| Writer:NTT東日本 北森 雅雄(Masao Kitamori)
働き方改革とは何か?概要や目的、関連法による変更点をわかりやすく解説!
現代社会では、労働者の長時間労働や休日出勤などさまざまな課題が話題になる機会が増えています。政府は「働き方改革」として、新たな法律を制定・施行し、労働環境の改善に取り組み始めました。
企業は「働き方改革」に伴い、自社の労働環境を改善し、労働者の就労意欲や生産性の向上を図る必要があります。ただし、どのような仕組み・目的があるのか、わからない方も多いでしょう。担当者は働き方改革についての基礎知識や施策を理解した上で労働環境の改善に取り組むべきでしょう。
今回の記事では、働き方改革について概要や目的、関連法による変更点をわかりやすく解説します。ぜひ最後までお読みください。
目次:
1.働き方改革とは?概要を解説
自社で働き方改革に取り組むにあたり、どのような仕組みであるのか知っておく必要があります。ここでは、働き方改革に関する基礎知識や背景について理解を深めましょう。
1基礎知識
働き方改革とは、労働に関する問題の解決や多様な働き方を行える労働環境を作る取り組みです。新たな取り組みにより、過度な労働を避けられるだけではなく、社会全体にも良い影響を与えます。
政府は「働き方改革」を進めており、2018年7月6日に「働き方改革関連法」を公布しました。順次、定められた法律が施行され、労働環境の改善に期待できるでしょう。
2背景
日本が働き方改革を行う背景として、さまざまな問題を抱えている点が挙げられます。今後、働き方改革を進める上で背景を知っておく必要があるでしょう。
- ・労働人口の減少
- ・労働生産性の低下
- ・長時間労働
1つずつ問題を確認しましょう。
労働人口の減少
日本は少子高齢化や出生率低下の影響により、総人口や生産年齢人口が減っています。そこで、65歳以上の高齢人口も含めた労働力の確保が求められます。高齢者であっても就労意欲と優れた能力を持った方が働ける環境作りが必要です。
労働生産性の低下
日本の労働生産性は、主要先進国の中で高くありません。労働生産性とは、労働者一人あたりの成果です。また、労働者の1時間あたりの成果も当てはまります。
働き方改革の労働生産性を高める取り組みとして、勤務間インターバルや年次有給休暇取得の義務化などが挙げられるでしょう。労働者一人あたりの成果を上げるためには、新たな取り組みが求められます。
長時間労働
労働者は長時間労働が続くことにより、心身の疲労が溜まってしまい、過労死に繋がる恐れがあるでしょう。働き方改革においては時間外労働に上限を設け、過度な労働を防ぐ取り組みを行っています。また、有給休暇の取得を義務化し、労働環境の見直しを図ります。
2.働き方の課題を解決する「3つの柱」
企業が働き方改革を推進するためには、いくつかの課題に向き合わなければなりません。働き方の課題を解決する3つのポイントを以下に挙げています。
- ・長時間労働の是正
- ・正規・非正規の格差解消
- ・多様な働き方の実現
働き方の課題を解決するべき点を項目ごとに見ていきましょう。
1長時間労働の是正
企業は、労働者の長時間労働を是正しなければなりません。中小企業ではサービス残業が発生しやすい環境に陥っているリスクがあります。
労働者1人当たりの労働量が増えた結果、長時間労働に繋がってしまいます。そして、サービス残業や休日出勤をせざるを得ない状況になる可能性があります。
長時間労働は、労働者の体調不良や怪我を引き起こすケースがあるでしょう。さらに。現社員が退職してしまい、人手不足による悪循環が生じる場合もあります。
長時間労働は企業だけではなく、労働者にも悪影響を及ぼします。
2正規・非正規の格差解消
企業では正規社員と非正規社員の賃金・待遇には格差が生じており、解消への取り組みが求められます。日本国内の正規社員と非正規社員の賃金格差は欧米諸国と比べ、差が大きいです。
雇用形態ごとの待遇の違いは、労働者の就労意欲に影響し、生産性の低下に繋がる恐れがあります。働き方改革により、正規社員と非正規社員との間の格差が解消されると就労意欲や生産性の向上に期待できます。
企業は労働者のモチベーションを向上させ、会社への貢献にしてもらえる環境を整えましょう。
3多様な働き方の実現
多様な働き方を実現できれば、労働不足の解消に繋がる可能性があります。日本は少子高齢化に伴い、深刻な労働不足に陥っています。労働不足を解決するためには、高齢者の就労を促進する点が課題になるでしょう。
企業の中には定年制を設けているケースが多いです。高齢者の就労への促進を妨げる要因になりかねないため、早急な対策が求められます。企業は高齢者が働きやすい労働環境を整え、労働不足の解決に繋げましょう。
3.働き方関連法による主な変更点8選
働き方改革関連法の正式名称は、働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律です。新たな法律により、「労働基準法」「労働安全衛生法」「労働者派遣法」などが法改正されました。
