| Writer:NTT東日本 北森 雅雄(Masao Kitamori)

働き方改革に成功した企業の取り組み事例5選!概要や目的、導入のメリットを徹底解説

働き方改革に成功した企業の取り組み事例5選!概要や目的、導入のメリットを徹底解説



昨今、政府は働き方改革を推進し、多くの企業が社員の労働環境改善を進めようとしています。しかし、具体的にどのようなしくみを導入すれば良いのか分からない担当者の方もいるでしょう。

そこで今回の記事では、実際に働き方改革を導入して成果を出した企業の事例を紹介します。あわせて、働き方改革の概要やメリットも解説しますので、企業の担当者の方はぜひ最後までお読みください。

1.働き方改革とは?概要を解説

働き方改革に成功した企業の取り組み事例5選!概要や目的、導入のメリットを徹底解説

働き方改革が推進されている理由に、いま日本が直面している問題があります。この章では、働き方改革の基本的な知識から、背景や目的を詳しく解説します。

基礎知識

「働き方改革」とは、日本企業の多くに蔓延している長時間労働の削減や、個人が多様な働き方を選べるしくみの実現など、働き手の労働環境を見直して改善するための改革です。

また、政府は2018年7月6日に「働き方改革関連法」を公布しました。2019年4月から順次施行され、さまざまな法改正がなされ、社会全体で働き方改革が進められています。

必要とされる背景

政府が働き方改革を進めている背景には、日本における以下の3つの問題があります。

  • ・出生率低下
  • ・労働力不足
  • ・生産性の低さ

日本の出生率は年々低下し、人口は減少の一途をたどっています。人口が減ると、労働力不足から生産性も低下し、日本の経済が悪化してしまいます。これらの問題を解消すべく、働き方改革が始まりました。

目的となる「3つの柱」

働き方改革には3つの目的があります。「3つの柱」とも呼ばれ、以下のような内容です。

  • ・長時間労働の是正
  • ・正規・非正規間の格差解消
  • ・多様で柔軟な働き方の実現

多くの日本企業で残業や休日出勤が蔓延し、長時間労働が問題となっています。また、正規雇用と非正規雇用の間で待遇や賃金に格差があることも、長年問題視されています。さらには、育児や介護などの問題で、働く場所を自由に選べない人が多くいるのも事実です。

このような3つの柱を実現すべく、働き方改革が進められています。

2.働き方改革の実現に必要な4つの取り組み

働き方改革に成功した企業の取り組み事例5選!概要や目的、導入のメリットを徹底解説

働き方改革を導入するには、まずはどのような取り組みを行えば良いのかを把握する必要があります。そこで、働き方改革の実現に必要な取り組みを4つ紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

業務の効率化

まずは「無駄な業務はないか」「自動化できるものはないか」などを検討して、会社全体の業務効率化を進めることが必要です。業務効率化を進めれば、無駄な作業がなくなり、重要な業務に時間を使えるため、生産性の向上が期待できます。

業務効率化を実現する具体的な施策には、以下のようなものがあります。

  • ・業務のみえる化
  • ・自動化・効率化できるツールの導入
  • ・マニュアルの作成

業務のみえる化を行うことで、一つひとつの作業が必要か否かを判断でき、優先順位をつけて仕事に取り組めるようになります。業務の中に自動化や効率化が可能な業務があれば、最適なツールの導入で、労働時間の短縮が行えます。さらに、マニュアルを作成しておけば、無駄な確認作業を削減でき、属人化の解消も可能です。

長時間労働の削減

最悪の場合、過労死に至る可能性もある長時間労働は、優先的に改善策を考えるべき問題です。長時間労働を削減するための取り組みとしては、具体的に以下の施策があります。

  • ・休日出勤や残業の禁止
  • ・不要な会議の削減
  • ・決裁権限の簡素化

長時間労働が起こる原因は、休日出勤や残業などの時間外労働にあります。そこで会社として時間外労働を禁止して、必要な場合のみ上司に許可を取って行うルールを設けるのが良いでしょう。

