
生成AI×LGWANで強固な情報セキュリティを実現!メリットや注意点などを解説

生成AIの活用が注目される中、セキュリティ要件の厳しい自治体では、導入に慎重なケースも見られます。そうした中で注目されているのが、LGWAN(総合行政ネットワーク)環境で生成AIを活用し、安全性を確保しながら業務効率化を図る取り組みです。本記事では、生成AIとLGWANの基本や、両者を組み合わせることによるメリット、利用時の注意点などを解説します。
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目次:
- 1. LGWANの概要
- 1-1. LGWANとは
- 1-2. LGWANの特長
- 2. 生成AIの特徴と情報セキュリティの課題
- 2-1. 生成AIとは
- 2-2. 大規模言語モデルの学習と情報漏えいリスク
- 3. 生成AI×LGWANのメリット
- 3-1. 機密性の高い業務にも安心して使える
- 3-2. 業務効率化とDXを安全に両立できる
- 3-3. インターネット分離環境でも生成AIが利用できる
- 4. 生成AIをLGWAN環境で利用する際の注意点
- 4-1. システム設計・ネットワーク構成の分離管理を徹底する
- 4-2. 生成AIの適切な活用ルールを整備する
- 4-3. 職員の教育・リテラシー向上体制を整える
- 5. LGWAN環境での生成AI利用をご検討中ならNTT東日本の「生成AIソリューション」
- 6. まとめ
1. LGWANの概要
自治体業務において、情報セキュリティと業務効率の両立は欠かせません。ここでは、その基盤となるLGWANについて解説します。
1-1. LGWANとは
LGWANは、自治体や関係行政機関、各府省庁を安全に相互接続するための閉域ネットワークで、行政サービスのデジタル化や業務効率化をセキュアに進めるための基盤となっています。住民情報や税務情報、行政文書など、機密性の高いデータを扱う自治体業務を支える情報インフラとして機能し、通信経路には専用回線が用いられ、インターネットと物理的に分離された構成となっているため、外部からの不正アクセスや情報漏えいのリスクを低減できます。
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1-2. LGWANの特長
LGWANは、全国の自治体を安全に接続する閉域ネットワークとして、高いセキュリティを担保するだけでなく、行政のデジタル化や効率化にも貢献しています。
- 行政事務の効率化・迅速化:自治体間に加え、政府共通ネットワークとも相互接続することで、広範な情報交換や共有ができ、業務の効率化と意思決定の迅速化が可能になります。
- 住民サービス品質の向上:申請・届出などの行政手続きの電子化や情報提供を通じて、国と地方が一体となったサービス提供が実現し、住民サービスの品質が向上します。
2. 生成AIの特徴と情報セキュリティの課題
業務の効率化や住民サービスの高度化を目的に、生成AIの導入を検討する自治体や企業が増えています。一方で、生成AIの仕組みや利用上のリスクについて正しく理解していないと、情報漏えいなどのインシデントにつながる可能性もあります。ここでは、生成AIの基礎知識と、情報セキュリティ面での留意点を整理します。
2-1. 生成AIとは
生成AIとは、膨大なデータをもとに学習し、自然な文章や画像、音声などを生成する人工知能の一種です。ChatGPTに代表される対話型AIは、文章作成・要約・翻訳・アイデア出しといった多様なタスクを高精度にこなすため、行政や企業の業務支援ツールとして注目されています。
自治体業務においても、文書のたたき台作成や住民対応の案内文生成、議事録の要約作成といったシーンで活用が期待されており、定型業務の時間短縮や、属人化していた業務の標準化に貢献できることから、効率化と質の両立を図る手段として導入が進んでいます。
2-2. 大規模言語モデルの学習と情報漏えいリスク
生成AIの中核には「大規模言語モデル(LLM:Large Language Model)」があり、これはインターネット上のテキストや各種文書をもとに事前学習されたアルゴリズムです。高い応答精度を実現する一方で、ユーザーが入力した情報がそのモデルの改善や再学習に利用されるリスクがある点には注意が必要です。
例えば、業務に関する内部資料や住民に関する個人情報を生成AIに入力した場合、その内容が外部のLLMに蓄積・再利用されることで、意図せず機密情報が漏えいするリスクがあります。多くのクラウド型生成AIサービスでは、入力内容の学習有無や保存範囲を明示していますが、ユーザー側でも事前に利用規約や仕様を確認し、取り扱い範囲を制限するなどの対応が求められます。
特に自治体では、個人情報保護法などの法律を遵守した厳格な情報管理が必要であり、生成AIを安全に活用するためには、モデル構成や通信経路、学習制御といった仕組みを理解した上での運用設計が欠かせません。
3. 生成AI×LGWANのメリット
生成AIの導入に慎重さが求められる自治体では、LGWAN環境で利用できる生成AIサービスが注目されています。ここでは、閉域ネットワークであるLGWANと生成AIを組み合わせることで得られる主なメリットを紹介します。
3-1. 機密性の高い業務にも安心して使える
