- 大雨で防災行政無線が雨音でかき消される、山に反響して聞き取りづらいといった課題があった
- 情報伝達が一方通行になり、住民側の状況(安否や避難状況)を把握する手段が乏しかった
- 防災担当職員が実質1名と限られており、災害時に電話対応や個別訪問を行う人員が不足していた
山間部の木祖村が挑む、電話とAIによる双方向の情報共有。求められたのは、平時から役に立つ防災の仕組み

木祖村役場
| 業種 | 地方公務 |
|---|---|
| 職員数 | 57名 |
| 所在地 | 長野県木曽郡木祖村 |
| 主な事業内容 | 行政サービス全般 |
| ホームページ | https://www.vill.kiso.nagano.jp/ |
| 導入サービス | 自動音声一斉配信システム「シン・オートコール」 |
| サービス導入時期 | 2025年5月 ~ |
| ご担当者さま |
長野県木曽郡木祖村役場 総務課 課長 小林 克彦さま 木祖村役場 総務課 庶務係(防災担当) 田上 恭平さま <NTT東日本 担当社員> ビジネス開発本部 クラウド&ネットワークビジネス部 クラウドサービス担当 担当課長 兼務 特殊局 局長補佐 鈴木 巧 |
- 高齢化率が高い地域のため、アプリやメールよりも電話の方が住民にとって親和性が高かった
- ボタン操作不要で、話した言葉がAIによって文字化される仕組みが使いやすいと判断
- 1回の操作で一斉架電、自動集計されるため、少人数の職員でも状況把握が可能に
- 防災訓練を通じて住民への周知を行い、約1,000回線の電話番号登録を実現
- 固定電話だけでなく携帯電話の登録も約740件あり、確実な連絡手段の確保につながった
- 電話対応に追われることなく、システム上で安否情報を確認できる体制が整った

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長野県の南西部、木曽郡に位置し、木曽川の源流の里として知られる木祖村。豊かな自然に囲まれた山間部である一方、大雨による河川の増水や土砂災害のリスクと常に隣り合わせの地域でもあります。
これまで同村では、防災行政無線を活用して住民への情報伝達を行ってきましたが、激しい雨音で放送が聞こえない、山間部特有の反響で聞き取りづらいといった課題を抱えていました。また、高齢化が進む中で、災害時に住民の安否をいかに迅速に把握するか、限られた職員数でどう対応するかが喫緊の課題となっていました。
こうした背景から、木祖村ではNTT東日本の自動音声一斉配信システム「シン・オートコール」の導入を決定。電話と生成AIを活用し、住民への一斉連絡と安否情報の自動収集を行う新たな仕組みづくりに着手しました。
今回は、「シン・オートコール」の導入を推進された総務課長の小林 克彦さまと、防災担当の田上 恭平さま、そしてシン・オートコールの開発・発明者である鈴木とともに、導入の経緯から防災訓練での住民説明、平時活用の可能性、そして今後の展望についてお話を伺いました。
1. ご相談前の課題
豪雨災害時の避難情報に課題。職員総出の対応に限界を感じ、役場と住民の双方向の情報共有を模索

長野県木祖村は、北西に飛騨山脈、南東に木曽山脈と急峻な山々に囲まれた山間地域に位置する、人口約2,400名の地方自治体です。村名が表す通り、村の南北に流れる木曽川の源流に位置しています。そのため、大雨が降ると河川の氾濫や土砂崩れのリスクが高まり、場合によっては道路が寸断される恐れもあります。
ここ数年は比較的落ち着いていますが、令和2〜3年頃は毎年のように災害が発生しており、一部の地区に対して避難指示を出されたこともありました。その際は対象地域が限定的だったことと、たまたまお盆の時期で人員が確保できたため、職員が現地に出向いて避難を呼びかけることができました。
しかし、もしこれが全村避難が必要な規模の災害で、かつ夜間や休日に発生した場合、限られた職員だけで全世帯を回ったり、電話をかけ続けたりすることは物理的に不可能だと感じました。(田上さま)
また、情報伝達の手段としても課題がありました。村では防災行政無線を使って情報を発信していますが、豪雨の際には雨音で屋外スピーカーの音が聞こえなかったり、山間部で音が反響して内容が聞き取りづらかったりすることがあります。そもそも無線が地形の影響でうまく届かないケースもありました。
何より、これまでの手段は役場から住民への「一方通行」の情報提供でした。住民の皆さんが無事なのか、避難できているのかといった情報を、役場側が吸い上げる仕組みが弱かったのです。災害時には役場に電話が殺到し、対応に追われてしまうことも予想されます。住民からの情報を効率的に収集し、双方向のやり取りができる手段が必要だと感じていました。(小林さま)
2. シン・オートコールを選んだ理由
ご高齢の方には、電話が一番。ボタン操作不要の音声対話AIが、導入の決め手に

