| Writer:NTT東日本 北森 雅雄(Masao Kitamori)
ITインフラ構築の流れを解説!構築すべき要素や自社開発・外部委託の違いについて紹介
「情報社会」と言われる現代では、ITインフラの構築・整備は業務の効率化に欠かせません。
しかし、ITインフラの仕組みは複雑であり、構築の手順が分からない方は多いのではないでしょうか。情報システムに関係しない部門の方でも、構築手順を知ることで開発サイドと相談しやすくなります。
そこで、今回の記事ではITインフラの構築過程や注意点について解説していきます。ITに詳しくない方にも分かりやすく解説していくので、ぜひ最後までお読みください。
目次:
1.ITインフラの重要性
ITインフラは社内におけるITシステムの基盤となるパソコンやサーバーなどの設備を言います。
インターネットやパソコンは業務遂行に欠かせない存在です。そのため、ITインフラを整備し、見直すことは効率的な業務遂行、社内の情報セキュリティに欠かせません。ITの活用が急務となっている企業活動において、ITインフラの構築・運用は重要な要素です。
2.ITインフラで構築すべき要素
ITインフラでは、次の2つの要素を構築する必要があります。
- ・ハードウェア
- ・ソフトウェア
ITインフラは物理的設備のハードウェアと、ハードウェアを動かすソフトウェアに分かれています。どちらが欠けてもITインフラは成り立ちません。以下では、ハードウェアとソフトウェアの構成要素を解説します。
1ハードウェア
ハードウェアは、以下のようなものが当てはまります。
- ・パソコン
- ・サーバー
- ・ストレージ
- ・ネットワーク
パソコンは個人が利用するコンピュータ、サーバーは各コンピュータからの要求を処理するためのコンピュータです。ストレージは情報を蓄積するための記憶装置であり、ネットワークはパソコンやサーバーを接続するための通信設備のことを指します。
2ソフトウェア
ソフトウェアとは、ハードウェアに命令を出すためのプログラムのことです。以下のようなものが分類されます。
- ・OS
- ・ミドルウェア
OSはハードウェアの管理と人間がコンピュータを利用するためのインターフェースの提供が役割です。ミドルウェアはOSとアプリケーションの橋渡しを行うプログラムを言います。
3.ITインフラの構築フローを解説
ITインフラを構築する目的はITシステムの準備と機材の適切な配置です。インフラ開発の形式はウォーターフォール型とアジャイル型が主流です。
ウォーターフォール型とは一つの工程を完了させてから次のステップに進む開発形式で、大規模かつ仕様変更が少ない開発で採用されることが多いのが特徴です。日本の現場では、主にウォーターフォール型が利用されます。
一方アジャイル型はおおまかな仕様を決定したあとに、小さい単位での開発を進める形式です。スピード感が求められるWeb開発などで利用される形式です。
アジャイル型、ウォーターフォール型どちらでも基本的な作業工程は変わりません。この章では、ITインフラ構築の作業工程を解説していきます。
1要件定義(計画)
開発は要件定義から始まります。要件定義はクライアントや現場の社員から求める仕様をヒアリングし、仕様を設計に落とし込むことです。
要求には機能要件と非機能要件があります。
機能要件とは制作するソフトウェアやシステムについて、ユーザーが求める機能を定義することです。対して、非機能要件は機能以外の要求を指します。たとえば、使いやすさやセキュリティ、システムの応答性などが非機能要求に含まれます。
必ずしもユーザーから要望が得られるものではないため、開発側が非機能要件を考えて開発に取り組むことが必要です。また、コストや日程を考慮してどの程度の非機能要件を盛り込むかを考えましょう。
2設計
要件定義で落とし込んだ内容をもとにシステムを設計・開発します。設計は基本設計と詳細設計の2つの工程で構成されています。
基本設計はUI(ユーザーインターフェース)や処理などを機能ごとに決める段階です。機能を実装するために設計を明確化するプロセスです。
