| Writer:NTT東日本 北森 雅雄(Masao Kitamori)
【初心者向け】ITインフラの役割とは?構成要素や構築から運用の流れについてわかりやすく解説
近年、少子高齢化による人口減少が進み、働き方改革が推進されている中で、多くの企業が自動化ツールを導入しています。自動化ツールの市場規模は年々拡大しており、実際に年間何万時間という業務・人件費の削減に成功している企業もあります。人の力だけを頼り、時間や人件費を浪費するやり方では、格差が開いていく一方です。
ITインフラは社内におけるIT環境の基盤となるため、事業でアプリケーション等を使用するうえで構築・運用が欠かせません。しかし、ITインフラが何なのか、具体的なイメージが浮かばない方も多いのではないでしょうか。
そこで、今回の記事ではITインフラの構成要素や整備でのポイント、実際の構築手順について分かりやすく解説していきます。近年話題のクラウドも解説しているので、ぜひ最後までお読みください。
目次:
1.ITインフラとは?ITシステムの基盤を担う重要な設備
「ITインフラ」とは、ITにまつわるものの基盤(インフラストラクチャー)となる設備や構造物のことを指します。パソコンやサーバー、ルーターなどの機器だけではなく、機器に搭載するOSなどの非物理的な設備も含めて「ITインフラ」です。
また、ITインフラは、データの保存やインターネット環境の利用にも関係します。そのため、データの流出やウイルスの侵入など、ITインフラを整備する際にはセキュリティ面にも気を付ける必要があります。
ITインフラは快適なIT環境を提供するだけではなく、社内の情報保全にも関わる重要なシステムであることを押さえておきましょう。
2.ITインフラを構成する3つの要素
ITインフラは次の2つの要素から成り立ちます。
- ・ハードウェア
- ・ソフトウェア
この章では、それぞれの内容について詳しく解説します。
1ハードウェア
パソコンやサーバーなどの物理的な設備のことをハードウェアと呼びます。ハードウェアは以下のようなものが当てはまります。
- ・パソコン
- ・サーバー
- ・ストレージ
- ・ネットワーク
パソコン
パソコンはパーソナルコンピュータの略で、個人が使用するコンピュータを指します。デスクトップやノートパソコンなど、形態はさまざまです。
また、職務内容によって要求されるパソコンのスペックは異なります。スペックが過剰だとコストがかさみ、不足していると円滑な職務に支障が出ます。そのため、導入する際は適切なスペックの検討が重要です。
サーバー
サーバーは複数のパソコンからの要求を処理するためのコンピュータのことです。DBサーバーやWebサーバー、
ストレージ
ストレージは情報の保存を行う機器です。現在はさまざまなデータを活用してビジネスに取り組む必要があるため、大量のデータを集積できるストレージの重要度が高まっています。
ネットワーク
ネットワークはコンピュータ同士を結びつけたものを指します。オフィス内のコンピュータ同士を結びつけるために、LAN(Local Area Network)という仕組みを利用します。LANを通して社内ネットワークから外部のインターネットへの接続も可能です。
2ソフトウェア
ハードウェアに対して、非物理的な設備のことをソフトウェアと呼びます。また、ソフトウェアはハードウェアを動かすためのシステムです。
ソフトウェアには、以下のようなものがあります。
- ・OS
- ・ミドルウェア
OS
ハードウェアやアプリケーションの動作や管理を担うシステムがOSです。WindowsやmacOS、Lumixなどが当てはまります。効率的にリソースを分配し、ユーザーがソフトウェアを操作できるようにする役割を担っています。
ミドルウェア
ミドルウェアとは、OSとアプリケーションの橋渡しを行うソフトウェアのことです。OS単体ではできない複雑な処理をミドルウェアが担っています。
3.ITインフラを構築するときに気をつけたい3つのポイント