今回の取り組みのきっかけは、以前DX担当だった職員が東京でシン・オートコールの説明を受けたことでした。「木祖村でも有効なシステムかもしれない」と感じたそうで、持ち帰った情報をもとにNTT東日本の鈴木さんや担当者に来ていただき、村長や副村長の前でデモンストレーションを行ってもらいました。
導入の決め手となったのは、やはり「電話」という従来からある情報伝達手段をベースとしているという点です。木祖村は高齢化率が高く、スマートフォンやLINEなどのアプリを使いこなせる方は限られています。何かあれば役場に電話をかけてくる方が圧倒的に多いのが実情です。その点、シン・オートコールは普段使い慣れている電話機で応答できるため、住民への負担が少ないと考えました。
また、操作の簡便さも重要でした。従来のシステムでは「はいの場合は1を、いいえの場合は2を押してください」といったプッシュ操作が必要なものが多いですが、シン・オートコールは生成AIが音声を認識するため、受話器に向かって喋るだけで回答が完了します。これならご高齢の方でも迷わず使えると判断しました。(田上さま)
NTT東日本の担当者がリモートで村長に説明した際、村長から「防災以外でも使えるシステムなのか」という質問がありました。つまり、防災という有事のためだけのシステムではなく、住民の安否確認や福祉に関する情報提供などの平時から日常的に使える基盤として活用できるのであれば、投資に見合う効果も見込めると判断したのです。有事だけのシステムでは、せっかく導入しても防災訓練くらいでしか使われず、いざというときにうまく稼働しないかもしれません。しかし平時から活用できれば、その延長線上として有事でもスムーズに使用することができるはずです。
また、「NTT」というブランドへの信頼も大きかったと思います。電話やネットワークインフラを担ってきた企業が提供するサービスである、という点は、住民説明の場でも安心材料になりました。不安や抵抗感を和らげるうえで、一定の効果があったと感じています。(小林さま)
3. シン・オートコールの導入と活用
自治会長への説明と防災訓練でのデモを実施。丁寧な周知で1,000件超の登録を実現

導入にあたっては、住民の皆さんにシステムを理解してもらい、電話番号を登録してもらうことが最大のハードルでした。そこで、まずは村内に21ある自治会の会長が集まる会議で説明を行いました。NTT東日本の方にも同席いただき、実際にデモを見てもらうことで、シン・オートコールからの電話は怪しいものではないこと、便利なシステムであることを理解してもらい、協力を求めました。
その後、8月に開催された総合防災訓練に合わせて、住民向けの説明と同意書の準備を進めました。説明資料や同意書は、NTT東日本の方から提供されたひな形をベースに、文字を大きくしたり、「0120-XXXX-XXXX」の番号は新システムからの電話であることを明記したり、説明文の内容を木祖村用に変更したりと、住民に分かりやすいように工夫しています。
防災訓練で特に重要だったのは、このシステムで使用する発信番号を、あらかじめ電話帳に登録していただくことでした。知らない番号からの着信はどうしても無視されがちですので、この登録作業が実質的にシン・オートコールが機能するかどうかを左右すると考えていました。(田上さま)
防災訓練の場では、実際に職員の携帯電話を鳴らして応答するデモンストレーションも行っています。「AIが音声を認識して文字に残せる」という点に、参加された方々からは「いいシステムだね」という反応をいただきました。
こうした地道な周知活動の結果、防災訓練直後には約920回線、その後も追加登録があり、取材時点(2026年2月)で約1,050回線の登録をいただくことができました。そのうち携帯電話が約740件、固定電話が約300件です。世帯数に対して非常に高い登録率だと感じています。(小林さま)
4. シン・オートコール導入の成果
ワンクリックで一斉発信・自動集計。防災担当の職員の負担を減らし、迅速な初動体制へ

