| Writer:NTT東日本 北森 雅雄(Masao Kitamori)
【必見】36協定に違反となる4つのケース!罰則や企業名公表とならないための対策を紹介
「36協定に違反するとどんな罰則を受けるのだろう」「違反が発覚するケースが知りたい」と考えている方が、いらっしゃるのではないでしょうか。36協定違反は、従業員からの告発や調査によって判明します。違反すると罰則を受けるだけでなく、企業名が公表される可能性があるので適切な対策が必要です。
そこで今回の記事では「36協定違反となるケース」について解説します。「36協定に違反する4つのパターン」「発覚するまでの流れや対策」が理解できる内容になっているので、ぜひ最後までお読みください。
この記事の監修者:寺島戦略社会保険労務士事務所 寺島有紀(社労士)
監修日:2023年07月18日
ベンチャー・中小企業から一部上場企業まで国内労働法改正対応や海外進出企業の労務アドバイザリー等に従事。社会保険労務士としてベンチャー企業のIPO労務コンプライアンス対応から企業の海外進出労務体制構築等、国内・海外両面から幅広く人事労務コンサルティングを行っている。
目次:
1.36協定とは?新様式も解説
まず「36協定」とはどのような協定なのか整理しておきましょう。
- ・36協定とは
- ・36協定届の新様式
協定の概要と新様式としてどのような点が変更されたのか、詳しく説明します。
136協定とは
36協定とは、労働基準法の第36条に示された協定を指します。法定労働時間を超えた残業や法定休日に従業員を働かせる場合に、会社と労働者側で協定を結ぶ(労使協定)必要がある旨が定められています。36協定に記載すべき主な内容は、以下のとおりです。
- ・時間外労働や休日労働を行わせる具体的な理由
- ・労働者の範囲
- ・業務の種類
- ・延長予定の時間数
- ・有効期間
また、36協定を締結する方法は以下のとおりです。
- 1.①労働者の過半数組合と書面で締結する
- 2.①がないケースでは、労働者の過半数代表者と書面で締結する
上記2の代表者は、挙手や投票などで選定された「労働基準法の管理職に該当しない方」に限定されます。また36協定締結後は、労働基準監督署へ届出しなければならない点に注意しておきましょう。
236協定届の新様式
36協定届は、2021年4月から新しい様式となりました。変更点は、以下のとおりです。
- ・押印や署名の廃止
- ・特別条項付きと一般様式の届出用紙が分けられた
- ・過半数代表者に関するチェック項目が追加された
36協定届は押印や署名は不要ですが、労使協定書には必要です。そのため、労使協定書と36協定届を兼用しているケースは押印又は署名が必要なことに注意しましょう。36協定の様式は、厚生労働省のホームページからダウンロードすることで入手可能です。
2.36協定違反となる4つのケース
36協定には、法定労働時間を超えた残業や法定休日に働かせても違反とはならない免税効果があります。それでは、どのようなケースが36協定違反とみなされるのでしょうか。
- ・届出をせずに残業させる
- ・時間外労働の上限を超えて働かせる
- ・臨時的で特別な事情がないのに上限を超えて働かせる
- ・特別条項を守らず働かせる
それぞれの違反内容について、詳しく説明します。
1届出をせずに残業させる
36協定の締結や、労基署への届出を行わずに残業させた場合は違反となります。たとえ労使間で合意していたとしても、36協定を締結・届出していなかった場合は「違法に残業させている」とはみなされません。そのため、必ず労働基準監督署に36協定届を届出しましょう。また、協定書類は労基署で受理された届日から協定内容が適用されます。受理日以前に残業させるケースも違反となるため注意しましょう。
2時間外労働の上限を超えて働かせる
時間外労働は、月で45時間、年間で360時間を超えることが原則禁止されています。時間外労働の上限は、36協定の内容に準ずるのが基本です。そのため、36協定で「1年300時間以内」と取り決めていたケースで、310時間の残業があった場合は違反となります。労働基準法の上限である360時間が、必ずしも優先されるわけではないことを理解しておきましょう。
3臨時的で特別な事情がないのに上限を超えて働かせる
臨時的で特別な事情があれば「36協定の上限規制を超えた時間外労働」いわゆる特別条項の条件下で時間外労働や休日出勤が行えます。特別条項付き36協定を締結することで、月で45時間、年間で360時間を超えた労働が行えます。ちなみに臨時的で特別な事情の事例とは、以下のようなケースです。
