電子帳簿保存法における対象書類を区分別に解説!適用要件や猶予期間についても紹介
電子帳簿保存法は2024年以降、一部の制度が義務化されます。そのため、まだ電子帳簿保存法への準備が済んでいない場合、早急に対応する必要があります。しかし「どのように準備すれば良いかわからない」とお悩みの方が、いらっしゃるのではないでしょうか。
電子帳簿保存法は、制度の内容によって3つの区分に分けられます。区分によって、適用できる文書や条件が異なるため注意が必要です。そこで今回の記事では、電子帳簿保存法の対象文書や保管条件について詳しく解説します。義務化への準備について理解できる内容になっているので、経理や財務担当者の方はぜひ最後までお読みください。
1.電子帳簿保存法とは?対象者や区分について解説
電子帳簿保存法は、税金関係の文書のデータによる保管について定めた法律です。では、電子帳簿保存法はどのような事業者に適用されるのでしょうか。本章で、電子帳簿保存法の区分や対象者について詳しくみていきましょう。
1-1.電子帳簿保存法とは
電子帳簿保存法は、国税庁が管轄する法律に関わる文書をデータで保管できるようにする規則です。また、制度を導入することで以下のようなメリットがあります。
- ・財務や税務作業の効率化
- ・紙媒体の保管で専有されていたスペースを減らせる
- ・印刷費用(インクや紙、コピー機のリース料など)の低減
- ・保管(ファイリングや古くなった文書の更新など)の人的コストの低減
- ・エコ(ペーパーレス化)活動による企業イメージの向上
- ・内部統制の強化
なお、電子帳簿保存法は2022年1月に改正されており、さまざまな条件が緩和されています。そのため、現在では制度を導入しやすくなりました。一方で、電子取引記録の保存義務化といった制限が強化された部分が存在します。
1-2.電子帳簿保存法の区分
電子帳簿保存法の区分は、以下のとおり3種類に大別できます。
区分 |
概要 |
スキャナ保存 |
条件付きで紙媒体ではなくスキャナで読み取った記録を保存できる。本区分は事業者の好きなタイミングで始められる。 |
電子帳簿 |
自身がコンピュータで作成した帳簿を、条件付きでプリントアウトせずにデータのまま保存できる。また、より厳格な条件を満たすことで、税金の控除を受けられる。 |
電子取引 |
電子的にやり取りした取引の記録を保存する。真実性(※1)や可視性(※2)の条件を満たす必要がある。 |
※1:保存した記録が改ざんされていない、あるいは訂正や削除の事実を確認できる性質
※2:保存した記録を確実かつ即座に確認できる性質
上記のとおり、電子帳簿保存法は区分によって性質が大きく異なります。加えて、区分によって保管条件や対象となる文書が異なるので注意が必要です。
1-3.電子帳簿保存法の対象者
電子帳簿保存法は、組織の形態や規模に関わらず、以下の条件に合致するすべての個人事業主と法人が対象です。
- ・帳簿をデータで保存する
- ・電子取引を行っている
2021年12月末までは、運用開始3ヶ月前までに税務署の審査を受けなければならなかったり文書の種類によって異なる検索機能を備える必要があったりするなど、さまざまな制限がかけられていました。しかし現在は制限が緩和されたため、幅広い事業者が制度を利用できるようになっています。
2.電子帳簿保存法は令和3年度に改正されている
令和3年度に行われた電子帳簿保存法の改正点は、以下のとおりです。
項目 |
概要 |
事前承認制度 |
従来は、税務署長へ事前に申請する必要があった。しかし現在は事業者の負担を軽減するために、制度が撤廃された。 |
優良な電子帳簿 |
|
タイムスタンプと検索機能 |
スキャナ保存と電子取引の真実性と可視性の条件が緩和された。 |
適正事務処理 |
スキャナ保存の社内規定整備に関する条件が廃止された。 |
不正に対する厳罰化 |
保存した文書に関して隠ぺいや仮装があり、申告漏れが生じた場合、重加算税が10%加重される。 |
上記のとおり、令和3年度の改正で電子帳簿保存法は事業者が導入しやすいように制度が変更されました。
3.【3区分別】電子帳簿保存法における対象書類
電子帳簿保存法の対象文書は、以下のように制度の区分によって異なります。
- ・スキャナ保存:受領した紙媒体や取引先に渡す文書
- ・電子帳簿:自身が作成した帳簿や取引先に渡す文書のコピー
- ・電子取引:データでやり取りした事業に関する情報
本章では、電子帳簿保存法の対象文書について、区分ごとに詳しく見ていきましょう。
3-1.スキャナ保存
スキャナ保存が可能な文書は、以下のとおりです。
対象となる文書 |
文書の区分 |
資金や物の流れとの関係 |
文書例 |
|
重要な文書 |
直接関連する |
|
一般の文書 |
直接関連しない |
|
なおスキャナ保存は、文書の区分によって適用条件や制限が異なります。一般の文書に関しては、保存条件が緩和されています。
3-2.電子帳簿
データで保存できる帳簿は、以下のとおりです。
対象となる文書 |
区分 |
文書例 |
自身が作成した文書 |
帳簿 |
|
決算関係の文書 |
|
|
取引先に渡す文書の写しや控え |
見積書や請求書など |
なお、帳簿は一部のみのデータ保管が可能です。例えば、主要簿のデータ+紙媒体の補助簿といった保管方法で問題ありません。ただし、帳簿は作成の始終をすべてコンピュータで行う必要があります。作成途中で一部を手書きした帳簿は、制度の対象外になります。
3-3.電子取引
電子取引(受け取りと送付の両方)で保存が必要な情報は、以下のとおりです。
対象となる文書 |