- ・残業時間の上限規制
- ・勤務間インターバル制度の導入
- ・年次有給休暇の取得
- ・割増賃金率の引き上げ
- ・同一労働・同一賃金
- ・「フレックスタイム制」の清算期間延長
- ・高度プロフェッショナル制度(特定高度専門業務・成果型労働)
- ・産業医・産業保健機能の強化
働き方関連法による変更点を項目ごとに紹介します。
1残業時間の上限規制
法改正により、残業時間の上限が導入され「月45時間かつ年360時間」と定められました。時間外労働の上限を規制すると、労働者の過度な労働を防げます。ただし、特別な事情がある場合はその限りではありません。
臨時的に特別な事情があり企業と労働者の間で労使の労使があった場合は、以下の範囲での労働が認められています。
- ・年720時間以内
- ・月100時間未満
- ・複数月の平均残業時間が80時間以内
上記は休日労働も含んだ上での許容範囲です。仮に、許容範囲を超えた場合は「6カ月以下の懲役もしくは30万以下の罰金」が科せられます。
企業は法律に定められた残業時間を把握し、自社の労働者に対して適用しましょう。
2勤務間インターバル制度の導入
企業は労働者の過度な労働を防ぐために勤務間インターバル制度を導入し、休息時間等の確保に努めなければなりません。勤務間インターバル制度とは、終業から勤務までに一定時間以上の休息期間を確保する仕組みです。
企業は勤務間インターバル制度を導入し、労働者の生活時間や睡眠時間を確保できるように取り組む必要があります。
3年次有給休暇の取得
労働基準法の改正により、企業は労働者に対し年次有給休暇を取得させなければなりません。2019年4月以降、10回以上の法定の年次有給休暇がある労働者は、年5日分を取れます。法改正前は年次有給休暇を消化する義務について規定がありませんでした。
法改正の目的としては、労働者が年次有給休暇を取りやすくするためです。企業は該当する労働者に対し、本人の希望を考慮した上で年次有給休暇を取得させる必要があるでしょう。
4割増賃金率の引き上げ
法改正後、中小企業は月60時間を超える時間外労働に関する割増賃金率の引き上げを行う必要があります。従来、月60時間超の時間外労働の場合は大企業が50%、中小企業が25%の割増賃金率と定められていました。
2023年4月以降は大企業や中小企業を問わず、50%の割増賃金率が適用されます。中小企業は労働者が60時間を超える時間外労働を行った場合に50%の割増賃金率を適用した上で、賃金を支払わなければなりません。
5同一労働・同一賃金
法改正により同一労働・同一賃金の考えの下、正規社員や非正規社員(短時間・有期・派遣など)の雇用形態による待遇の差を禁止しました。
事業者は正規社員と非正規社員の両者に差を設けずに、同一の労働・賃金にしなければなりません。
6「フレックスタイム制」の清算期間延長
フレックスタイム制の労働時間の清算期間に関して、1ヵ月から3ヵ月に延長されました。改正前よりも清算期間が長くなり、労働者は労働時間を調整できるようになりました。
例えば、5月の勤務時間が法定労働時間を30時間超えた場合、7月に会社を欠勤した際にその分を振り替えられます。
法改正により、労働者は柔軟な働き方が行いやすくなるでしょう。
7高度プロフェッショナル制度(特定高度専門業務・成果型労働)
高度な専門知識が必要にある業務の場合、職務の範囲が明確かつ一定以上の年収がある労働者は、労働基準法の規定に縛られない働き方を認められています。一定基準を満たした労働者が自由な働き方ができる制度を「高度プロフェッショナル制度」と呼んでいます。
事業主は労働者の健康を管理する義務を負っています。高度プロフェッショナル制度を適用するためには、労使委員会の決議と本人の同意が必要です。
8産業医・産業保健機能の強化
労働安全衛生法の改正で、事業者は労働者の健康確保を行う対策を強化しなければなりません。また、産業医が働く環境を整え、産業医・産業保健機能の強化も求められます。
事業者は、労働者の健康に関する情報を適切に取り扱い、健康相談・診察を受けられる体制を整える必要があります。
4.働き方改革を推進する具体的な施策4選
働き方改革により、企業の中には労働環境の改善へ意識が高まったケースもあるでしょう。具体的な施策としては、以下の取り組みが挙げられます。
- ・労働時間の見直し
- ・賃金の見直し
- ・柔軟な働き方の導入
- ・ITツールの導入
企業が取り組むべき対策を項目ごとに紹介します。
1労働時間の見直し
労働者の労働時間は、働き方改革を推進する上で重要な項目です。企業は、法定労働時間以外の時間外労働に関しても確認が必要です。時間外労働は場合によって、過労死や怪我などに繋がる可能性があります。
企業は労働者の残業時間や休日出勤日数などをチェックし、長時間労働を削減する施策を取り入れましょう。各労働者の労働時間を把握すると、社内全体の労働時間の改善にも期待できます。
2賃金の見直し
