| Writer:NTT東日本 北森 雅雄(Masao Kitamori)
【2022年最新】個人事業主がIT導入補助金を申請する8ステップ!申請条件や必要書類を紹介
現代では、さまざまな業務でITツールによる効率化が行われています。2017年にはITツールの導入を支援する「IT導入補助金」制度が開始され、中小企業や個人事業主など、さまざまな方に利用されています。
一方で「個人事業主でもIT導入補助金が申請できるのかを知りたい」「申請方法がわからない」という方は多いのではないでしょうか。そこで、今回の記事では、個人事業主の方に向けたIT導入補助金の申請条件や申請方法を解説します。ITツールの導入を考えている個人事業主の方は必見の内容なので、ぜひ最後までお読みください。
目次:
1.IT導入補助金とは?個人事業主が対象となる条件も紹介
IT導入補助金は、ITツールを導入しようと考えている企業に広く活用されている制度です。一方で「制度の名前は聞いたことがあるが具体的にどのようなものかわからない」という方もいるのではないでしょうか。この章では「IT導入補助金の詳細」「個人事業主が対象になる条件」について解説します。
1IT導入補助金とは
IT導入補助金は、中小企業と小規模事業者を対象とした、ITツールの導入費用を一部負担する制度です。ITツールの導入による、業務の生産性向上を目標としています。
IT導入補助金は2017年に始まった制度で、補助の対象となるものは以下のとおりです。
- ・ソフトウェア
- ・拡張機能
- ・セキュリティソフト
- ・ハードウェア
自社の課題に適したITツールを選択し、生産性の向上を目指しましょう。
2個人事業主が対象になる条件
IT導入補助金は、中小企業と小規模事業者が対象の制度です。個人事業主は小規模事業者にあたるため、IT導入補助金の申請が可能です。ただし、個人事業主が申請を行うためには、以下の条件を満たしている必要があります。
- ・日本国内で事業を行っている
- ・事業場内で最も低い賃金が地域別の最低賃金以上に設定されている
- ・商業・サービス業(宿泊業・娯楽業以外)の場合は従業員が5人以下
- ・宿泊業・娯楽業の場合は従業員数が20人以下
- ・製造業の場合は従業員数が20人以下
また、上記の条件を満たしている場合でも、申請には納税証明書や給与支給総額・労働生産性指標の情報が必要になるため、開業してすぐの申請は困難です。
2.個人事業主が申請できるIT導入補助金の3つの種類
IT導入補助金は、いくつかの申請区分に分けられています。この章では、個人事業主が申請できるIT導入補助金の種類とその上限額や対象ツールについて解説します。「どの枠に申請すれば良いのか分からない」という方はぜひ参考にしてみてください。
1通常枠(A・B類型)
通常枠では、業務の効率化や人手不足の解消など、自社の課題解決を目的としたITツールの導入を支援しています。通常枠には「A類型」と「B類型」の2種類があり、補助額や導入するITツールの数で分けられています。A類型の補助金額は30〜50万円で、B類型の補助金額は150〜450万円です。
通常枠の対象となるITツールは以下の3種類です。
- ・ソフトウェア
- ・オプション(拡張機能やデータ連携ツール)
- ・役務(導入コンサルティングや保守サポート)
補助対象となるITツールの詳しい条件やカテゴリーの分類はIT導入補助金2022「申請区分について」を参考にしてみてください。
2セキュリティ対策推進枠
セキュリティ対策推進枠では、サイバー攻撃対策など、情報セキュリティ対策を目的としたITツールの導入を支援しています。個人事業主にとって、個人情報や機密情報の漏洩を防ぐためにも、セキュリティ対策は必須でしょう。
セキュリティ対策推進枠では、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に登録されているサービスが補助の対象となります。また、補助額は5〜100万円で、補助率はサービス利用料の1/2以内です。
3デジタル化基盤導入枠
デジタル化基盤導入枠は、業務の効率化や人手不足の解消など、幅広い目的に対応できます。デジタル化基盤導入枠で、補助の対象となるツールは以下のとおりです。
- ・ソフトウェア
- ・オプション(拡張機能やデータ連携ツール)
- ・役務(導入コンサルティングや保守サポート)
- ・ハードウェア
