パブリッククラウドとLGWANを接続し、地方公共団体へサービスを展開。Webシステムのユーザー体験を向上し、行政の内部事務を効率化
写真左より
テックタッチ株式会社 公共団体担当 小熊坂 真徳さま
テックタッチ株式会社 カスタマーサクセスエンジニア 矢野 達也さま
NTT東日本 プロダクトマネジメント担当 チーフ 平池 修一
NTT東日本 プロダクトマネジメント担当 チーフ 千守 優志
企業名 | テックタッチ株式会社 |
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従業員数 | 142名(2025年2月時点)※正社員のみ |
本社所在地 | 東京都港区 |
概要 | 「すべてのユーザーがシステムを使いこなせる世界に」をミッションにデジタルアダプションプラットフォーム(DAP)「テックタッチ」を提供しています。4年連続国内シェアNo.1(※)で、ユーザー数は600万人超(2024年8月時点)。大手企業や官公庁などに導入され、DXの推進に貢献しています。
https://techtouch.jp/news/20241219_itr/ |
ホームページ | https://techtouch.jp/ |
ノーコードでWebサイト・Webシステムのユーザー体験を改善するサービス「テックタッチ」を開発、提供するテックタッチ株式会社。同社では「テックタッチ」を地方公共団体や、地方公共団体をお客さまとする企業へサービスを提供するにあたり、パブリッククラウド上に構築されたサービスを総合行政ネットワーク「LGWAN(エルジーワン)」経由で提供する方法を模索していました。そこでNTT東日本より「LGWAN-パブリッククラウド接続支援」を提案させていただき、2025年より地方公共団体や、地方公共団体をお客さまとする企業へのサービス提供をスタートすることになりました。取り組みの背景や成果について、テックタッチ株式会社のご担当者にお話を伺いました。
- 契約からおよそ6ヶ月で、J-LISのホスティングサービス接続承認が下りた
- LGWANへの接続は初めての経験だったものの、予定よりも早いスケジュールで実現した
- 複数の地方公共団体、企業に「テックタッチ」を提供できる予定
- LGWANへの接続にあたり、アプリ側の追加開発や追加設定の手間が少ない
- プロジェクトを進行するにあたって円滑にコミュニケーションができる
- 他社サービスと比較し、半分ほどの開発リソースでLGWAN接続を実現できる

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地方公共団体・企業へサービスを拡大するにあたり、LGWANが大きなハードルになっていた

貴社サービスを地方公共団体へ提供されようとした背景をお聞かせください。
小熊坂氏:弊社が開発・提供している「テックタッチ」はデジタルアダプションプラットフォーム(以下、DAP)と呼ばれるもので、システムを誰でも使いこなせる環境を提供し、Web画面上でのユーザー体験向上に貢献するサービスです。私は主に地方公共団体や、地方公共団体をお客さまとする企業への「テックタッチ」の提案から導入まで全般を担当しています。

2023年4月に私が入社する以前より、地方公共団体や地方公共団体をお客さまとする企業を対象とした事業展開を検討していたと聞いていましたが、一般企業へのサービス提供とは違う壁の存在で、費用対効果が合わないと判断されていたようです。その壁とは、今回の取り組みのテーマである総合行政ネットワーク、通称「LGWAN(エルジーワン)」です。自治体間を相互につなげる行政専用のネットワークのことで、地方公共団体情報システム機構(以下、J-LIS)が運営しています。
このLGWANは、情報セキュリティの観点からインターネットなどから分離された、高度な情報セキュリティを持つ独自の閉域ネットワークを利用していることが特長です。人事給与や庶務事務、文書管理など地方自治体を維持するための内部事務は、このLGWANの閉域ネットワークにしか接続できない端末を使って職員の方々が対応している団体が多いのが現状と理解しております。
今回の取り組みの目的をお聞かせください。
小熊坂氏:パブリッククラウド上に構築されている「テックタッチ」を、パブリッククラウド上の構成を変えずにLGWAN環境に接続し、地方公共団体や地方公共団体をお客さまとする企業に対して円滑にサービス展開を行うことが、今回の取り組みの目的です。LGWAN環境に接続さえできれば他の技術的障壁はなく「テックタッチ」を導入し得ることを事前アンケートで確認しておりましたし、何よりいくつかの地方公共団体のご担当者から内部事務への「テックタッチ」の導入に興味を示していただけましたので、LGWAN接続の方法を模索することになりました。
ただ、LGWAN接続を社内のリソースだけで実現することは、まったく現実感のない話です。特殊なネットワークやサーバーの知識や実績を持つ、しかもLGWAN接続に精通し、プロジェクトマネジメントまでできるバックエンドエンジニアを採用するのは、弊社のようなベンチャー企業には採用コストの面から考慮しても不可能です。また、もし自社でLGWAN接続を実現するにはサーバー群を自社で構築し、各地方公共団体の情報セキュリティポリシーを満たすように設定する必要があり、当然その構築・維持コストもかかってしまいます。
そこでパブリッククラウドとLGWANの接続を支援いただける支援サービスの導入を検討することになりました。
決め手は追加開発・設定の手間が少なく、円滑にコミュニケーションできること

