| Writer:NTT東日本 北森 雅雄(Masao Kitamori)

【2024年問題】運送業における働き方改革について解説|課題や変更点、進め方の流れも紹介

【2024年問題】運送業における働き方改革について解説|課題や変更点、進め方の流れも紹介



働き方改革関連法が施行され、労働環境や勤務状況の見直しをする企業が業種問わず増えてきています。慢性的に人材不足や従業員の高齢化といった問題を抱える運送業でも、働き方改革の推進が求められています。

運送業は2024年3月まで時間外労働の上限規制が免除されており、他業種にくらべて条件が緩和されているものの、この猶予期間中に働き方を見直す必要があります。

そこで、今回の記事では、運送業における働き方改革の課題や変更点などを解説します。これから働き方改革を進めようと考えている運送業の担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。

1.運送業の働き方における4つの課題

【2024年問題】運送業における働き方改革について解説|課題や変更点、進め方の流れも紹介

働き方改革を進めるときには、現状を理解することが重要です。そこでこの章では、運送業の働き方における課題を解説します。運送業が解決すべき課題とは何か、まずは把握しましょう。

人材不足・高齢化

運送業ではトラックドライバーの人材不足が問題となっています。加えて、新型コロナウイルスの流行によってオンラインで買い物をする人が増え、さらに状況は深刻化しています。そこで人材を確保するためにも、職業としての魅力を上げる必要があります。

運送業は全産業とくらべて平均年齢が高く、さらにその上昇幅も大きいため、人材不足だけではなく高齢化も深刻な課題です。

また、運送業の仕事は長時間労働・低賃金の傾向があるため、働き手が見つかりにくいのが現状です。定期配送への移行や共同配送など対策を取っていますが、課題の解決には至っていません。

労働環境・労働条件の改善

運送業では、時間や場所の指定など荷主の要求に対して柔軟に対応する必要があります。しかし、荷主の要求にすべて応えていると、休憩を含めた業務時間や休息時間を遵守することが難しくなります。そのため、労働時間の改善には、荷主の理解を得ることも大切です。

また、運送業では正規雇用者と非正規雇用者で待遇に差があるのが現状です。働き方改革によって、両者間の不合理な待遇差を解消することも求められています。

勤怠管理の強化

運送業において、今後解決すべき課題のひとつが勤怠管理の強化です。運送業の勤怠管理には、下記のような業種特有の問題点があります。

  • ・従業員が不正に勤務時間を打刻するリスク
  • ・ドライバーの正確な勤務時間の把握が困難
  • ・雇用形態や勤務時間がさまざまな従業員がいることによる勤怠集計や給与計算の複雑化

これらの問題点を解消するため、システム・ツールの導入や従業員教育の徹底などを行い、勤務管理を強化することが必要です。

輸配送効率の向上

運送業は業務上、非効率がうまれやすい傾向があります。オンラインショッピングの増加によって配送量が増えていることもあり、今後業務の効率化が求められるでしょう。

運送業の現状として、下記の課題が挙げられます。

  • ・積載率の低下
  • ・長距離輸送の低下
  • ・繁閑期への対応

これらの課題は、運送事業者だけで解決することは難しいでしょう。荷主に理解・協力してもらい、輸配送効率の向上を目指す必要があります。

2.【2024年問題】運送業の働き方改革について解説

【2024年問題】運送業における働き方改革について解説|課題や変更点、進め方の流れも紹介

働き方改革を行うときには、働き方改革関連法に沿って進める必要があります。この章では、運送業における働き方改革関連法のポイントを解説します。違反した場合、罰則の対象となる可能性もあるため、働き方改革を進めるときには注意しましょう。

時間外労働の上限規制

働き方改革関連法の適用によって、時間外労働の上限は原則「月45時間、年360時間以内」と設定されました。特別な事情や従業員と企業の双方が同意している場合は、上限を超えて時間外労働を行うことも可能です。

ただし、運送業は時間外労働の上限規制が2024年3月末まで免除され、2024年4月以降も他業種にくらべて緩和された条件が適用されます。

2024年4月以降、運送業は当別条項付き36協定を締結している場合、「年960時間以内」が上限となります。また、他業種に適用されている下記条件についても、運送業では規制対象外です。

  • ・時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
  • ・2~6ヶ月の平均が月80時間以内(休日労働を含む)

月60時間を超える時間外労働の割増賃金引上げ

2023年4月から、中小企業を対象として月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が25%から50%へ引き上げられます。これまでは大企業のみに適用されており、中小企業は資金や人材に限りがあることから25%に設定されていました。

ただし、割増賃金率の引き上げは月60時間を超える時間外労働のみに適用され、休日労働と深夜労働についてはこれまでと変わらないので注意しましょう。

同一労働同一賃金

働き方改革では、同一労働同一賃金を目指します。同一労働同一賃金とは、正規・非正規といった雇用形態にかかわらず、同じ職場・同じ業務をしている従業員に対しては同じ賃金を支払うという考え方です。同じ業務をしている従業員は、雇用形態に関係なく正当に評価され、賃金が支払われるようになります。

