事業再構築補助金は個人事業主でも活用できる!7つの申請枠と対象の経費を解説
新型コロナウイルスや物価高騰による売上減少に対応するため、事業再構築補助金に注目している個人事業主の方は多いのではないでしょうか。第9回の公募では、4,259者が補助金交付候補者として採択されています。
そこで今回の記事では、個人事業主が事業再構築補助金を活用するための要件や注意点について解説します。事業再構築補助金の基本情報が簡単に理解できる内容になっているので、ぜひ参考にしてください。
1.事業再構築補助金は個人事業主でも利用できる制度
個人事業主は事業再構築補助金の要件である「中小企業者」に含まれるため、制度の対象となります。中小企業者等とは資本金または常勤の従業員数が、以下の表の数字を超えない事業者を指します。
業種 |
資本金 |
従業員数(常勤) |
製造業、建設業、運輸業 |
3億円 |
300人 |
卸売業 |
1億円 |
100人 |
サービス業(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く) |
5,000万円 |
100人 |
小売業 |
5,000万円 |
50人 |
ゴム製品製造業(自動車または航空機用タイヤおよびチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く) |
3億円 |
900人 |
ソフトウェア業または情報処理サービス業 |
3億円 |
300人 |
旅館業 |
5,000万円 |
200人 |
その他の業種(上記以外) |
3億円 |
300人 |
申請者は事業再構築補助金の公募が開始された日時点で、補助対象者の要件を満たしている必要があります。
2.個人事業主が活用できる事業再構築補助金の7つの申請枠
個人事業主は以下の7種類から、自分にあった申請枠を選択できます。
- ・成長枠
- ・グリーン成長枠
- ・卒業促進枠
- ・大規模賃金引上促進枠
- ・産業構造転換枠
- ・最低賃金枠
- ・物価高騰対策・回復再生応援枠
申請枠ごとの特徴を理解し、自身が申請する枠の選定に役立ててください。それぞれ順番に見ていきましょう。
2-1.成長枠
成長枠の概要と補助内容は、以下のとおりです。
概要 |
成長分野への大胆な事業再構築に取り組む中小企業等を支援 |
補助金額 |
【従業員数20人以下】100~2,000万円 |
補助率 |
・中小企業者等:1/2(大規模な賃上げを行う場合は2/3) |
補助事業の実施期間 |
交付決定日~12ヶ月以内 |
補助対象となる経費 |
・建物費 |
成長枠は成長分野への取り組みを支援する申請枠です。従業員数によって補助金額の上限が変動します。
2-2.グリーン成長枠
グリーン成長枠の概要と補助内容は、以下のとおりです。
概要 |
研究開発・技術開発又は人材育成を行いながら、グリーン成長戦略「実行計画」14分野の課題の解決に資する取組を行う中小企業等の事業再構築を支援 |
補助金額 |
<エントリー> <スタンダード> |
補助率 |
・中小企業者等:1/2(大規模な賃上げを行う場合は2/3※) |
補助事業の実施期間 |
交付決定日~14ヶ月以内 |
補助対象となる経費 |
・建物費 |
グリーン分野とは、太陽光発電や半導体など2050年に向けて成長が期待される14の分野を指しています。事業再構築補助金のなかでも最高額となる、最大1.5億円の上限が設定されています。
2-3.卒業促進枠
卒業促進枠の概要と補助内容は、以下のとおりです。
概要 |
成長枠・グリーン成長枠の補助事業を通して、中小企業等から中堅企業等に成長する事業者に対する上乗せ支援 |
補助金額 |
成長枠・グリーン成長枠の補助金額上限に準じる |
補助率 |
・中小企業者等:1/2 |
補助事業の実施期間 |
交付決定日~成長枠・グリーン成長枠の事業計画期間終了まで |
補助対象となる経費 |
成長枠・グリーン成長枠の補助対象経費に準じる |
卒業促進枠は、成長枠・グリーン成長枠の補助事業に上乗せして申請する枠です。ただし、大規模賃金引上促進枠との併用はできません。
2-4.大規模賃金引上促進枠
大規模賃金引上促進枠の概要と補助内容は、以下のとおりです。
概要 |
成長枠・グリーン成長枠の補助事業を通して、大規模な賃上げに取り組む事業者に対する上乗せ支援 |
補助金額 |
100〜3,000万円 |
補助率 |
・中小企業者等:1/2 |
補助事業の実施期間 |
交付決定日~成長枠・グリーン成長枠の事業計画期間終了まで |
補助対象となる経費 |
成長枠・グリーン成長枠の補助対象経費に準じる |
