case



「お客さまの情報は宝」と語る飲食店が取り組む、顧客管理のデジタル化。接客に時間を割けるようになり、将来的には仕入れの最適化も

PROFILE

有限会社じこう
代表取締役 石坂さま

業種:飲食サービス業
効率化した業務:顧客管理

導入ソリューション

有限会社じこう

東京湾の玄関口、三浦半島で地元の方々や観光客に愛される飲食店「味の旬彩 てん心」「日本料理 慈こう」など、幅広い飲食サービス業を営む有限会社じこう。お客さまに美味しく食べていただくことを何より大事にする同社では、顧客情報の蓄積と活用に力を入れています。しかし、これまでお客さまの情報を紙媒体で記録していたため、情報の記入や検索性に課題を感じていたそうです。

そこで地元のかながわ信用金庫さまにおつなぎいただいたことをきっかけに、今回「kintone for おまかせ はたラクサポート」(以下、「kintone」)を導入いただき、顧客管理のデジタル化についてお取り組みさせていただきました。

今回は、以前の紙媒体で顧客情報を管理されていた頃の課題や「kintone」を採用いただいた背景、そして導入後の成果について、同社代表取締役である石坂さまにお話を伺いました。

お客さまに美味しく食べていただく。三浦半島で飲食サービス業を営む有限会社じこう

―― 事業内容について教えてください。

石坂さま:有限会社じこうでは、三浦半島ならではの食材にこだわった飲食店である「味の旬彩 てん心」と、ご宴会やお祝いといった冠婚葬祭向けの飲食店「日本料理 慈こう」を中心とした飲食サービス事業を展開しています。社名の由来でもあるのですが、実家が地元の三浦市で葬儀社を営んでいる関係で、法事・法要向けの仕出し料理の事業から始まりました。

現在では、法事・法要向けの仕出し料理の事業と2店舗の飲食サービス事業、釣り船向けの水産加工サービス「魚楽便」などを展開しています。

―― 飲食サービス業を展開する上で、どのような考えを大切にしていますか。

石坂さま:お客さまに美味しく食べていただくことが大事だと考えています。どんなに美味しい料理でも、どれだけ新鮮な地元の食材を使っていても、お店の雰囲気や人が良くなければ料理は美味しくなりません。料理を通して、お客さまに良い体験をしていただくことこそが大事なのです。

私の地元である三浦はお祭りや習わしごとを大事にする土地柄でして、何かあるたびに近所の皆さんが集まり、季節にあった料理を囲んで親睦を深めるという特色があります。こうした環境で育ったことが「美味しく食べること」にこだわるようになった背景なのだと思います。

お客さまを理解するための顧客管理。紙に記録していたものの、記録や活用に課題

―― どのような思いから顧客管理に力を入れるようになったのでしょうか。

石坂さま:お客さまに美味しく食べていただくためには、私たちがお客様のことをより理解する必要があります。新型コロナウイルスの感染拡大によってお客さまと接することができなくなったことで、お客さまの理解が重要であるとより一層実感しました。

また、コロナ禍で飲食サービス業をすべてストップしたことを受け、釣り船向けの水産加工サービスやお弁当のテイクアウトなどの新しい事業展開を始めたのですが、それをお客さまにお知らせする方法がないこと、お客さまとつながる手段がないことに気がついたのです。結局、近所の方々にチラシをお配りしたり、釣り船にチラシを置いていただいたりと、アナログな紙媒体でお知らせするしか方法がありませんでした。

こうした背景から、私たちのサービスをご利用いただいたお客さまの情報や連絡先を蓄積、管理し、今後の事業展開に活用していこうと考えたのです。

―― 以前はどのように顧客管理していたのでしょうか。

石坂さま:アルバイトのスタッフが予約の段階でお客さまの情報を紙に手書きで記入し、ファイリングして保管していました。水産加工サービスの顧客情報はおよそ500件ほど、飲食サービス事業では3,000件ほどの顧客情報を蓄積、管理していたと思います。

記録する顧客情報としては、お客さまのお名前、電話番号、住所といった基本情報に加え、アレルギーの有無、料理や飲み物の好き嫌い、お酒の銘柄、お食事のペースなど、次回来店いただいた際もお客さまに美味しく食べていただくために必要な情報が対象です。また、法事・法要でご利用いただいたお客さまの場合は、今後の四十九日や一周忌などの時期も把握するようにしています。