現在は本格運用の手前の段階ですが、システムを触ってみて、その利便性を強く感じています。これまでは電話連絡網を使ったり、個別に電話をかけたりする必要がありましたが、シン・オートコールなら管理画面から一斉に発信でき、安否情報などの住民からの回答が自動でテキスト化されて一覧表示されます。
私のように防災担当が実質ひとりの体制でも、画面を見るだけで村全体の状況を把握でき、上長への報告もスムーズに行えます。音声の速さ調整や内容の変更もテンプレートを使って簡単にできるため、緊急時でも慌てずに操作できそうです。(田上さま)
今後の計画としては、来年度の防災訓練での本格活用に向けて、今年度中または来年度初めに一度、試験的な一斉配信を行う予定です。登録したものの「何も連絡が来ない」と忘れられてしまっては意味がないため、住民の記憶に定着させる狙いがあります。
また、防災以外での活用も検討し始めており、すでに水道部門では一部で活用が始まっています。たとえば水道管の破損などで緊急断水が発生した場合、これまでは担当職員が村内の業者さん一軒一軒に電話をかけて、対応の可否を確認していました。どうしても手作業になりますので負担が大きかったのですが、今は一斉に音声メッセージを送って、回答を自動で集約できるようになっています。
農政分野でも熊や猿といった野生動物の出没情報を住民の皆さまから集める手段として検討中です。木祖村でも獣害は重要な課題ですので、出没情報をリアルタイムで把握し、防災無線などで注意喚起につなげることができれば、生活に直結する実用的な取り組みになると考えています。
さらに福祉分野では、ご高齢の方の見守りとして定期的な安否確認の電話を自動化できれば、限られた人員の中でも見守り体制を強化できる可能性があります。(小林さま)
5. シン・オートコールを導入し、今後挑戦していきたいこと
水害・土砂災害への備えを強化。新しい技術で持続可能な防災体制をつくる

木祖村の防災として、やはり水害と土砂災害への対策が最優先です。村内には活断層も通っているため、地震への備えを怠ることはできません。今後は収集したデータを活用して、災害時の時系列ごとの動きを振り返ったり、平時の高齢者見守り活動と連携させたりすることも視野に入れています。
役場の職員数は限られており、少子化で採用も簡単ではありません。人がいないからできない、ではなく、人がいなくても回る仕組みを作ることが今後さらに重要です。そのためには、AIなどの新しい技術を積極的に取り入れ、業務を効率化していく必要があります。防災・減災の分野こそ、そうしたテクノロジーの活用が求められていると感じています。(田上さま)
新しい技術だからといってすぐに飛びつくのではなく、今回のようによく見て、試して、自分たちの村に合うものを選ぶことが大切ですね。そして導入して終わりではなく、担当者が変わっても使い続けられるように、組織として運用を定着させていきたいと考えています。(小林さま)
6. これから取り組む方へのアドバイス
職員が限られる広域な自治体こそ、導入のメリットがある

私たちのように職員数が限られていて、かつ面積が広く集落が点在しているような自治体には、シン・オートコールのようなシステムはとても有効だと思います。少人数でも広範囲の情報を一括で収集・管理できるため、防災力の向上に直結します。実際に近隣の自治体からも、シン・オートコールに関する問い合わせがあり、関心の高まりを感じています。(田上さま)
7. おわりに
電話とAIの力で、災害に強い地域づくりを。NTT東日本がサポートします
いつ起こるか分からない災害に対し、限られた人員でいかに迅速に情報を収集し、住民の命を守るか。木祖村さまの事例は、慣れ親しんだ「電話」と最新の「AI」を組み合わせることで、ご高齢の方が多い地域でも実効性のある防災体制が構築できることを示しています。
NTT東日本は、通信インフラの提供にとどまらず、地域の課題に寄り添い、運用定着まで伴走するパートナーとして、自治体さまの防災DXを支援してまいります。防災業務の効率化や、住民への情報伝達にお悩みの自治体担当者さまは、ぜひNTT東日本にご相談ください。
- 文中記載の組織名・所属・肩書き・取材内容などは、すべて2026年2月時点(インタビュー時点)のものです。
- 事例はあくまでも一例であり、すべてのお客さまについて同様の効果があることを保証するものではありません。
- シン・オートコールはNTT東日本株式会社の特許( 第7419472号・第7438447号・第7549170号・第7553743号)および登録商標であり、木祖村さまへは株式会社NTT DXパートナーよりNTT東日本からの使用許諾に基づき提供を行っています。
- 本事例に記載されてる会社名、サービス名、商品名は、各社の商標または登録商標です。
