| Writer:NTT東日本 北森 雅雄(Masao Kitamori)

【必見】働き方改革における6つの問題点|企業・従業員の視点から課題や解決策、メリットを解説

【必見】働き方改革における6つの問題点|企業・従業員の視点から課題や解決策、メリットを解説



多くの企業で働き方改革が進められ、労働時間の改善やリモートワークなどそれぞれのライフスタイルに合った働き方が選べるようになってきました。これから働き方改革を進める企業の担当者のなかには、あらかじめ問題点を把握し、対策を取りながら進めて成功させたいと思っている方もいるのではないでしょうか。

働き方改革を進める際に、社内規約を改訂したり利益が減少する可能性があったりと、さまざまな問題点が発生します。

そこで今回の記事では、働き方改革の問題点や解決するポイントなどを解説します。これから働き方を進める企業担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。

1.働き方改革とは?概要と目的を解説

【必見】働き方改革における6つの問題点|企業・従業員の視点から課題や解決策、メリットを解説

1980年代後半から始まった高度経済成長期の頃から、長時間労働を原因とする過労死が問題になっています。1991年ごろには、過労自殺が重要な労働問題として認識されるようになりました。日本では少子高齢化社会が進み、労働人口が減少しているため、長時間労働などの問題が顕著に表れています。

そこで、政府は2006年に「過重労働による健康障害防止のための総合対策について」を策定します。2014年には「過労死等防止対策推進法(過労死防止法)」が成立し、働き方改革を進める企業が増えてきました。

一億総活躍社会の実現が目的

政府は一億総活躍社会の実現を目指し、2016年に内閣官房において「働き方改革実現推進室」を設置しました。国民がそれぞれのライフスタイルに合った柔軟な働き方が選べるようにし、労働人口の減少や育児・介護との両立など日本が直面している課題に対応できるようにしました。子育て・介護をしている方や高齢者など、これまで十分に仕事ができなかった方が働ける環境をつくり、労働力不足の解消を目指しています。

働き方改革の施策

2019年4月に働き方改革関連法が施行され、働き方がこれまでと大きく変わりました。働き方改革は、下記の3つの柱を基本としています。

  • ・一労働同一賃金
  • ・時間外労働の上限を制限
  • ・年次有給休暇の時季を指定

高度経済成長期から問題となっている長時間労働や、雇用形態の違いによる賃金格差を改善できるよう、働き方改革が進められています。

2.【企業視点】働き方改革における3つの問題点

【必見】働き方改革における6つの問題点|企業・従業員の視点から課題や解決策、メリットを解説

働き方改革を進めることは重要ですが、問題点がいくつかあります。そこで、この章では企業から見た働き方改革における問題点を解説します。働き方改革を推進するにあたって、どのような点が問題となるのか理解しておきましょう。

時間外労働の上限規約の対応

これまでは時間外労働について法律上の規定はなく、上限も定められていませんでした。しかし労働基準法の改正によって、原則として月45時間、年360時間の上限が設けられました。

さらに、今までは時間外労働が多くても行政指導が入るのみでしたが、法改正によってルールや罰則が設けられ、厳格な処罰の対象となる可能性があるので注意しましょう。

法改正に伴い、社内規約や制度の根本的な見直しも必要です。通常業務をこなしながら改訂作業を行う労力や時間を確保する必要があるため、担当者にとって大きな負担となる可能性があります。

利益の減少

働き方改革の推進を優先すると、結果として会社の利益が減少してしまうことがあります。例えば、下記のような状況が原因となります。

  • ・業務の効率化や生産性の向上を目的としたツール・システムを導入することによるコストの増加
  • ・労働時間の減少による売り上げの減少
  • ・多様な働き方に合わせた人材の確保による人件費の増加や教育費

特にサービス業や飲食業は、労働時間短縮による売り上げの減少が考えられます。働き方改革の推進だけに目を向けるのではなく、導入したときの影響も考慮しながら進めていきましょう。

高度プロフェッショナル制度の乱用

働き方改革によって、高度プロフェッショナル制度が設けられました。高度プロフェッショナル制度とは、収入が一定水準以上の専門職の人を労働時間ではなく成果で評価する制度です。

高度プロフェッショナル制度は、業務が終了すれば早く帰れるため、就業時間の短縮が期待できます。しかし残業代の支払いがなく、長時間労働をしても労働基準法における罰則の対象とはなりません。そのため、制度が乱用されると、業務量だけ増えて残業代が支払われない従業員が増えることが懸念されます。