デジタル化基盤導入枠は、PCやタブレットなどのハードウェアが補助対象となる点で通常枠と異なります。また「会計」「受発注」「決済」「EC(ネット販売)」のいずれかの機能を含むソフトウェアの選択が必要です。ソフトウェアに対しての補助金額は5〜350万円、ハードウェアに対しての補助金額は10万円です。
3.IT導入補助金2022では個人事業主のパソコン購入費用が対象になる
2022年に新設されたデジタル化基盤導入枠では、パソコンの購入費用が補助の対象となります。パソコンの購入に対する補助上限額は10万円で、補助率は5割です。パソコン以外には、タブレットやスキャナーなどの購入費用も対象になります。
またデジタル化基盤導入枠は、パソコンの購入のみでは申請できないため注意が必要です。以下のいずれかの機能を含むソフトウェアと、セットで購入しましょう。
- ・会計
- ・受発注
- ・決済
- ・EC(ネット販売)
デジタル化基盤導入枠は個人事業主でも申請が可能なため、パソコンを購入したいと考えている方はぜひ活用してみてください。
4.個人事業主がIT導入補助金を申請する8つの手順
「IT導入補助金の申請を行いたいが、何をすれば良いかわからない」という個人事業主の方は多いでしょう。そこで、この章ではIT導入補助金の申請手順を8つのステップに分けて解説します。
1導入するITツールの検討
IT導入補助金の対象となるITツールには、以下の項目をはじめとする、さまざまな選択肢があります。
- ・書類のデータ化
- ・会計・決済システムの導入
- ・自社事業に合わせたRPAツールの開発
自社の課題やニーズを踏まえて、導入するITツールを検討しましょう。また、導入するITツールを検討する際には、IT導入支援事業者の選定を行う必要があります。IT導入支援業者とは、ツールの提案や事業計画の作成の支援、申請手続きのサポートを行う業者です。IT導入補助金の事務局に登録されている企業から選定しましょう。
導入するツールやIT導入支援業者を選ぶ際には、事務局が提供する「IT導入支援事業者・ITツール検索」を活用してみてください。
2gBizIDプライムアカウントの取得
IT導入補助金の申請には「gBizIDプライム」が必要です。「gBizID」とは、国や地方自治体の行政サービスにオンラインでアクセスするための共通IDで、以下のサイトから取得できます。
gBizIDプライム取得には2週間程度の期間が必要なため、余裕をもって申請を行いましょう。
3SECURITY ACTIONの宣言
「SECURITY ACTION」とは、中小企業や小規模事業者が情報セキュリティ対策に取り組むことを自己宣言する制度です。
宣言には「一つ星」と「二つ星」の二種類があり、宣言の内容が異なります。「一つ星」は「情報セキュリティ5か条」への取り組みの宣言です。「二つ星」では情報セキュリティ診断を行い、自社の状況を把握したうえで「情報セキュリティポリシー(基本方針)」を定め、外部に公開したことを宣言します。
SECURITY ACTIONの宣言には「SECURITY ACTION自己宣言者サイト」への申し込みが必要ですが、審査などはありません。
4交付申請書の提出
交付申請では、支援業者とともに事業計画を作成する必要があります。IT導入支援事業者から「申請マイページ」の招待を受け取り、必要情報の入力と書対添付を行います。申請マイページとは、補助金の申請や事務局との連絡を行うためのポータルサイトです。必要事項の入力後は申請に対する宣誓を行い、事務局に提出します。
5補助事業の実施
補助事業とは、ITツールの発注や契約・支払いなどの業務です。補助事業は、事務所からの交付決定を受け取った後に行う必要があります。交付決定通知の前に補助事業を行った場合、補助金を受け取れないため注意しましょう。
6事業実績報告の提出
実績報告とは、実施した補助事業の内容を事務局へ報告する作業です。「申請マイページ」から事業実績報告を作成し、提出します。
事業実績報告には、ITツールの発注や契約・納品・支払いなどを行ったことが証明できる資料の添付が必要です。また、IT導入支援事業者が記入するべき項目があるため、連携して行いましょう。
7補助金交付の手続き
事業実績報告の確定審査が行われると、補助金が入金されます。補助金額は事業実績報告の確定審査で決定し、申請マイページから確認が可能です。補助金額の決定から1ヶ月程度で指定された口座に補助金が入金されます。
8事業実施効果報告の提出
補助金を受け取った場合には、3年間の効果報告を行います。IT導入補助金は、生産性向上を目的とした補助金です。そのため、事務局による目標の達成状況確認が必要です。効果報告の報告事項は、以下のとおりです。
