| Writer:NTT東日本 北森 雅雄(Masao Kitamori)
【2022年】働き方改革推進支援助成金の助成内容とは|支給要件や申請期限も解説
政府は新たな働き方に関する法律を制定し、労働環境への改善を図る取り組みを開始しました。「働き方改革」として社内の労働環境を改善する企業では、新たな取り組みを行うために費用や労力がかかるケースもあるでしょう。
国が助成する働き方改革推進支援助成金を利用すれば、ツールの導入などにかかるコストを抑えられます。働き方改革を推進したい企業は助成金を活用することで、円滑に労働環境の改善を進められるでしょう。
そこで、今回の記事では、働き方改革推進支援助成金の助成内容、支給要件や申請期限を解説します。
目次:
1.2022年度(令和4年)働き方改革推進支援助成金の概要を解説
企業が働き方改革を推進する場合は、国から働き方改革推進支援助成金を支援してもらえる可能性があります。担当者は、働き方改革推進支援助成金を活用するために具体的な助成内容を把握しておきましょう。この章では、働き方改革推進支援助成金に関する基礎知識を解説します。
1働き方改革推進支援助成金とは
働き方改革推進支援助成金は、働き方改革を推進する中小企業の事業主を対象にした制度です。支援制度を利用した場合は、国が労働環境の整備にかかる費用の一部を助成を受けられます。対象になる事業別に4つのコースがあります。
- ・労働時間短縮・年休促進支援コース
- ・勤務間インターバル導入コース
- ・労働時間適正管理推進コース
- ・団体推進コース
2対象となる取り組み
対象となる取り組みには、以下のような項目が挙げられます。
- ・労務管理担当者への研修
- ・労働者への「研修」「周知」「啓発」
- ・外部専門家(社会保険労務士等) によるコンサルティング
- ・就業規則や労使協定などの作成・変更
- ・人材確保をするための活動
- ・労務管理用のソフトウェアと機器の導入
- ・労務管理用のソフトウェアと機器の更新
- ・デジタル式運行記録計の導入・更新
- ・労働能率を向上するために必要な設備や機器などの導入・更新
助成金の支給を受けるためには、上記から1つ以上の取り組みを行う必要があります。また研修の中には業務研修も含まれるため、覚えておきましょう。
3申請期限と事業実施期間
働き方改革推進支援助成金の申請期限は2022年11月30日です。助成金の予算状況によっては、締切日が予定よりも早まる可能性もあるため、早急に手続きを進めましょう。申請後に交付が決まった場合は、2023年1月31日までに事業を実施してください。
2.働き方改革推進支援助成金の助成内容【4コース】
働き方改革推進支援助成金は4つに分かれており、助成内容により利用するコースが変わります。企業の担当者はコースごとの概要等を理解しておく必要があります。
- ・労働時間短縮・年休促進支援コース
- ・勤務間インターバル導入コース
- ・労働時間適正管理推進コース
- ・団体推進コース
この章では、各コースについて解説します。
1労働時間短縮・年休促進支援コース
労働時間短縮・年休促進支援コースとは、企業の労働時間の改善と年休の取得に取り組む中小企業を支援するコースです。
概要
2020年4月1日から新たな規制として、中小企業の時間外労働の上限が変更されました。労働時間短縮・年休促進支援コースは時間外労働の削減や年次有給休暇等の取得を進め、生産性の向上を図る中小企業を助成します。
要件
労働時間短縮・年休促進支援コースの対象となる事業主は、以下の3つの要件を満たす必要があります。
- ・事業主が労働者災害補償保険(労災)の適用対象である
- ・申請の際に成果目標の1から4の設定の中から1つ以上を選び、達成する条件を満たしている
- ・年5日の年次有給休暇の取得を目指し、就業規則等の整備を進めている
また、企業は成果目標1から4の中から1つ以上を選択し、実施する必要があります。
- ・時間外・休日の労働時間数を減らした上で上限を設定し、労働基準監督署長に届け出を行う
- ・年次有給休暇の計画的付与の規定を導入する
- ・時間単位の年次有給休暇の規定を導入する
- ・特別休暇(病気休暇等)の規定を1つ以上導入する
さらに、労働者の時間あたりの賃金額を3.0%以上の引き上げが成果目標に加えられます。
支給額
支給額は、取り組んだ成果目標にかかった経費の一部です。また、目標の達成状況に応じ、支給の有無が決定します。以下の条件のうち、合計額の低い方が支給対象です。
- ・成果目標1から4の上限と賃金加算額の合計額
- ・対象となる経費の合計額×3/4
また、成果目標の上限額はそれぞれ異なっているため、事前に確かめましょう。
- ・成果目標1:15万円~240万円
- ・成果目標2:50万円
- ・成果目標3:25万円
- ・成果目標4:25万円
賃金加算額は適用人数によって異なります。
