【最新版】インボイス制度で対応すべきこと8選【課税・免税事業者別】
インボイス制度の対応について、自社がどうすべきかお悩みの方が多いのではないでしょうか。現行の制度より請求書の管理方法が厳格で、記載事項も増えているため事前に準備しておく必要があります。現時点で免税事業者か課税事業者かによっても、対応すべきことが異なるので注意しましょう。
今回の記事では、インボイス制度の対応方法について解説します。制度開始までに、準備すべきことを、課税事業者・免税事業者別に注意点も踏まえてまとめています。事業者や経理担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
1.インボイスとは?現行の請求書との違いを解説
「インボイス」は適格請求書と同義語です。そしてインボイス制度は、適格請求書を発行・保存する方式を指します。ここでは、現在の区分記載請求書との違いも踏まえて解説していきます。
インボイス制度について概要や対策をくわしく知りたい方は、「インボイス制度ガイドブック」をご参照ください。請求書の発行側と受取側で必要な準備や「対応しなかった場合にどうなるか」など、インボイス制度における疑問が解消できる内容になっています。インボイス制度が開始する前にご覧ください。
1-1.インボイスとは
インボイスとは、標準税率と軽減税率が混在するなかで、売り手側が買い手側に適用税率や消費税額を正しく伝えるための請求書を指します。制度開始後は、買い手側は適格請求書を受領しなければ、仕入税額控除を受けられません。買い手側は、受領した請求書の保存が、控除を適用するための条件になります。
またインボイスを発行するためには、適格請求書発行事業者への登録申請が必要です。免税事業者の場合は、課税事業者に転身後に登録申請ができます。すでに課税事業者であれば、申請書に記載し手続きが完了すれば対応可能です。
1-2.現行の区分記載請求書との違い
現在使用されている区分記載請求書と適格請求書では、記載する項目が異なります。インボイス制度では、新たに記載が必要な項目が増えます。
区分記載請求書には、以下の5つが記載項目です。
- ・氏名または名称
- ・取引年月日
- ・取引の内容
- ・税率ごとに分けて合計した対価の額
- ・書類を受け取る事業者の氏名や名称
上記の内容に、インボイスでは3つの項目が加えられます。
- ・登録番号
- ・適用税率(標準税率か軽減税率か)
- ・消費税額等
制度の適用後は、税率や消費税額を正しく伝えられる内容に変更されています。
2.インボイス制度が導入される背景と開始時期【2023年10月】
インボイス制度が導入される背景として、日本の消費税率制度の特徴が挙げられます。2019年10月から、標準税率と軽減税率の2種類の税率が定められています。現行の区分記載請求書では税率ごとの合計額の記載はありますが、消費税額の記載は必須ではありません。インボイス制度への移行により請求書に税率ごとの消費税を記載をすることで、取引ごとの税額を正しく計上できるようになります。
また、適用税率を明記することで、控除額を正確に算出することも目的の1つです。現在、課税事業者である企業や個人事業主は消費税の納付義務があり、販売価格の消費税から仕入で負担した消費税を引いた金額を納める必要があります。この仕入時の消費税分を控除できる仕組みが、仕入税額控除です。
ただし、インボイス制度が適用された後は、記載すべき要件を満たした適格請求書を受領しなければ控除を受けられないため、仕入時の消費税分の負担がかかってしまいます。そのため、さまざまな企業で制度に対応するための準備が進められています。
インボイス制度は、2023年10月1日から適用されます。適格請求書発行事業者への申込はすでに始まっており、制度が開始される2年前の2021年10月1日から現在まで継続しています。なお、10月以降も登録申請は可能ですが、対応が必要な場合は登録申請に2ヶ月ほどかかるため、早めの準備が必要です。
3.【課税事業者向け】インボイス制度で対応すべきこと6選
ここでは、課税事業者がインボイス制度における対応すべきことを6つ紹介します。順を追って確認していきましょう。
3-1.適格請求書発行事業者の登録を行う
適格請求書発行事業者になることで、インボイスを発行できます。課税事業者であれば、登録申請を行うことで適用されます。登録方法はe-Taxや書面で行えますので、ご自身が申請しやすい形で問題ありません。
税務署に申請後、審査を受けると「登録通知書」が発行されます。請求書に必要な登録番号などは、国税庁のサイトに公表されるため、忘れずに確認しましょう。
3-2.取引先が登録手続きを行っているか確認する
インボイスは、適格請求書発行事業者でないと発行できません。取引先が免税事業者の場合は適格請求書を発行してもらえないため、仕入税額控除を受けられません。申請状況や制度対応を検討しているかをヒアリングし、今後の対応を検討しましょう。
ただし、インボイス制度に関する免税事業者への対応には、下請法違反に注意する必要があります。課税事業者への転身をしないことを理由に、消費税分を支払わない等の対応をすると下請法違反にあたります。
また、課税事業者への転身を理由に価格交渉をされた場合、相手の同意なく一方的に断る行為も違反対象になる恐れがあるため、相談された場合の対応には注意しましょう。
参照:国土交通省「インボイス制度後の免税事業者との取引に係る下請法等の考え方」
3-3.インボイスに対応したシステムを導入する
現在使用している請求書の管理システムが、新たな請求書方式に対応しているかを確認しましょう。記載項目が従来のものと異なるため、インボイス制度に対応したシステムでなければ要件を満たす請求書が発行できません。自社のシステムがインボイス制度に対応していない場合、新たなシステムの導入や改修を行う必要があります。