3.【従業員視点】働き方改革における3つの問題点

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働き方改革には、企業側だけではなく従業員に影響する問題点がいくつかあります。続いて、従業員から見た働き方改革における問題点を解説します。

残業代の削減(収入の減少)

働き方改革によって残業時間に上限が設定されたため、その分残業代が減り収入が減少します。企業としては人件費のコストカットが期待できますが、従業員側から見れば収入が減ってしまうため家計へ大きな負担がかかる可能性があります。

収入が減ると仕事へのモチベーションを保つのが難しくなったり、不満を抱いたりする従業員も出てくるでしょう。さらに、転職を検討する従業員が出てくる可能性もあります。

働き方改革は従業員側から見ると残業時間が削減できるメリットがありますが、一方で収入が減ってしまうため、導入に積極的なれない人もいるでしょう。

実質的な業務量が減るわけではない

働き方改革によって残業時間が減り、全体的な労働時間が減少します。働き方改革は業務量を減らす内容ではないため、今までと同じ業務量を少ない労働時間で行わなくてはいけません。

もし規定された残業時間内で業務が終わらない場合、サービス残業をする必要があります。また、無理に労働時間を削減すると、体力的・精神的に大きな負担がかかります。その結果、ミスへつながったり、最悪の場合は休職・退職に追い込まれたりする従業員が出てくる可能性があるでしょう。そのため、無理に労働時間を削減するのではなく、業務量に合った働き方改革を進めることが大切です。

従業員間での作業の負担に不公平さがでる

働き方改革を導入すると、従業員間の作業負担に不公平さが生じます。例えば、労働時間が減少したことにより業務の効率化が求められると、処理能力の高い優秀な従業員に仕事が集中して大きな負担がかかります。

また、リモートワークやフレックス制度など柔軟な働き方が導入されると、管理職は部下の管理が難しくなるので通常業務とは別で作業が発生する可能性があるでしょう。

働き方改革によって一部の人に負担が偏り、かえって生産性の低下をもたらす懸念が生じます。

4.働き方改革の問題点を解決する3つのポイント

【必見】働き方改革における6つの問題点|企業・従業員の視点から課題や解決策、メリットを解説

働き方改革をスムーズに推進するためには、懸念される問題点を事前に回避する準備をしておくと良いでしょう。この章では働き方改革の問題点を解決するポイントを解説します。これから働き方改革を進めようと考えている企業の方は、スムーズに進めるためにもぜひ参考にしてみてください。

現状分析とゴールの共有

働き方改革の問題点を解決するためには、現状把握が大切です。社内の課題や現場の状況などを分析することで、より良い解決策を見つけられるでしょう。

現状を知るために、実際に現場で働いている従業員の方にヒアリングをしてみてください。社内の課題をあぶり出し、どのような改革が必要なのか検討しましょう。

現状分析をしたら、働き方改革のゴールとそれまでのステップを設定し、社内で共有してみてください。社内で共有することで従業員の目的意識が高まり、ゴールに向けてのモチベーションを維持できます。

既存のワークフローの撤廃と構築

働き方改革のゴールとステップを設定したら、現在のワークフローの見直しをしましょう。これまでのワークフローとゴールの内容によっては、廃止を含めた抜本的な見直しが必要です。ゴールを達成するためのワークフローを再構築し、より効率的な生産過程をつくりましょう。

新しいワークフローに置き換えるまでのロードマップを作成すれば、従業員の人にも分かりやすく、スムーズに改革が行えます。働き方改革は従業員の理解も必要なので、社内共有をしながら進めていきましょう。

時間対生産性の向上

労働時間が限定されたり成果で評価されたりするようになると、短い時間でどのくらい効率よく業務を行えるかが重要になります。業務の効率化を図るために、システム・ツールの導入を検討してみましょう。

システム・ツールを導入することで、業務を省略化できます。特に紙を使う業務や経理や総務、人事などの手間のかかる作業をサポートしてくれるシステム・ツールの導入がおすすめです。

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5.働き方改革を推進する4つのメリット

【必見】働き方改革における6つの問題点|企業・従業員の視点から課題や解決策、メリットを解説

働き方改革を進めるときには問題点が発生しますが、うまく導入できれば下記のようなメリットがあります。

  • ・長時間労働の是正
  • ・環境整備・満足度の向上
  • ・生産性の向上
  • ・優秀な人材の確保

この章では、働き方改革を進めるメリットについて詳しく解説します。社内で働き方改革を推進する際に、どのようなメリットがあるのか理解してもらいながら進めてみましょう。

