| Writer:NTT東日本 北森 雅雄(Masao Kitamori)

【事実】派遣労働者が残業するには36協定が必要!締結方法や注意点も紹介

【事実】派遣労働者が残業するには36協定が必要!締結方法や注意点も紹介



派遣労働者に、派遣先で時間外・休日労働をさせるためには『36協定』の締結が必要です。そこで今回の記事では、派遣事業の36協定について締結方法や注意点を解説します。36協定の特別条項についても理解できる内容になっているので、ぜひ最後までお読みください。

寺島 有紀

この記事の監修者:寺島戦略社会保険労務士事務所 寺島有紀(社労士)

監修日:2023年07月18日
ベンチャー・中小企業から一部上場企業まで国内労働法改正対応や海外進出企業の労務アドバイザリー等に従事。社会保険労務士としてベンチャー企業のIPO労務コンプライアンス対応から企業の海外進出労務体制構築等、国内・海外両面から幅広く人事労務コンサルティングを行っている。

著書の出版YouTubeなど多方面で活躍。

寺島戦略社会保険労務士事務所

1.36協定における派遣労働者の取り扱いについて解説

【事実】派遣労働者が残業するには36協定が必要!締結方法や注意点も紹介

原則、36協定は事業所ごとに締結しなければいけません。つまり、36協定はその事業所に所属している従業員が使用者と締結します。この章では「派遣労働者は誰と36協定を締結するか」「派遣労働者の労働時間の把握や安全衛生について責任を誰が持つか」について解説します。

36協定とは

36協定は、時間外・休日労働について従業員と使用者で取り決める約束です。労働基準法では、従業員を働かせることができる1日(1週間)の労働時間と休日日数を定めています。労働基準法で定められた基準を超えて従業員に労働させる際は、労使による『36協定』の締結と労働基準監督署への届け出が必要です。

なお、36協定を締結せずに法定労働時間を超えて従業員を働かせたり、法定休日に働かせる場合、労働基準法違反になり罰則が科せられることがあります。労働基準法違反に問われないように、従業員に時間外労働をさせる際は、きちんと36協定を締結、届出しましょう。

派遣労働者は派遣元と36協定を結ぶ

派遣労働者に時間外労働をさせる際は、派遣元が36協定を結ぶ必要があります。なぜなら、派遣労働者は派遣元に所属する従業員だからです。派遣先が36協定を締結していても、派遣労働者には適用されないため注意しましょう。そのため、派遣先は派遣元の36協定を把握し、その範囲内で派遣労働者を働かせなければいけません。派遣元でも、労働者の過半数で組織する労働組合か従業員代表を選出して36協定を締結しましょう。

派遣労働者の時間外労働は派遣先が責任を持つ

派遣労働者の労働時間の把握(時間外・休日労働を含む)は、派遣先が責任を持ちます。そのため、36協定の範囲を超えて時間外労働や法定休日労働をさせた場合、派遣先が労働基準法32条に違反したことになり、懲役(6ヵ月以下)または罰金(30万円以下)が課せられるおそれがあります。そのため、労働時間の把握に関しては派遣先が責任を負います。派遣先は長時間勤務による心身への影響を考慮して、派遣労働者を働かせなければいけません。

2.派遣労働者に限度時間を超えて時間外労働をさせるなら特別条項付き36協定の締結が必要

【事実】派遣労働者が残業するには36協定が必要!締結方法や注意点も紹介

臨時の特別な事情があり、限度時間を超えて働かせなければいけない場合は、『特別条項付き36協定』を締結しましょう。特別条件つきの36協定を締結することで『限度時間』(1ヵ月45時間かつ1年360時間)を超えて、時間外労働を行わせることができます。

また、企業によっては「予算、決算業務など時期により業務量に繁忙があるので、限度時間を超えて残業をしなければいけない。」という事情があるのではないでしょうか。そのような場合は、特別条項付き36協定を事前に締結しておくことで、年間6ヵ月まで限度時間を超えて労働させられます。

なお、特別条項付き36協定届に記載する事情は、業務の種類ごとに具体的な理由を記載しなければいけません。また、臨時の特別な事情がある場合であっても、時間外労働は年間720時間以内に制限されます。

3.派遣労働者と特別条項付き36協定を締結する5ステップ

【事実】派遣労働者が残業するには36協定が必要!締結方法や注意点も紹介

時期により業務の繁忙がある業種に派遣労働者を送る場合は、特別条項付き36協定の締結をしましょう。特別条項を設けることで、派遣労働者は年間6ヵ月まで限度時間を超えて時間外労働ができます。この章では、特別条項付き36協定の締結についての流れを理解しましょう。