―― アナログな顧客管理にどのような課題を感じていたのでしょうか。

石坂さま:顧客情報を蓄積したのはいいものの、活用するには過去のファイルを探さねばならず、非常に手間がかかっていました。顧客情報はお客さまのお名前の頭文字ごとにファイリングしていたのですが、膨大な量になっていたため、1ページ1ページめくって探していたのです。よくご利用いただくお客さまの情報はすぐに見つかりますが、久しぶりにご予約いただいたお客さまや、ご結婚などで名字が変わったお客さまの場合は、以前の顧客情報を見つけるまで10分ほどかかってしまうことも。

また、アルバイトのスタッフによっては文字に癖があったり、通常業務で忙しい時間に重なってしまって大変だったりといった手書きによる悩みもありました。さらに顧客情報が増えてくると、ファイルの保管場所にも困るようになり、デジタルによる顧客管理を検討し始めました。

決め手は担当者の姿勢。導入する側の目線に立った提案が高評価

――「kintone」を導入する以前は、どのようなツールを使用していたのでしょうか。

石坂さま:以前に一度だけ、情報を管理、共有できるメモアプリを使用したことがありました。利用料金が安かったので導入したのですが、思っていたよりも入力の手間が減らなかったのです。そのツールでは、アルバイトのスタッフがまず紙に顧客情報を記入し、それをスキャナーで読み取ってメモにしていました。

テキストで入力する方法ではなかったために検索性が悪く、操作性もあまり良くなかったため、結局はアナログな顧客管理に戻ってしまいました。

―― NTT東日本との取り組みは、どのようなきっかけから始まったのでしょうか。

石坂さま:地元では「かなしん」と呼ばれ親しまれる、かながわ信用金庫さんにNTT東日本さまをご紹介いただいたことからスタートしました。かながわ信用金庫さんはお金に関する相談に限らず、事業展開に関するさまざまな悩みに手厚く協力してくださるので、日々の仕事で手一杯になりがちな中小企業にとって、ありがたい存在です。

かながわ信用金庫さんとNTT東日本さんは、地方の中小企業のDXを促進するという共通のビジョンのもとにビジネスマッチング契約をされていると伺い、安心してお任せできると感じました。

―― 「kintone」の導入を決定された決め手をお聞かせください。

石坂さま:「kintone」は顧客情報を検索しやすそうだと感じたこともポイントでしたが、何よりもNTT東日本さまの担当者が良かったですね。担当者の方は親切、丁寧なのはもちろん、ツールやデジタル技術に関して知ったような口調で話すことがなく、同じ目線で分かりやすくご提案いただけました。

また、費用対効果も検討したポイントでした。導入コストや月額の利用料金を年単位で計算し、デジタル活用によって削減されるスタッフの作業時間と用紙やファイルのコストを合算した費用と比較した結果、「kintone」を導入すべきであるとの結論に至りました。

対面でのヒアリングを実施し、業務の実態に最適な顧客リストを作成。1件5分ほどで入力が完了

―― 「kintone」の導入はどのように進行しましたか。

石坂さま:2024年4月頃に対面で初回のお打ち合わせを実施させていただき、トライアルを1ヶ月実施して正式に導入を決定しました。トライアルにあたって、まずNTT東日本の担当者の方にヒアリングを実施いただき、店舗での業務や顧客情報をメモするタイミングとメモの内容をお話しています。そこから今後の事業展開に必要な顧客情報を洗い出し、「kintone」上で顧客リストのひな形を一緒に作成いただきました。

その際、アルバイトのスタッフが入力しやすいよう、入力する項目を選定したり、項目ごとにプルダウンや自由記述といった入力形式をカスタマイズしています。また、将来的に顧客分析をしていく上で役に立ちそうなデータ、たとえば来店当日の天気なども入力できるようにしました。

―― 「kintone」への顧客情報の入力は現在、どこまで進行していますか。

石坂さま:顧客情報の入力はパソコンで実施しており、1件あたり5分ほどで入力完了するイメージです。現在、顧客リストは飲食サービス事業と、釣り船向けの水産加工サービスの2つに分けており、それぞれ40件ほど、合計80件ほどの入力が完了しています。

NTT東日本さまからは「kintone」のマニュアルを共有いただきましたので、私自身が「kintone」の扱いに慣れた頃にはアルバイトのスタッフに引き継いでいく予定です。

―― 今回、「kintone」の電話サポートやカスタマイズ支援メニューがある「おまかせ はたラクサポート」のサポートサービスもご契約いただきました。今後、どのようなサポートを想定されていますか。