長時間労働の是正

働き方改革関連法の改正によって残業時間に上限が設けられたため、働き方改革を行うことで今までよりも早く帰宅できるようになります。プライベートの時間が増え、自分の好きなことをしたり家族と過ごしたりする時間が取れるため、ストレスの軽減につながるでしょう。

また、適度な休息が取れれば、健康的に仕事を続けられます。結果として、仕事のパフォーマンス向上やモチベーション維持も期待できます。

環境の整備と満足度の向上

働き方改革では、働きやすい職場環境や公平な賃金を目指します。社内環境が整備され働きやすい職場になれば、従業員の満足度向上が期待できます。従業員の満足度が向上すれば、仕事へのモチベーションにもつながるでしょう。

また、満足度が高ければ離職率の低下が期待できます。さらに働きやすい職場は採用活動の場でもアピール材料になるので、入社希望者が増加する可能性もあります。

生産性の向上

働き方改革のメリットのひとつとして、生産性の向上が挙げられます。ワークフローの見直しが行われ、短時間で業務ができるようになれば、生産性の向上が期待できるでしょう。

企業全体の生産性が向上すれば、結果として費用対効果の改善や人件費のコストカットにもつなげられます。

優秀な人材の確保

働き方改革によって柔軟な働き方が導入されれば、介護・育児と仕事を両立する人や遠隔地に住む人など雇用できる人材の幅が広がります。優秀な人材を確保できる確率が上がり、結果として生産性向上につながる可能性があります。.

また、各従業員の雇用形態にかかわらず正当な評価と報酬を与えることで、仕事へのモチベーション維持や企業への貢献度アップも期待できるでしょう。

6.働き方改革の導入における2つの注意点

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さまざまなメリットがある働き方改革ですが、導入にあたって注意すべき点があります。この章では働き方改革導入時の注意点を解説するので、担当者の方は理解しておきましょう。

長期的な改善が必要

働き方改革を進めるときは、長い目で見るようにしましょう。ほとんどの従業員は過去のワークフローで業務を行うのに慣れているので、理解を得たり慣れたりするまでに時間がかかります。

また、実際に働き方改革を導入しても、すぐに成果が出ない可能性もあるでしょう。新しいワークフローを根付かせるためには長期的な目線で、根気強く働き方改革を進めていくことが大切です。

トップダウンによる社内の統率が必要

働き方改革は、現場や上層部などの一部で進めてもうまくいかない可能性があります。現状分析をして会社全体の課題を洗い出し、抜本的な改革を進める必要があります。

そのため、現場のみで進めるのではなく、ある程度の権限を持ったトップダウンの人間が統率を取りながら、社内全体で改革を行うことが大切です。トップダウンの人間が現場へ説明し理解を得ながら進めると、働き方改革がスムーズに浸透しやすいでしょう。

7.働き方改革の問題点を把握して円滑に導入しよう

【必見】働き方改革における6つの問題点|企業・従業員の視点から課題や解決策、メリットを解説

働き方改革は、長時間労働の是正や賃金格差の解消などを目的とした政策です。働き方改革を進めることは大切ですが、導入時に問題点が発生する可能性があります。

労働基準法の改正によって残業時間の上限が設けられ、今までよりも短い時間で同じ業務量をこなす必要が出てきます。そのため、限られた時間で業務をこなせるように、ワークフローの再構築やシステム・ツールの導入などを行い効率化を図ることが大切です。

また、働き方改革は、導入してすぐに成果が出るとは限りません。長期的な目で見て、改革を進めていきましょう。

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この記事を書いた人

NTT東日本 ビジネス開発本部 北森雅雄

NTT東日本に入社後、自治体向けのシステムエンジニアとして、庁内ネットワークや公共機関向けアプリケーションなどのコンサルティングからキャリアを開始。

2018年から現職にて、プロダクト(SaaS)開発、デジタルマーケティング全般のディレクションに従事。

2022年に業務のデジタル化を分かりやすく発信するオウンドメディア(ワークデジタルラボ)のプロジェクトを立ち上げ。
NTT東日本にかかわる、地域のみなさまに向けてデジタル化に役立つ情報発信を展開。

北森雅雄 masao kitamori