基本設計をもとに詳細設計を行い、実装に取りかかっていきます。
3テスト
制作物の動作確認を行うのがテスト段階です。テストは大まかに、単体テスト・結合テスト・総合テストという3つの過程で行われます。
詳細設計の確認を行い、システム一つひとつが正しく動作するか確認するのが単体テストです。基本設計の確認は結合テストで、複数のシステムが連動して動作するかどうかをチェックします。最後に、要件を満たしているかは総合テストで確認します。
4運用・保守
成果物を納品してもITインフラの業務は終わりません。システムが正常に運転しているかを監視する必要があります。
運用はデータのバックアップや新しいシステムの導入、稼働状態の確認などの業務です。これらは日常的なルーティン業務と言えます。
運用に対して保守は、緊急時のデータ復旧などサポートする業務を指します。
4.ITインフラを構築する際の注意点
ITインフラの構築では現場と開発側の認識の違いを生まないことや、セキュリティ対策が大切です。
要件定義の段階でエンジニアが入念なヒアリングを行い、現場の求める機能を盛り込むことが重要です。しかし、不可能な要求や、理論上可能でもコストが莫大になる要求が存在する場合もあります。
そのような場合には代替案の提示や要求の優先順位を設けるなど、丁寧なすり合わせが求められます。現場の担当者にも発注責任があるため、現場担当者と開発の双方が責任感を持って要件定義に取り組む必要があるでしょう。
また、自社の情報資産や顧客情報は常に流出のリスクに晒されています。そのため、セキュリティ対策も大切です。具体的な対策としては、ユーザーごとにアクセス可能なリソースの制限やデータの暗号化などが挙げられます。また、問題の検出やパッチの適用もこまめに行う必要があります。
5.ITインフラ構築は自社開発すべきか、外部委託すべきか
ITインフラの構築を計画する際には、誰が担当するのかも考えなくてはいけません。構築は社内のエンジニアか、外部に委託するかどちらかに任せることになるでしょう。
自社にインフラエンジニアがいるなら自社開発、エンジニアの採用・育成が難しいなら外部委託を選ぶと良いでしょう。この章では、自社開発と外部委託のメリット・デメリットを解説していきます。
1自社開発のメリット・デメリット
自社開発とは、自社のインフラエンジニアが開発を行うことです。以下では自社開発のメリット・デメリットを解説します。
メリット
自社開発であれば、社内の業務を外部に開示する必要がないため、情報漏えいの恐れが少ないことがメリットです。機密情報を扱う場合にはデータの送受信による漏えいや、委託先での情報流出などのリスクがあります。しかし、内部で作業を完結できれば外部との接触による漏えいを防げるでしょう。
また、社内のエンジニアが担当するため、社内業務への理解が深い人物が開発を担当することになります。そのため、委託した場合よりも実用的なシステムの構築が見込めます。
デメリット
自社開発の場合、人材を確保する必要があります。専門的に業務を請け負う企業と異なり、社内にシステム開発に精通している従業員がいるとは限りません。
専門的な担当者がいなければ、システム開発が不完全に終わるリスクを背負うことになります。また、採用を試みてもすぐに人材が獲得できない可能性もあるでしょう。
2外部委託(アウトソーシング)のメリット・デメリット
外部委託(アウトソーシング)とは、システム開発を専門とする企業に委託することです。以下ではアウトソーシングのメリット・デメリットを解説します。
メリット
外部委託では、自社開発と違い専門の企業に委託するため成果物の完成度が高くなります。
また、自社で完結しようとすれば担当者の採用や育成が求められますが、アウトソーシングすれば人材の確保にリソースを割く必要がありません。
システム開発はシステムの保守・運用も必要ですが、運用まで含めて委託すれば社内のリソースをインフラ開発に割かずに済みます。コストの面でのメリットが大きいと言えるでしょう。
デメリット
外部委託の場合、社内の情報を外部に開示しなくてはいけないため、情報漏えいの恐れがあることです。委託先のセキュリティポリシーを精査することが大切です。
