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| Writer:NTT東日本 北森 雅雄(Masao Kitamori)

インボイス制度で美容室・個人事業主の美容師はどうなる?影響と対策をわかりやすく解説!

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美容室で働く方のなかには、インボイス制度について詳しくは分からない、どういった影響があるのか知らないという方もいるのではないでしょうか。インボイス制度が始まると、美容室や業務委託美容師の方にも影響があります。

インボイス制度とは、売り手が買い手に対して適用される消費税率や消費税額を伝えるための制度です。美容師の方によっては、インボイス制度が導入されることで給料が減ってしまうケースもあるでしょう。

今回の記事では、インボイス制度における美容室や、美容室から業務委託を受けている美容師の方への影響や必要な対応を解説します。

1.インボイス制度(適格請求書保存方式)とは?

インボイス制度は、「適格請求書等保存方式」とも言います。現在、一部の商品・サービスに対して軽減税率が適用されていることから、売り手が買い手に対して消費税率や消費税の金額を伝えるための制度です。まずは、インボイス制度の概要について解説します。

1そもそも「インボイス(適格請求書)」とは?

インボイス制度は、仕入税額控除を受けるための新しい制度です。そして仕入税額控除を受けるために必要なのが、インボイス(適格請求書)の発行・保存です。インボイス制度導入後は、商品やサービスにかかった消費税額や適用税率、登録番号を請求書に記載する義務が発生します。

現行制度では、「区分記載請求書」が採用されており、下記の項目を記載しています。

  • ●請求書を発行する者の名称および氏名
  • ●取引の日付
  • ●取引の内容
  • ●軽減税率の対象であること(※などのマークでも可)
  • ●取引金額
  • ●税率ごとに分けた合計金額
  • ●請求書を受領する者の名称および氏名

インボイスでは、上記に加えて以下の項目の記載が必要です。

  • ●請求書を発行する者の登録番号
  • ●税率ごとに分けた消費税額

2インボイス制度の目的

現行の制度では、以下のような「益税」に関するさまざまなことが問題視されています。益税は「納税免除や軽減などで、消費税の一部が納税されずに事業者の手元に残ったお金」です。

これらの問題点を解消するために、インボイス制度が作られました。

  • ●課税事業者は消費税を納める義務がある一方で、免税事業者には納税の義務がない
  • ●簡易課税制度を使って消費税の概算を計算すると、本来納付すべき消費税額と差額が生じてしまう

また、2019年10月に導入された軽減税率で、8%と10%の消費税率が混在しています。そのため、消費税率ごとに計算された請求書がないと、正確な消費税額の計算と仕入税額控除ができなくなりました。

こういった問題点を解消するため、記載する項目をより詳細にした適格請求書を発行・保存する「適格請求書保存方式=インボイス制度」が導入されます。

2.インボイス制度の導入で美容室・業務委託美容師が受ける影響

インボイス制度が始まると、美容室や業務委託美容師の方にも影響があります。具体的にどのような影響があるのか詳しく解説します。インボイス制度の準備をするためにも、どのような影響があるのかしっかりと把握しておきましょう。

1売上1,000万円超の美容室・美容師が受ける影響

1年間の課税売上が1,000万円を超えるかで、インボイス制度によって受ける影響が異なります。まずは、売上が1,000万円超の美容室や美容師が受ける影響について解説します。

仕入先や業務委託美容師が免税事業者だと仕入税額控除が受けられない

もし仕入先が免税事業者の場合、適格請求書を発行できません。そのため、シャンプーやトリートメント、カラー剤などの仕入にかかった消費税は、仕入税額控除の対象外となります。

また、業務委託美容師の方が免税事業者として働いている場合も同様です。インボイス制度開始後も免税事業者のままでいる場合、仕入税額控除を受けられません。

経理処理が複雑化する可能性がある

課税事業者の場合、最終的にいくらの消費税を納付すべきか適格請求書を基に計算する必要があります。もし課税事業者と免税事業者のどちらからも仕入を行う場合、それぞれの消費税額を別々に計算しなくてはいけません。そのため、これまでの経理処理よりも複雑となり、手間がかかることになります。

経理処理が煩雑化して業務も増えるので、美容室によっては経理業務の人員の確保やインボイス制度に対応している会計システムなどの導入を検討する必要があります。

2売上1,000万円以下の美容室・美容師が受ける影響

売上が1,000万円以下の場合、免税事業者として消費税の納税義務が免除されていました。しかし、インボイス制度が始まることで環境が変わります。以下では、免税事業者の美容室や美容師が受ける影響について解説します。

今まで取引をしていた取引先や委託元と取引継続が難しくなる

免税事業者は、インボイスの発行ができません。インボイスを発行できないと、取引先の買い手側が仕入税額控除を受けられなくなります。そのため、仕入先や委託先の美容室など取引相手から契約を打ち切られてしまう可能性があります。また、最悪の場合、新しい取引相手を見つけるのも難しくなってしまうでしょう。

公正取引委員会では、免税事業者である下請事業者に対し、適格請求書が発行できないことを理由に取引の停止や取引価格の引き下げを求めることは独禁法・下請法上問題になる恐れがあると発表しています。ただし、別の理由を挙げて契約を解消されてしまう可能性もあるでしょう。

