日本社会で働き方改革が注目されている今、中でも介護業界の業務改善は急務と言われています。しかし、何から手をつけて良いのか迷ってしまう介護職員の方がいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで、今回の記事では介護業界での業務改善について解説します。介護業務改善が必要な理由やメリット、重要な指針に加えて具体的なアイデアも紹介します。介護職員の方は、ぜひ参考にしてみてください。
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日本は少子高齢化の影響で、生産年齢人口の減少と65歳以上の高齢者の増加が深刻化しています。今後も、労働力が次第に減っていく中、要介護者は徐々に増えていくと予想されています。
そのような状況の中で、日本社会で推進されているのが「働き方改革」です。人手不足を解消するため、企業や自治体など業界問わず幅広い組織で導入されています。
中でも「介護」は、特に労働環境の改善が急務だと言われている業界です。介護業界では長時間労働が当たり前となり、離職者が多くて常に人材不足に悩んでいます。
2019年3月、良質な介護サービスの存続を目的として、厚生労働省は「介護現場革新会議 基本方針」を作成しました。方針の中では以下の3つの取り組みが提起され、国が積極的に介護業務改善を進めています。
このように、働き方改革の推進や現場で発生する課題などの観点から、介護業界では業務改善が必須と言われています。
介護業務改善は人手不足を補うだけではなく、さまざまな良い影響をもたらします。ここでは、介護業務改善を行うメリットを3つ紹介します。
介護業界で蔓延している長時間労働や待遇の悪さは、スタッフの離職につながります。業務改善によってスタッフが無理なく快適に働ける環境を作れれば、長く働いてくれる従業員が増えるでしょう。
また、採用時に環境の良さや高待遇をアピールでき、優秀な人材が集まりやすくなるのもメリットです。特に介護スタッフのような専門職の場合、採用から戦力になるまでの教育には膨大なコストがかかります。採用や教育のコスト軽減のためにも、業務改善は重要です。
どのような業種・職種においても、従業員が抱える悩みとしてあげられるのが「人間関係」です。介護現場でも、スタッフが退職する理由の上位に常に上がっています。
人間関係の悩みと言っても「同僚・上司・管理者や施設長など職場の人間との関わり方に悩んでいる」「利用者との接し方に困っている」など、内容はさまざまです。人間関係の悩みは当事者に精神的な負担がかかりやすいものの、1人では解決できません。したがって、労働環境を改善することが重要です。
業務改善によって日頃からスタッフに過剰な負担をかけない働き方を提供し、コミュニケーションが活性化するしくみを作れば、良い人間関係を築きやすくなります。
介護現場の業務改善によって期待できるのが、従業員と利用者の満足度向上です。業務改善によって働きやすい環境を提供できれば、スタッフに時間と心の余裕が生まれ、サービスの品質向上につながります。利用者の満足度も上がり、安定した経営が行えるようになるでしょう。
介護業界で業務改善を行うにあたって、ポイントとなるのが「5S」と「3M」です。どちらも介護業務改善において重要な指標と言われています。ここでは、それぞれの内容について詳しく解説します。
「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「躾」の5つの頭文字をとって「5S」と言います。介護業界で業務改善を行う上での基本的な活動で、以下のような意味があります。
業務に時間がかかっていたりミスや事故が多かったりする場合は、上記の5Sに問題がある可能性が高いです。まずは5Sが徹底できているかを確認することが、業務改善を行う上で重要なポイントです。
3M削減とは、現場におけるムリ(過度に負担がかかっている状態)、ムダ(行わなくても良い不要な仕事)、ムラ(バラついた状態)をなくすことを目指す活動です。
介護スタッフは経験や知識によって、対応できる業務が大きく変わる仕事です。人によって担当できる業務量が異なるため、一部のスタッフの負担が大きくなってしまっているケース(ムリ)がよく見られます。
また、現場では昔からのやり方を続けているのを理由に、不要な仕事に時間をかけているケース(ムダ)があります。さらには、専門職であるがゆえに介護スタッフそれぞれが、自分なりの手順や方法で仕事を進め、業務状況にばらつきが生まれているケース(ムラ)です。
これらの「ムリ」「ムダ」「ムラ」を削減していくことで、業務効率が高まり、生産性向上につながります。
介護業界での業務改善にはさまざまな方法があります。ここでは実際に多くの現場で取り入れられているアイデアを3つ紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
業務フローの見直しは、3M(ムリ・ムダ・ムラ)の削減につながります。業務フローの明確化と役割分担を、スタッフ全員が共有しておくことが重要です。
まずは日頃の全業務の作業内容と手順を具体的に書き出します。ここで、業務量がわかるように工数まで書いておくのがおすすめです。すべての業務を見える化させたら、次にスタッフの認識を揃えていきます。
