ChatGPTも使えるAzure OpenAI Serviceとは?特長や活用事例も紹介
「Azure OpenAI Service」とは、さまざまなビジネスシーンで活用される「ChatGPT」などの生成AIを、Microsoft社が提供するクラウドプラットフォームで利用できるようにしたサービスです。開発元であるOpenAIの環境で利用するよりもセキュリティが高く、データ保護の観点からも優れているため、企業や自治体での利用が広がっています。
そこで本記事では、Azure OpenAI Serviceの概要や活用事例、導入方法について解説します。
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目次:
- 1.Azure OpenAI Serviceとは?
- 2.Azure OpenAI Serviceの特長
- 2-1.クラウドベースで生成AIを利用できる
- 2-2.強固なセキュリティのもとで利用できる
- 2-3.他のサービスやツールとシームレスに統合できる
- 3.Azure OpenAI Serviceの活用事例
- 3-1.製造業
- 3-2.金融業
- 3-3.小売業
- 3-4.医療分野
- 3-5.自治体・公共団体
- 4.Azure OpenAI Serviceの導入方法
- 4-1.STEP① Microsoft Azureサブスクリプションを作成する
- 4-2.STEP② Azure OpenAI Serviceへのアクセス申請を行う
- 4-3.STEP③ Azure OpenAIのリソースを作成し、モデルをデプロイする
- 5.Azure OpenAI Serviceの注意点
- 5-1.スピーディーな導入が難しい
- 5-2.最新モデルをすぐには利用できない
- 5-3.コストが高額になる場合がある
- 6.Azure OpenAI Serviceの導入・活用でお悩みならNTT東日本の生成AIクラウドソリューション
- 7.まとめ
1.Azure OpenAI Serviceとは?
Azure OpenAI Serviceとは、Microsoft社が提供するクラウドサービス「Microsoft Azure」上で、ChatGPTをはじめとするOpenAI社の生成AI技術を利活用できるサービスです。
関連コラム
AIやデータサイエンスに関する専門知識がなくてもアプリケーションを作成できる「Azure Cognitive Services」の一つであり、OpenAIの先進的なAI技術を簡単にサービスに組み込めることから、多くの企業や自治体で導入されています。
Azure OpenAI Serviceで利用できる生成AIモデルは次の通りです。これらのモデルをプログラムに組み込むことで、生成AIを活用した独自のシステムを構築できます。
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生成AIモデル | 内容 |
---|---|
GPT-4 Turbo | 最も能力の高い Azure OpenAI モデル。テキストと画像の両方を入力として受け入れられる「マルチモーダル」を備えている。 |
GPT-4 | GPT-3.5 をもとに改善されたモデル。 |
GPT-3.5 | GPT-3 をもとに改善されたモデル。 自然言語とコードを理解して生成できる。 |
埋め込みモデル | テキストや画像などを数値ベクトル形式に変換し、AIや言語モデルが理解しやすいようにする。 |
DALL-E | 自然言語を理解し、画像を生成できる。 |
Whisper | 音声を自動で文字起こししてテキストに変換できる。 |
テキスト読み上げ | テキストを音声に合成できる。※プレビュー段階 |
参考:Azure OpenAI Service モデル(Microsoft Azure公式HP|2024/5/14 参照)
2.Azure OpenAI Serviceの特長
Azure OpenAI Serviceの特長は大きく3つあります。
2-1.クラウドベースで生成AIを利用できる
Azure OpenAI Serviceは、Microsoft Azureのクラウドインフラを活用しているため、大規模なサーバーの構築などが必要なく、容易に導入できるというメリットがあります。生成AIは膨大なデータを処理するために多くのリソース(計算資源)が必要になりますが、クラウドであれば利用状況に応じてリソースの増減が可能なため、効率的に運用できます。
2-2.強固なセキュリティのもとで利用できる
Azure OpenAI ServiceはMicrosoft Azureの厳格なコンプライアンスとセキュリティ基準によって保護されており、機密性が高い環境で利用できます。また、通常ChatGPTに入力した情報はOpenAIの学習データとなりますが、Azure OpenAI ServiceはOpenAIのサービスとして利用できるChatGPTとは完全に分離されているため、学習データとして利用される心配がありません。こうした特長から機密情報を多く扱う企業や自治体に適しているとして需要が高まっています。
2-3.他のサービスやツールとシームレスに統合できる
Azure OpenAI Service はMicrosoft Azure上で利用できるため、「Azure Logic Apps」(ワークフローを自動化するサービス)や「Azure Bot Service」(チャットボットを構築できるサービス)といったAzureで提供される他のサービスやツールとのシームレスな統合が可能になります。これにより、既存のアプリケーションやシステムなどに、生成AI機能を簡単に追加することができます。
3.Azure OpenAI Serviceの活用事例
Azure OpenAI Serviceはさまざまな業種で活用されています。事例を見ていきましょう。
3-1.製造業
製造業では、製品の品質管理や生産プロセスの最適化にAzure OpenAI Serviceが活用されています。AIを用いた製造データの収集・分析や、異常・欠陥・不良品の自動検出、市場分析の情報をもとにした需給予測による在庫管理の効率化などを行います。
3-2.金融業