他社ソリューションとはどのような要素で比較検討しましたか。
小熊坂氏:パブリッククラウドとLGWANの接続するサービスについては、NTT東日本さまを含め2社からご提案いただきました。2社のサービスの比較検討にあたって最も重視していたのが、追加開発・設定の手間をいかに少なく導入・運用できるかです。
他社さまからご提案いただいたのは、LGWANへの接続のために追加開発・設定が必要なサービスであり、弊社でも開発リソースを割く必要がありました。一方、NTT東日本さまからご提案いただいた「LGWAN-パブリッククラウド接続支援」はNTT東日本さまの「クラウドゲートウェイサーバーホスティング」を活用することでアプリケーションの構成を変えずにLGWANへ接続することができるため、割かなければならない社内の開発リソースを最小限に抑えることができます。
他社さまのご提案と比較して、半分ほどの開発リソースで済む計算です。さらにテックタッチ本体において、LGWAN接続が将来的な負債になるような開発が不要だった点も、大きなポイントです。

もうひとつ重要な要素だったのが、プロジェクトを進行するにあたって円滑にコミュニケーションができることです。パブリッククラウドからLGWANへの接続という特殊なプロジェクトであるため、専門用語やネットワーク構成に対する認識にズレがあると、スムーズに進行できません。また、普段のコミュニケーションのなかで「私たちは何をしなければならないのか」というネクストアクションを明確に伝えていただけることは、ご支援いただく上で重要な要素だと考えています。その点でNTT東日本さまの担当の方は、初回打ち合わせの印象がよく、その後のやり取りのレスポンスも早く、親身にご相談に乗っていただけました。
以上の要素を踏まえて比較検討した結果、NTT東日本さまにご提案いただいた「LGWAN-パブリッククラウド接続支援」を2024年4月に採用し、地方公共団体や地方公共団体をお客さまとする企業へ「テックタッチ」のサービス展開に踏み出すことを決定しました。
想定よりも早いスケジュールでJ-LIS申請を通過。過去の実績からのアドバイスを高く評価

「LGWAN-パブリッククラウド接続支援」の取り組みはどのように進行しましたか。
矢野氏:取り組みは大きく以下のフェーズごとに進行させていただきました。取り組みスタートから無事にJ-LIS申請を通過するまで、およそ半年ほどで完了できています。
- フェーズ1(4〜6月):プロジェクト全体のスケジュール、コスト、必要なアクションを決定
- フェーズ2(7〜9月中旬):検証環境で「テックタッチ」用にインフラを整え、接続のPoCを実施
- フェーズ3(9月下旬):LGWAN-ASPポータルサイトにてJ-LISのホスティングサービス接続の申込書を提出・承認
- フェーズ4(10~11月):正式環境で再度インフラ周りや「テックタッチ」との接続試験を実施
- フェーズ5(翌年1月以降):一部の地方公共団体と企業を対象に「テックタッチ」を先行リリース
私自身、LGWANへの接続は初めての経験でした。ガチガチの情報セキュリティ対策がなされた、融通の利かない閉域ネットワークという第一印象だったのですが、NTT東日本さまの担当の方にご説明いただき、条件を満たせばインターネットとの接続が可能との理解が深まり、安心してプロジェクトを進められました。
弊社サービスについて、どのような印象をお持ちですか。
矢野氏:また、パブリッククラウドからLGWANへの接続についての詳細、具体的にはデータの保存形式や通信形式などの細かい要件がJ-LISが公開している規約を一読しても判断できない点が多々ありました。その点に関して、NTT東日本さまの担当から過去の実績から回答いただいたり、それでも判断に困る部分は直接J-LIS側に問い合わせていただいたりと、スムーズにJ-LIS申請を通していただくためにご尽力いただいています。おかげで想定より1〜2週間も早くLGWANへの接続承認をもらうことができました。
リリースから最短のスケジュールでお客さまにサービスを提供し、商機を逃さなかった