賃金の見直しは、労働者の健康や安定した生活を保つために必要な取り組みです。また、正規社員や非正規社員の収入格差を防ぎ、仕事へのモチベーションを高める効果もあります。
政府は、同一労働同一賃金を実現させるためにガイドラインを作成しています。さらに、労働者の生活水準引き上げるために賃金を年率3%前後引き上げるように指示を出しています。企業はガイドラインに則り、賃金等の見直しに着手する必要があるでしょう。
- ・給与体系の見直し
- ・評価制度の見直し
- ・サービス残業の防止
既に、上記の施策に取り組んでいる企業も存在します。今後、賃金の見直しを行う場合は、3つの施策に取り組んでみましょう。
3柔軟な働き方の導入
現代社会では働き方が多様化し、柔軟な働き方の導入が必要です。企業においては多様化を取り入れ、労働者の働きやすい環境を提供する取り組みが求められます。柔軟な働き方を導入した結果、社員の定着や生産性向上に繋がるでしょう。
- ・勤務時間選択制度の導入
- ・テレワークの導入
- ・休暇制度の充実
新型コロナウイルス感染症の影響により、テレワークを導入した企業は多く存在します。テレワークは場所や時間を問わずに働けるスタイルであり、総務省も推進している施策です。
ただし、テレワークの導入により、社員同士のコミュニケーションやデータ共有などのさまざまな問題が起きるケースもあります。問題解決に繋げる方法として、ITツールの導入が挙げられます。有効な方法の1つであるため、ITツールの導入を検討しても良いでしょう。
4ITツールの導入
ITツールの導入は働き方改革を進める上で、重要な取り組みです。生産性の向上において、ITツールの導入は有効であり、良い影響を与えるでしょう。
ITツールの導入は、企業の人手不足の解消や業務の効率化などの根本的な課題の解決に繋げられます。さらに、社員間のコミュニケーションの円滑化やワークバランスの実現などのメリットを受けられるでしょう。
5.働き方改革を推進する3つのメリット
働き方改革を推進する企業は、さまざまなメリットを受けられます。社内の労働環境の改善を目指している場合は働き方改革に取り組む前に、どのような恩恵があるのか確認しましょう。
- ・生産性の向上
- ・人材採用力の向上
- ・離職率の低下
働き方を推進するメリットを項目ごとに見ていきましょう。
1生産性の向上
働き方改革を推進した場合、長時間労働の是正や業務効率化に繋がります。労働者は労働時間が短縮され、プライベートの時間を確保できます。プライベートの時間を確保できると心身の疲れが取れやすくなり、短い労働時間でも高い生産性を上げられるでしょう。
2人材採用力の向上
労働者の働き方を見直した企業は、魅力のある会社に変わる可能性があります。見直しを行った結果、優秀な人材を呼び込めるでしょう。また、新たな人材の確保だけではなく、現社員に長く働いてもらえる環境が整います。
働き方改革は、人材を集めると同時に労働環境の改善に繋がります。さらに、新たな知識や技術が定着し、生産性向上にも期待できるでしょう。
3離職率の低下
企業が働き方を改善すると、社員の離職率の低下に期待できます。改善点として、「ワークライフバランス」「労働環境の整備」「柔軟な働き方」が挙げられます。
3つのポイントを改善すると、労働者の働きやすい環境を整えられるでしょう。労働環境を改善した結果、自社の離職率が減少し、長期間働いてもらえます。さらに、身につけた知識や技術を発揮し、企業の生産性の向上に期待できます。
6.まとめ
働き方改革は企業の労働環境のみならず、日本全体の労働を改善する取り組みと言えるでしょう。日本は少子高齢化や生産性の低下により、新たな働き方への取り組みが求められています。
企業は自社の労働者が安全かつ安心して働けるように、今後の働き方を見直す必要があります。働き方改革関連法案に則り、労働時間や休日などの見直しを行ってください。さらに、ITツールの導入を行い、効率的かつ柔軟な働き方を目指してみましょう。
また、社内における働き方改革の推進には「おまかせ はたラクサポート」「コワークストレージ」や手書き書類をCSVに変換できる「AIよみと〜る」といったサービスをセット導入することがおすすめです。NTT東日本では、これらのクラウドサービスに関する使い方やサポート対応をセットにして提供しています。また、無料で体験可能な「DX無料体験プログラム」を用意しています。興味のある方は、ぜひ以下のリンクから詳細をご覧ください。
この記事を書いた人
NTT東日本 ビジネス開発本部 北森雅雄
NTT東日本に入社後、自治体向けのシステムエンジニアとして、庁内ネットワークや公共機関向けアプリケーションなどのコンサルティングからキャリアを開始。
2018年から現職にて、プロダクト(SaaS)開発、デジタルマーケティング全般のディレクションに従事。
2022年に業務のデジタル化を分かりやすく発信するオウンドメディア(ワークデジタルラボ)のプロジェクトを立ち上げ。
NTT東日本にかかわる、地域のみなさまに向けてデジタル化に役立つ情報発信を展開。