また、アップデートを実施することで、クラウド上のツールなどはインボイス制度の対応が可能になるケースもあります。ツール側からお知らせ等が届いてないか確認し、必要があればアップデートの対応をしましょう。
3-4.インボイスの記載要件を満たした請求書を用意する
インボイスの記載要件は6つあります。項目は以下のとおりです。
- ・氏名または名称と登録番号
- ・取引年月日
- ・取引の内容
- ・税率ごとに分けて合計した対価の額と適用税率
- ・税率ごとの消費税額
- ・書類を受け取る事業者の氏名や名称
これらすべてが記載された請求書でなければ、買い手側が仕入税額控除を受けられません。請求書の作成をエクセルなどで実施している場合は、制度に対応した項目を加える必要があります。フォーマットを変更するなど、早めに対応しましょう。
3-5.インボイス受取や保存の管理方法を整理する
現行の請求書制度においては、発行した側に保存の義務はありません。インボイス制度開始後は、請求書の発行側でも保存の義務が定められています。取引先が免税事業者であれば交付した請求書を保存する必要はありませんが、課税事業者であれば請求書の写しあるいは電子データを発行側でも保存しなければいけません。
このように、請求書がインボイスである場合とそうでない場合の管理方法が異なります。それぞれの保管方法や期間を確認しておき、管理フローを構築しておきましょう。
3-6.経過措置について確認する
インボイス制度は、免税事業者が課税事業者に転身する必要があることや、請求書の項目内容の変更など対応への準備が必要です。そのため、6年間の経過措置が設けられています。経過措置の内容は、以下のとおりです。
- ・2026年9月30日まで:免税事業者からの請求書でも仕入額の80%分が控除される
- ・2029年9月30日まで:免税事業者からの請求書でも仕入額の50%分が控除される
- ・2029年10月以降:免税事業者からの請求書では仕入税額控除の適用は不可
このように、制度開始後から6年間は、今までの請求書でも一定の控除が認められています。現時点で免税事業者の場合は、この期間に課税事業者への転身を検討する必要があります。
4.【免税事業者向け】インボイス制度で対応すべきこと
免税事業者がインボイス制度で対応すべきことは「取引先への確認」と「課税事業者への転身」です。ここでは、それぞれの内容を詳しく解説していきます。
4-1.取引先が「課税事業者」か「免税事業者・一般消費者」かを確認する
まずは取引先が、課税事業者か免税事業者あるいは一般消費者であるかを確認します。取引先も免税事業者の場合や今後も課税事業者への転身を検討していない場合、インボイス制度への対応は特に必要ありません。取引先が一般消費者の場合も同様です。
取引先が課税事業者であれば、売り手側は適格請求書の発行を求められる可能性があります。その場合に課税負担が増えることを考慮して、収入を安定させておくことが重要です。また取引先への交渉や相談などは、事前に行っておく必要があります。免税事業者は取引先により制度への対応が異なるため、早めに確認しておきましょう。
4-2.課税事業者(適格請求書発行事業者)への転身及び簡易課税制度の導入を行う
免税事業者の場合、取引先が仕入税額控除をするためのインボイスの発行ができません。そのため、課税事業者への転身が必要であれば、登録申請を行う必要があります。その際、適格請求書発行事業者への登録も忘れずに実施しましょう。
免税事業者から課税事業者になった際は、簡易課税制度の導入を検討しましょう。簡易課税制度とは、納税する際の事務負担を減らす目的があり、仕入税額控除の計算を簡易的にできるようにしたものです。制度を受けられる対象は、簡易課税制度を適用する2年前の課税分売上が5,000万円以下の事業者です。これまで免税事業者であった場合は適用されるので、有効活用しましょう。
また、課税事業者への転身後に免税事業者に戻ることは可能です。しかし、2024年1月1日以降に登録した場合は2年間免税事業者に戻ることができません。必要性や時期を見極めたうえで、登録することをおすすめします。
5.インボイス制度の対応方法が理解できる「インボイス制度ガイドブック」
インボイス制度の対応方法について「自社ではどう対応すべきかわからない」という方は、インボイス制度ガイドブックをぜひご覧ください。基礎的な知識から、具体的な手順まで徹底解説しています。
請求書の発行側と受取側で必要な対応事項や、対応しなかった場合にどうなるかなど、インボイス制度において気になることを、1冊で解消していただける内容です。以下のリンクから、ダウンロードいただけます。とくに経理担当者や事業者の方は、インボイス制度の対応にお役立てください。
6.インボイス制度の対応は早めの準備が大切
インボイス制度は、消費税額を正確に算出するための制度です。対応には、請求書を発行する側も受け取る側も定められている義務があります。どちらに当てはまるかによって、準備すべきことや開始後の対応も異なります。
また、インボイス交付のための適格請求書発行事業者への登録はすでに開始されています。登録には時間がかかるため、必要な場合は早急に申請しましょう。
インボイス制度の対応方法にお困りの際は、インボイス制度ガイドブックを活用したり、専門家に相談したりすることをおすすめします。自社がどのように対応するかを判断し、早めに準備しておくことが大切です。
この記事を書いた人
NTT東日本 ビジネス開発本部 北森雅雄
NTT東日本に入社後、自治体向けのシステムエンジニアとして、庁内ネットワークや公共機関向けアプリケーションなどのコンサルティングからキャリアを開始。
2018年から現職にて、プロダクト(SaaS)開発、デジタルマーケティング全般のディレクションに従事。
2022年に業務のデジタル化を分かりやすく発信するオウンドメディア(ワークデジタルラボ)のプロジェクトを立ち上げ。
NTT東日本にかかわる、地域のみなさまに向けてデジタル化に役立つ情報発信を展開。