COLUMN

LGWANの現状と課題について解説

LGWAN(エルジーワン)は、2001年10月から運用が開始され現在ではすべての都道府県と市町村が利用しています。また、複数の地方公共団体が特定の行政サービスを提供するために設置する一部事務組合や広域連合との接続も進んでいます。さらに、国の行政機関ネットワーク「霞ヶ関WAN」とも相互に接続しており、地方公共団体と国の機関との情報交換にも活用されています。

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1. LGWANとは

LGWANとは、地方公共団体や国の機関が機密性の高い情報を安全に扱うために利用する閉域ネットワークで、Local Government Wide Area Networkの略称です。平成12年(西暦2000年)の実証実験を経て、その後、技術仕様の追加や制度変更に伴いガイドラインが改訂されてきました。平成13年度から都道府県、平成15年度から全市区町村接続による本格運用が行われています。特に重要な改訂として、第三次LGWAN移行(平成24年4月1日)、第四次LGWAN移行(平成30年3月30日)、そして第五次LGWAN移行(令和6年10月1日)が挙げられます。

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2. LGWANを活用した自治体業務の再構築

2-1. 自治体業務のデジタル化

LGWANを通じ地方公共団体間や政府機関との間で情報共有や情報交換がスムーズに行えるようになります。従来、各自治体が個別にシステムを構築・運用していたものが、LGWANの導入により統一的なプラットフォーム上で業務を行うことが可能となります。

  • e-Taxやコンビニ交付の普及: e-Taxの利用者は年々増加し、令和2年には、「所得税申告件数」が初めて紙による申請数を抜き、令和5年には18,394,172件になりました。(出典:令和5年度におけるオンライン(e-Tax)手続の利用状況等について)また、コンビニ交付は自治体とコンビニを接続しコンビニのマルチコピー機から証明書を取得できる仕組みです。取得できる証明書には住民票の写しや印鑑登録証明書、戸籍証明書などがあります。コンビニ交付も順調に利用件数を伸ばし令和5年には2,800万件を突破しました。(出典:自治体基盤クラウドシステム(BCL)で広がる行政サービス
  • 情報共有の促進: 各地方公共団体が保有する情報をLGWAN上で共有することで、業務の重複を削減し、効率的な行政運営が可能になります。
  • 業務の標準化: 書類の電子化を進めることで、自治体ごとに異なる申請様式を統一できるようになり、業務の標準化が進みます。また、紙による印刷や郵送といった自治体の業務を削減できます。

2-2. 住民サービスの向上

LGWANの活用により、住民にとってより質の高い行政サービスの提供が可能になります。

  • オンライン申請の普及: e-Taxやコンビニ交付に加えLGWANを活用した標準準拠システムを利用することで、オンライン申請などの住民向けサービスを全国に普及させることができます。これにより、住民は窓口に出向くことなく、自宅や外出先から行政手続きを行えるようになり、利便性が向上します。
  • きめ細やかな情報提供: 各自治体ではLGWAN-ASPに公開されている介護や子育てなどのアプリケーションやサービスを活用し住民が必要とする情報をタイムリーに提供できるようになります。
  • 住民参加の促進: オンラインアンケートやオンライン対話会などを活用することで、住民の意見を政策に反映しやすくなります。自治体は選挙で選ばれた地方議員から間接的に住民の意見を聞いて政策に反映してきましたが、これから直接市民の意見を聞くことができるようになります。
  • 災害時の対応: 万が一の震災などで自治体の庁舎が被災した場合でも自治体業務の継続性を確保できます。

2-3. 情報セキュリティ強化

LGWANは業務のデジタル化を推進し情報セキュリティを強化するための基盤となります。

  • マイナンバーカードの利活用: マイナンバーカードの空領域を利用した、図書館カード、高齢者や介護認定者向けのタクシーサービスなどの住民サービスの向上や、民間事業者での社員識別や施設の出入り管理などの応用につながります。
  • 情報セキュリティ対策: LGWANは、ファイアウォール、侵入検知システム、暗号化通信、アクセス制御などの高度な情報セキュリティ対策が施されたネットワークであり、安心して行政情報を取り扱うことができます。