- ・大規模なクレーム
- ・予算・決算業務
- ・ボーナス商戦による業務の繁忙化など
上記のような特別な事情がなければ、上限を超えた労働を従業員に行わせると違反になります。「業務上必要だったため」という理由は特別条項に含まれないので注意が必要です。
4特別条項を守らず働かせる
特別条項は「臨時的で特別な事情」に加えて以下の4つの条件を1つでも破ってしまうと、36協定違反とみなされます。4つの条件とは、以下のとおりです。
- ・年間720時間以内の時間外労働
- ・時間外労働と休日労働の合計が月80時間以内(2〜6ヶ月の平均)
- ・月の合計が100時間未満となる時間外労働と休日出勤
- ・1年のうち6ヶ月間に限り月45時間を超えた時間外労働が可能
臨時的で特別な事情が発生し、4つの条件を満たした状態であれば、月で45時間、年間で360時間を超えた労働が可能です。4つの条件は複雑なので、上限をオーバーしないように従業員一人ひとりの労働時間を正確に把握する必要があります。
3.36協定に違反するとどうなるのか【罰則を受けて企業名が公表されるケースがある】
36協定に違反すると、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられるおそれがあります。違反内容は「労使協定を結ばずに時間外労働をさせた」もしくは「36協定に規定した時間以上に労働させた」などがあげられます。罰則を受ける対象は、会社だけではありません。従業員の労務管理を行う「責任者」も罰則対象となる点を理解しておきましょう。
また、書類送検されると厚労省や県の労働局ホームページ内に企業情報が公表されます。公表される内容や事例は、以下のとおりです。
- ・企業名
- ・所在地
- ・事案概要
- ・違反した法律など
【事例1】 | 兵庫県の会社。36協定を結ばずに従業員へ時間外労働を行わせた |
【事例2】 | 神奈川県の会社。36協定の締結内容を超えた時間外労働を従業員1名に行った |
企業の名称から所在地まで、インターネットを通じて誰でも閲覧できるので、社会的な信用低下につながります。
4.36協定違反が発覚する3つのパターン
36協定の違反は企業名の公表につながるなど、社会的信用を失くす可能性があります。36協定が発覚するパターンは、以下のとおりです。
- ・臨検監督
- ・従業員からの通報
- ・労働災害
ここでは、それぞれの問題が発覚するまでの流れについて詳しく説明します。
1臨検監督
36協定の締結内容や労働時間の違反が、臨検監督で調査されて発覚するケースです。臨検監督とは、労働基準法などの法律に則った労働条件が守られているか、実際に事業所に行って確認する調査を指します。臨検監督には、申告監督と定期監督の2種類があります。それぞれの内容は、以下のとおりです。
申告監督 | 従業員から告発を受けて行う臨時調査 |
---|---|
定期監督 | 監督計画に基づいて実施される定期調査 |
どちらの調査であっても、36協定に準じた労働が行われているか厳格なチェックが行われます。
2従業員からの通報
従業員からの通報とは、労働基準監督署へ相談して発覚するケースを指します。時間外労働や休日労働が増え過ぎると過重労働に耐えられなくなり、従業員自らが労働基準監督署へ通報する可能性があります。特に、特別条項付き36協定は条件項目が多いので、限度時間を超えた残業を気づかないうちに行わせているケースがあり要注意です。そのため、36協定の周知と過重労働につながらないようなシステム作りが求められます。
3労働災害
会社で火災などの災害が発生したり、労働災害で従業員が亡くなったりしたケースでは、災害の調査が行われて違反が発覚することがあります。災害原因によっては、従業員への過度な長時間労働が原因の場合があります。そのため「労働災害の発生原因は何なのか」「36協定の締結内容や労働時間」「会社の管理ミスがなかったのか」など細かく調査されます。
5.36協定に違反した際の対応3選
違反しないよう努めていても、管理不足などの理由から36協定に違反する可能性がないとは限りません。違反が判明した場合、どのような対策を取れば良いのでしょうか。
- ・36協定を締結していなかった場合
- ・上限時間を守れなかった場合
- ・臨検監督で判明した場合
ここでは、それぞれのケースに応じた適切な対応策について詳しく説明します。
136協定を締結していなかった場合
