事:ガバメントクラウドとは?概要や開始時期、自治体の活用メリットなど

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2.Azureは何がすごいの?Azureの強み

ガバメントクラウド認定事業者であるAzureは、どのような面で優れているのでしょうか。Azureの強みとしては、以下のものが挙げられます。

  • Microsoft社の既存サービスとの親和性が高い
  • 高いセキュリティを誇る
  • 世界最大規模のグローバルネットワークを保有している

AzureはMicrosoft社によって提供されているため、同じMicrosoft社のサービスであるOfficeやMicrosoft 365との親和性が高く、容易に連携できる点はAzureの大きな強みです。既存サービスだけでなく、AzureはWindowsを基に構築されているため、Windowsを既に利用している企業にとって、非常に導入しやすいサービスといえるでしょう。

Azureの2つ目の強みは、高いセキュリティを誇っていることです。Azureは約3,500名のセキュリティ専門家を世界中に配置し、データセンターやインフラ設備を常に監視しています。

またAzureの3つ目の強みとして、世界最大規模のグローバルネットワークを保有している点も挙げられます。Microsoft社では2023年現在、世界60ヶ所以上に200以上のデータセンターを有しており、迅速なサービスの提供が可能です。

AzureはMicrosoft社のネットワークを通じて提供されるため、さまざまな障害に耐えられる可用性や、多くの要求に応えられる拡張性などのパフォーマンスが提供できます。しかしAzureにも独自の強みがあるように、AWSやGoogle Cloudにもそれぞれの特徴があるため、どのベンダーを取り入れたらよいか迷ってしまう場合も少なくないでしょう。

AWSとGoogle Cloudの強みは、以下のとおりです。

  • Azure:Windows及びMicrosoft製品との連携が容易
  • AWS:利用可能国が多く、サービスの豊富さと信頼性が厚い
  • Google Cloud:Googleの技術とインフラストラクチャを活用したAIやデータ分析が得意

ベンダーごとにそれぞれの得意分野は異なります。シェア率や認知度も選択要件としては参考になりますが、ベンダーの特徴を把握して決定することが大切です。

以下の記事では、さらに詳しくAzureを選択するべき企業の特徴や事例を紹介しています。

関連記事:Azureを選択すべき企業とは?特徴、メリット・デメリット、事例

また合計シェア率が50%を超えるAWSとAzureについての比較は、以下の記事でまとめています。おすすめのケースも多く記載していますので、ぜひ参考にしてください。

関連記事:クラウドシェアはAWS・Azureで半数超!どちらを選ぶべき?

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3.自治体システムをAzureを基盤とするガバメントクラウドへ移行する手順

現行のシステムをガバメントクラウドへ移行するためには工程が多く、クラウドの知識が薄い自治体の場合、難易度が高いと感じてしまうこともあるでしょう。ここからは、以下の8ステップに分け、自治体システムをAzureを基盤とするガバメントクラウドへ移行する手順を解説します。

1.現行システムの構成と機能を洗い出す

2.現行システムとAzureの標準仕様の差を分析する

3.移行計画を作成する

4.Azureおよびデジタル庁と契約を締結する

5.システム移行時の設定を行う

6.データを移行する

7.運用テストを行う

8.新システムの環境構築、及びネットワークを接続する

移行手順は、総務省の発表している「自治体情報システムの標準化・共通化に係る手順書 【第2.0版】」を参考にしています。本記事で大まかな手順を知り、具体的にイメージしたうえで移行作業を行ってください。

3-1.現行システムの構成と機能を洗い出し

Azureを基盤とするガバメントクラウドへ移行する際にまず行う作業は、現行システムの構成と機能の洗い出しです。現行システムについての構成や機能を洗い出し、概要を知れば、より正確な情報をベンダーに提供でき、各自治体にとって最適な提案を受けられます。

現行システムの構成や機能などの基礎調査は、現行ベンダーの協力の元、業務システムの基礎情報から周辺機器まで、広範な調査をする必要があります。手順書の調査票すべての項目について調査を行う必要はありませんが、より多く細かい情報を得られれば、移行作業がスムーズでしょう。

3-2.現行システムとAzureの標準仕様の差を分析

現行システムの構成や機能を洗い出した後は、現行システムとAzureの標準仕様の差の分析(Fit&Gap調査)を行いましょう。通常Fit&Gap分析の際は、ベンダーが開発するシステムを自治体の求める要件に合わせるケースが一般的ですが、ガバメントクラウドへ移行する際の分析は、Azure標準仕様に合わせていくことになるため、注意が必要です。

また、標準化対象業務において、パラメーターの変更等で対応できない自治体の独自事業や国事業への上乗せ助成事業、窓口業務支援等の標準仕様書に記載されていない機能の実装はできません。分析を行う前に、現行システムをよく確認し、実装できる機能とできない機能を抽出しておくことが大切です。

3-3.移行計画を作成

現行システムとAzureの標準仕様の差を分析した後は、移行時期や標準準拠システム提供ベンダーとの契約時期、予算計上時期等を検討し、移行計画を作成します。帳票印刷など、外部委託の契約を結んでいる場合は、委託事業者との調整が必要になる場合がある点は、留意しておきましょう。

政府は標準準拠システムへの移行完了目標時期を2025年度末としています。住民への影響を最小限に抑えようとする場合、移行期間は短期間に集中して行うことが必要で、限られた日程の中で効率良く作業を行うため、具体的かつ余裕を持った切り替え時期の設定や、移行計画の作成が大切です。

