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生徒の自発的なアクションを促した、
地域課題解決ラボでの体験

ドルトン東京学園様
オリジナル授業提供 ご活用事例 ドルトン東京学園様

生徒の自発的なアクションを促した、地域課題解決ラボでの体験

地域課題解決ラボの開講3年目を迎えるドルトン東京学園様。ラボへの参加は生徒たちにどのような影響を与え、またどのような取り組みの成果を得られたのでしょうか。

ドルトン東京学園様は、東京都調布市にある中高一貫の私立学校です。一人ひとりの知的な興味や旺盛な探究心を育て、個人の能力を最大限に引き出すことを特徴とする学習者中心の教育メソッドである「ドルトンプラン」に基づいた学校として、2019年に開校しました。

地域課題解決ラボはNTT東日本との連携によるオリジナル授業として2023年度から開講し、高校1~3年生を対象に、半年間(全15回)のカリキュラムで実施いただいています。2025年度の実施で3年目を迎える本ラボについて、1年目から担当されている菅 悠太郎先生と、2年目から担当された高木 佑也先生にお話を伺います。

地域課題解決ラボ開講以前の「探究学習」における課題について

ドルトン東京学園様では、生徒の興味関心に応じて学びを深められる環境が整っています。そのうえで、生徒がより自発的に「アクションを起こす」ことを学ぶカリキュラムのひとつとして、NTT東日本と連携して地域課題解決ラボの開講に至ったそうです。また、開講の背景には、教員という職種自体の特殊性もありました。

「教員という仕事は、社会とのつながりや外部の方との協働の機会の経験が少ない、特殊な職種だと考えています。そのため、探究学習のカリキュラムを考える際に、教員個人がもつ経験やネットワークだけでは社会と繋がった学びの機会を創ることが難しい、といった課題を感じていました」(菅先生)

「ドルトン東京学園には、教員以外の社会経験がある先生もいます。ただ、現状の教員生活は生徒との関わりが中心なので、社会のトレンドに合わせて経験をアップデートしていくことにはどうしても限界があります。NTT東日本さんは、そんな私たちと社会のつなぎ役になってくださいました」(高木先生)

「ドルトン東京学園は地域課題解決ラボを開講して2年目になりますが、1年目のラボを通して、生徒の自発的な学びにも、そして教員の学びにもつながると感じました。行ったことのない地域に赴き、見たこともないような技術を体験した生徒の目の輝きを見たときに、大げさかもしれませんが、生徒の今後の人生においてこのラボでの経験は大きな財産になるのではないかと思ったんです」(菅先生)

仙川地域でのフィールドワークを通して得られた「地域の実感」

ドルトン東京学園様と実施している地域課題解決ラボでは、地域の課題を体感したうえでその解決に向けてどのように貢献できるか、生徒が自分たちで模索するプログラムを組んでいます。そのプログラムの前半では、学校のある仙川という地域に向き合い、課題の探索を通じて「地域」というものを体感するフィールドワークを実施しました。

”地域課題”について話し合う参加生徒たち

「まずは自分たちの住んでいる地域を知ろう、というテーマをいただいて、仙川の人々にインタビューをするなどして地域課題を探しに行くという課題を実施しました。『町に出て、いろんな人に地域の印象や悩みを聞いてみよう』と生徒たちへ投げかけると、物怖じせずに地域のさまざまな方へ声をかけていましたね」(菅先生)

フィールドワークの結果、浮上したのは「個人商店の減少」「狭くて危険な道」「街中のにおい」の3つの課題でした。そこで、生徒たちは3つのチームに分かれて対策を考え、最終的には調布市職員の方とディスカッションしました。職員の方からは「実際に地域で暮らす方々の声を直接聞いてくれたことは大変ありがたい」とお褒めの言葉をいただいたうえで、課題に対する実際の行政の取組を踏まえて、今後の検討アプローチについてチームごとにフィードバックを受けました。

「フィードバックは必ずしも明るい内容ばかりではありませんでした。生徒たちが考えていたよりも職員の方が抱かれている地域への危機感は大きく、少子高齢化が進む中で仙川地域が消滅してしまうかもしれないといった課題や、すでに実施している課題解決に向けた取り組みなどについても、大変丁寧にご説明いただきました」(菅先生)

「生徒たちは、多くの人たちがさまざまな形で地域に関わっているという事実を、身をもって実感できたと思います」(高木先生)

仙川地域でのフィールドワークによって生徒たちに育まれた「地域とは何か」「自分はどう関われるのか」といった視点や問題意識。フィールドワークの振り返りや探究テーマの検討、リサーチを経て、次に生徒たちが向かったのは長野県喬木村(たかぎむら)でした。

