業種別事業計画書作成
事業計画書の
“より良い”書き方
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1創業の動機
『創業の動機』で大事なのは、開業が思いつきではなく、計画性があり、かつ事業継続への強い意欲を示すことです。
過去の経験と絡めて説明することで説得力が増します。
POINT
NG
大手企業で8年間勤務していましたが、残業も多く体調を崩すこともあったため、自営業で健康的な生活を送りたいです。
OK
東京銀座の割ぽう料理店で8年間修行をし、板前としての腕を磨いてきました。今回地元で長年の夢だった自分のお店を持ちたいと考えています。
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2事業の経験など
自身の過去の経験や職歴を記載します。ここで注意すべきなのは、『創業の動機』で記載した内容と整合性を保つようにしてください。
また、会社員時代の実績なども記載しておくと、融資に向けたプラス要素になります。
POINT
NG
大手ファミリーレストランチェーンで3年、高級居酒屋で2年勤務しました。
OK
大手ファミリーレストランチェーンで3年、高級居酒屋で2年勤務しました。高級居酒屋では、魚料理のレシピ考案から仕入れまで幅広く担当し、現場からも高い評価を得ました。また、新たに仕入れをする際にはコストと味のバランスから最適な素材を選択しました。
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3取扱商品・サービス
ここで伝えるべきは、「お店の魅力」であり、「お客さまがお店を訪れる理由」です。競合店と何が差別化要因となるか明確になるように記載していきましょう。
POINT
NG
地元で採れた新鮮な食材を最も適した調理法で提供します。
またアットホームな内装で居心地の良い店内にします。
OK
地元産の新鮮な食材を優先的に入手するルートを開拓しています。また、高級路線で近隣店舗との差別化を図ります。
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4取引先・取引条件等
『取引先』とは、販売先・仕入先・外注先の3つを指しています。(飲食業で外注先はほぼ無いので、販売先・仕入先のみで十分です。)決まった近所のスーパーで食材を購入するなら、スーパーの店名も記載しましょう。
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5必要な資金と調達の方法
記入欄の左側には「資金を事業の何に使うのか」(資金の支出予定)、右側には「必要な資金をどうやって集めるか」(資金の調達方法)を記入します。この際、左右の合計金額が必ず一致するようにしてください。
開業するための資金は
どれくらい必要?
開業時の必要資金は、
以下のように考えます。
- 運転資金は、一般的に3ヶ月分以上用意するのが望ましいです。
- 今後の事業の成長のため投資分まで用意できると理想的です。
そもそも
自分はいくらまで
調達できるのか?
開業資金のうち、自己資金で足りない分は創業融資で調達することになります。
- 創業融資を借りるには、開業資金の概ね1/3以上の自己資金が必要です。
- つまり、創業融資で借り入れできるのは、自己資金の最大2倍程度まで。
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6事業の見通し(月平均)
「事業の見通し」欄は、通常の財務諸表でいうところの損益計算書に該当します。融資審査の際には、納得のいく根拠に基づいた算出となっているかにより、融資の成功が大きく左右されます。
売上予測の
計算方法を考える
飲食業の場合、おおよそ以下の数値が
一般的に用いられています
一般的に用いる数値
- 客単価
- オープン前は、近隣のライバル店を参考に客単価を見積もる方法がおすすめです
ライバル店で、お客さんがどの程度の金額を使っているか、観察してみましょう
- 回転率
- 一般的に、1日1~2回転を目安に売上予測を立てる場合が多いです
開業準備は必要なタイミングで
検討・行動することが重要です
先輩経営者の
開業体験談をみる
飲食業
飲食店「acero」(アチェロ)
石川 貴士様
A.
