| Writer:NTT東日本 北森 雅雄(Masao Kitamori)
電子化で知っておくべき法律やサービス・成功事例を紹介
紙の資料や書類をできるだけ電子化してペーパーレスにしていく動きが社会全体として活性化しています。実際に電子化を行うことは、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。
今回の記事では書類の電子化について、関連する法律や電子化する方法・サービス、またペーパーレスで業務を効率化させた事例などを紹介していきます。
目次:
1.電子化とは?
企業などで行われる電子化とは、大きく2種類です。紙で保存して
1過去の紙の書類を電子化する
紙で保存してある書類を電子データ化する方法です。スキャナでの読み取りやスマートフォンのカメラなどから撮影して、画像データとして電子化します。
紙の書類として効力があった契約書や請求書といったものを電子化し、紙と同様に企業の書類として認められるためには、電子帳簿保存法に対応する必要があります。
2これから作成・発行する書類を電子で作成・保存する
国税関係帳簿や書類を新しく電子で作成する場合は、紙に出力せずにそのまま電子データとしての保存が認められているものがあります。また、電子データでの請求書のやりとりや、電子決済などの履歴も電子取引としてデータ保存が認められています。
電子帳簿保存法の改正により、2024年からはこの電子取引のデータは紙での出力・保存が認められなくなり、電子での保存が義務化されます。そのため、企業や個人事業主は電子帳簿保存法の要件を満たせるように体制を整えていく必要があります。
2.書類を電子化するメリット
書類を電子化するメリットについて、改めて確認しましょう。
1
業務効率化
電子化することで、紙を扱う際に必要な出力作業や郵送に関する業務などが削減され、業務効率の向上が期待できます。また、クラウド環境に保存すればいつでもどこでも確認・修正ができます。
電子データ化することで紙の時よりも情報を検索しやすくなり、共有の手間も大幅に削減されます。現代のビジネスにおいては電子化が進むほど生産性の向上が見込まれます。
2
テレワークへの移行
新型コロナウイルスの感染防止対策として多くの企業でテレワークが導入されました。現在もテレワークがスタンダードな会社も多いでしょう。テレワーク導入がなかなかうまくいかない弊害は、出社しないとできない業務の存在ですが、電子化を進めていくことで出社しなくても仕事が可能な環境に近づいていきます。
3スペースやコストの削減
紙を扱う場合、紙代・印刷代・切手代・
4セキュリティ向上やBCP対策
電子データは簡単にバックアップを取ることができるので、仮に一つの場所で保管してある書類が災害などで紛失してしまっても、クラウドなどにあればBCP対策としても安心です。
セキュリティについてもアクセス権限や二段階認証などを適切に設定できれば、盗難や紛失などのリスクが下がり、紙の時よりもセキュアな環境で運用が可能です。
3.電子化のデメリット
電子化はメリットだけではありません。
1
導入ハードル
電子化のためにはハードウェアやソフトウェアの導入、電子帳簿保存法への対応、取引先への周知などが必要です。既存の業務フローを変更する際の抵抗感や、一時的な業務効率の低下などもあります。これらの理由から導入に踏み切れない事も少なくありません。
しかし長期的に見た場合、ペーパーレスのほうがメリットは多いです。国としても促進していく流れがあるため、導入ハードルについては年々下がっています。
2
資料の視認性の低下
電子化した資料はモニターやパソコンで確認します。紙の資料はモニターなどより大きいサイズを作成可能な場合もあり、電子化によって視認性が落ちる書類や資料もあります。
とはいえ、建築現場の図面など、どうしても紙のほうが視認性の高いような資料の場合は出力して運用するとしても、通常業務においてパソコンを利用していて視認性が落ちる資料の数は少ないです。
3
トラブルやリスク
保存しているストレージサービスの障害やインターネットの接続障害などにより、電子データにアクセスできずに、業務を中断せざるを得ない可能性はあります。テレワーク時などでは従業員の意図せぬ情報漏えいが発生するリスクもあります。
そのため電子化した時のメリットだけに目を向けるのではなく、解消すべきリスクにも目を向ける必要があります。従業員のリテラシー向上や社内ルールの整備、データのバックアップをとっておくなどの対策もしておきましょう。
4.電子化に関する法律
電子化を正しく行うためには、
1
電子帳簿保存法
国税関係帳簿や書類の電子化を企業が行うときには、電子帳簿保存法の要件を満たす必要があります。大きく分けて3種類の書類の区分があり、「電子帳簿等の保存」「スキャナ保存」「電子取引」の3つです。それぞれに保存要件があります。
2022年の改正ではその要件が緩和されて電子化のハードルが下がっています。また、2024年からは前述の通り「電子取引」については紙での保存は認められず電子保存が義務化されますので、自社には関係ないと考えていた企業や事業主でも対応していく必要があります。