大規模賃金引上促進枠では成長枠・グリーン成長枠の補助事業のなかで実施される大規模な賃上げを支援します。ただし、卒業促進枠との併用はできません。
2-5.産業構造転換枠
産業構造転換枠の概要と補助内容は、以下のとおりです。
概要 |
国内市場縮小等の構造的な課題に直面している業種・業態の中小企業等が取り組む事業再構築を支援 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
補助金額 |
【従業員数20人以下】100~2,000万円 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
補助率 |
・中小企業者等:2/3 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
概要 |
国内市場縮小等の構造的な課題に直面している業種・業態の中小企業等が取り組む事業再構築を支援 |
補助金額 |
【従業員数20人以下】100~2,000万円 |
補助率 |
・中小企業者等:2/3 |
補助事業の実施期間 |
交付決定日~12ヶ月以内 |
補助対象となる経費 |
・建物費 |
産業構造転換枠は事業再構築が強く求められる業種や業態を対象とした申請枠です。7つの申請枠のうち唯一「廃業費」が補助対象となります。
2-6.最低賃金枠
最低賃金枠の概要と補助内容は、以下のとおりです。
概要 |
最低賃金引上げの影響を受け、その原資の確保が困難な特に業況の厳しい中小企業等の事業再構築を支援 |
補助金額 |
【従業員数5人以下】100~500万円 |
補助率 |
・中小企業者等:3/4 |
補助事業の実施期間 |
交付決定日~12ヶ月以内 |
補助対象となる経費 |
・建物費 |
最低賃金枠は最低賃金引き上げの原資不足を支援する申請枠です。第7回から第8回にかけて申請要件が見直され、最賃売上高減少要件が撤廃されました。
2-7.物価高騰対策・回復再生応援枠
物価高騰対策・回復再生応援枠の概要と補助内容は、以下のとおりです。
概要 | 業況が厳しい事業者や事業再生に取り組む中小企業等、原油価格・物価高騰等の影響を受ける中小企業等の事業再構築を支援 |
補助金額 |
【従業員数5人以下】100~1,000万円 【従業員数6〜20人】100~1,500万円 【従業員数21~50人】100~2,000万円 【従業員数51人以上】100~3,000万円 |
補助率 |
・中小企業者等:2/3 ・中堅企業等:1/2 ※従業員数による変動あり |
補助事業の実施期間 |
交付決定日~12ヶ月以内 (ただし、補助金交付候補者の採択発表日から14ヶ月後の日まで) |
補助対象となる経費 |
・建物費 ・機械装置・システム構築費(リース料を含む) ・技術導入費 ・専門家経費 ・運搬費 ・クラウドサービス利用費 ・外注費 ・知的財産権等関連経費 ・広告宣伝・販売促進費 ・研修費 |
回復・再生応援枠と緊急対策枠が統合され設置されたのが物価高騰対策・回復再生応援枠です。新型コロナウイルスや物価高の影響を受け、業績が悪化している事業者を支援します。
3.個人事業主が事業再構築補助金を申請して補助対象になる経費・ならない経費
補助対象となる経費は以下の種類に分けられます。
- ・建物費
- ・機械装置、システム構築費(リース料を含む)
- ・技術導入費
- ・専門家経費
- ・運搬費
- ・クラウドサービス利用費
- ・外注費
- ・知的財産権等関連経費
- ・広告宣伝・販売促進費
- ・研修費
- ・廃業費(産業構造転換枠のみ)
補助対象の経費か見分けるポイントは「継続的な事業拡大につながる支出か」が重要です。それぞれ順番に解説します。
3-1.補助対象になる経費
事業再構築補助金で補助対象になる経費は、以下のとおりです。
建物費 |
・専ら補助事業のために使用される事務所、生産施設、加工施設、販売施設、検査施設、共同作業場、倉庫その他事業計画の実施に不可欠と認められる建物の建設・改修に要する経費 |
機械装置、システム構築費(リース料を含む) |
・専ら補助事業のために使用される機械装置、工具・器具(測定工具・検査工具等)の購入、製作、借用に要する経費 |
技術導入費 |
本事業遂行のために必要な知的財産権等の導入に要する経費 |
専門家経費 |
本事業遂行のために依頼した専門家に支払われる経費 |
運搬費 |
運搬料、宅配・郵送料等に要する経費 |
クラウドサービス利用費 |
クラウドサービスの利用に関する経費 |
外注費 |
本事業遂行のために必要な加工や設計(デザイン)・検査等の一部を外注(請負、委託等)する場合の経費 |
知的財産権等関連経費 |
