| Writer:NTT東日本 北森 雅雄(Masao Kitamori)

電子インボイスとは?2023年10月開始の制度や「Peppol」についてわかりやすく解説!

電子インボイスとは?2023年10月開始の制度や「Peppol」についてわかりやすく解説!


電子インボイスとは、請求書や領収書を電子データでやり取りするための仕組みです。2023年10月から開始されるインボイス制度(適格請求書保存方式)との関連で注目されるようになっています。

インボイス制度で請求書の扱いが複雑になると、紙では不便なことも起こります。電子データにすれば、やり取り、保存が簡単になり、煩雑な経理作業も人手を増やさずに対応できます。国もインボイス制度で利用する電子データの標準仕様を推進しています。

そこで今回の記事では、電子インボイスとは何かについて解説します。インボイス制度や電子文書の国際規格であるPeppolについても理解できる内容になっているので、ぜひ最後までお読みください。

大橋 誠一

この記事の監修者:公認会計士・税理士 大橋 誠一

監修日:2023年2月7日
税理士試験と公認会計士第二次試験の双方に合格し、さまざまな規模や業種の企業で税務監査・財務諸表監査に従事してきた経歴を持つ。

そして税理士・公認会計士出身の民間専門家として国税審判官に任官され、法人税・所得税・相続税・消費税・加算税の審査請求事件の調査・審理に従事することにより、税務署長・国税局長による課税処分を取り消すか否かの判断を行った経験を有する。

大橋 誠一 事務所

1電子インボイスとは?電子化した適格請求書

電子インボイスは、インボイス制度で導入される適格請求書(インボイス)を電子化したデータです。紙でのやり取りを電子化することでさまざまなメリットが期待できます。

インボイス制度は、どのような種類の品物やサービスをどれだけ仕入れたかを記録して、企業や事業主が消費税の「仕入税額控除」を受けるための新しい制度です。

仕入税額控除は、請求書などを保存して消費税の控除を行う手続きです。仕入の取引では、仕入先と売り先が、それぞれ消費税を納めます。しかし、それでは2重の納税になるので、仕入時に支払った消費税を取り戻すための仕組みとして仕入税額控除があります。

インボイスとは、納税額の計算をするための請求書のことですが、従来の制度よりも、記載事項が追加されるため、処理が複雑になります。そのため、請求書を電子データで管理すれば、ミスの減少や作業の効率化を期待できます。

2.インボイス制度について

インボイス制度は、商品やサービスの売買で必要な請求書の記載や保存方法のルールです。正式名称は「適格請求書等保存方式」と言います。

消費税は2019年10月の引き上げで、10%と軽減税率の8%の税率が混在するようになりました。仕入れた商品によって税率が違うものがあるため、事業者は消費税率ごとに細目を記載した請求書がないと、正確な納税額を計算できません。

また、現行の制度では、納税免除や軽減などで合法的に事業者の手元に残る消費税「益税」があります。これが、課税事業者と免税事業者の不公平につながることが問題視されてきました。

こうしたことから、正確な計算を実現し、益税を解消する仕組みとしてインボイス制度の導入が決まりました。

3.インボイス制度で対応しなければならないこと

2023年10月から開始されるインボイス制度で、現行制度と変わるのは以下のような点です。

  • ●税率によって区分された消費税額等(税率ごとの端数処理は1回ずつ)
  • ●保存すべき請求書が増える
  • ●免税事業者は手続きが必要になる可能性がある

ここでは、各項目について詳しく説明します。仕入れ側と売り手側でそれぞれ必要となる対応内容についても解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。

1記載内容が追加される

現在の制度で使われている区分記載請求書には、発行者の名称、取引年月日、取引内容などを記載します。これに対しインボイスでは、以下の項目を追加で記載しなければなりません。

  • ●登録番号(課税事業者のみ登録可)
  • ●適用税率
  • ●税率ごとに区分した消費税額等

登録番号は、「適格請求書発行事業者」に与えられる番号です。インボイスには必須の項目なので、インボイスを発行する課税事業者は、必ず発行事業者にならねばなりません。

2
保存すべき請求書が増える

仕入れ側は仕入税額控除のためにすべてのインボイスを保存しますが、売り手側も発行したすべてのインボイスを保存することを義務付けられます。このため事業者には請求書の保存と管理の手間が増えることになります。紙媒体で請求書を保存すると、作業とスペースが必要になります。