3-4.標準準拠システム提供ベンダーおよびデジタル庁と契約を締結

移行計画の作成が終わった後は、標準準拠システム提供ベンダーおよびデジタル庁との契約を締結します。標準準拠システムをガバメントクラウド上で利用する場合、自治体はデジタル庁に対し、ガバメントクラウドの各利用方式(単独利用方式、共同利用方式)に基づいた利用申請を行い、ガバメントクラウド運用管理補助者と、「ガバメントクラウド運用管理補助委託契約」を結ばなければなりません。

Azureとの契約と一緒に、ガバメントクラウド運用管理補助者との契約も進めておくことを忘れないようにしましょう。

3-5.システム移行時の設定

契約が終わった後は、システム移行時の設定を行います。標準準拠システムを基に運用シミュレーションを行い、運用方法を検討し、確定させておきましょう。

システム移行時の設定が終わったら、現行システムとの差の確認を行い、調達仕様に対する提案内容と同じか確認しておくことも大切な作業です。システムが移行すると現行システムと操作豊富や画面等の変更が起こる場合があるためよく確認し、標準準拠システムとあわせて更改を検討するシステムがあれば、要件定義を行いましょう。

3-6.データを移行

設定が終われば、既存のデータを整理した上で、データ移行を行います。データ移行方針や外字の文字情報基盤文字への基準については、自治体とベンダーで調整を行いましょう。

情報提供依頼書作成時に確認した文字情報基盤文字対応作業については、現行ベンダーに対応可否を確認し、自治体側での先行作業が可能です。データクレンジング作業については移行元や移行先ベンダー間での役割分担が必要ですが、可能な限り進めておくとスムーズでしょう。

移行に備えたバックアップを取り、行政サービスに支障が生じないような注意も必要です。最終的なデータ移行は複数回のリハーサルを実施し、作業スケジュールの遅延リスクがないか、十分に確認しておきましょう。

3-7.運用テストの実施

データ移行の実施が終われば、標準準拠システム提供ベンダーと業務主管部署が運用テストのデータを準備し、運用テスト及びデータ移行の最終確認を行います。システムが更改されると、データの移行内容やシステム間の連携において問題が発生する場合があるため、バックアップ体制の確保や調整についても、計画の段階で組み込んでおくとよいでしょう。

3-8.新システム環境構築・ネットワーク接続

運用テストが終われば新システムの環境を構築し、ネットワーク接続を行います。標準準拠システムと庁内ネットワーク接続の設計や構築、端末設備、また必要に応じて端末やプリンタ等周辺機器の調達も、忘れずに行いましょう。

ガバメントクラウド接続におけるネットワークの構築と運用に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。

関連記事:ガバメントクラウド接続におけるネットワークの構築と運用

またガバメントクラウド接続サービスとはなにか、要件や接続回線の課題については以下の記事で解説していますので、気になる方はぜひ参考にしてください。

関連記事:ガバメントクラウド接続サービスとは?主な要件・接続回線の課題

参考:総務省「自治体情報システムの標準化・共通化に係る手順書 【第2.0版】

4.Azureを基盤とするガバメントクラウドへの移行ならぜひNTT東日本にご相談ください

Azureを基盤とするガバメントクラウドへの移行を端的に解説しましたが、流れについてわかっても、実際に移行する際、クラウドについての知識に自信がなければ、移行に関して不安を消せない担当者も多いのではないでしょうか。NTT東日本では、導入から運用、保守までガバメントクラウド運用管理補助者の業務をワンストップでサポートする「ガバメントクラウドサービス」があります。

本記事で解説したAzureを基盤とするガバメントクラウドへの移行、構築はもちろん、運用やネットワーク接続まですべてお任せください。業界トップクラスのクラウド技術者が多数在籍し、多数の実績を持つNTT東日本にご依頼いただければ、ガバメントクラウド移行に関するお悩みが解決します。

NTT東日本のガバメントクラウドサービスについての詳しい内容は、以下のページに記載しています。ご相談・お見積りは無料で行えますので、ぜひお気軽にご連絡ください。

NTT東日本のガバメントクラウドサービス

まとめ

2025年度末までに移行しなければならない政府共通のクラウドサービス環境であるガバメントクラウドの認定ベンダーとして、AWS、Azure、Google Cloud、Oracle Cloud Infrastructureがあります。本記事で解説したAzureはMicrosoft社が提供するクラウドサービスであるためWindowsやOffice製品との連携が取りやすく、情報セキュリティ対策が優れている点が特徴です。

自治体の現行システムをガバメントクラウドへ移行する際、上記の4つのサービスから選ぶ必要がありますが、Azureを選択肢した場合、大きく分けて8つの工程があります。本記事では大まかな解説に留まりましたが、実際に移行していく際は、クラウドの知識について詳しくない担当者の場合、住民に影響がない形で移行ができるか不安になってしまうかもしれません。

NTT東日本のガバメントクラウドサービスであれば、今回紹介したAzureを基盤としたガバメントクラウドへの移行だけでなく、その後の運用や保守についてもワンストップでサポートできます。ご相談やお見積りは無料となっていますので、多くの知識を持つクラウド技術者に、ぜひお悩みをお聞かせください。

NTT東日本のガバメントクラウドサービス

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