2勤務間インターバル導入コース
勤務間インターバル導入コースとは、労働者の勤務間インターバルを設け、健康保持や過重労働を防ぐ中小企業を支援するコースです。
概要
勤務間インターバル導入コースは、労働者の生活・睡眠時間を確保するために、勤務終了から次回の勤務開始までの一定期間以上の休息時間を設けた制度を導入した企業が対象です。
2019年4月から勤務間インターバル制度の導入が努力義務化されています。
要件
支給の対象となる中小企業は、以下の項目の1つに該当する必要があります。
- 1.事業主が労働者災害補償保険(労災)の適用対象である
- 2.交付・支給の申請時に36協定が締結と届出を行っている
- 3.過去2年間、月45時間を超える時間外労働がある
- 4.交付の申請時に年5日の年次有給休暇の取得を目指し、就業規則等を整備
- 5.以下の3つの中から1つが該当する企業
- ・勤務間インターバルを導入していない
- ・休息時間が9時間以上の勤務間インターバルを導入済み(※ただし、対象の労働者が事業場に所属する労働者の半数以下)
- ・休息時間が9時間未満の勤務間インターバルを導入済み
自社がどの項目に該当するのか、事前に確かめておきましょう。
支給額
支給額は、取り組んだ成果目標にかかった経費の一部です。また、目標の達成状況に応じ、支給の有無が決定します。
対象となる経費の合計額に補助率3/4を乗じた額が助成されます。ただし、常時勤務している労働者が30人以下であり、特定(取組項目6から9)の取り組みを行った場合は、30万を超えると補助率4/5です。
- ・休息時間数(9時間以上11時間未満):40万から80万円
- ・休息時間数(11時間以上):50万から100万円
さらに、賃金の引き上げによる加算額が加わるケースもあります。
3労働時間適正管理推進コース
労働時間適正管理推進コースとは、労務・労働時間を適正に管理するために整備を整える企業を支援するコースです。
概要
労働時間適正管理推進コースは、生産性の向上や労務等を適正に管理を推進する企業が対象です。
2020年4月1日より、賃金台帳等の労務管理に関する書類の保存期間が5年(当面は3年)に延長されました。
要件
支給の対象となる中小企業は、以下の項目すべてに該当する必要があります。
- ・事業主が労働者災害補償保険(労災)の適用対象である
- ・交付の申請時に年5日の年次有給休暇の取得を目指し、就業規則等を整備
- ・交付・支給の申請時に36協定が締結と届出を行っている
- ・交付決定日の前において、統合管理ITシステムによる労働時間管理方法を使用していない
- ・交付決定日の前において、労務管理書類を5年間保存する旨を就業規則等に規定していない
また、成果目標としては、以下の3つの項目を達成しなければなりません。
- ・勤怠管理と賃金計算等をリンクし、統合管理ITシステムを使用した労働時間管理方法を採用
- ・労務管理書類を5年間保存する旨を就業規則等に規定
- ・「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に関する研修を該当者(労働者及び労務管理担当者)に実施
さらに、労働者の時間あたりの賃金額を3.0%もしくは5.0%以上の引き上げることが成果目標に加えられます。
支給額
支給額は、取り組んだ成果目標にかかった経費の一部です。また、成果目標の達成状況に応じ、支給の有無が決定します。
目標達成時の支給額は上限100万円です。対象となる経費の合計額に、補助率3/4を乗じた額が助成されます。常時勤務している労働者が30人以下であり、特定(取組項目6から9)の取り組みを行った場合は、30万を超えると補助率4/5です。
さらに、勤務間インターバル導入コースと同様に賃金の引き上げによる加算額が加わるケースもあります。
4団体推進コース
団体推進コースとは、労働者の労働条件を改善する取り組みを行う事業主団体を支援するコースです。
概要
団体推進コースは、事業主の団体や連合団体の傘下である事業主の労働者の労働条件を改善する団体等が対象です。
事業主団体等は、労働者の時間外労働削減や賃金の引き上げを目指し取り組む必要があります。
要件
支給の対象となる団体等は3事業主以上で構成され、以下の1つに該当する立場で1年以上の実績がなければなりません。ただし、共同事業主の場合は10事業主以上が必要です。
- ・事業主団体(法律で規定した団体・法律で規定していない団体)
- ・共同事業主(共同する事業主の合意を得た上で作成された協定書等があるなどの要件を満たす)
また、事業主団体には以下のような団体が含まれます。
- ・事業協同組合
- ・信用協同組合
- ・企業組合
- ・商工組合
- ・都道府県中小企業団体会
- ・商工会議所
- ・一般社団法人
- ・一般財団法人