ITシステムの基盤だからこそ、ITインフラを構築する際には、さまざまなことに気をつけねばなりません。この章では、ITインフラを構築・運用する際の注意点を3つ解説します。
1安全性
ITインフラを構築していくうえで気をつけるべきなのは情報漏えいです。ネットワークに接続されている端末は、常にインターネット上に存在するウイルスからの脅威に晒されています。ファイアウォールをはじめとするセキュリティ対策を講じましょう。
また、ウイルスだけでなく、悪意を持った人間による情報漏えいにも注意が必要です。たとえば、私物のUSBメモリを通じて、社外へ情報が流出してしまうリスクがあります。USBメモリへの対策として、デバイスコントロール機能を持ったソフトのインストールが有効です。
しかし、システム的なセキュリティだけでなく、研修等で社員1人ひとりの安全意識向上にも努めると良いでしょう。
2快適性
安定してシステムが稼働するか、使いやすいかどうかが快適性の指標です。パソコンやサーバーがスムーズに動作しなければ作業が遅延し、生産性が低下します。
また、UI(ユーザーインターフェース)も快適性の重要な指標です。UIとは、アプリケーションのデザインやパソコン、その周辺機器といった機器とユーザーが接する部分のことIです。
UIの質が低ければ機器を利用しにくく、生産性が低下する要因となります。効率の良い作業にはアプリケーションの導入や設定の見直しも大切です。作業環境を見直し、コストを考慮しながら新しいツールも検討してみましょう。
3BCP(事業継続計画)
BCP(事業継続計画)とは、Business Continuity Planの略で、緊急事態に遭遇した際に資産への被害を最小限にとどめ、事業の早期復旧を目指すための計画です。BCPを設定しておかなければ、有効な対策を打てず、事業規模の縮小や廃業を迫られる可能性もあります。
中小企業庁の提示するBCP運用指針を参考に、自社でBCP策定に取り組むと良いでしょう。特に、BCPの中でも、ITシステムにまつわるBCPをIT-BCPと呼びます。
ITシステムのみ復旧しても、他の部門が活動できなければ事業継続は困難です。そのため、IT-BCPだけでなく、全体のBCPを念頭に置いて設定すると良いでしょう。
ITインフラに関するBCPの一例として、クラウドを利用したデータのバックアップが挙げられます。クラウドはベンダーの提供するサービスに依存することが多いです。バックアップを委託する際には、委託先のクラウドの公開範囲やセキュリティ、障害が発生したときの対応などを確認しましょう。
参照元:「中小企業BCP策定運用指針〜緊急事態を生き抜くために〜」中小企業庁
4.ITインフラの構築・運用の流れを解説
ITインフラの構築は、設計から実際の運用までの業務を指します。パソコンやサーバーの導入、セキュリティの設定など、実施内容は豊富です。
インフラ構築は以下の順番で実施されます。
- ・要件定義
- ・開発
- ・テスト
- ・運用
この章では、各工程の内容を解説します。
1要件定義
要件定義とは、機能やUI、性能など、システムの仕様を決定するプロセスです。
要件定義の段階で開発と現場の社員が綿密に打ち合わせを交わすことが不可欠です。丁寧に要望をすり合わせなければ、実際の運用に支障が出ます。また、要件定義においてプロジェクトの目的を明確化することは、後のプロセスで脱線を防ぐ効果もあります。
2開発・構築
要望を要件定義に落とし込んだら、次は具体的なシステムを開発する段階に入ります。
設計は「基本的なUI」から「細かい仕様」の順に行われます。設計段階でもクライアントからのレビューを入れることが、開発とクライアント双方の行き違いを防ぐために重要です。
また、セキュリティや障害、事故を想定した開発が求められます。ただ高機能なだけでなく、情報資産の保護や万一の事態に備える必要があります。
3テスト
開発したインフラが計画通りに動作するかどうかをテストします。テストは単体テストから結合テスト、総合テストという順番です。
