| Writer:NTT東日本 北森 雅雄(Masao Kitamori)

請求書をPDF化するメリットとは?デメリットや注意点も紹介

請求書をPDF化するメリットとは?デメリットや注意点も紹介


請求書を発行したら締めの処理に間に合うように、郵送に加えてPDF化したものをメールで送信している企業の方も多いのではないでしょうか。このPDF化された請求書は、法律的に問題ないのでしょうか。

今回の記事では、請求書をPDFで送信するのみで成り立つのかという話や、PDF化するメリット・デメリット、また受領した紙の請求書の保存を便利にする方法について説明していきます。

1.請求書をPDFで送信するのは問題ないか

結論から書くと、請求書をPDFで電子化することは法律的に問題ありません以下、よく気にされるポイントについて解説します。

1印鑑の必要性

請求書への押印は元々法律的に必要性ありませんが、書類としての信憑性をあげるために押すケースや、企業の規程として実務上は捺印が必要なケースが多いでしょう。請求書をPDFで発行しても、押印するためだけに印刷するような会社も多いのではないでしょうか。

紙の書類に押印してスキャンしPDF化もできますが、ペーパーレス化を目指す場合は、印鑑データを保存しておき請求書のデータに貼り付けてPDF化する方法が便利です。

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電子印鑑の作成方法

電子印鑑とは、データ化した印鑑のことです。電子印鑑の作成方法はいくつかあります。請求書を作成するソフトウェアに搭載されている機能を利用したり、電子印鑑作成サービスに依頼して判子データを作成したりする方法などです。実際の印鑑を紙に押印して、スキャナで読み取りOCRソフトなどで画像データ化する方法などもあります。

画像データとして印鑑情報を保存しておけば、請求書の発行の際にはPDF上で画像データを貼り付けることが可能なので、印刷して押印する手間が削減されます。

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受け取ったPDF請求書の保存について

請求書を発行するだけでなく、取引先からPDFで請求書を受け取るケースも多いでしょう。受け取った請求書は電子帳簿保存法の「電子取引」に該当します。この電子取引では、電子データでそのまま保存するための定められた要件があります。

受け取った請求書を印刷して紙で保存する方法を取る会社が多いと思いますが、2024年からは電子取引における紙保存が廃止され、電子データでの保存が義務化されます。

元々は20221月の改正の内容でしたが、対応のため2年間の猶予期間が設けられました。電子化を推進したいという国の方針ですが、要件の緩和もされてペーパーレスを推進しやすい状況になっていますので、準備を進めていきましょう。

(1)電子帳簿保存法の電子取引の保存要件

電子帳簿保存法ではデータ保存のための要件が定められており、大きく分けて2種類あります。ここでは、最もハードルの低い要件を簡単に紹介します。

●訂正・削除の防止の事務処理規定を定めた運用

電子データは紙よりも内容の訂正・改ざんが行われやすいため、真実性を担保する必要がありますそのため、書類ごとにタイムスタンプと呼ばれる仕組みを導入するケースや、電子帳簿保存法に対応した訂正履歴が明確なシステムを導入するなどの方法があります。

コスト面・運用面において中小企業で導入が難しい場合は、事務処理規定(ルールなど)を定めて運用すれば問題ないとされています。

●検索機能とファイル名の指定

電子データは必要な時に正しく内容を確認できる「可視性」が重視されます。具体的には保存してあるデータを検索できることです。「取引年月日(その他の日付)」「取引金額」「取引先」の3つで検索できる状態で保存しましょう

加えて「日付か金額の範囲を指定して検索できる」「2つ以上の任意の記録項目を組み合わせた条件で検索できる」という2点を満たすか、「税務職員による質問検査権に基づく電磁気記録のダウンロードの求めに応じることが可能」のどちらかを満たす必要があります。

システムを利用する場合は別途条件がありますが、システムを利用しない場合はファイル名を規則的に揃えておけば問題ないという例外もあります

2.電子帳簿等データの保存要件について

請求書をPDF化するメリットとは?デメリットや注意点も紹介

ここまではPDF化などの請求書の電子化について説明していきましたが、ここからは請求書を電子で作成してPDF化する方法のメリット・デメリットを紹介していきます。

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メリット

PDF化のメリットは以下の5つになります。

(1)工数削減・業務効率化


紙の請求書は、発行・印刷・封入・郵送・到着確認というステップが必要です。タイムラグもあるため、業務時間や工数が多くかかります。PDF化する場合は、メールやWebシステムで送信・確認が行えるため時間短縮・工数削減が見込めます