事業主団体の対象は多く存在するため、自身の団体が該当しているかを把握しておきましょう。
支給額
成果目標を達成するために取り組んだ場合は、対象となる項目を実施した際にかかった費用が支給の対象です。支給額は、以下の金額のうち、低い額の項目が該当します。
- ・対象となる経費の合計額
- ・総事業費から収入額を控除した金額額
- ・上限額500万円
ただし、都道府県もしくは複数の都道府県の単位で構成する事業主団体等の場合は、上限額1,000万円です。
3.働き方改革推進支援助成金における2つのポイント
中小企業が働き方改革推進支援助成金を申請するためには、事前に対象となる取り組みの範囲や支給要件について把握しておく必要があります。
1対象となる取り組みの範囲が広い
働き方改革推進支援助成金は、対象となる事業の範囲が幅広いです。自社において働き方改革の一環として助成金を申請する場合は、事前に該当する項目を確認しておきましょう。ソフトウェア機器の導入・支援だけではなく、導入に関連する研修も対象になるケースもあります。
企業の担当者は申請漏れがないように、改めて取り組む項目を確かめましょう。
2支給要件を満たす必要がある
働き方改革を推進する企業は、自社が働き方改革推進支援助成金の支給要件を満たしているか確認しましょう。働き方改革推進支援助成金は業種別の4コース共通用件が定められており、以下の要件を満たす必要があります。
- ・小売業…出資金または資本金の総額が5,000万円以下であり、常時使用する従業員数が50人以下である
- ・サービス業…出資金または資本金の総額が5,000万円であり、常時使用する従業員数が100人以下である
- ・卸売業…出資金または資本金の総額が1億円以下であり、常時使用する従業員数が100人以下である
- ・その他の業種…出資金または資本金の総額が3億円以下であり、常時使用する従業員数が300人以下である
働き方改革推進支援助成金を申請する中小企業は、自社が対象となる要件を確かめ誤りがないように注意しましょう。
4.働き方改革推進支援助成金3つのメリット
中小企業は働き方改革を推進する場合に助成金を利用することにより、いくつかのメリットを受けられます。
- ・生産性向上
- ・長時間労働の是正
- ・労働時間や環境の整備
この章では、3つのメリットをそれぞれ解説します。
1生産性向上
働き方改革推進支援助成金を利用した場合、ソフトウェアや機器を導入することより短時間で仕事を進められ、生産性の向上につなげられます。同時にワークフローを見直せれば、効率的な業務の流れを構築できるでしょう。
2長時間労働の是正
働き方改革により、労働者の残業時間に上限が設けられ、ワークライフバランスを保てます。労働者は仕事以外の時間を確保し、ストレスの軽減や休息を図れるでしょう。適度な休息を取ることで、健康的に仕事に従事できます。もし自社の人材が少ない場合でも、助成金を活用してRPAなどのツールを導入し、労力のかかる定型作業を自動化できるでしょう。
企業は長時間労働を見直すことにより、より良い労働環境を実現することが可能です。
3労働環境の整備
働き方改革を推進することで、労働環境の整備や改善ができます。企業は、労働者が働きやすい職場環境の構築や賃金格差の是正などを含めた公平な職場を目指せます。また、職場環境が改善されることで、労働者のモチベーションを高められるでしょう。結果として、労働者の会社に対する満足度が高くなり、離職率の低下につながります。
5.まとめ
働き方改革推進支援助成金は、企業の労働環境改善を支援してくれる制度の1つです。助成金の対象となる中小企業は条件を満たした上で申請し、自社に適した取り組みを進めましょう。自社で働き方改革を推進したいと考えている企業は、積極的に働き方改革推進支援助成金を利用するのをおすすめします。
また、社内における働き方改革の推進には「おまかせ はたラクサポート」・「コワークストレージ」や手書き書類をCSVに変換できる「AIよみと〜る」といったサービスをセット導入することがおすすめです。NTT東日本では、これらのクラウドサービスに関する使い方やサポート対応をセットにして提供しています。また、無料で体験可能な「DX無料体験プログラム」を用意しています。興味のある方は、ぜひ以下のリンクから詳細をご覧ください。
この記事を書いた人
NTT東日本 ビジネス開発本部 北森雅雄
NTT東日本に入社後、自治体向けのシステムエンジニアとして、庁内ネットワークや公共機関向けアプリケーションなどのコンサルティングからキャリアを開始。
2018年から現職にて、プロダクト(SaaS)開発、デジタルマーケティング全般のディレクションに従事。
2022年に業務のデジタル化を分かりやすく発信するオウンドメディア(ワークデジタルラボ)のプロジェクトを立ち上げ。
NTT東日本にかかわる、地域のみなさまに向けてデジタル化に役立つ情報発信を展開。