また、メールや回覧によって削減できる会議は行わないようにするのも、長時間労働を削減する方法のひとつです。さらに、日本企業では決裁に人が関わりすぎて、決定までに時間がかかってしまうケースが多くあります。その場合は決裁権限を見直すことで、スピーディーに仕事に取り組めます。

賃金の引き上げ

政府は、同一労働同一賃金を実現させるためのガイドラインを作成しています。また、労働者の生活水準の引き上げのために、最低賃金の引き上げを指示しています。以下が、企業で賃金の引き上げを行うための具体的な施策です。

  • ・給与体系の見直し
  • ・評価制度の見直し
  • ・サービス残業の防止

まずは定期的に給与体系を見直し、社員が適正な給料を受け取れるようにしましょう。また、評価制度を見直して、評価基準や評価項目をより具体的にして公開すれば、社員は「正しい評価がされている」と満足感を持って働けます。タイムカードを導入し、残業時間にも適正な給料が発生する体制を作ることも、賃金の引き上げにつながります。

多様な働き方の導入

昨今、社会的に働き方の多様化が進んでいます。企業も働き方を自由に選択できる制度を取り入れて、社員にとって働きやすい環境を提供する必要があります。

以下が、多様な働き方導入のための具体的な施策です。

  • ・勤務時間選択制度の導入
  • ・リモートワークの導入
  • ・休暇制度の充実

フレックスタイム制や時短勤務制を取り入れて、勤務時間の選択を可能にすれば、社員は自分の生活に合わせて働けます。リモートワークの導入も、育児・介護と仕事の両立が実現できます。また、育児や介護を理由に休みが必要な場合があるので、休暇制度を充実させることも、多様な働き方の導入に向けて必要な施策です。

3.働き方改革の事例5選

働き方改革に成功した企業の取り組み事例5選!概要や目的、導入のメリットを徹底解説

働き方改革を実施している企業は、実際にどのような施策を導入して成果を出しているのでしょうか。この章では、企業の働き方改革における事例を5つ挙げています。ぜひ自社における導入の参考にしてください。

トヨタ自動車株式会社

日本最大手の自動車メーカーであるトヨタ自動車は、柔軟な働き方を整備して、生産性の向上を実現させた企業です。

トヨタ自動車では、社内で長時間労働が横行しているという課題がありました。そこで、2つの施策を取り入れました。テレワークや在宅勤務を奨励したことによる多様な働き方の実現と、ITツールを活用した業務の自動化です。この2つの施策により、長時間労働の削減に成功しました。

新たな働き方の浸透に力を入れ、全社員が活躍できる環境の整備を行い、生産性の向上が実現した事例です。

長崎大学病院

長崎大学病院では、看護師の有給取得の低さや残業の多さが問題視されていました。そこで、病院は看護師に「求める労働環境」のヒアリングを実施しました。

ヒアリングの結果から、看護師は「相談しやすい環境」を必要としているとわかりました。そこで、看護師同士の「声かけ」を奨励するために「声かけシート」を作成して配布しました。ほかの看護師への声かけができたときには用紙に記載して提出するルールです。

結果として、看護師間での声かけが生まれ、看護師同士のサポートが増えました。業務の分担が進み、一人で仕事を抱え込む看護師が減り、労働環境の改善に成功しました。

株式会社タニタ

タニタは、社員全員とフリーランスとして業務委託契約を結ぶという、雇用関係ではない会社と個人の新しい関係性の構築に成功した企業です。

会社の業績が悪いときに、本人の意向とは別に「退職・転職せざるを得ない」事態が発生するケースがあります。離職を防ぎ、社員のやる気が出るような仕掛けがタニタには必要でした。

そこで「社員全員をフリーランス化」という新しい試みを導入します。業務内容や報酬の定義、契約期間を明確化し、福利厚生や保険も、相当額を報酬制度に組み込みました。

その結果として、時間や場所、仕事の進め方など、自由に仕事ができるようになった半面、社員自身にも相応の責任と覚悟が生じ、仕事への取り組み方に変化が生じました。また、ほとんどの社員が、平均約3割弱の手取り額増加を実現しました。会社・社員の双方にとって、良い相乗効果をもたらした事例です。