どのようなお取り組みの成果を今後期待しますか。
矢野氏:2025年1月以降、すでに「テックタッチ」に興味を示していただいた一部の地方公共団体と企業を対象に「テックタッチ」を先行リリースしていく予定です。ある地方公共団体さまのDX部門担当の方には展示会の場で「テックタッチ」をご紹介させていただき、内部事務のシステムを切り替える2025年3月末にあわせて先行導入いただく予定です。
リリースから最短で地方公共団体のお客さまに「テックタッチ」をご案内でき、商機を捉えられたのは大きな成果だと考えています。さらに地方公共団体が提供している市民向けのサービスに「テックタッチ」やAIを組み合わせる新しい取り組みも進行中であり、横への広がりにも期待しているところです。
もうひとつ期待する成果としては、地方公共団体向けにサービスを提供する企業とのサービス提携です。今回、「テックタッチ」がLGWAN対応したことで、さまざまな自治体向けサービスに「テックタッチ」を導入いただけるようになりました。大きい規模のサービスに「テックタッチ」を導入いただければ、一気に導入自治体数が跳ね上がります。
より多くの地方公共団体・企業に使い勝手のよいWebサイト・Webシステムを届けたい

今後の展望をお聞かせください。
小熊坂氏:先行リリース後には、改めて正式サービスとしてより多くの地方公共団体や、地方公共団体をお客さまとする企業への「テックタッチ」のご提供をスタートさせていきますので、引き続き変わらずご支援いただけると嬉しいですね。
弊社全体の展望として、世の中のあらゆるWebサイト・WebシステムのUIを向上させていきたいと考えています。「テックタッチ」のようなDAPがなくとも、各地方公共団体・各企業がそれぞれ使いやすいWebサイト・Webシステムを開発すれば解決ですが、予算や開発リソースなど、さまざまな構造的難しさがあり、一般的に考えられているほど簡単なことではありません。私自身、前職では大規模公共団体向けに内部事務システムの提案・導入に従事しておりましたが「使いやすいシステム」の構築の難しさを感じていました。
特に今回の取り組みの主な対象である地方公共団体は、内部事務業務の根拠である法令・条例・慣習などが複雑なため、内部事務システムもどんどん複雑になりがちな傾向があります。ただ、そうした環境で業務をしなければならないことを理由に、業務の効率化を犠牲にする必要はないと思うのです。地方公共団体の方々にはぜひ「テックタッチ」のようなデジタル技術をご活用いただき、業務を効率化してもっと楽しく、楽に働いていただきたいですね。
LGWAN接続を検討されている方へアドバイスをお願いします。
矢野氏:LGWANに対してあまり身構えすぎなくていいのかなと思っています。私も最初は「行政で使われている閉域ネットワーク」と聞いただけですごく重たく、複雑なイメージを持ちました。たしかに特殊なネットワーク環境ではあるものの、実際にNTT東日本の方にアドバイスいただき、LGWANについて理解を深めていくにつれて以前よりもハードルは低くなったように感じます。
多くのアプリケーション事業者でLGWAN対応を検討されていると思いますが、思い切ってNTT東日本さまのような専門家に相談してみてはいかがでしょうか。
- 上記ソリューション導入時期は2024年4月~です。
- 文中に記載の組織名・所属・肩書き・取材内容などは、全て2024年12月時点(インタビュー時点)のものです。
- 上記事例はあくまでも一例であり、すべてのお客さまについて同様の効果があることを保証するものではありません。