喬木村でのフィールドワークで得られた出会いと答えのない問い

喬木村でのテーマは、地域住民の方とのディスカッションなどの「現地でのリアルな体験」を通した地域課題の探索・深堀りです。フィールドワークを行うにあたって、NTT東日本ではこれまで築いてきたネットワークを活かして自治体や地元事業者と連携し、生徒達を受け入れる準備を行いました。地域に関わる多くの方々と生徒達が可能な限り多く交流できるよう、村の職員の方を通してコンタクトを取り、この取り組みの意義をお伝えするなどして協力を仰ぎました。

そうして生徒たちが喬木村で出会ったのは、民泊を運営しながら寒冷地では珍しいオリーブを育てている方や、江戸時代から喬木村に伝わる伝統工芸「阿島傘」の生産を継承している移住者の方、古民家を改装してサテライトオフィスの立ち上げを進めている方など、日常生活や通常の授業ではなかなか出会えないような方々でした。

喬木村の地域住民と話し合いをする生徒たち

「印象的だったのは、サテライトオフィスとして改装途中の古民家を見せていただいたときの話です。生徒から『改装しなくても、この古民家の雰囲気を残したほうが良いのでは』といった意見が挙がったのですが、『地域から求められているものを紐解いていくと、実はこんな設備が必要だった』というような、在住者との視点の違いが露わになっていきました。これは、実際に現地に赴いて、課題解決に向けて動いている方のお話を聞くといった体験を通してでないと気づけなかったことだと思います」(菅先生)

また「休日はプライベートで共同畑を利用しながら、自分の住む地域の方との交流の楽しさや大切さを感じている」という高木先生の視点からも、今回のフィールドワークは貴重な経験に映ったようです。

「私は、喬木村では体調を崩した生徒の見守りに徹していたので、菅先生とは別行動だったのですが……(苦笑)。それでも、後からそういったエピソードを聞いて驚きましたね。私はもともと地域の方とのつながりが好きなので、今回の喬木村でのフィールドワークは一個人としても関心のあるテーマでした。ここまで地域の中に入り込む形でフィールドワークをさせていただける機会は非常に貴重であるため、アレンジしてくださったNTT東日本さんには感謝しています」(高木先生)

今回の喬木村でのフィールドワークでは、住民とのディスカッションだけでなく、土砂崩れを起こした災害跡地や、行政代執行で解体される直前の空き家など、村が抱えるさまざまな課題も直接目にし、向き合う時間を作りました。

このフィールドワークを通して、答えのない問いをいただいたと思っています」(菅先生)

地域課題解決ラボを通して、生徒たちに起こった変化

2つのフィールドワークを経て、課題をまとめて解決策を発表し、無事に地域課題解決ラボのゴールを迎えた生徒たち。しかし、ラボが終わった後も、自発的にアクションを起こしている生徒が多かったといいます。

ラボでの活動を通した探究の成果を発表をする生徒

「空き家の利活用に課題を見出した生徒が『空き家活用コンテスト』に参加して最優秀賞を受賞したり、農業に関心を持った生徒が違う村へ農業体験をしに行ったりと、プログラムの何かがそれぞれの心に引っかかって、次のアクションにつながっている印象でした」(高木先生)

もちろん、今回のプログラムでは、生徒に対してアクション継続の強制は一切していません。にもかかわらず、インターンにこぎつけている、コンテストに出場している、農業体験へ赴いているといったアクションにつながっていることは、ある種の「結果」と言えるでしょう。

「『総合的な探究の時間』というカリキュラムは、本来であれば内発的動機付けによって行われるべきものですが、『探究』という言葉が“こすられ”過ぎて『探究しろ』といった外発的動機付けの状態になっているのではないか……といった懸念を、教員になってからずっと抱いていました。しかし、地域課題解決ラボでは、生徒たちはプログラムから離れた後も自走し続けているんです」(菅先生)

「プログラムを通して、生徒が『自分は社会に対してどのような貢献ができるだろう』と必死に考えられたことこそが、ラボの一番の成果だと考えています。こちらがネクストアクションを指示しないからこそ、仙川でも喬木村でも、生徒たちが“ハマる”ポイントは多種多様でした。育ってきた環境も原体験も異なる生徒たちが1つのプログラムに参加しても、興味を抱く対象はそれぞれ異なって当然です。地域課題解決ラボは、その興味を自走へとつなげる、すごくいいきっかけを与えてくれたと思っています」(高木先生)

具体的に、自発的なアクションを起こしていたのは、ラボに参加した16人中5人とのことです。

「一般的には、何百人に対して授業を行って、“ハマる”のって1人、2人あたりがいいところだと思うんですよ。それが、今回のプログラムは約3分の1の生徒に刺さっているわけです」(高木先生)

「これを成果と言わずして何と言おう、という話です。地域課題解決ラボは、彼らの人生を変えうる重要なターニングポイントになっていますから」(菅先生)

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