同一労働同一賃金を達成するためには、雇用形態にかかわらず各種手当を支給する必要があります。そのため、働き方改革を進めるにあたって各種手当の見直しを行いましょう。

3.運送業のドライバーの時間・休日に関する変更点

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働き方改革によって、運送業で働くドライバーの働き方が今までと変わります。この章では、運送業のドライバーの時間や休日に関する変更点について解説します。どのような点が変わるのか把握し、従業員の方へ周知しましょう。

拘束時間

ドライバーの拘束時間は休憩や仮眠時間も含まれ、給与の対象となります。拘束時間は原則13時間以内と定められており、延長する場合も16時間を超えて業務を行うことはできません。また、仮眠や休憩時間を拘束時間から差し引いて考えることは禁止されています。

業務が終わってから次の業務が始まるまでのことを、休息時間といいます。休息時間は労働基準法で1日8時間以上と定められており、違反した場合は罰則の対象となるので注意しましょう。

荷待ち時間

荷待ち時間とは、荷物の積み下ろしや指示を待つ時間など荷主や物流施設の都合でドライバーが待機する時間です。荷待ち時間はドライバーではコントロールできないため、長時間労働の原因のひとつとなります。

加えて、荷待ち時間が長くなれば配送業務に影響が出る可能性があるため、業務の効率化が必要です。企業によっては荷待ち時間を休息時間とみなしていることもありますが、法律では認められていないので注意しましょう。

休日

運送業のドライバーの休日は、「24時間+1日の休息時間」と決められています。休息時間は最低でも8時間とる必要があるため、32時間以上で1日の休日と考えられます。

1日おきに勤務する隔日勤務の場合は、「24時間+20時間の休息時間」が休日と定められており、そのうちの24時間は連続していなくてはいけません。そのため、44時間以上で1日の休日とみなされることになります。

4.【3ステップ】運送業における働き方改革の進め方

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働き方改革を進める際にさまざまなハードルがありますが、正しい方法で実施することでスムーズな導入が可能です。この章では、運送業における働き方改革の進め方を解説します。働き方改革の推進を考えている運送業の方は、参考にしながら進めていきましょう。

現状把握

働き方改革を進めるときには、最初にドライバーの現状を把握しましょう。トラックに付いているドライブレコーダーのチェックや、従業員に直接聞き取り調査をして、改善基準告示違反の有無を確認する必要があります。現状把握をするときには、下記のポイントをチェックしてみてください。

  • ・労働時間と拘束時間、休息時間の確認
  • ・運転日報の確認
  • ・運転時間および連続運転時間の確認
  • ・休日および休日労働の確認

現状を把握し、違反しているドライバーがいないか、どの項目で違反が行われているかなどを洗い出しましょう。

課題の明確化

現状を把握し、改善基準告示を遵守できていることを確認したら、次は課題を明確にすることが大切です。どのような点が課題なのかも、直接ドライバーに聞いてみましょう。

課題を明らかにし、もし原因が企業側にあると考えられる場合は、改善策を検討しなくてはいけません。課題の原因がドライバー側にある場合は、必要に応じて教育や研修を行い改善していきましょう。

計画・実行

現状の把握と課題の洗い出しをしたら、具体的に働き方改革のゴールを決めて、どのように進めていくのか計画を立てます。働き方改革は、改正された労働基準法に沿って行う必要があるので、法律に則った内容になっているか確認しながら進めていきましょう。

働き方改革のゴールとプロセスを決めたら、実際に進めていきます。このとき従業員の方にも周知をし、理解してもらいながら行いましょう。都度進捗を確認し、何か問題があれば原因を分析して再度プロセスを検討しながら、働き方改革を進めていくと良いでしょう。

5.まとめ

【2024年問題】運送業における働き方改革について解説|課題や変更点、進め方の流れも紹介

運送業は他の業種にくらべて人材不足と高齢化が進み、さらにオンラインショッピングの増加によって配送量が増えていることもあり状況は深刻化しています。そこで、働き方改革によって人材不足や業務の効率化といった課題を解消する必要があります。

働き方改革を進めるときには、まずは現状の把握や課題の洗い出しが大切です。そのうえで、働き方改革のゴールとプロセスを決めて進めていきましょう。

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この記事を書いた人

NTT東日本 ビジネス開発本部 北森雅雄

NTT東日本に入社後、自治体向けのシステムエンジニアとして、庁内ネットワークや公共機関向けアプリケーションなどのコンサルティングからキャリアを開始。

2018年から現職にて、プロダクト(SaaS)開発、デジタルマーケティング全般のディレクションに従事。

2022年に業務のデジタル化を分かりやすく発信するオウンドメディア(ワークデジタルラボ)のプロジェクトを立ち上げ。
NTT東日本にかかわる、地域のみなさまに向けてデジタル化に役立つ情報発信を展開。

北森雅雄 masao kitamori