IT導入補助金はインボイス制度対応に活用できる!要件や申請手続きの流れについて解説
会計ソフトやPOSレジなど、インボイス制度に対応するためにはITツールの導入が必要です。IT導入補助金を活用して、インボイス制度対応にかかる費用負担を抑えたいという企業は多いのではないでしょうか。
インボイス制度は2023年10月から導入されますが、当初は2023年3月末までの申請を求められていました。しかし、登録の進捗状況が遅れているなどの理由で、9月末まで期限が延長されています。
今回の記事では、IT導入補助金をインボイス制度対応に活用する要件や手順についてわかりやすく解説します。これまで補助金を申請した経験がなくても理解できる内容になっているので、ぜひ参考にしてください。
1.インボイス制度への対応はIT導入補助金(デジタル化基盤導入枠)の対象となる
IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠には、以下の3種類があります。
- ・デジタル化基盤導入類型
- ・複数社連携IT導入類型
- ・商流一括インボイス対応類型
このうち、インボイス制度対応に関するITツール導入は「デジタル化基盤導入類型」に申請が可能です。補助率はかかった経費によって異なります。50万円以下で最大3/4、50万円〜350万円は最大2/3で、下限はありません。
2.IT導入補助金(デジタル化基盤導入枠)の概要
IT導入補助金(デジタル化基盤導入枠)の押さえておくべき基本情報は、以下のとおりです。
- ・対象事業者
- ・対象のITツール
- ・補助額・補助率
自社や導入したいツールが対象になるか確認しましょう。それぞれ順番に解説します。
2-1.対象事業者
IT導入補助金(デジタル化基盤導入枠)の対象となるのは中小企業・小規模事業者(個人事業主を含む)などです。
<中小企業>
業種・組織形態 |
資本金(資本の額または出資の総額) |
従業員(常勤) |
|
資本金・従業員規模の一方が、右記以下の場合対象(個人事業を含む) |
・製造業 ・建設業 ・運輸業 |
3億円 |
300人 |
卸売業 |
1億円 |
100人 |
|
サービス業(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く) |
5,000万円 |
100人 |
|
小売業 |
5,000万円 |
50人 |
|
ゴム製品製造業(自動車、航空機用タイヤ、チューブ製造業、工業用ベルト製造業を除く) |
3億円 |
900人 |
|
ソフトウェア業または情報処理サービス業 |
3億円 |
300人 |
|
旅館業 |
5,000万円 |
200人 |
|
その他の業種(上記以外) |
3億円 |
300人 |
|
その他の 法人 |
・医療法人 ・社会福祉法人 ・学校法人 |
– |
300人 |
・商工会 ・都道府県商工会連合会 ・商工会議所 |
– |
300人 |
|
・社会保険労務士法人 ・弁護士法人 ・税理士法人 |
– |
50人 |
<個人事業主>
業種・組織形態 |
従業員(常勤) |
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く) |
5人以下 |
サービス業のうち宿泊業・娯楽業 |
20人以下 |
製造業その他 |
20人以下 |
補助金対象となる要件を自社が満たしているか、事前に確認しましょう。
2-2.対象のITツール
IT導入補助金(デジタル化基盤導入枠)で対象となるITツールは、以下の3種類です。
- ・ソフトウェア購入費
- ・クラウド利用料
- ・導入関連費
また、デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)では、上記に加えて以下のハードウェア購入費も対象となります。
- ・PC
- ・タブレット
- ・プリンター
- ・スキャナー
- ・複合機
対象機器の追加によって、インボイス制度対応に関するITツール導入に広く活用できます。
2-3.補助額・補助率
IT導入補助金(デジタル化基盤導入枠)の補助額・補助率は、以下のとおりです。
補助対象経費区分 |
・ソフトウェア購入費 ・クラウド利用料(最大2年分) ・導入関連費 |
|
補助率 |
3/4以内 |
2/3以内 |
上限額・下限額 |
(下限なし)~50万円以下 |
50~350万円 |
IT導入補助金2023から補助下限額が撤廃され、安価なITツールでも支援対象となりました。