金融業界では、顧客サービスの自動化や顧客情報・リスク管理などに活用されています。顧客への提案資料の作成やチャットボットを活用した顧客対応の自動化、取引データから不正や異常なパターンを検出するなど、利用される業務フェーズは多岐にわたります。
3-3.小売業
小売業では、顧客の購買行動の分析や売上予測、製品レビューの収集・分析といったマーケティング活動に利用されています。AIが消費者の好みや過去の購買履歴を分析してターゲットに合わせたレコメンデーションを行うことで、カスタマーエクスペリエンスを向上を図っています。
3-4.医療分野
医療分野では、病気の診断支援や医療記録の分析などにAzure OpenAI Service が活用されています。AIによる画像診断や音声入力による電子カルテへの記録、患者の病歴などをまとめた退院サマリーの生成といった業務が自動化できるため、AIではできない“人対人”のサービスにリソースが割けるようになります。
3-5.自治体・公共団体
自治体や公共団体では、公開文書の原案の作成や市民からの問い合わせ対応、文書管理、外国語の自動翻訳など、さまざまなシーンでAzure OpenAI Serviceが活用されています。AIを利用することで事務的な業務時間を削減し、市民サービスなどへの注力が可能になります。
4.Azure OpenAI Serviceの導入方法
Azure OpenAI Serviceの導入は、次のステップで行います。
4-1.STEP① Microsoft Azureサブスクリプションを作成する
Microsoft Azure公式HPから、手順に従って「Microsoft Azureサブスクリプション(Microsoft Azureのアカウント)」を作成します※。サブスクリプションは無料で作成できますが、従量課金制のため、生成AIサービスを使った分だけ料金がかかります。使用するモデルによって金額が異なりますので、詳細は公式HPの「Azure OpenAI Service の価格」ページをご覧ください。
Microsoft Azureサブスクリプションの作成には、Microsoftアカウントが必要となります。
4-2.STEP② Azure OpenAI Serviceへのアクセス申請を行う
Azure OpenAI Serviceの利用には、アクセス申請が必要です。Microsoft公式HPの「Azure OpenAI Service とは」ページからフォームに必要事項を入力して申請し、承認された場合のみ利用できます。
Azure OpenAI Service は、Microsoft社が掲げる「責任あるAI」という原則に基づいてサービスが提供されており、有害なコンテンツの生成や悪用などを防ぐため、アクセスに制限が設けられています。2024年5月時点では、Microsoftと既存のパートナーシップがある顧客、リスクの低いユースケースに利用する顧客、リスクの軽減策に取り組んでいる顧客のみが対象です。必ず申請が通るとは限らないので注意しましょう。
4-3.STEP③ Azure OpenAIのリソースを作成し、モデルをデプロイする
申請が承認されたらAzure portalにログインし、Azure OpenAIのリソースを作成します。Azure OpenAIの中から使いたい生成AIモデルを選択し、デプロイ(「配置する」という意味。アプリケーションをサーバー上に配置して利用可能な状態にすること)が完了すれば、Azure OpenAI StudioやWeb APIで生成AIモデルを利用できるようになります。
なお、Azure OpenAI Serviceへのアクセスは、「インターネット接続」と「プライベート接続」の2種類があります。
インターネット接続は、通常のインターネットからAPIにアクセスして利用する方法で、APIキー認証が必要になります。
プライベート接続は、インターネットを介さずにAzure専用のネットワークからAzure OpenAI Serviceを利用できる方法で、Microsoft Entra ID認証が必要です。セキュリティが高く、データ保護の観点からも企業や自治体での利用に向いている接続方式です。
詳しい導入手順や認証方法については、Microsoft Azure公式HPをご覧ください。
5.Azure OpenAI Serviceの注意点
Azure OpenAI Serviceを導入する際には、以下の点に注意が必要です。
5-1.スピーディーな導入が難しい
Azure OpenAI Serviceは、誰でも利用できるわけではなく、かつ利用できてもMicrosoft Azureの契約や申請、リソースの構築などに時間がかかります。
5-2.最新モデルをすぐには利用できない
OpenAI社から最新の生成AIモデルが発表されたとしても、「Azure OpenAI Service上で最新モデルが正しく動作するか」「他のツールと問題なく統合できるか」をテストするプロセスがあるため、すぐに利用することはできません。
5-3.コストが高額になる場合がある
Azure OpenAI Serviceは従量課金制となっているため、大規模なデータセットを扱う場合や複雑なモデルを頻繁に利用する場合には、コストが高額になることがあります。リソースの使用状況を監視して、コスト管理と予算配分を適切に行うことが重要です。
6.Azure OpenAI Serviceの導入・活用でお悩みならNTT東日本の生成AIクラウドソリューション
NTT東日本の「自治体様向け 生成AIソリューション」では、生成AI導入・活用支援のほか、コンサルティングから運用フェーズに至るまで、自治体の皆さまの課題に即したソリューションを提供いたします。
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7.まとめ
Azure OpenAI Serviceは、Microsoftの厳格なセキュリティ基準のもと、クラウドベースで生成AIを活用できるため、企業や自治体の業務効率化に寄与します。一方で、「申請が承認されないと利用できない」「導入スピードが遅い」といった注意点もあります。Azure OpenAI Serviceを最大限に活用するためにも、専門知識のあるパートナー企業などに相談することをおすすめします。
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