株式会社ピコナ

アニメーション製作会社のピコナは、残業が通常化しているという課題を抱えていました。また、残業のイメージが強く、人材確保が難しいという現状もありました。

そこで「残業チケット制」の導入を決定しました。残業したいときに社長に「残業チケット」を提示して、本当に残業が必要かどうかを判断してもらい、残業できるかが決まる制度です。

制度の導入によって、社員はどうすれば勤務時間内に仕事が終わるかを考えながら、業務に取り組むようになりました。結果として、時間外労働の80%の削減に成功し、生産性の向上・長時間労働の削減につながりました。

株式会社テイクアンドギヴ・ニーズ

結婚式場を運営するテイクアンドギヴ・ニーズは、育児をしながら仕事を行っている社員に向けて、働きやすい環境を作り上げました。

ウエディングプランナーは平日の夜に打ち合わせが多く、結婚式本番は日曜祝日に執り行われます。しかし、その時間帯に子供を預かってくれる保育園が少ないのが現状です。

テイクアンドギヴ・ニーズには女性社員が多く所属し、ライフステージに対応した働き方のケアが必要でした。そこで、自社で企業主導型保育事業を立ち上げ、保育園を開園しました。夜9時30分まで開いていて、日曜祝日も託児できる園です。保育園は同業他社の社員も利用できます。

このように、出産後も働き続けられる場所として、子供を持つ親へ働きやすい環境の提供に成功しました。

4.働き方改革を導入する3つのメリット

働き方改革に成功した企業の取り組み事例5選!概要や目的、導入のメリットを徹底解説

働き方改革の導入によって、実際に会社にどのような影響があるのでしょうか。この章では、働き方改革導入のメリットを3つ紹介します。

生産性の向上

働き方改革の導入によって、長時間労働の削減や、個人の生活に合わせた柔軟な働き方を実現できます。労働時間が短縮されて休息の時間が増えたり、日々のストレスが減ったりして、仕事でも高い集中力を発揮できます。

その結果、短い労働時間でも生産性を上げられ、会社全体として業績のアップが可能です。

人材の定着

働き方の見直しによって社員の満足度を上げられれば、離職率を防ぎ、人材の定着につながります。長く働く人材が増加すれば、ノウハウの定着ができ、さらなる生産性向上も期待できます。

さらに、社員の離職率が低下すれば、採用活動や新人教育にかかるコストを削減できるのもメリットのひとつです。

企業イメージの向上

働き方改革を導入している会社は、いち早く改革を実施した企業として、イメージ向上が期待できます。企業イメージをアップできれば、優秀な人材を呼び込める可能性が高まるほか、顧客や取引先に対してもより良い印象を与えます。結果として、信頼の獲得につながり、さらなる業績のアップが可能です。

5.まとめ

働き方改革に成功した企業の取り組み事例5選!概要や目的、導入のメリットを徹底解説

働き方改革とは、働き手の労働環境を改善するための改革です。以下の「3つの柱」の実現を目指し、推進されています。

  • ・長時間労働の是正
  • ・正規・非正規間の格差解消
  • ・多様で柔軟な働き方の実現

政府が積極的に推進しているため、働き方改革を取り入れ始めている企業が増えています。中には自社特有のユニークな制度を導入している企業も存在します。働き方改革を導入する際には、自社が直面している問題や課題に合わせた施策を取り入れるのがおすすめです。

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この記事を書いた人

NTT東日本 ビジネス開発本部 北森雅雄

NTT東日本に入社後、自治体向けのシステムエンジニアとして、庁内ネットワークや公共機関向けアプリケーションなどのコンサルティングからキャリアを開始。

2018年から現職にて、プロダクト(SaaS)開発、デジタルマーケティング全般のディレクションに従事。

2022年に業務のデジタル化を分かりやすく発信するオウンドメディア(ワークデジタルラボ)のプロジェクトを立ち上げ。
NTT東日本にかかわる、地域のみなさまに向けてデジタル化に役立つ情報発信を展開。

北森雅雄 masao kitamori