- ・売上
- ・原価
- ・従業員数
- ・就業時間
効果報告を行わなかった場合には、補助金の返還が必要になる可能性があるため、注意しましょう。
5.個人事業主がIT導入補助金を申請する際に必要な書類
個人事業主がIT導入補助金を申請する際に必要な書類は、以下の3種類です。
- ・本人確認書類
- ・所得税の納税証明書
- ・所得税確定申告書B
本人確認書類は、運転免許証または住民票で対応できます。また、所得税の納税証明書は直近分のもので、税務署の窓口で発行されているものに限ります。納税証明書として認められる書類は「その1 納税額等証明用」「その2 所得金額用」の2種類です。領収書などでは認められないため、注意が必要です。
所得税確定申告書Bは、税務署が受領した直近分のものに限られます。また、税務署による受領を確認するため「収受日付印」または「受信通知(メール詳細)」が必要です。
6.個人事業主が審査通過率を上げる3つのポイント
IT導入補助金2022 公募要領によると、IT導入補助金の審査条件には加点項目が定められています。加点項目を満たすことで、審査通過率の上昇が可能です。この章では、個人事業主向けに3つの加点項目を解説します。
1「地域経済牽引事業計画」の承認を得る
地域経済牽引事業計画を申請し、承認された場合は加点要素となります。地域経済牽引事業計画とは、都道府県や市町村が作成した基本計画に沿って、各事業者が作成する計画です。
市町村・都道府県の基本計画は「地域未来投資促進法」の基本方針に従って作成されています。地域経済牽引事業計画の詳細は、以下のサイトを参考にしてみてください。
2事業計画で賃上げ目標を表明する
事業計画を作成し、従業員に対して賃上げ目標を表明することで加点要素となります。賃上げ表明は、以下の条件を満たしている必要があります。
- ・事業計画期間において給与支給総額を年率平均1.5%以上増加させる
- ・事業計画期間において、事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別の最低賃金より30円以上高く設定する
また、通常枠のB類型へ申請を行う場合には賃上げ表明が必須であるため、加点要素にはならないことに注意しましょう。
3導入するITツールの条件を確認する
導入するITツールの種類によって、加点要素となる場合があります。以下の項目は、通常枠で申請を行う場合に、選択することで加点要素となるITツールです。
- ・クラウド製品
- ・「サイバーセキュリティお助け隊サービス」の製品
- ・インボイス制度対応製品
また、デジタル化基盤導入枠では「サイバーセキュリティお助け隊サービス」の製品を選定することで加点要素として認められます。
7.IT導入補助金を活用して「ワークデジタルラボ」でデジタル化を実現
「IT導入補助金を利用したいが、ITツールがどのようなことに使えるのかわからない」という方にはワークデジタルラボの「無料体験プログラム」がおすすめです。ワークデジタルラボは、NTT東日本が提供するデジタル化支援サービスです。ワークデジタルラボの無料体験プログラムでは、以下の機能を実際に利用できます。
- ・AIよみと~る(AI-OCRツール)
- ・おまかせ はたラクサポート(バックオフィス業務支援ツール)
- ・コワークストレージ
DX体験プログラムで実際にデジタル化ツールを利用してみることで、自社の課題にあったITツールを検討し、IT導入補助金を申請可能です。詳細は、以下のサイトを参考にしてみてください。
8.まとめ
IT導入補助金とは生産性を高めるITツールの導入をサポートする制度で、個人事業主の方でも申請可能です。個人事業主が申請できるIT導入補助金は、以下のとおりです。
- ・通常枠
- ・セキュリティ対策推進枠
- ・デジタル化基盤導入枠
申請できるツールにはさまざまな選択肢があるため、自社の課題やニーズを考慮して検討しましょう。
この記事を書いた人
NTT東日本 ビジネス開発本部 北森雅雄
NTT東日本に入社後、自治体向けのシステムエンジニアとして、庁内ネットワークや公共機関向けアプリケーションなどのコンサルティングからキャリアを開始。
2018年から現職にて、プロダクト(SaaS)開発、デジタルマーケティング全般のディレクションに従事。
2022年に業務のデジタル化を分かりやすく発信するオウンドメディア(ワークデジタルラボ)のプロジェクトを立ち上げ。
NTT東日本にかかわる、地域のみなさまに向けてデジタル化に役立つ情報発信を展開。