地方自治体のガバメントクラウドへの移行期間・対象業務・手順
ガバメントクラウドの移行、運用管理を徹底サポートします。NTT東日本のガバメントクラウド統合運用管理補助ソリューション資料をぜひダウンロードしてご活用ください。
地方自治体は、2025年度末までに20業務をガバメントクラウドへ移行しなければなりません。移行の期限が迫る中、移行の対象業務や移行方法に不安がある方もいるでしょう。
そこで、本記事ではガバメントクラウドへの移行期間や対象業務・手順について解説します。この記事を読めば、今後取りかからなければならない流れが見えてきます。ぜひ参考にしてください。
目次:
- 1.自治体は2025年度末までに20業務をガバメントクラウドに移行する必要がある
- 2.自治体のシステムをガバメントクラウドに移行するメリット4つ
- 2-1.サーバー構築・運用のコストを削減できる
- 2-2.情報システムの迅速な構築と柔軟な拡張が可能となる
- 2-3.データの連携が容易になる
- 2-4.セキュリティが強化される
- 3.自治体システムをガバメントクラウドへ移行する手順
- 3-1.現行システムの構成と機能を洗い出し
- 3-2.現行システムとベンダーが開発するシステムの標準仕様の差を分析
- 3-3.移行計画を作成
- 3-4.ベンダーを選定
- 3-5.ベンダーおよびデジタル庁と契約を締結
- 3-6.システム移行時の設定
- 3-7.データを移行
- 3-8.運用テストの実施
- 3-9.新システム環境構築・ネットワーク接続
- 4.ガバメントクラウドへの移行ならぜひNTT東日本にご相談ください
- まとめ
1.自治体は2025年度末までに20業務をガバメントクラウドに移行する必要がある
自治体は2025年度末までに、自治体情報システム標準化の対象となる20業務を移行する必要があります。これは「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律」にて定められた内容であり、統一化をめざすために決められた期限です。
2023年10月現在では移行期限を2025年度末としていますが、難易度が高いものについては期限が延びる可能性もあります。
対象となる20業務は、以下の内容です。
子ども関連 |
|
---|---|
戸籍・住民基本台帳関連 |
|
税金関連 |
|
保険・年金・福祉関連 |
|
その他 |
|
上記に該当する業務の場合は、2025年度末の期限に間に合うよう移行の計画を進める必要があります。
ガバメントクラウドについて詳しい内容を知りたい方は、別記事「ガバメントクラウドとは?概要や開始時期、自治体の活用メリットなど」を参考にしてください。
2.自治体のシステムをガバメントクラウドに移行するメリット4つ
自治体のシステムをガバメントクラウドへと移行するメリットは、以下の4つです。
- サーバー構築・運用コストを削減できる
- 情報システムの迅速な構築と柔軟な拡張が可能
- データの連携が容易になる
- セキュリティが強化される
順番に解説します。
2-1.サーバー構築・運用のコストを削減できる
ガバメントクラウドは、サーバー構築や運用のコストを削減できるメリットがあります。
もともと共通のクラウドやシステムがなかったため、これまでは各自治体が独自にサーバーを構築・運用していました。構築にかかるサーバー代や保守のコストはもちろん、維持費として光熱費などの費用もかかります。
一方、ガバメントクラウドを利用すれば各自治体でサーバーを設置・構築する必要がなくなり、メンテナンス等の保守も不要です。そのためイ二シャルコストのみではなく、ランニングコストの軽減も期待できます。
またガバメントクラウドを利用すれば、民間業者が作成したアプリをガバメントクラウド上で選択できます。複数のアプリの中から選択できることで、業者間での価格競争がはじまり、アプリの価格も下がる可能性が高いです。
さらに構築や保守にかかる時間も削減でき、本来の業務に時間を最大限かけられるようになるため、業務効率アップも図れるでしょう。
2-2.情報システムの迅速な構築と柔軟な拡張が可能となる
ガバメントクラウドを利用すると、情報システムの迅速な構築と柔軟な拡張が可能です。
これまでのシステムを利用していた場合、新しいシステムが必要なときは自治体が個々に構築・拡張をしなければなりません。その分、新システムの構築に時間と手間、費用がかかっていました。