3.IT導入補助金2023の申請スケジュール
IT導入補助金は4月から順次受付を開始しており、締め切りまでに申請を完了させる必要があります。6次締め切りまでのスケジュールは、以下のとおりです。
1次締め切り |
締め切り日 |
4月25日(火)17:00 |
交付決定日 |
5月31日(水) |
|
事業実施期間 |
交付決定~ 11月30日(木)17:00 |
|
事業実績報告期限 |
11月30日(木)17:00 |
|
2次締め切り |
締め切り日 |
5月16日(火)17:00 |
交付決定日 |
6月21日(水) |
|
事業実施期間 |
交付決定~ 11月30日(木)17:00 |
|
事業実績報告期限 |
11月30日(木)17:00 |
|
3次締め切り |
締め切り日 |
6月2日(金)17:00 |
交付決定日 |
7月11日(火)(予定) |
|
事業実施期間 |
交付決定~ 11月30日(木)17:00 |
|
事業実績報告期限 |
11月30日(木)17:00 |
|
4次締め切り |
締め切り日 |
6月20日(火)17:00 |
交付決定日 |
8月1日(火)(予定) |
|
事業実施期間 |
交付決定~ 11月30日(木)17:00 |
|
事業実績報告期限 |
11月30日(木)17:00 |
|
5次締め切り |
締め切り日 |
7月10日(月)17:00 |
交付決定日 |
8月23日(水)(予定) |
|
事業実施期間 |
交付決定~ 11月30日(木)17:00 |
|
事業実績報告期限 |
11月30日(木)17:00 |
引用元:スケジュール|IT導入補助金2023
※2023年7月19日時点
申請スケジュールは都度更新されるため、最新情報はIT導入補助金の公式Webサイトで確認してください。
4.IT導入補助金をインボイス制度対応に活用する手続き7ステップ
IT導入補助金を申請する手続きの流れは、以下の7ステップです。
- ・IT導入支援事業者とITツールを選択する
- ・gBizIDプライムを取得する
- ・交付を申請する
- ・事業を開始する
- ・事業実績を報告する
- ・補助金の交付手続きをする
- ・事業の実施効果を報告する
あらかじめ申請の流れを理解しておくことで、スムーズな手続きの完了につながります。それぞれ順番に見ていきましょう。
4-1.IT導入支援事業者とITツールを選択する
IT導入支援事業者とは、中小企業や小規模事業者がスムーズにITツールを導入できるよう、説明や手続きを通じてサポートする事業者です。まず申請者は「課題を解決できるITツール」と「目的に合ったサービス」を提供している支援事業者を選択する必要があります。
NTT東日本では、IT導入補助金の相談サポートを行っています。補助金をうまく活用できれば、法改正への対応にかかるコストの軽減が可能です。IT導入補助金の申請にお悩みの企業担当者の方は、NTT東日本までお気軽にお問い合わせください。
4-2.gBizIDプライムを取得する
gBizIDとは、複数の行政サービスを1つのアカウントで利用できる認証システムを指します。IT導入補助金を申請するためには、3種類のGビズIDのうち「gBizIDプライム」の取得が必要です。
申請からID発行までは、およそ2週間かかります。取得に時間がかかっても対応できるよう、はやめに手続きしておくと良いでしょう。
4-3.交付を申請する
gBizIDプライムの取得後、必要な情報をそろえて交付申請を作成します。申請者ごとに必要な書類は以下のとおりです。
<共通>
- ・取引先アカウント一覧
<申請者が法人の場合>
- ・履歴事項全部証明書
- ・法人税の納税証明書(その1またはその2)
<申請者が個人事業主の場合>
- ・運転免許証または運転経歴証明書または住民票
- ・所得税の納税証明書(その1またはその2)
- ・確定申告書
交付申請は、申請者が事務局へ提出します。提出された交付申請は外部機関によって審査され、採否が決定します。
4-4.事業を開始する
採択となった申請者は「交付決定通知」を受け「補助事業者」となります。補助事業者に採択されると、補助事業をスタートできます。のちの実績報告の際に必要となる情報は、事業開始前に把握しておきましょう。
なお、事業に係る証憑はすべて保管しておかなければなりません。もし、実績報告の際に必要な書類が添付できなかった事業者は、補助の対象外となります。
4-5.事業実績を報告する