労働者代表を選出する

36協定は、過半数の従業員で組織する労働組合の代表者が使用者との間で締結します。労働組合が存在しない場合は、労働者代表(過半数従業員の支持を受けている人物)を選出して、36協定を締結しなければいけません。また、労働者代表の選出には2つ条件が設けられています。労働者代表の選出条件は、以下のとおりです。

  • ・労働基準法上の管理監督者の立場にない(※)
  • ・使用者の意向が関わっていない

※労働基準法上の管理監督者は、選出には参加する。

なお、労働者代表は、目的を明示したうえで民主的な手続き(選挙・挙手・回覧など)によって選出しなければいけません。

労働者代表と使用者が協定内容について協議する

労働者代表を選出したあとは、使用者と協定内容について協議します。協議では、従業員の時間外・休日労働について話し合います。また、臨時の特別な事情で限度時間を超えて労働が予想される場合は、一般条項に加えて、特別条項に記載する内容を協議しましょう。特別条項の協議で決めるべき主な内容は、以下のとおりです。

  • ・業務の種類
  • ・限度時間を超えて時間外労働させることができる労働者数
  • ・臨時的に限度時間を超えて時間外労働が必要な理由
  • ・一日、一ヶ月、一年に延長することができる労働時間
  • ・限度時間を超えて労働させる労働者に対する健康および福祉を確保するための措置
  • ・協定の有効期間

なお、時間外労働が必要な理由は、臨時の特別な事情に限られます。恒常的に発生する事情は、認められないため注意しましょう。

特別条項付き36協定を締結する

内容の協議が終わったあとは、協定書を作成し36協定を結びましょう。36協定は、労働者代表と使用者の署名又は記名押印をもって締結されます。なお、協定書と届を兼ねて協定書を作成しない場合は、別途『36協定届』を作成する必要があります。36協定届を作成する際は、2部印刷しましょう。届け出の際に、労働基準監督署から返送される控えに使用します。

36協定届を記入し労働基準監督署に届け出る

締結が完了したあとは、e-Gov・郵送・窓口のいずれかにて、締結内容を転記した36協定届2部(郵送・窓口の場合)を労働基準監督署に提出しましょう。労働基準監督署の審査が終わったあと、36協定届に問題がなければ、控が受付印付きで返送されます。控えは協定内容の確認や証明に使用するため、紛失しないように保管しましょう。

なお、36協定届は2021年4月以降、新様式に変更されました。新様式は、署名・押印が不要になったため、36協定届が36協定書を兼ねる場合を除き、記名のみで提出できます。

協定書を作成し労働者に周知する

労働基準監督署に届け出たあとは、協定書を従業員に周知しましょう。36協定には周知義務があり、内容を事業場の従業員が確認できるように定められた方法で明示しなければいけません。周知の方法は、以下のとおりです。

  • ・書面で交付
  • ・わかりやすい場所に掲示
  • ・デジタルデータで保管(いつでもアクセス可能にする)

なお、朝礼中に口頭で説明したり、従業員全員が立ち寄らない場所に掲示したりした場合は、周知したと認められません。周知義務を怠ると、36協定の効力を否定される場合があるため注意しましょう。

4.派遣労働者との特別条項付き36協定に関する2つの注意点

【事実】派遣労働者が残業するには36協定が必要!締結方法や注意点も紹介

派遣労働者と36協定を締結する場合、協定内容件は慎重に話し合う必要があります。労使条件によっては、労働基準監督署に36協定を認められなかったり、労働基準法違反になったりします。協定締結の際の注意点について理解し、トラブルなくスムーズに36協定を締結しましょう。

臨時の特別な事情以外で時間外労働をさせてはいけない

36協定の内容を協議する際は、時間外労働が必要な理由を精査しましょう。時間外労働が発生する理由について、恒常的に発生する事情は認められません。理由は、臨時の特別な事情を記載する必要があります。なお、恒常的に発生する事情で36協定を届け出た場合、労働基準監督署の審査を通過できません。恒常的に発生する事情では、無制限に時間外・休日労働が可能になってしまうためです。

時間外労働の限度時間は年間720時間以内

特別条項付き36協定を事前に締結しておくことで、年間6ヵ月まで限度時間を超えて従業員を働かせられることができます。しかし、特別条項付き36協定を締結していても、無制限に労働させることは認められていません。特別条項付き36協定の締結に設けられている上限は、以下のとおりです。