大変だったことはいくつかあります。税務関係がわからなかったので税理士の先生にお願いしようかどうかを悩みましたね。他にも、地場ではない土地での開…
先輩経営者の開業体験談
飲食業
飲食店「acero」(アチェロ)
石川 貴士様
今回インタビューするのは、東京都大田区鵜の木でイタリアンバルを経営している石川貴士さんです。石川さんは2022年7月29日にお店をオープンしました。コロナ禍での開業とあって色々と苦労されたことも多かったそうです。そんな石川さんに飲食業の開業についてお話を伺いました。
コロナ禍での開業でしたが、開業に至るキッカケや動機を教えてください。
まずは私自身が料理に興味を持った動機が、学生の時に学校のお弁当作り(自分と兄弟分)をすることが多くて、お弁当作りをしているうちに料理に興味を持つようになりました。そこから進路を定め、高校卒業後調理師専門学校に入学をしました。卒業後はホテルでの料理人として就職。こちらのホテルでは3年間お世話になりました。起業を考えたキッカケは、転職をした個人経営の飲食店での経験でした。オープンキッチンのお店で、お客さまの前で料理を行うライブ感に魅了されました。特にお客さまの反応がダイレクトに伝わるのを目の前にすると痺れるような感覚が忘れられず、いずれはオープンキッチンのお店を自分でやってみたいと思うようになりました。そこからは、スキルだけでなく、人との繋がりを大切にし、生産者さんなどと積極的にコミュニケーションを取るためにインプットすることを意識しました。
そうだったんですね。そこからご自身で開業にいたるまではどのようなスケジュールでしたか?
実際に動き出してからは約1年くらいの時間がかかりました。飲食店開業で一番大きなポイントは物件情報だと思います。まずは働きながら物件の情報だったり、資金繰りの方法について情報を集めるところから動き出しました。実際には物件は縁とタイミング次第であり、働きながらでは時間が取れないので開業半年前に勤務先を退職しました。そこから物件探しに重きをおくようになり、開業4ヶ月前に今の物件と出会いました。そこから、資金調達・内装工事業者との打ち合わせを行い、オープンの日程を決めました。私の場合は、居ぬき物件だったので比較的スムーズでしたが、スケルトンからだと内装工事も含め半年くらいの時間を見ておいた方が良いと思いますね。
開業する中で一番大変だったことを教えてください。
大変だったことはいくつかあります。税務関係がわからなかったので税理士の先生にお願いしようかどうかを悩みましたね。他にも、地場ではない土地での開業でしたので、以前のお客さまの来店もあまり見込めず新規のお客さまだけで勝負していくのに不安を感じていました。今に至るまでで一番大変だったことは、開業当初料理人目線で料理のメニューを作ったんですが、あまりにもメニュー数が多く提供時間がかかってしまいオペレーションが回らなくなってしまったことです。対応が後手後手になってしまいたくさんのクレームをいただきました。横の繋がりが強い地域柄なので挽回していくのがすごく大変でした。
それはとても大変でしたね。石川さんはどうやって乗り越えていったのですか?
個人店ですと自分含めリソースが限られてきます。一番の良さを引き出すためにメニュー数を絞り、人を増やすことを決めました。ここ最近では物価高騰の影響などもあり、試行錯誤の連続です。なるべく自家製のものを使うようにして料理にストーリー性を持たせたり、漁師さんと直接的に取引を始めたりなど、他のお店との違いが出るように工夫しています。また、自分は料理人として生きてきたので税務や会計についてはほとんどわかりません。そんな時に今の税理士事務所(税理士法人V-Spirits)さんに依頼をしました。税務・会計だけでなく資金調達のお手伝いもしてくれて本当に助かりました。専門的な部分は専門家に任せた方が不安はなくなりますね。
これから新たに開業する人に気をつけてもらいたいことはありますか?
飲食業界の世界で言いますと、もしかしたらしんどいことの方が多いかもしれません。精神的にも肉体的にもキツイときもあります。ただそれも、一度来店してくれてリピーターになってくれた方や口コミを聞いて来店してくれる人が居たり聞いたりしたときには、全てが吹き飛ぶくらい嬉しいです。飲食の世界に限らず、すぐに結果に繋がることは少ないけれども、目の前でお客さまの反応がわかる仕事は飲食ならではですし、そこにやりがいを感じます。それを味わうとやめられません!
これから新しく開業する方には、経営者として夢を見て追い求めていって欲しいと思います。ただし、継続していかないと意味がないので、近くにブレーキをかけてくれる人や信頼できる相談者(開業している先輩や専門家)がそばにいてくれる環境をつくりましょう。