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3. LGWAN-ASPの課題

J-LIS(地方公共団体システム機構)は令和6年3月11日に規定を公表し、クラウド接続サービスをより利用しやすくするための改定を行いました。以下ではLGWAN-ASPの課題を確認します。

3-1. 移行作業の複雑さと費用

第5次LGWANへの移行は、ルーターの交換やLGWAN-CSの設定が必要な団体とそうでない団体があり、各自治体で対応が異なるため、作業が複雑化しています。

移行には申請書類の提出や設定作業が必要で、6ヶ月前までにルーター回線手配依頼書、3ヶ月前までに接続パラメータ申請シートの提出が求められます。

移行費用は自治体にとって大きな負担となり、特に小規模自治体では財政的な課題が生じます。標準準拠システムへの移行も令和7年度(2025年度)までに目指されており、これに伴う費用も考慮が必要です。

3-2. 情報セキュリティと外部接続の管理

LGWANは閉域ネットワークですが、LGWAN-ASPを介した外部ネットワークとの接続は、情報セキュリティリスクを伴います。

外部ネットワークからのIPリーチャビリティの遮断や、ファイル受け渡しの際の安全な形式への変換が求められますが、これらを徹底するための運用負荷や技術的な課題が存在します。

LGWAN-ASPとLGWAN外部電子契約サービスやLGWAN外部閉域利用サービスとの接続においては、通信経路の暗号化や通信プロトコルの制限などの要件が求められ、これらの設定や管理が複雑化する可能性があります。

3-3. サービス提供者の選定と契約

LGWAN-ASPのサービスは、複数のサービス提供者(アプリケーション、ホスティング、通信、ファシリティ等)によって分担して提供されます。

サービス利用者(自治体)は、これらのサービス提供者との間で個別に契約を結ぶ必要があり、サービス内容の比較検討や契約手続きが煩雑になる可能性があります。

運営主体(J-LIS)は、サービス利用者とサービス提供者間の契約には一切関与しないため、サービスに関する責任の所在が不明確になる場合があります。また、サービス提供者の選定にあたっては、情報セキュリティ基準やサービス品質を十分に考慮する必要があります。

これらの課題は、LGWAN-ASPサービスのより円滑な運用と、地方自治体におけるデジタル化をさらに推進するために、今後取り組むべき重要な点です。

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4. LGWAN-ASP接続支援について

LGWAN-ASPのパブリッククラウド接続より多くのアプリケーションサービスがLGWAN-ASP上で提供可能となりました。現在、「総合行政ネットワークASP アプリケーション及びコンテンツサービス」には約1,350件のサービスが登録さています。

ASPサービスリスト - LGWAN-ASPポータルサイト

NTT東日本は、LGWAN-ASPホスティングサービスも提供しています。プライベートクラウド接続に加え、特にパブラッククラウド接続に特化したオプションサービスにも力をいれています。

LGWAN接続のサービスの知見や知識を持つクラウドエンジニアが、お客さまの疑問や要望に的確にお応えしさまざまなアプリケーションサービスのインフラを提供します。

LGWAN-パブリッククラウド接続支援

5. まとめ

LGWANは、自治体に必要不可欠な情報通信基盤です。LGWANの導入・活用により、行政事務の効率化、住民サービスの向上、業務のデジタル化、情報セキュリティ対策の強化などを実現することができます。

LGWANを単なる通信インフラとして捉えるのではなく、行政サービスの質の向上、住民との協働、地域経済の活性化など、多様な目的を達成するための戦略的なツールとして位置づけることが重要です。

LGWAN経由で自治体向けにアプリケーションの提供を検討されている方いらっしゃいましたらお気軽にご相談ください。

NTT東日本のクラウドエンジニアがアプリケーション事業者さまのご相談におこたえします