6.ITインフラはオンプレミス型とクラウド型の2種類
ITインフラ構築では、外部のクラウドシステムを使う「クラウドファースト」の考えが主流です。しかし、情報漏えいのリスクやカスタマイズ性の低さなどから、オンプレミス型かクラウド型かの選択が重要です。
この章では、オンプレミス型とクラウド型の違いや双方のメリット・デメリットを解説します。
1オンプレミス型
社内にパソコンやサーバーなどの設備を用意し、自社で管理や運用を行う方式です。オンプレミスを略して「オンプレ」と呼ぶ場合もあります。
メリット
システムを自社で構築するため、UIを始めとするシステムのカスタマイズが容易です。また、社内にストレージを置くため、情報管理が簡単です。そのため、情報漏えいを防ぎやすいこともメリットになります。
デメリット
設備を自前で用意するため、機器などのコストが大きく、導入や設置に時間がかかります。また、保守・運用にもリソースを割く必要があるでしょう。
2クラウド型
クラウドベンダーが用意した設備を利用する形態をクラウド型と言います。自社でクラウドシステムを構築する「プライベートクラウド」もクラウドのひとつです。
メリット
自前で設備を用意せずに済むため、オンプレミス型に比べて初期費用がかかりません。
また、サーバーを借りる形なので、必要に応じてサーバーを使用する範囲を拡張できます。オンプレミスでは、コスト面から社内サーバーの拡張にすぐに対応できませんが、クラウド型では自社で拡張作業を行う必要がなく、時間もかかりません。
拠点が地理的に離れており、社内にインフラを集中させる形態よりもデータの安全性が高いこともメリットです。
デメリット
設備や機能はベンダー依存となり、カスタマイズ性が低くなります。また、クラウドを共有するため、セキュリティ対策が不完全な可能性があります。
加えて、オンラインで利用するために、ネットワークに負荷がかかることもデメリットです。
7.クラウド型ストレージを利用するなら「コワークストレージ」
ITインフラにおいて、情報資産の保存先となるストレージは非常に重要です。企業活動では蓄積したデータを活用して事業を発展させていく必要があります。
さまざまなデータを保管するクラウド型ストレージの導入を検討されている方には、NTT東日本が提供する「コワークストレージ」がおすすめです。
中小企業向けに開発された本サービスには、少人数・低コストでのプランがあります。そのため、コストを抑えてクラウドを利用できます。
ローカルディスクと同じ感覚で使える、ユーザーに優しいUIが特徴です。また、詳細に権限を設定可能で、社外の方とのファイル共有も簡単です。また、遠隔地からデータにアクセスできるため、テレワーク中や営業先でも社内データを利用できます。
クラウドストレージの導入を検討している方は、以下のリンクを参考にしてください。
8.まとめ
ITインフラの構築は複雑な工程に分かれています。情報システム部門だけでなく、現場の方も開発工程を知っておくと開発サイドとの協力がスムーズに進みます。
また、構築を担当するインフラエンジニアは社内か社外で探す必要があります。機密性を重要視するなら社内、技術の専門性を求めるならアウトソーシングを検討しましょう。
近年ではクラウドを利用したシステム構築も増えています。オンプレミスとクラウドは、それぞれ異なる特徴を持っているので、自社の環境を検討したうえで適切な方式を選びましょう。
この記事を書いた人
NTT東日本 ビジネス開発本部 北森雅雄
NTT東日本に入社後、自治体向けのシステムエンジニアとして、庁内ネットワークや公共機関向けアプリケーションなどのコンサルティングからキャリアを開始。
2018年から現職にて、プロダクト(SaaS)開発、デジタルマーケティング全般のディレクションに従事。
2022年に業務のデジタル化を分かりやすく発信するオウンドメディア(ワークデジタルラボ)のプロジェクトを立ち上げ。
NTT東日本にかかわる、地域のみなさまに向けてデジタル化に役立つ情報発信を展開。