同じ業務でも人によって手順が違い、作業時間が異なっている場合があります。スタッフ全員が業務の明確な基準を共通認識として持っておくようにしましょう。最後に以下の点に気をつけて業務フローの見直しや効率化を行います。
特定のスタッフだけが行っていた作業や、必須ではないのに行っていた仕事などが存在するケースがあります。その場合は、本当に必要な業務かをスタッフにヒアリングして、精査が必要です。
役割分担は、スタッフのスキルや資格などに応じて行います。業務量に偏りがないように決めていきましょう。スタッフによって手順や工数が違う場合は、基準を設けてマニュアル化するのがおすすめです。
ICTとは、通信技術を活用したコミュニケーションを指します。ICT活用は労働力不足の手助けになるだけでなく、業務効率化や生産性向上などのメリットがあります。ICT活用で効率化できるのは、以下のような業務です。
例えば、介護業界専用の情報共有システムを使えば、利用者の状態やケア内容・気付きなどの記録を直接タブレット端末に入力できます。書類作成の時間を削減でき、スタッフ間での共有が簡単になります。さらに、タブレット上で利用者の検索や確認をすぐに行えるのもメリットです。
ほかにも、スマートフォンから出退勤を登録できる勤怠管理システムによって、ホームヘルパーが打刻するためだけの出勤をなくせます。また、自動で給与計算できる機能が搭載されているシステムが多く、毎月の労務管理にかかる作業時間を大幅に短縮できます。
利用者の状態の確認は、多くの作業を抱えるスタッフにとって負担の大きな仕事の1つです。そこで見守りシステムを導入すれば、部屋を訪問しなくても遠隔で利用者の様子を確認できます。システムによって見回り回数を減らせ、利用者の異常にもすぐに気付けるため、夜間などの人手が少ない時間帯でも負担なく仕事を進められるでしょう。
このように、ICT活用は業務効率化だけでなく、サービスの質向上や利用者の満足度向上にもつながります。目的に応じて、導入を検討するのがおすすめです。
RPAとは、ロボットによる定型業務の自動化を意味します。働き方改革を進める上で、注目されているソリューションです。企業や自治体などで幅広く導入され、医療や福祉の現場でも効果が期待できます。RPAを活用して自動化できるのは、以下のような業務です。
RPAによって、収支簿や発注書の作成、毎月の債務計上の入力など、経理業務の自動化が可能です。
またRPAツールを導入すれば、派遣社員や契約社員を含む従業員の労務情報を自動で変更できます。人の入れ替わりの激しい介護業界は、書類作成の頻度も多いです。手作業で行えばミスが発生しやすいところを、RPAの活用によって正確に進められます。
訪問介護の場合、スタッフは訪問日時やケア内容を手書きで記録し報告するケースがほとんどです。その後、事業所で報告書を手作業で集約・確認し、1日何百ものデータを手入力することもあります。
RPAを活用すれば、入力や転記業務の大幅な効率化が可能です。チェックの手間もなくなり、職員の負担を軽減できます。
ほかにも、作業手順が明確化されている業務であれば自動化が可能です。作業時間が短縮されるだけでなくミスなく正確に処理できるため、RPAツールの導入は業務改善に大きな効果が期待できるでしょう。
介護現場にRPAツールを導入したいなら、NTT東日本の「おまかせRPA」がおすすめです。Windows上のあらゆる業務を自動化でき、作業時間短縮や人的コストの削減、業務品質の向上につながります。
「おまかせRPA」には、以下の3つのポイントがあります。
プログラミングスキルは一切必要なく、直感的に操作しやすい作りなので誰でも簡単に扱えます。最初は1ライセンスからの導入が可能です。まずは特定の範囲で活用し、効果を実感してから徐々に適用範囲を広げるのも良いでしょう。2ヶ月のトライアル版からスタートできるので、安心して導入できます。
もし導入や運用に問題が発生した場合は、NTT東日本の充実したサポートを受けられます。遠隔サポートや有償での訪問対応もあるので、安心してご利用ください。
「おまかせRPA」についてより詳しく知りたい方は、以下の商品カタログをご確認ください。
今、日本は少子高齢化が深刻化し、労働力不足と要介護者の増加が進んでいます。そのため、介護業界での業務改善が急務な状態です。
介護業界での業務改善は労働力不足を補うだけでなく、以下のような良い影響をもたらします。
介護業務改善を進めるには「5S(整理、整頓、清掃、清潔、躾)」の徹底と「3M(ムリ・ムダ・ムラ)」の削減を意識するのがポイントです。具体的な業務改善のアイデアとして、以下の3つがあります。
RPAツールの導入は、介護業務改善の有効な手段の1つです。RPAツールを導入したい場合は、NTT東日本の「おまかせRPA」をぜひご検討ください。
NTT東日本 ビジネス開発本部 北森雅雄
NTT東日本に入社後、自治体向けのシステムエンジニアとして、庁内ネットワークや公共機関向けアプリケーションなどのコンサルティングからキャリアを開始。
2018年から現職にて、プロダクト(SaaS)開発、デジタルマーケティング全般のディレクションに従事。
2022年に業務のデジタル化を分かりやすく発信するオウンドメディア(ワークデジタルラボ)のプロジェクトを立ち上げ。
NTT東日本にかかわる、地域のみなさまに向けてデジタル化に役立つ情報発信を展開。