(2)発行日に取引先に送信できる


郵送であれば発行から取引先の確認までタイムラグがありますが、PDFにしてメールなどで送信すればすぐに確認できます。

(3)修正対応がすぐできる


仮に内容の間違いなどで修正が必要な場合、すぐに修正して再送信が可能です。取引先の締め日までに対応がしやすくなります。

(4)保管が楽になる


紙での保管は物理的なスペースが必要で、目当ての書類を探す時にも時間がかかります。PDFであれば電子データのため場所はとらず、目的の書類の検索もしやすいです。

請求書を紙では保存せずに電子データ保存のみ行う場合は、発行側・受領側それぞれで前述した電子帳簿保存法の要件を満たす必要があります2024年に義務化されるため、順次対応していく必要性があります。


(5)テレワークでも発行が可能に

テレワークでも経理担当者は、請求書の郵送業務のためだけに出社するケースも多いです。PDFで発行できれば、一部郵送が必要な取引先は存在するものの、テレワークを推進する一つのきっかけになります。

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デメリット

PDF化のデメリットは以下の2つとなります。

(1)郵送を併用するケースも多い

会社によっては紙の請求書が必要というルールがある場合や、押印が必要とされるケースもあり、すべての取引先にPDFでの請求書を送ることができないのが実状でしょう

それでも、多くの企業では電子データやPDFでも問題ないため、全体で見た時に工数削減につながります。

(2)セキュリティや情報流出に注意

PDFで請求書を発行する場合、メールで送信することが多いです。機密情報である請求書を誤った送信先に送ってしまうヒューマンエラーや、不正アクセスによる情報流出などのリスクがあります。

メールの送信先の確認を行うだけでなく、PDFファイルはZIP化しパスワードをかけて、添付したメールとは別のメールでパスワードを送信するなどの手段を取るか、クラウドストレージのURL共有機能などを利用するとよいでしょう。

ただし最近、上述のPDFZIPファイル化はPPAP問題と呼ばれ、セキュリティ性が問題視される場合もありますので、企業のセキュリティポリシー上問題ないか確認する必要があります。

WindowsMacOSともにPDFファイルへのパスワードの設定は簡単にできます。またWeb上のファイル共有サービスを使えば、期間限定でパスワードを設けたうえで共有も可能です。

3.取り扱う請求書の一部はどうしても紙になる場合

請求書をPDF化するメリットとは?デメリットや注意点も紹介

上述した通り、すべての請求書が電子化できるとは限りません。紙の請求書が残る場合はどのように運用すればよいでしょうか。

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電子と紙をミックスした運用を考える

ここまでは請求書をそれぞれPDFなどの電子取引で発行・受け取る話をしていきましたが、実際にはすべての請求書(とくに受け取る請求書)から紙を完全になくすことはできないことが多いでしょう。その前提の上で業務を効率化し、できるだけペーパーレス化を進める仕組みを用意するのが現実的な運用になります。

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電子取引だけではなく、「スキャナ保存」の項目も確認

受け取った請求書を紙で保存せずに電子データで保存するためには、電子帳簿保存法における「スキャナ保存」という項目に該当します。「電子取引」とは別の項目ですので、こちらについても確認しておきましょう。

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紙で受け取った請求書の電子化はAI-OCRが便利

請求書を電子化する際に、一部手書き文字が混じっているようなケースもあるでしょう。また、請求書に限らず、様々な注文書や発注書を手書き文字で受け取り、システムに手入力してデータ化していく業態もあると思います。

そのような、受け取った紙の請求書などを電子化するには、手書き文字でも容易に読み込めるAI-OCRがおすすめですAI-OCRとは、スキャンした文字情報を自動で電子化する技術のことで、パソコン等で作成されて印刷された書類の読み取りはもちろん、手書き文字も高精度で読み取れる点が特徴です。

ペーパーレス化の一環として請求書のPDF化や電子化を検討している場合、他の書類でも応用ができ、役立つ可能性が高いです。

4.まとめ

今回の記事では請求書のPDF化が法律上は問題なく、電子帳簿保存法に則った運用が必要であるという点や、メリット・デメリットについて解説していきました。

請求書に限らず、会社で利用する書類の多くは未だ紙での運用が多いのが実情です。しかし世の中的には電子化を推進する大きな流れがあります。

ペーパーレス化を進めていきたい会社や、取引先からの請求書や注文書などの紙データを手入力でシステムに打ち込んでいるような業種の方には、AI-OCRがおすすめです。

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この記事を書いた人

NTT東日本 ビジネス開発本部 北森雅雄

NTT東日本に入社後、自治体向けのシステムエンジニアとして、庁内ネットワークや公共機関向けアプリケーションなどのコンサルティングからキャリアを開始。

2018年から現職にて、プロダクト(SaaS)開発、デジタルマーケティング全般のディレクションに従事。

2022年に業務のデジタル化を分かりやすく発信するオウンドメディア(ワークデジタルラボ)のプロジェクトを立ち上げ。
NTT東日本にかかわる、地域のみなさまに向けてデジタル化に役立つ情報発信を展開。

北森雅雄 masao kitamori