新製品・サービスの開発成果の事業化にあたり必要となる特許権等の知的財産権等の取得に要する弁理士の手続代行費用や外国特許出願のための翻訳料など知的財産権等取得に関連する経費 |
広告宣伝・販売促進費 |
・本事業で開発または提供する製品・サービスに係る広告(パンフレット、動画、写真等)の作成および媒体掲載 |
研修費 |
本事業の遂行のために必要な教育訓練や講座受講等に係る経費 |
廃業費 |
・廃止手続費(既存事業の廃止に必要な行政手続を司法書士、行政書士等に依頼するための経費) |
なお、対象経費には例外や注意事項が細かく規定されています。詳細は事業再構築補助金の公募要領をよく確認してください。
3-2.補助対象にならない経費
補助対象とならない経費の特徴は「継続的な事業拡大につながらない一過性の支出」である点です。具体的には以下の経費が挙げられます。
- ・事務所の家賃、保証金、敷金、仲介手数料、光熱水費
- ・電話代、インターネット利用料金
- ・金券
- ・事務用品の消耗品代、雑誌購読料、新聞代
- ・接待費
- ・不動産・株式の購入費
- ・税理士費用・弁護士費用
- ・登録免許税
- ・収入印紙
補助対象外の経費を多く計上すると、不採択や採択取り消しにつながります。申請前に補助対象の要件について、理解を深めておきましょう。
NTT東日本では、補助金についての相談サポートを行っています。事業再構築補助金のほかにも個人事業主が申請できる支援制度に「IT導入補助金」があります。いまならIT導入補助金について徹底解説したガイドブックを配付しているので、ぜひ以下の資料をダウンロードしてください。
4.個人事業主が事業再構築補助金を申請する際の3つの注意点
個人事業主が事業再構築補助金を申請する際には、以下の3点に注意が必要です。
- ・要件の確認不足
- ・付加価値額の要件
- ・売上高減少を証明する書類の不備
採択される可能性を高めるため、申請前にしっかりと把握しておきましょう。それぞれ順番に解説します。
4-1.要件の確認不足
事業再構築補助金は、申請枠ごとに定められた必要書類を提出しなければなりません。書類に不足や不備があると不採択となる可能性があるため、要件を満たしているか確認することが重要です。たとえば、事業計画書の作成には以下の注意点があります。
- ・電子申請システムにPDF形式のファイルを添付
- ・A4サイズで計15ページ以内(補助金額1,500万円以下の場合は計10ページ以内)で作成
- ・会社名を事業計画書の1ページ目に必ず記載
- ・各ページにページ数を記載
- ・1ページ目で「製品・サービスに事業者にとっての新規性があること」・「新製品・新サービスを通して既存事業と異なる市場に進出すること」について説明
参照元:公募要領(第10回)|事業再構築補助金事務局
公募要領をよく読んで、要件もれのないよう申請の準備を進めましょう。
4-2.付加価値額の要件
すべての枠に共通する必須要件として、個人事業主は3〜5年で付加価値額3〜5%を達成しなければなりません。付加価値額とは、以下3つの金額の合計を指します。
- ・営業利益
- ・人件費
- ・減価償却費
付加価値額を計算する際は、算出の根拠が必要となるため注意が必要です。補助金の相談サポートを活用しながら、書類を作成しましょう。
4-3.売上高減少を証明する書類の不備
「物価高騰対策・回復再生応援枠」「最低賃金枠」の申請には、売上高減少の証明が必要です。個人事業主は青色申告と白色申告で、売上高減少を示す書類が異なります。
- ・青色申告者:申告決算書
- ・白色申告者:売上台帳、確定申告の基礎となる書類(例:会計ソフトで出力できる試算表)
提出書類の誤りや、売上高減少の申告ミスに注意が必要です。
5.補助金関係のサポートはNTT東日本にお任せください
NTT東日本では相談サポートを通じて、個人事業主の方の補助金活用を支援しています。実際のサポート事例は、以下のとおりです。
- ・補助金の公募要項に沿った申請書類の作成支援
- ・手続きに関する相談
- ・活用可能な補助金の最新情報を事業主様へご案内
NTT東日本のサポートを利用することで見落としや申請の期限切れを防ぎ、効果的に補助金を活用できます。補助金関連のサポートは、NTT東日本までお気軽にお問い合わせください。
6.まとめ
事業再構築補助金は、個人事業主でも活用できる制度です。事業の再構築にかかるコストを軽減できるため、補助金は積極的に活用しましょう。申請前には公募要領をしっかりと理解し、要件や書類に不備がないか確認することが重要です。
NTT東日本では補助金のサポートを通じて、個人事業主のみなさまの取り組みを支援しています。補助金の活用にお悩みの方は、NTT東日本までお気軽にお問い合わせください。