電子帳簿保存法について、詳しい説明は他の記事で紹介しています。
2
e-文書法
e-文書法は、電子帳簿保存法と違い財務省や国税庁に関連する書類だけではなく、医療や建築などの書類も含んだ法律です。電子帳簿保存法よりも広い範囲の法的保存文書に関する法律となります。
経済産業省が提示している4つの技術的基本要件があり、それぞれの基準を満たす必要があります。パソコンやプリンタ出力したものが問題なく確認できる「見読性」、不正や改ざんがされていない「完全性」、アクセスできる権限に制限をかける「機密性」、必要な情報を検索して見つけることができる「検索性」の4つです。
5.電子化を行う方法や便利なサービス
電子化に役立つ便利なサービスやシステムの例を紹介します。
1
スキャナ代行サービスの利用
自社で大量の書類がある場合は、スキャンをする手間がかかるため
2
AI-OCRの利用
法律に対応する必要がない書類や手書きの文章でも、日々の入力業務が発生することは多いでしょう。画像として電子化されているデータをデジタル文字化してくれるOCRは近年ではAI-OCRという人工知能を搭載した技術に発展しています。
手書き文字でも高精度にデジタルデータに文字を変換可能、複数のフォーマットに対応可能、読み込むフォーマットを学習するなどの機能が搭載されています。RPAと連携すれば表計算ソフトや利用しているシステムへの入力業務をロボティクスで自動化が可能です。
他にもFAXを利用している場合、受け取ったFAXを自動でPDF化する機能を持つ複合機もあります。受けとったFAXを自動で電子保存、さらにはAI-OCRで文字化し、RPAと連携すればシステム入力までも自動化が可能です。
3電子帳簿保存法対応のシステム利用
電子帳簿保存法に対応し請求書や領収書・
4電子契約サービスの利用
電子契約サービスは新規契約の電子化はもちろん、
6.電子化で業務効率化やペーパーレス化を実現した成功事例
NTT東日本のAI-OCRサービスである「AIよみと〜る」を活用して業務効率化を実現した事例を紹介します。
①辻・本郷 税理士法人
約270名の公認会計士・税理士が所属している辻・本郷税理士法人様では、多くの顧客から送付される帳票類などのデータ入力作業と、チェックが業務の負担になっていました。
NTT東日本の「AIよみと〜る」を活用することで、帳票データの自動読み取りにより業務が大きく効率化されました。領収書などは手書き文字も多いですがAI-OCRであれば高精度で読み取りが可能です。また顧客の通帳の内容を読み取り電子データ保存することで紙の通帳を扱う機会を減らすなど、今後も活用が期待されます。
②株式会社メディカル・プリンシプル
医師のキャリアサポートや医学生・研修医のサポート、医療機関向けの職業紹介などを行う株式会社メディカル・プリンシプル様。同社は手書きの求人シートなどのシステム入力・チェックにかなりの手間をかけていました。
NTT東日本の「AIよみと〜る」を導入したことで、手書きの求人シートをかんたんにデータ化できるようになり、業務効率化につながったそうです。
③岩手県久慈市
岩手県久慈市様は、職員の人数が少なくても生産性を向上させるために、LGWAN(総合行政ネットワーク、行政専用の閉域ネットワーク)に対応したタイミングでNTT東日本のAI-OCR「AIよみと~る」とRPA「おまかせRPA」を導入されました。
年間2万件の申請があるふるさと納税の申請書や、約4000枚のアンケート処理業務を自動化させました。作業時間は月あたりで8割ほど削減されたとのことです。
※RPAとは、人間がパソコン上で行っている定型業務をロボットが自動で行う技術で、AI-OCRで読み取った内容を入力する部分で連携できます。
7.まとめ
今回の記事では電子化の基本的な内容を紹介していきました。電子帳簿保存法やe-文書法を認識して対応することはもちろん、電子化で得られる業務効率化やテレワークの実施のしやすさなどのメリットを得るためには、業務フローの改善や社内ルールの見直し、新しいサービスの検討なども必要です。
事例でご紹介したNTT東日本の「AIよみと〜る」は、無料デモが可能です。詳しい事例が紹介されている資料のダウンロードも可能ですので、電子化をご検討の際にはぜひ参考にしてみてください。
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この記事を書いた人
NTT東日本 ビジネス開発本部 北森雅雄
NTT東日本に入社後、自治体向けのシステムエンジニアとして、庁内ネットワークや公共機関向けアプリケーションなどのコンサルティングからキャリアを開始。
2018年から現職にて、プロダクト(SaaS)開発、デジタルマーケティング全般のディレクションに従事。
2022年に業務のデジタル化を分かりやすく発信するオウンドメディア(ワークデジタルラボ)のプロジェクトを立ち上げ。
NTT東日本にかかわる、地域のみなさまに向けてデジタル化に役立つ情報発信を展開。