ガバメントクラウドは大手のクラウドサービスを活用しているため、柔軟な拡張はもちろん、迅速な構築もできるようになります。
2-3.データの連携が容易になる
ガバメントクラウドを活用すると、データの連携も容易です。データ連携が容易になる理由として、デジタル庁で実現させようとしている「公共サービスメッシュ」が挙げられます。
公共サービスメッシュとは、行政が保有するデータを連携できる情報連携基盤です。
公共サービスメッシュを活用すれば、住民は必要なサービスの申し込み手続きを60秒で完結できるようになります。さらに行政や自治体などが持っているデータも連携可能です。
たとえば自治体から通知を一斉に送りたいときなども、行政や他の自治体との連携が容易なら、膨大なデータをうまく抽出・活用できるようになるでしょう。
2-4.セキュリティが強化される
ガバメントクラウドを活用すると、現在のシステムに比べセキュリティの強化が見込めます。
これまで自治体は各自で情報セキュリティ対策をとってきたものの、そのレベルは団体の規模によって異なります。自治体によっては、予算が合わず断念した情報セキュリティ対策も少なからずあるでしょう。
ガバメントクラウドでは、「政府情報システムのためのセキュリティ評価制度(ISMAP)」のリストに登録されたサービスの中から、複数の要件を満たすクラウドサービスが選ばれます。あらかじめ高度な情報セキュリティ対策がとられているクラウドを使うことになるので、機密性の高い情報も安心して取り扱えるようになるのです。
3.自治体システムをガバメントクラウドへ移行する手順
この章では、ガバメントクラウドへ移行する手順を解説します。なお今回解説する移行手順は一般的な方法です。現行システムによっては移行手順が異なる場合もあるため、注意しましょう。
選定するベンダーが現行システムと同様の場合は、バージョンアップをすることにより作業を省略できる場合もあります。流れを理解し、より最適で安全な移行を実施しましょう。
3-1.現行システムの構成と機能を洗い出し
はじめに現行システムの構成と機能を洗い出します。この作業は、のちにベンダーに対してRFI(情報提供依頼)や提案依頼(RFP)をする際にも重要となるため、より細かい内容を洗い出さなくてはなりません。
洗い出す内容は主に以下の通りです。
- 業務システムの基礎情報
- 外部への委託状況
- 現行システム利用拠点
- 業務主管部署ごとのシステム利用状況
- データ量
- 周辺機器
- システム間でのデータ連携状況
なお、現行システムの洗い出しで活用できる様式の例は、総務省「自治体情報システムの標準化・共通化に係る手順書 【第2.0版】 」の37〜41ページに記載されているため、確認するとよいでしょう。
3-2.現行システムとベンダーが開発するシステムの標準仕様の差を分析
続いて、現行システムと標準仕様の差を分析します。標準仕様書を参照し、現行システムと照らし合わせてFit&Gap分析をしていきます。
おもな流れは、以下の通りです。
1.現行システムが標準仕様の対象範囲か確認
2.業務フローに違いがないか確認(違いがある場合は標準仕様書に合わせる)
3.自治体の機能が【実装必須】【標準オプション機能】【実装不可機能】のどれにあてはまるか確認
4.帳票レイアウトは標準仕様書と違いがあるか確認(違いがある場合は標準仕様に合わせる)
上記の通り、差があった場合には自治体のシステムではなく、標準仕様書に合わせます。
3-3.移行計画を作成
続いて、洗い出した現行システムの情報と分析をもとに、移行計画を作成します。移行計画に記載するおもな内容は、以下の通りです。
- 移行目的
- 移行方針
- 調達する範囲や単位
- 調達方式
- スケジュール
- 移行による課題と対策
- 推進体制
ただし、移行計画は必ずしもこの時点で完成させる必要はありません。移行計画後に実施するRFI結果の分析により、移行時期や調達範囲などのスケジュール・内容が変わる場合もあるからです。
移行計画は、今後のスケジュール管理や移行準備を進める上で重要です。担当者同士でよく検討しながら作成しましょう。
3-4.ベンダーを選定
移行計画が完成したら、ガバメントクラウド上の基幹システムを構築・運用するベンダーを選定します。もし現行システムと同様のベンダーを利用する場合、ベンダーの選定は不要です。
