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防災行政無線とは?何に使われているの?目的や分類などを解説

地震や台風の多い日本では、突然の災害を想定し、常に備える必要性があります。特に自治体は、災害状況のタイムリーな情報収集と、避難指示など住民への情報発信を速やかに行わなければなりません。そこで使用されているものが防災行政無線です。本記事では、防災行政無線について解説していきます。また、防災DXのメリットや課題、事例も紹介します。

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1.防災行政無線とは?何に使われているの?

防災行政無線とは、都道府県や市町村が「地域防災計画」に基づいて整備している通信システムのことです。一般的に「防災無線」と呼ばれるものは、市町村防災行政無線を指しています。

非常時における重要通信の確保を目的としており、各地域における防災や応急救助、災害復旧に関係する業務に使用されています。平常時には、一般行政事務にも利用できます。公衆通信網が途絶えたり、商用電源が停電したりした場合でも使用可能です。

地震や津波といった災害が発生した際は、緊急地震速報や避難指示などの重要な情報を、屋外拡声子局(屋外スピーカー)や戸別受信機などを通して人々に知らせます。自治体によっては、危険動物の出没や市の大型イベントの中止などの行政関連情報も放送されます。防災行政無線は、一部のシステムで自動化されており、地元の行政機関が情報をカスタマイズすることもできます。機器の動作確認も兼ねて、決まった時刻に時報や音楽を放送するなど、地域に合わせた運用がされています。

2.防災行政無線の分類

防災行政無線は、中央防災無線、都道府県防災行政無線、市町村防災行政無線に大別されます。それぞれの特徴を解説します。

2-1.中央防災無線

中央防災無線とは、内閣府を中心として、指定行政機関(中央省庁など)や関係機関(総理官邸など)、指定公共機関(NTT、NHK、電力会社、日本赤十字社、国立病院機構災害医療センターなど)といった各機関を結ぶ無線通信網のことです。国の災害対策を円滑に実施することを目的としています。

専用の無線通信ネットワークが使用されており、固定系、移動系、画像伝送系、衛星通信系で成り立っています。

2-2.都道府県防災行政無線

都道府県防災行政無線とは、地域防災計画に基づいて災害情報を収集し、伝達するための無線通信網です。都道府県とその出先機関や、指定地方行政機関、指定地方公共機関、市町村などの間を結んでいます。地域における、大切な防災システムです。

一部、地域衛星通信ネットワーク(地方自治体と防災関係機関間を通信衛星でつなぐネットワーク)が利用されているものの、基本的には固定系、移動系、テレメーター系、衛星系で構成されています。固定系、移動系、テレメーター系は、デジタル化が進められており、双方向通信、画像による情報収集などが可能です。

2-3.市町村防災行政無線

市町村防災行政無線とは、日本国内の市町村および区が整備する無線通信網です。災害情報の収集、地域住民に向けた災害情報の伝達・広報・指示を行います。

市町村防災行政無線は、同報系(同報系防災行政無線)、移動系(移動系防災行政無線)、テレメーター系の3つで構成されています。テレメーター系は、観測データ(降水量や河川の水位など)の伝送を目的とし、観測所などの間を接続しています。

同報系、移動系の詳細は以下になります。

2-3-1.同報系防災行政無線

同報系防災行政無線とは、市町村役場と屋外拡声器や家庭内の戸別受信機間をつないでいる無線通信網のことです。広報車を使用して拡声アナウンスをする必要がないため、相次いで導入されました。主な使用目的は、住民に災害情報などを伝えることです。文字情報による伝達や、画像を利用した情報収集などのデジタル化も推進されています。

2-3-2.移動系防災行政無線

移動系防災行政無線には、車載型無線機や携帯型無線機があります。防災情報の収集や、ほかの通信手段が途絶えた際に防災担当者間で情報伝達できるように設置されているものです。災害現場から市町村役場へ現地災害情報を伝える、広報車を使用して住民へ情報を伝達する、といった活用がされています。

同報系防災行政無線同様デジタル化が進められており、双方向通信や、画像を使用した情報収集などが行われています。

3.日本で進められている防災DXについて

防災DXはDisaster Prevention Digital Transformationの略称です。予測困難な災害に対して、デジタル技術をいかして防災に役立てる取り組みを指しています。

防災DXの一環として、デジタル庁では防災アーキテクチャの設計や、データ連携基盤の構築が進行中です。ほかにも、防災DX官民共創協議会等の場を設け、優れたアプリやサービスを防災の現場で簡単に検索・入手することができるようにするなど、人々が災害時に必要な支援を受けられることを目指しています。デジタルマーケットプレイスへの接続も視野に入れ、実証事業などの取り組みを推進しています。