  • ・1年間720時間以内
  • ・1ヵ月100時間未満
  • ・複数月(2~6ヵ月)平均80時間以内

なお、上記の条件は規制の上限です。労働基準法違反の有無に関わらず、時間外・休日労働は最小限に抑えましょう。過労死などの健康障害のリスクは、労働時間の長さに比例して大きくなるといわれています。

5.労働者を派遣する前に行うべきポイント

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労働者派遣契約は、36協定の締結者と時間労働外の把握における責任者が異なります。そのため、派遣先とトラブルになるケースが多々あります。従業員の派遣前にすべきことを確認し、派遣先で起こりえるトラブルを回避しましょう。

派遣先に自社の36協定について情報提供する

派遣元の36協定を派遣先に理解してもらうことで、労働基準法に違反するリスクを下げられます。そのため、派遣先に派遣会社の36協定について情報提供をしましょう。派遣元で締結された36協定以上の時間外労働や法定休日労働をさせた場合、派遣先が労働基準法違反に問われます。派遣先が労働基準法に違反すると従業員を派遣できなくなるため、派遣元側にも損害が発生します。そのため、派遣元と派遣先で情報共有を密にとることが重要です。

派遣先と労働者の安全衛生の確保について情報共有する

派遣労働者の安全衛生の確保について、実施状況を確認するために派遣先と情報共有を行いましょう。使用者は労働契約法第5条で、労働契約に伴う安全配慮義務を負うことが定められています。派遣契約の当事者である派遣元はもちろん、派遣先も安全配慮義務を負うことになります。安全配慮義務とは、従業員が健康かつ事故や怪我をせずに働ける環境を整備する責任を指します。労働者の安全衛生確保の主な対策は、以下のとおりです。

  • ・産業医・安全衛生の管理者を選任
  • ・機械の安全措置(プレス機の安全装置など)
  • ・化学物質の危険性評価とばく露防止
  • ・有害業務(放射線業務など)従事者の特殊健康診断

取引先が、きちんと派遣労働者の安全衛生を確保しているか定期的に確認することが重要です。

6.派遣労働者の勤怠管理や電子契約はNTT東日本のクラウドサービスがおすすめ

【事実】派遣労働者が残業するには36協定が必要!締結方法や注意点も紹介

派遣労働者の時間外労働の把握は、派遣先が責任を負います。派遣先が労働基準法違反になると、取引中止になってしまい派遣元にも大きな影響を与えます。そのため、派遣元も派遣先も協力体制を確立し、労働基準法に違反しないように注意しなければいけません。

しかし、派遣先と地理的に離れていたり派遣元内部の業務に集中する必要があったりして「派遣労働者の労働時間管理に手を割けない」という方がいるのではないでしょうか。そうした方には、NTT東日本のクラウド勤怠管理サービス『KING OF TIME for おまかせ はたラクサポート』の導入がおすすめです。

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NTT東日本のクラウドサービスを導入することで、外出先の派遣労働者やテレワークの勤怠管理が行えます。加えて、働き方改革関連法の違反防止やテレワーク時の不正勤務防止が可能です。また、労使関係の管理だけでなく経費精算も給与計算も可能なので、全社的な業務効率化を考えている方はぜひ導入を検討されてはいかがでしょうか。

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7.まとめ

【事実】派遣労働者が残業するには36協定が必要!締結方法や注意点も紹介

派遣労働者には、取引先ではなく派遣会社と締結した36協定が適用されます。取引先が時間外労働をさせる場合は、派遣会社が従業員と特別条項付き36協定を締結しなければいけません。

しかし、派遣労働者の時間外労働については、取引先が責任を持ちます。そのため、派遣会社は取引先に自社の36協定について情報提供する必要があります。加えて、取引先が派遣労働者の安全衛生を確保しているか定期的に確認しなければいけません。

NTT東日本のクラウドサービス『KING OF TIME for おまかせ はたラクサポート』を利用することで、派遣労働者の労働時間管理や契約関係を効率化できます。36協定への対応にお困りの派遣会社の方は、ぜひ導入を検討されてはいかがでしょうか。

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この記事を書いた人

NTT東日本 ビジネス開発本部 北森雅雄

NTT東日本に入社後、自治体向けのシステムエンジニアとして、庁内ネットワークや公共機関向けアプリケーションなどのコンサルティングからキャリアを開始。

2018年から現職にて、プロダクト(SaaS)開発、デジタルマーケティング全般のディレクションに従事。

2022年に業務のデジタル化を分かりやすく発信するオウンドメディア(ワークデジタルラボ)のプロジェクトを立ち上げ。
NTT東日本にかかわる、地域のみなさまに向けてデジタル化に役立つ情報発信を展開。

北森雅雄 masao kitamori