3
免税事業者は手続きが必要になる可能性がある

年間課税売上1,000万円以下の零細事業者は、免税事業者になります。しかし、免税事業者のままでは課税事業者との取引から排除される懸念があるといったさまざまな理由から仕入税額控除を受けたいという事業者は少なくないでしょう。

その場合、課税事業者に転換して、適格請求書発行事業者に登録しなければなりません。インボイスには発行事業者の登録番号の記載が必須なためです。

フリーランスなどの個人事業者を中心とした小規模事業者は、免税事業者をやめて課税事業者になるかの検討が必要です。

4.電子インボイスは電子帳簿保存法の要件に基づいて保存する

電子インボイスを受け取った場合、「電子データとして保存」または「紙媒体にして保存」の2通りがあります。いずれも国税関係帳簿書類の保存方法を定める「電子帳簿保存法」にもとづいて、電子取引の要件を満たすことを求められます。

電子データでの保存の要件は以下のようなものです。

  • ●タイムスタンプの付与または削除・訂正が記録できるシステムの利用
  • ●自社開発の場合、システム概要書の備え付け
  • ●PCやソフトウェア操作説明書の備え付け、ディスプレイや書面への出力性の確保
  • ●検索機能を確保し、いつでもデータを検索できる状態にしておく

電子帳簿保存法では、電子データとして受け取った電子商取引の請求書は電子データのまま保存することが義務付けられます。ただし、2023年末までは紙出力して保存が猶予処置として認められており、 令和5年度税制改正大綱によって、2024年1月以後しばらくは電子データ保存(検索要件などは不問)の上で髪出力保存も認めるとの猶予が措置される予定ですが、措置はいずれ廃止される方向ですので、早めに準備と導入を進めていきましょう。

5.「Peppol(ペポル)」に準拠して電子インボイスの国内標準規格に

電子インボイスの標準仕様として、国は「Peppol(ペポル)」を推進しています。Peppolは「Pan European Public Procurement Online」の略で、電子文書の仕様や運用ルールを定めた国際規格です。ネットワーク上でのやり取りに対応しているのが特徴です。

日本では電子インボイスの策定と普及を目指す業界団体「電子インボイス推進協議会」(現デジタルインボイス推進協議会、EIPA)が2020年に、日本の電子インボイス標準仕様をPeppolに準拠させると発表しました。

2021年にはデジタル庁が「日本版Peppol」仕様案がベルギーに本拠を置く非営利の管理団体「Open Peppol」で公開されたと発表しています。

電子インボイスは国際規格に準拠することで、海外との取引も可能になると期待できます。

6.電子インボイスによるメリット5つ

  • ●計算業務が自動化され、簡単にできる
  • ●海外との取引が簡単にできる
  • ●適格請求書の管理が簡単にできる
  • ●データ改ざんを防止できる
  • ●テレワークに対応しやすい

ここでは、それぞれについて詳しく説明します。

1
計算業務が自動化され、簡単にできる

電子インボイスを使うことで業務を簡素化できます。紙の請求書は支払い処理の手入力が別途必要ですが、電子インボイスは、データを取り込んで支払データに変換すればあとは機械的に処理できます。

データ入力が原因で起こるミスや不正が防げるほか、入力や紙帳簿への記帳に取られる時間を節約することで、請求書管理の効率化ができるでしょう。

2
海外との取引が簡単にできる

世界ではすでに「Peppol」データで取引が行われているため、国際的な取引をする場合も国内と同様にスムーズなやり取りが可能です。国際的な取引が多い企業には特にメリットが大きいと言えます。

3
適格請求書の管理が簡単にできる

適格請求書を電子データで保存できれば、保管スペースや経費が不要となり、管理しやすくなります。

インボイス制度では、インボイスの保存期間は、受け取ったものも、発行したもの(控え)も、提供を受けた(提供した)日の属する課税期間の末日の翌日から 2月を経過した日から7年間と定められています。紙で保存するとファイルなどに入れていくことになりますが、長期となるとそれなりに場所をとります。また、必要になって探すことを考えると、目的のものがすぐに見つかるような整理の仕方が必要です。