実施した事業内容を、事務局へ報告します。実績報告が提出されるまでに、すべてのITツールにおいて「事業」が完了し、ITツールの利用・運用が開始されていなければなりません。
報告された内容は、事務局にて確定検査を受ける仕組みです。事務局から立ち入り検査やヒアリングを求められた際には、対応する必要があります。
4-6.補助金の交付手続きをする
事業実績報告が完了して補助金額が確定すると、申請マイページで補助額を確認できます。補助金が交付されるのは、マイページの内容を承認したあとです。承認が遅れて手続きが滞らないよう、注意しましょう。
承認した内容が事務局で処理されると、補助金が交付されます。補助事業者への交付前には、事務局から「補助金額確定の通知」が発せられます。
4-7.事業の実施効果を報告する
補助事業者は、定められた報告期間内に事業実績効果報告を申請します。デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)のスケジュールは、以下のとおりです。
- ・事業実施効果報告対象期間:ITツール導入後~
- ・事業実施効果報告期間:2025年1~3月
申請マイページに必要情報を入力し、IT導入支援事業者の確認を済ませたのち提出しましょう。実績効果の報告が完了すると、IT導入補助金の手続きは完了です。
5.IT導入補助金をインボイス制度対応に活用する際の3つの注意点
IT導入補助金をインボイス制度への対応に活用するためには、3つの注意点があります。
- ・事業開始のタイミング
- ・複数申請の制限
- ・IT導入補助金2022で交付決定を受けた事業者の制限
「重複」や「事業開始のタイミング」といった基本的な注意点を、しっかり理解しておきましょう。それぞれ順番に解説します。
5-1.事業開始のタイミング
補助事業を開始できるのは、補助金の交付決定後のみです。採否結果が通知され、交付決定となる前に以下の業務を進めた場合、補助金の対象外となります。
- ・契約
- ・発注
- ・納品
- ・請求
- ・支払いなど
交付決定とは、採択された申請者に事務局から通知される「交付決定通知」を指します。ほかの要件を満たしていても、事業開始の順番が前後すると申請が認められないため注意が必要です。
5-2.複数申請の制限
同一の支援事業者から申請する場合、同じITツールを通常枠(A・B類型)とデジタル化基盤導入類型の両方には申請できません。また、同じ枠や類型での複数申請は不可です。具体的な例は、以下のとおりです。
<NG例>
- ・通常枠(A類型)+通常枠(B類型)
- ・デジタル化基盤導入類型+商流一括インボイス対応類型
- ・セキュリティ対策推進枠+セキュリティ対策推進枠
<OK例>
- ・通常枠(A類型)+デジタル化基盤導入類型+セキュリティ対策推進枠
- ・通常枠(B類型)+商流一括インボイス対応類型
支援事業者とよく相談・確認のうえITツールを選定しましょう。
5-3.IT導入補助金2022で交付決定を受けた事業者の制限
IT導入補助金2022のデジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型および複数社連携IT導入類型)で交付決定を受けた事業者(グループ構成員を含む)は、申請期間に制限がかかります。交付決定日から12ヶ月以内はIT導入補助金2023のデジタル化基盤導入枠(商流一括インボイス対応類型)に申請できません。
また、ほかの補助金との併用も同様の制限を受ける可能性があります。該当する場合は、事務局に確認を取りながら申請を進めることが重要です。
6.IT導入補助金の申請にお悩みの方はNTT東日本にご相談ください
NTT東日本ではIT導入補助金や事業再構築補助金など、補助金申請のサポートを行っています。補助金申請に関する疑問の解決からITツールを使った業務効率化のご提案まで、インボイス制度対応にまつわるお悩みをまとめて解決可能です。
いまなら、インボイス制度への対応について解説したガイドブックを配布しています。IT導入補助金の申請にお悩みの企業担当者の方は、以下のリンクからぜひダウンロードしてください。
7.まとめ
インボイス制度への対応に関するITツール導入は、IT導入補助金「デジタル化基盤導入枠」の対象です。対象のITツールや登録手順を理解して、法改正にかかる支出や手間の軽減に役立てましょう。
NTT東日本ではIT導入補助金や事業再構築補助金など、補助金のサポートを行っています。IT導入補助金の申請にお悩みの企業担当者の方は、NTT東日本までお気軽にお問い合わせください。