3-1.防災DXを導入するメリット

防災DXを導入するメリットは、主に2つあります。

1つ目は緊急情報をいち早く人々に知らせることで、被害をできるだけ小さく抑えることが可能な点です。災害の原因となる天候や、土砂崩れなどの自然状況が速やかに伝達されれば、二次災害の防止も期待できます。また、近くの避難所情報を発信することで、素早い避難が促せます。

2つ目は被災後は、パソコンやスマートフォンから、火災保険の請求や被災者支援の制度の利用に必要な罹災証明書が発行できる点です。また、事前に安否確認アプリをインストールしていれば、家族の安否を確認できます。

3-2.防災DXの導入における課題

防災DXの導入には、以下のような課題があります。

DX人材が不足している

DXの知識や技術に長けた人材の確保が難しい状況です。専門的な人材が必要になるので、各自治体の既存の職員だけの対応だけでは限界があります。

コストがかかる

防災DXシステムの開発や、維持管理にもコストがかかります。自治体の財政を圧迫してしまう可能性もあるため、防災DXシステムを積極的に進めることが難しいケースもあります。

最先端技術の活用ができていない

自治体単位では防災情報システム集約が進んでいても、国との連携やシステムの標準化が遅れているケースがあります。また、最先端技術を推進したくても、離島が多いといった、日本の風土的問題から、制限されてしまう懸念があります。

4.防災無線のDX事例

防災無線のDXの事例として、「シン・オートコール」を紹介します。

シン・オートコールとは、使い慣れた電話とクラウドを組み合わせることで、避難誘導などの防災無線や安否確認をDX化したものです。平時の訓練や緊急時の情報伝達が、自宅の固定電話を通じて行われるので、スマートフォンやパソコンの扱いに慣れていない高齢者にも安心です。もちろん、スマートフォンを通じたSMSやSNS、チャットでの伝達も可能です。

東日本大震災の津波で被害を受けた陸前高田市の山間部には、防災無線が届きません。そのため、地域防災のあり方に悩んでいました。住民の安否確認は、電話と自治会などの担当者による住宅訪問に頼らざるを得ない状況だったからです。この方法だと、時間と労力、連絡の漏れがどうしても生じてしまいます。

そこで、2022年3月に陸前高田市の下矢作地区で、電話を媒介とし、さらに双方向通信による伝達と情報収集が可能なシン・オートコールを取り入れた訓練を実施しました。その結果、以下のような仕組みを確立できました。

1. 最新の対話AIを活用した「はい」「いいえ」による安否登録

2. 警戒レベルに応じてサイレン音を鳴らす

シン・オートコールは、DX化を通じて、誰一人取り残さない防災の実現を目指しています。

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5.防災DXの導入ならぜひNTT東日本にご相談ください

現代の日本では、大規模地震や地域温暖化による豪雨など、予想できない災害の脅威にさらされています。有事の際は、タイムリーな情報収集と多様な手段での住民への情報発信が必要です。「突然の災害への対応が困難」「自治体職員だけの対応では限界がある」といった課題解決のためにも、防災DXの推進が欠かせません。

NTT東日本では、有事の際の災害情報の収集、被災状況の把握、住民への情報発信、復旧時の被災者支援体制の構築実現、広域停電を想定した電源対策を行っています。

また、「クラウドを活用して、自治体業務をDXしたい」とお考えの地方自治体に寄り添って、資格を有したクラウドエンジニアがフルサポートでデジタル化・クラウド化を推進します。

公共・自治体の防災DXの導入は、ぜひNTT東日本にお任せください。

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防災無線についてまとめ

日本では、主に緊急時の通信確保を目的として、多様な防災無線システムが利用されています。防災行政無線は中央防災無線、都道府県防災行政無線、市町村防災行政無線に分けられています。

突然起こる災害への対応策として注目されているのが、防災DXです。防災DXとはデジタル技術を用いて予測困難な災害に備える取り組みのことです。防災DXのメリットには、迅速な情報伝達、被害情報の収集、被災後の対応があります。

災害では、高齢者など支援が必要な人を取りこぼさない仕組みが求められます。スマートフォンやパソコンを通じた情報発信だけでなく、「シン・オートコール」のような、自宅の固定電話を利用した防災DXも注目されています。

NTT東日本では、防災DXの導入を支援し、災害情報収集、情報発信、被災者支援などに取り組んでいます。自治体の状況に合う防災DXを検討しましょう。

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