取引情報の例 |
紙媒体の取引で保存が必要な情報が記載されたデータ |
|
上記のとおり、本区分で保存が必要な記録は多岐にわたります。保存忘れが起きないよう、税金に影響する情報が記載された記録はすべて保管しましょう。
4.【3区分別】電子帳簿保存法の適用要件
制度を適用するための条件は、対象文書と同様に区分ごとに異なります。条件をすべて満たさない記録は、会社の納税や年末調整に利用できないので注意が必要です。本章では、電子帳簿保存法の保管条件について詳しく見ていきましょう。
4-1スキャナ保存
スキャナ保存の条件は、以下のとおりです。
項目 |
概要 |
入力期間 |
税金関係の文書の受領後か、一定期間のあとすぐにデータを入力 |
読み取り |
解像度200dpiかつ、24ビットカラー以上 |
タイムスタンプ |
指定のタイムスタンプを、文書1組ごとに付与 |
保存方法 |
元の解像度・階調・縮尺を保持 |
ヴァージョン管理 |
保存データの操作履歴を確認できるか、内容を変更できない製品を使用。 |
入力者情報 |
入力者や直接監視者の情報を確認可能 |
相互関連性 |
複数のデータに関して、記載の関連性を相互に確認可能 |
見読可能装置 |
一定の条件を満たした閲覧装置と操作マニュアルを用意する。また、一定の状態を満たした状態ですぐに出力できるようにする |
文書の備付け |
システムの概要書や開発時の作成文書などを用意する |
検索機能 |
以下の機能が必要
|
なお、制度の利用開始日以前の文書に関しては、適用届出書を税務署長に提出することでデータによる保管が認められます。
4-2電子帳簿
電子帳簿の保管条件は、以下のとおりです。
項目 |
帳簿 |
文書 |
|
優良 |
優良以外 |
||
帳簿記録の操作記録を確認可能 |
要 |
不要 |
|
通常の業務処理期間を経過したあとにデータ入力した場合、その記録を確認可能 |
|||
複数の関係性のある帳簿のあいだで、その相互関係を確認可能 |
|||
スキャナ保存と同様の検索機能を備える |
|||
システムの関係文書を備え付ける |
要 |
||
保存場所に所定の装置やマニュアルを用意し、データを明瞭かつ整然とした形式で出力できる |
|||
税務職員の求めに応じてデータをダウンロード可能 |
不要 |
なお優良帳簿の場合、税務職員の求めに応じてデータをダウンロードできるようにしておくことで、検索機能の条件が緩和されます。
4-3電子取引
電子取引の保管条件は、以下のとおりです。
項目 |
概要 |
改ざん防止 |
以下のような措置をとる
|
検索機能 |
以下のような措置をとる
|
見読可能装置 |
ディスプレイやプリンタを用意する |
文書の備付け |
自社開発のシステムを利用する場合は、システムの概要について記載した文書を用意する |
なお、上記の条件を満たす際に市販のソフトウェアを使用する場合は注意が必要です。電子帳簿保存法に則したシステムと記載された製品を使用する場合、認証マークがあるかどうか表示を確認しないと、保管条件を満たせない可能性があります。確実に制度へ対応するために、認証されたソフトウェアを使用しましょう。
5.電子取引のデータ保存は2023年12月31日まで猶予期間が設けられている
令和3年度の税制改正により、データの保存義務に宥恕措置(制度適用に関する事実上の猶予)が設けられました。改正電子帳簿保存法は本来、2022年1月に施行され、該当するすべての事業者に義務化が適用される予定でした。しかし、電子保存の準備ができていない大企業や個人事業主が多かったため、2023年末まで義務化が延期されています。
ただし、電子帳簿保存法に違反すると、罰則(青色申告承認の取り消しや過料など)を科せられる可能性があります。そのため、まだ電子帳簿保存法の制度の導入準備が済んでいない事業者の方は、対応作業を急ぐ必要があります。
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- ・コスト(印刷や輸送の費用)低減
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7.まとめ
電子帳簿保存法は、税金関係の文書のデータ保管について定めた法律です。制度を導入することで、経理作業の効率化やコスト低減が可能です。また電子帳簿保存法の対応文書は、区分によって以下のように異なります。
- ・スキャナ保存:受けとった紙媒体や取引先に渡す文書
- ・電子帳簿:作成した帳簿や取引先に渡す文書の写し
- ・電子取引:データでやり取りした情報
なお2024年1月1日以降、電子取引に関する記録の保存が義務化されます。電子帳簿保存法の導入が遅れると、法令違反になってしまうため注意が必要です。そこで、まだ電子帳簿保存法への準備が済んでいない事業者の方には「クラウドサイン for おまかせ はたラクサポート」の導入をおすすめします。電子帳簿保存法への対策に加えて業務効率化が期待できるので、ぜひ導入をご検討ください。
この記事を書いた人
NTT東日本 ビジネス開発本部 北森雅雄
NTT東日本に入社後、自治体向けのシステムエンジニアとして、庁内ネットワークや公共機関向けアプリケーションなどのコンサルティングからキャリアを開始。
2018年から現職にて、プロダクト(SaaS)開発、デジタルマーケティング全般のディレクションに従事。
2022年に業務のデジタル化を分かりやすく発信するオウンドメディア(ワークデジタルラボ)のプロジェクトを立ち上げ。
NTT東日本にかかわる、地域のみなさまに向けてデジタル化に役立つ情報発信を展開。