石坂さま:事業の展開によって、必要となる顧客情報は変化します。そこで顧客リストの入力項目を変更したり、分析画面をカスタマイズしたりといった際にはぜひサポートいただきたいですね。

また、顧客情報がある程度まで蓄積されたタイミングで、データの活用方法をご相談させていただければと思います。その際には同じく飲食サービス業の中小企業における顧客情報の活用シーンやノウハウも展開いただけることを期待しています。

接客に割ける業務時間の割合が80%から90%へ。さらに食材の仕入れも効率化

――― 「kintone」によって、飲食サービス業は今後どのように変化しそうでしょうか。

石坂さま:飲食店ではよくFLコスト(Food/食材費とLabor/人件費を合計したコスト)とFL比率を重視して経営していますが、弊社では一般的な店舗よりも細かい数字までこだわっていると思います。特にアルバイトのスタッフを含めた従業員の勤務時間と業務内容は細かく管理しており、今後はアルバイトのスタッフの勤務時間や業務内容に変化が出てくると予想しています。

これまではおよそ80%の業務時間を接客に、およそ20%を予約の受付や顧客情報の入力、ちょっとした清掃業務などに費やしてきました。顧客情報の入力作業が半分以下の時間で完了するようになれば、90%の勤務時間を接客に振り分けられるようになるはずです。また、過去の顧客情報を検索するには10分ほどかかっていましたが、ワンクリックで済むようになることで、さらに業務を効率化できるだけでなく、顧客情報がなかなか見つからないというストレスの軽減にもなるでしょう。

もうひとつのFLコストである食材費についても、長期的にはよい影響があると思います。これまでは予約人数やオーダーいただいたコースによって仕入れる食材を変えていたため、直前まで仕入れるべき最適な食材の数を見極めるのは難しいことでした。

しかしデータが蓄積していけば、例年の予約状況や翌週の天気といったデータをもとに少し先までの最適な仕入れ量を予想することができます。結果、無駄な食材の仕入れを減らすことができ、食品ロス(フードロス)の問題にも貢献できるかと考えています。

お客さまの情報は宝。データの活用で「待ちのビジネス」を「攻めのビジネス」へ

―― 今回の取り組みを受け、今後の展望をお聞かせください。

石坂さま:基本的に飲食サービス業は、お客さまに来店していただかなければ売り上げが立たない、「待ちのビジネス」であることをコロナ禍で強く実感しました。しかし、だからといって何もアクションを起こさなければ、またコロナ禍のような事態を乗り越えることはできないでしょう。

今回、「kintone」を導入し、デジタル上で顧客情報を蓄積できるようになったことで、もしコロナ禍のような事態になったとしても私たちからお客さまへ新しいサービスやキャンペーンをご案内できる環境が整いました。「待ちのビジネス」から「攻めのビジネス」として展開できるようになったことは、今回の取り組みで一番の成果かもしれませんね。

お客さまに「このお店があってよかった」と感じていただけるよう、より安定した会社経営を目指していきます。

―― 顧客管理に課題を感じている企業へアドバイスをお願いします。

石坂さま:お客さまの情報は、まさに宝物です。お客さまに良いサービスを提供するためにはお客さまのことをイメージし、どうすれば喜んでいただけるかと考えることが大切です。そのためにもお客さまの情報を有効活用し、提供する料理やサービスに今後も反映していきたいと思います。

上記ソリューション導入期間は2024年4月~です。
*文中に記載の組織名・所属・肩書・取材内容などは、すべて2024年7月時点(インタビュー時点)のものです。
*上記事例はあくまでも一例であり、すべてのお客さまについて同様の効果があることを保証するものではありません。

有限会社じこう

三浦半島ならではの食材にこだわった飲食店「味の旬彩 てん心」と、ご宴会やお祝いといった冠婚葬祭向けの飲食店「日本料理 慈こう」を中心とした飲食サービス事業を展開しています。また、法事・法要向けに仕出し料理を提供する事業や、釣り船向けの水産加工サービス「魚楽便」など、幅広く事業を展開しています。

同社の代表取締役であり、自ら厨房に立つ石坂さまは地元の三浦出身であり、東京や鎌倉、三浦などの日本料理店で修行したのち、独立しました。まぐろに代表される、三浦ならではの新鮮な魚介類や、採れたての野菜を使用したこだわりの料理を日々お客さまに提供しています。

代表取締役 石坂さま