取引相手が課税事業者の場合、免税事業者との取引は相手が損をすることになるので、結果として取引相手が減ってしまうリスクが発生します。

課税事業者になると消費税の納付義務が発生する

取引先減や、委託先の美容室からの契約解消、減収のリスクを抑えたい場合、免税事業者から課税事業者へ切り替えるかどうか検討する必要があります。これまでは売上が1,000万円を超えていない、もしくは法人になってから2年以内の場合は消費税が免除されていました。

しかし、課税事業者に切り替えると、これまで免税されていた事業者にも消費税の納税義務が発生します。売上の少ない事業者にとっては大きな負担となるケースもあるでしょう。

3.インボイス制度に向けて美容室が準備すべきこと

ここまで紹介したように、インボイス制度は美容室に影響を与えます。以下ではインボイス制度に向けて、課税事業者の美容室が準備すべきことを解説します。本番で混乱しないよう、早めの準備をおすすめします。

1業務委託契約をやめて雇用契約を結ぶ

業務委託契約を結んでいる美容師が、課税事業者・免税事業者のどちらであっても報酬を支払うために請求書のやり取りが発生します。請求書の発行や保存など、請求書関連の業務を軽減するためには、美容師と雇用契約を結ぶという選択肢があります。

雇用契約を結べば報酬は賃金として支払われるため請求書を発行する必要がありません。

2業務委託美容師と報酬を交渉する

インボイス制度が始まる前に、業務委託美容師と報酬など今後の契約について交渉しましょう。

美容師にインボイスの発行を求める場合、美容師は課税事業者になる必要があり、消費税の納付義務が発生します。そのため、報酬がこれまでと比べて減ることになるでしょう。

もし、インボイスの発行を求めない場合は、美容室が仕入税額控除を受けられなくなります。消費税を納付する分、美容室のキャッシュを減らす、もしくは美容師の報酬を減らすかを検討しなければなりません。

美容師の方と、今後の契約について方針が合わないことも考えられます。トラブルにならないよう、しっかりと話し合いをしておきましょう。

4.インボイス制度に向けて業務委託美容師が準備すべきこと

以下では、インボイス制度が始まるまでに業務委託美容師が準備することを解説します。業務委託美容師の方は、インボイス制度の影響を大きく受けます。制度開始前にしっかりと準備しておきましょう。

1適格請求書発行事業者の登録申請をする

もし業務委託美容師の方が受託契約を結んでいる美容室が課税事業者の場合、インボイスの発行を求められる可能性があります。インボイスは適格請求書発行事業者しか発行できないため、適格請求書発行事業者への登録申請が必要です。

"適格請求書発行事業者になるには、納税地所轄の税務署へ申請書を提出します。申請書は国税庁のホームページからダウンロード、もしくはe-Taxからも手続き可能です。"

参照元:国税庁「[手続名]適格請求書発行事業者の登録申請手続(国内事業者用)」

免税事業者から課税事業者に切り替える場合、2023年10月を含む課税期間中に手続きを行えば課税事業者になるために必要な「消費税課税事業者選択届出書」の提出が省略できます。ただし、2023年4月以降に登録申請をする場合は、消費税課税事業者選択届出書の提出が必要です。

2美容室と雇用契約を結ぶ

美容室からの受託契約を結んでいると請求書のやり取りが発生しますが、雇用契約に転換すれば請求書関連の業務が発生しません。美容室と雇用契約を結ぶかどうかも、制度が始まる前に検討しましょう。

ただし、副業として会社に所属することなくサービスを提供した収入に関しては、インボイスの発行が求められるケースもあります。

3免税事業者である美容室と契約する

免税事業者である美容室から受託契約をすれば、インボイスを発行する必要がありません。課税事業者の美容室の場合、インボイスを発行できないことから、最悪の場合契約を断られる可能性があります。免税事業者の美容室であれば、そのような心配もなく、課税事業者になる手続きも必要ありません。

5.美容室・美容師はインボイス制度の影響に気をつけよう

インボイス制度は、美容室・美容師の方にも大きな影響を与えます。課税事業者となるのかどうか、雇用契約を結ぶのかどうかなど、双方での話し合いが必要になることも多いので、トラブルにならないよう早めに検討を進めることをおすすめします。

また、インボイス制度に対応するため、新たなシステムの導入が必要になる場合もあるでしょう。インボイス制度における適格請求書などのペーパーレス化には「おまかせ はたラクサポート」・「コワークストレージ」や、手書き書類をCSVに変換できる「AIよみと〜る」などをセット導入することがおすすめです。

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この記事を書いた人

NTT東日本 ビジネス開発本部 北森雅雄

NTT東日本に入社後、自治体向けのシステムエンジニアとして、庁内ネットワークや公共機関向けアプリケーションなどのコンサルティングからキャリアを開始。

2018年から現職にて、プロダクト(SaaS)開発、デジタルマーケティング全般のディレクションに従事。

2022年に業務のデジタル化を分かりやすく発信するオウンドメディア(ワークデジタルラボ)のプロジェクトを立ち上げ。
NTT東日本にかかわる、地域のみなさまに向けてデジタル化に役立つ情報発信を展開。

北森雅雄 masao kitamori