自治体では、住民情報や内部文書など、秘匿性・機密性の高いデータを日常的に取り扱っています。LGWANはインターネットとは物理的に分離された閉域ネットワークであるため、こうした機密情報のやり取りに適した環境です。生成AIの処理がLGWAN内で完結する構成であれば、インターネット経由でのデータ送信が発生せず、情報セキュリティリスクを最小限に抑えることが可能です。
3-2. 業務効率化とDXを安全に両立できる
生成AIは、文章の作成支援や要約、翻訳、定型文の生成といった反復的業務の負荷を軽減できます。LGWAN環境でもこれらの機能を活用することで、従来は職員が手作業で行っていた業務の多くを効率化することが可能です。例えば、庁内文書や通知文のドラフト作成、会議資料の要約、職員からの問い合わせへの初期応答など、生成AIが補助的に関わることで業務コストの削減になり、コア業務に集中できるようになります。
3-3. インターネット分離環境でも生成AIが利用できる
多くの自治体では、セキュリティポリシー上、インターネット、LGWAN、マイナンバー事務に関する接続を完全に分離する「三層分離」の運用を行っています。このような環境下では、一般的なクラウド型生成AIサービスをそのまま利用することはできません。しかし、LGWAN環境で提供される生成AIサービスであれば、インターネットに接続しなくても生成AI機能を利用することができます。これにより、既存のネットワーク構成を変更することなく、安全性と利便性を両立した導入が可能になります。
4. 生成AIをLGWAN環境で利用する際の注意点
LGWAN環境で生成AIを活用する場合、高いセキュリティが前提となる一方で、導入・運用には配慮が必要です。安全かつ効果的に生成AIを活用するための主な注意点を解説します。
4-1. システム設計・ネットワーク構成の分離管理を徹底する
LGWAN環境は、庁内LANやインターネット接続系とは分離されており、生成AIサービスの導入時にもネットワーク構成の整合性が求められます。例えば、生成AIサービスをクラウド基盤に構築する場合、LGWAN接続系に限定したアクセス設計となっているか、外部インターネットと通信していないかといった点を事前に確認し、導入後も継続的に監視する必要があります。また、入力されたデータの保存場所や処理経路についても、LGWAN内で完結していることを明示できる構成でなければ、情報管理上のリスクを残すことになります。システム設計時には、ベンダーとの連携を密にし、構成図・データフローのレビューを徹底することが重要です。
4-2. 生成AIの適切な活用ルールを整備する
生成AIは、指示内容(プロンプト)によって出力結果が大きく変わる柔軟なツールである一方で、誤った使い方によって情報漏えいや誤情報の拡散を招く恐れがあり、もっともらしく誤った情報を出力する「ハルシネーション」などのリスクもあります。特に、住民情報や意思決定前の業務内容をそのまま入力してしまうような利用は避けなければなりません。そのため、組織内での活用範囲や入力禁止事項、生成された内容の扱いについて、明確な利用ルールやガイドラインを定めることが不可欠です。例えば、「職員名や住所を含むデータは入力禁止」「生成結果は必ず人の目でチェックする」といった基本的なルールを整備し、全職員に周知する体制を構築する必要があります。さらに、生成AIの導入目的や想定ユースケースを明文化しておくことで、利用目的から逸脱することを防ぎ、運用後のトラブルも抑制できます。
4-3. 職員の教育・リテラシー向上体制を整える
生成AIを正しく安全に活用するには、職員一人ひとりがその特性やリスクを理解し、適切に判断できることが前提となります。リスクに関する研修やワークショップを実施し、実践的な活用スキルとリテラシーの向上を図ることが重要です。また、利用ログの定期的なレビューやトラブル発生時の対応フローもあわせて整備することで、全庁的な運用ガバナンスを確保できます。
5. LGWAN環境での生成AI利用をご検討中ならNTT東日本の「生成AIソリューション」
NTT東日本の「生成AIソリューション」では、社内の営業データを活用できるチャット型のAIアシスタントとして日々の業務を強力に支援します。LGWAN環境で利用することもできるため、情報セキュリティの観点から生成AIの導入に慎重になっている自治体の職員さまでも、安心してご利用いただけます。閉域データベースの活用により、さまざまな社内業務を効率化するRAGの構築も可能です。また、情報セキュリティに配慮し、生成AIを安全に利用するためのサポートや知識・技術習得のための研修などをオプションにて実施できます。適切な生成AI環境のカスタマイズをトータルでサポートいたしますので、生成AI×LGWANのサービス導入をご検討中の方は、NTT東日本にご相談ください。
6. まとめ
LGWAN環境で利用できる生成AIサービスであれば、閉域ネットワーク上でも情報セキュリティを確保したまま導入が可能です。システム設計や運用ルール、職員教育を含めた準備を進めることで、安全かつ実践的な活用が見込めます。サービス選定の際は、信頼性や提供環境を慎重に確認することが重要です。生成AI×LGWANの導入をお考えの方は、ぜひNTT東日本にお任せください!
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