36協定を結ばずに行う法定労働時間を超えた時間外外労働や法定休日労働は違法です。36協定の締結と届出を確実に行いましょう。そもそも法定労働時間は労働基準法で定められていて、1日8時間、週40時間以内となっています。法定労働時間を超えた残業はすべて36協定が必要な「時間外労働」です。時間外労働が発生する可能性があるのなら、必ず36協定を結んで労働基準監督署に届出を行ってください。
2上限時間を守れなかった場合
36協定を結んで労働基準監督署に届け出していたとしても、上限時間を守れなかったら違法とみなされます。違法となる要因の一つに、従業員の労働時間を的確に把握できていないことがあげられます。特に、特別条項付きの36協定を締結するケースでは「年間で720時間以内の時間外労働」などの4つの条件が加わるので、管理が難しくなるでしょう。
そのため、労働時間を正確に管理できるシステムを取り入れるなど、上限を超えないような対策を講じる必要があります。
3臨検監督で判明した場合
臨検監督で違反が判明すると、労働基準監督署から「是正勧告」が出されます。是正勧告とは、違反があった場合に提示した期間内で改善するよう求める行政指導を指しますが、強制力はありません。是正勧告を無視してもすぐに罰則が科されるわけではありませんが、そのままにしておくと書類送検される可能性があるため注意が必要です。期間内で改善できるよう努力する必要があります。
6.36協定に違反しないための3つの注意点
適切な労働時間で従業員に働いてもらうためにも、36協定の違反につながらないような対策を講じる必要があります。
- ・36協定の締結
- ・労働時間の正確な管理
- ・時間外労働を減らす
ここでは、それぞれの注意点について詳しく説明します。
136協定の締結
従業員に時間外労働させる可能性が少しでもある場合は、必ず36協定を締結しておきましょう。締結自体は難しいものではなく、作成後は労働基準監督署に届出するだけなので、手間や難しさはありません。現状で残業をさせるつもりがなかったとしても、不測の事態を考慮して事前に36協定を結んでおくのが良いでしょう。「違反してしまった場合」を想定した早めの対策が重要です。
2労働時間の正確な管理
36協定の定めた上限時間を守るために、従業員の労働時間を確実に把握し調整する必要があります。リモートワークの普及で直接従業員の勤務状況を見れないケースが増えてきています。会社側が気づかないうちに上限時間を超えた働きを従業員が行っていることがあるかもしれません。そのため、労働時間管理システムを活用するなど対策を取ると良いでしょう。
3時間外労働を減らす
業務で使用する機材トラブルが発生したなどの予期せぬ事態を除き、そもそも時間外労働にならないような労働環境を作るべきです。長時間労働で起こるリスクは以下のとおりです。
- ・従業員の過労や自殺のリスク
- ・残業代の増加
- ・ブラック企業というマイナスイメージの浸透
上記のようなリスクが発生しないような対策を、会社全体で検討する必要があります。
7.36協定に違反しないように従業員の働き方を見直そう
36協定とは、労働基準法の第36条に示された法定労働時間を超えた残業と法定休日労働に関する協定を指します。違反すると罰則が科され、送検されると企業名が公表される可能性があるため注意が必要です。36協定の締結と届出を行うだけでなく、締結内容が確実に守れるように、従業員の労働時間を的確に把握できるシステムづくりが求められます。
NTT東日本が提供する勤怠管理サービス「KING OF TIME for おまかせ はたラクサポート」は勤務状況がリアルタイムで把握できます。従業員の様子を直接見れないリモートワークでも安心です。勤務状況の入力や集計の自動計算が可能なので、業務が効率化されます。36協定遵守のために勤怠管理の強化を考えている企業担当者の方は、ぜひお気軽にご相談ください。
この記事を書いた人
NTT東日本 ビジネス開発本部 北森雅雄
NTT東日本に入社後、自治体向けのシステムエンジニアとして、庁内ネットワークや公共機関向けアプリケーションなどのコンサルティングからキャリアを開始。
2018年から現職にて、プロダクト(SaaS)開発、デジタルマーケティング全般のディレクションに従事。
2022年に業務のデジタル化を分かりやすく発信するオウンドメディア(ワークデジタルラボ)のプロジェクトを立ち上げ。
NTT東日本にかかわる、地域のみなさまに向けてデジタル化に役立つ情報発信を展開。