これに対し、電子インボイスは、実質的に無限の保存スペースが確保できます。オフィスでなくクラウドに保管することもできます。また、検索が簡単なので、必要な情報を素早く取り出すことができます。

4
データ改ざんの心配がない

電子インボイスには、データ改ざんを防ぐためのさまざまな機能が用意されます。ネットワークで書類をやり取りするには、データの真正性を確保することが必要です。現状では、電子帳簿保存法に基づく電子署名などの活用によって不正を防止します。

さらにセキュリティ面の整備が進められており、総務省は、デジタル署名「日本版eシール」の利用を目指して検討を進めています。

eシールは欧州で始まった暗号化技術で、デジタル文書が企業・組織の発行したものであることを保証します。発行元の真正性を証明する技術としては、電子署名やパスワードなどがありますが、企業・組織に特化したものは、まだ国内では確立されていません。

こうしたセキュリティ技術によって、電子インボイスでの業務効率化が期待できます。

5
テレワークに対応しやすくなる

電子インボイスは、ネットワークに対応した規格「Peppol」に準拠するので、さまざまな処理がネットワーク上で完結できます。

テレワークで紙の帳簿や請求書の処理をするためには、まず紙をスキャンして電子化する作業が発生します。不足する情報を手作業で追加しなければならないことも多く、かなりの手間がかかります。

業務に必要な請求書情報がはじめから電子化されていれば、こうした手間は不要です。電子インボイスは、ネットワーク経由でやり取りするように設計されているので、テレワークには簡単に対応できます。

7.電子インボイスの注意点2つ

さまざまなメリットのある電子インボイスにも注意点がいくつかあります。たとえば、以下のようなものです。

  • ●導入にコストがかかる
  • ●取引先によっては紙媒体の方が良い

それぞれについて説明します。

1
導入にコストがかかる

電子インボイスを導入するためには、そのためのシステムの導入や業務フローの整備が必要です。従来の紙での処理から切り替えるには、一時的に費用や時間などのコストがかかります。

導入にあたっては、現状の紙媒体での処理にかかっている保管場所や作業のコストを精査して、電子インボイス化して得られるメリットと比較する必要があります。

短期的には、負担が大きく感じられても、取引先の獲得や環境の変化への対応など、より長期の展望のもとに検討することをおすすめします。

2
取引先によっては紙媒体の方が良い

取引先が小規模事業者などの紙媒体でのやり取りをメインにしていると電子インボイス化が難しい場合があります。電子インボイスは取引相手とやり取りするための書類ですから、相手側の対応も必要です。

取引先が紙媒体の請求書でなければ困るとなれば、個別に対応する必要が出てきます。そのような場合は、電子インボイス化のメリットが十分に発揮できないことも考えられます。

8.インボイス制度開始に合わせて電子インボイスを取り入れよう!

電子インボイスとは、適格請求書を電子化したものを指します。インボイス制度の開始に伴って注目を集めているデジタル技術です。国は電子インボイスの標準仕様として「日本版Peppol(ペポル)」を推進しています。

これまで紙媒体でやり取りしていた請求書を電子データ化することで、計算ミスの防止や、管理の効率化が期待できます。その一方でシステムの導入や業務フローの整備などのコストもかかります。

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この記事を書いた人

NTT東日本 ビジネス開発本部 北森雅雄

NTT東日本に入社後、自治体向けのシステムエンジニアとして、庁内ネットワークや公共機関向けアプリケーションなどのコンサルティングからキャリアを開始。

2018年から現職にて、プロダクト(SaaS)開発、デジタルマーケティング全般のディレクションに従事。

2022年に業務のデジタル化を分かりやすく発信するオウンドメディア(ワークデジタルラボ)のプロジェクトを立ち上げ。
NTT東日本にかかわる、地域のみなさまに向けてデジタル化に役立つ情報発信を展開。

北森雅雄 masao kitamori

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