初めから本番環境でテストするのではなく、単体テストから始め、個別の機器が正常に動作するかを確認します。結合テストで複数の機器での連携が上手くいくかを確認したのち、総合テストで実際の運用で求められる耐久性を満たしているかをチェックします。
それぞれの段階で問題が見つかれば、その都度修正を入れましょう。
4運用
テストで問題を修正したら実際の運用に入ります。テストでは見つからなかった問題が発生する可能性もあるため、保守管理が重要です。
また、障害発生時の対応やOSのアップデートも運用業務に含まれます。
5.ITインフラの2形態:オンプレミス型とクラウド型
ITインフラには、オンプレミス型とクラウド型の2形態があり、自社のニーズに合わせて選択されます。この章では、両者の違いやメリット・デメリットを解説します。
1オンプレミス型
オンプレミス型は社内でサーバーやネットワーク機器を構築し、運用する形態のことです。社内で情報管理を行うため、情報漏えいを防ぎやすいというメリットがあります。
一方で社内ネットワークにつながっていない端末を管理できない、遠隔で利用しにくいといったデメリットを抱えています。
2クラウド型
クラウド型はベンダーの提供するサーバーをオンラインで利用する形態です。既存の設備を利用するため、すぐにシステムを導入できます。
また、必要に応じてサーバーの使用範囲を決められるので、拡張性が高いこともメリットです。オンプレミスでは自社の設備以上の機能は利用できません。そのため、拡張しようとすれば新規に設備を導入する必要があります。
クラウド型のデメリットとして、ベンダーが提供するサービスしか使えないためにセキュリティがベンダー任せになる、拡張性が低いといったことが挙げられます。
特に、機密情報を扱っている場合はセキュリティに注意を払わなくてはいけません。
6.これからのITインフラではクラウド型のストレージを活用しよう
ITインフラにおいて、情報資産の保存先となるストレージは非常に重要です。現代では蓄積したデータを活用して事業を発展させていく必要があります。
NTT東日本が提供する「コワークストレージ」はクラウド型のストレージサービスです。
Cドライブと同じ感覚で扱える操作性の高いUIや、事業規模に合わせて人数や容量を選択可能なリーズナブルな料金体系をご提供しています。
また、インターネットを通して遠隔地からでもアクセス可能です。そのためリモートワークや営業先での資料参照など、さまざまなシチュエーションで活用できます。
詳細な権限設定や国内に複数設けられたデータセンターへの情報の分散など、セキュリティ面も充実しています。プロジェクトごとのフォルダの作成によって社外の方ともファイルを共有できることも特徴です。
クラウドストレージの導入を検討している方は、以下のリンクを参考にしてください。
7.まとめ
ITインフラとは自社ITシステムの基盤のことで、情報資産の管理や効率的な業務遂行には定期的な見直し、整備が欠かせません。
ITインフラは物理的な設備のハードウェアと、ハードウェアの管理を行うソフトウェアに分かれます。どちらもインフラの稼働には不可欠です。また、インフラ構築では安全性・快適性・BCPの3つに注意する必要があります。リスクに備えて日頃からセキュリティや事業計画を見直してみましょう。
近年ではベンダーが提供するサーバーをオンラインで利用するクラウド型のインフラ構築も増えてきました。オンプレミス型と比較し、自社に適していればクラウドへの移行を検討してみてはいかがでしょうか。
この記事を書いた人
NTT東日本 ビジネス開発本部 北森雅雄
NTT東日本に入社後、自治体向けのシステムエンジニアとして、庁内ネットワークや公共機関向けアプリケーションなどのコンサルティングからキャリアを開始。
2018年から現職にて、プロダクト(SaaS)開発、デジタルマーケティング全般のディレクションに従事。
2022年に業務のデジタル化を分かりやすく発信するオウンドメディア(ワークデジタルラボ)のプロジェクトを立ち上げ。
NTT東日本にかかわる、地域のみなさまに向けてデジタル化に役立つ情報発信を展開。