現行システムと異なるベンダーを利用する場合、決定する前にベンダーに対して情報提供依頼(RFI)を送り、分析することが必要です。また、ベンダーへ提案依頼(RFP)をしてから選定しましょう。
3-5.ベンダーおよびデジタル庁と契約を締結
ベンダーの選定が終わったら、ベンダーおよびデジタル庁の両方と契約を締結します。
ベンダーだけでなく、デジタル庁にも利用申請が必要です。「ガバメントクラウド利用権付与・運用管理委託契約」と「ガバメントクラウド運用管理補助委託契約」の締結をしましょう。
デジタル庁とベンダーの契約を同時並行で進めれば、より円滑なシステム移行が可能です。またデータをスムーズに移行するためにも、保有するデータを入出力できるようにしておくとよいでしょう。
3-6.システム移行時の設定
データを移行する前に、システム移行時の設定をします。この際、現行のシステムと操作などが変わる可能性があるため、ベンダーから提供されるシステム機能の詳細をよく確認しておきましょう。
標準準拠システムをもとにして運用シミュレーションをしてから、細かい運用方法を決めていきます。
3-7.データを移行
システム移行時の設定が終わったら、データ移行に入ります。なおデータ移行の前には、既存データを整理する必要があるため、あらかじめ十分な時間を確保します。
本番のデータ移行をする前に、何度かリハーサルをしなければなりません。リハーサルを実施して、障害などの確認をしておくことで、リスクを最小限に抑えられるからです。もちろん移行時はバックアップもとっておき、自治体の業務に支障が出ないよう留意しましょう。
3-8.運用テストの実施
データ移行が終了したら、運用テストを実施します。ここでは移行したデータ内容に問題がないか、連携する際に問題が起きないかをテストしましょう。
運用テストと並行して、職員には標準準拠システムの操作研修を開催し、すぐに使えるよう準備しておくと安心です。
3-9.新システム環境構築・ネットワーク接続
運用テストに問題がなければ、環境構築とネットワーク接続を進めます。端末整備はもちろん、プリンタなどの周辺機器についても接続し、問題ないか確認をします。
ネットワークに関しては、ガバメントクラウド接続サービスを利用しなければなりません。ガバメントクラウド接続サービスに関しても細かい要件があるため、詳しい内容を知りたい方は別記事「ガバメントクラウド接続サービスとは?主な要件・接続回線の課題」をご確認ください。
またネットワーク構築について不明点がある方は、別記事「ガバメントクラウド接続におけるネットワークの構築と運用」をご参照ください。
本章では、総務省が提示している手順書をもとに流れを解説しました。詳しい内容に関しては、下記のリンクから確認をしてください。
参考:総務省「自治体情報システムの標準化・共通化に係る手順書 【第2.0版】 」
ガバメントクラウドの移行、運用管理を徹底サポートします。NTT東日本のガバメントクラウド統合運用管理補助ソリューション資料をぜひダウンロードしてご活用ください。
4.ガバメントクラウドへの移行ならぜひNTT東日本にご相談ください
ガバメントクラウドへの移行計画がなかなか進まなかったり、接続サービスの選定に苦戦したりする場合もあるでしょう。期限が迫っている中、お困りのことがある方はぜひNTT東日本にご相談ください。
NTT東日本では、ガバメントクラウドの移行伴走サポートを提供しています。自治体で効率的な運用ができるように、クラウド技術者の育成プログラムの提供やクラウドシフト・リフトの共同検証なども可能です。
NTT東日本には、クラウドの専門知識を保有したプロが多く在籍しています。お気軽に相談できますので、この機会にぜひご活用ください。
まとめ
自治体は2025年末までに、20業務をガバメントクラウドに移行しなければなりません。システムを移行すればサーバーのメンテナンスは不要となり、現状よりセキュリティの強化も見込めます。さらにデータ連携が容易になることで、今までできなかった活用方法も生まれ、利用者である住民の生活に寄り添えるようになります。
本記事でも移行方法を抜粋して紹介しましたが、総務省の手引書を参考にして取り組んでいきましょう。
ガバメントクラウドの移行や、自治体DX業務に関する課題やお困りごとがございましたら、
お気軽にNTT東日本へご相談ください。無料のお見積りのご相談も承ります。