
行政×生成AIのニュースまとめ
本コラムは2025年1月にリリースされた生成AIに関するニュースを紹介します。生成AIに関連した国内外の動きと、国内行政機関の動きの2つに焦点を当てて紹介します。
1. 2025年1月生成AIニュースまとめ
1-1. OpenAI
1-1-1. OpenAI o3-miniが提供開始
OpenAIはOpenAI o1よりコスト効率性が向上したモデル、OpenAI o3-miniを公開しました。科学や、数学、コーディングといった分野に強く、o1よりも低コストとレイテンシー(待ち時間)の削減を実現しています。月20ドルの有料ユーザーであればo3-miniとo3-mini-highの2つのモデルを使用することができます。
右上:数学コンペにおけるo1とo3の比較。o3(黄色)がより良いスコアを示しています。
右下:博士課程レベルの問題に対するo1とo3の比較。o3がより良いスコアを示しています。
1-1-2. PCを操作するエージェント、Operatorが登場
プロンプトによってブラウザを自動で操作するOperatorが紹介されました。AIエージェントによってウェブ上のタスクを処理してもらうことができます。一方で物理的にPCの操作をAIに託すため、安全性への配慮は非常に重要です。そのため安全に利用するためのガイドラインとして、operator-system-cardというドキュメントも公開されています。現在Operatorは米国の一部のユーザーに試験的に公開されているそうです。
1-1-3. スターゲート・プロジェクトを発表
ソフトバンクからOpenAIへの大型出資で話題になったスターゲート・プロジェクトが紹介されました。今後4年間で5000億ドルを投資し、アメリカ国内にOpenAI向けの新しいAIインフラを構築することを目的としています。一方で本プロジェクトにはイーロン・マスク氏から投資金額に関する実現可能性について批判も上がっており、米国内でも注目度が高いことがわかります。
1-2. Gemini
2025年の初月としてGoogleからはユーザーが身近に得られる利益を目指した、アップデートが公開されています。
1-2-1. Gemini 2.0 Flashが提供開始
GeminiアプリでGemini 2.0 Flashが使用可能になりました。これによりユーザーのブレインストーミングや学習、執筆活動をより強力に支援してくれます。こちらは一部のAndroid スマートフォンで利用できます。
筆者環境でも先日のアップデートでGeminiアプリが追加され、Geminiのアップデートを実感しています。
出典:Try Gemini 2.0 Flash in the Gemini app.
1-2-2. Automotive AI Agentを発表
Google Cloud は Automotive AI Agent が Mercedes-Benz (メルセデス・ベンツ)に導入されることを発表しました。報道では自動車メーカー向けにAutomotive AI Agentが紹介されました。Automotive AI Agentはドライバーにとって有益な情報を生成します。自動車に実装されている既存の音声認識技術を超えて、人が運転中に自然な会話を楽しむことや、「近くにイタリアンレストランはある?」というような質問をできるようにします。
出典:Google Cloud’s Automotive AI Agent arrives for Mercedes-Benz.
1. リリースされたGemini 2.0 Flashのイメージ画像
2. 「hey, メルセデス, 家族と特別な誕生日を祝うために連れて行く素敵な場所を探しているんだ。」というように、車と対話感覚で情報検索を行うことができる
1-3. DeepSeek
1-3-1. モデルの特徴と論点
DeepSeek(ディープシーク)は中国の人工知能に関連するサービスを提供する企業です。2025年1月に公開されて話題となった「DeepSeek-R1」はOpenAIの高性能モデル「o1」に匹敵する性能を持つことやコードが公開されるオープンソースであることから1月末に大きな話題になりました。
Google Trendによると、「すべての国」において、2025年1月28日に大きな注目が集まっていることがわかります。
注目が著しいDeepSeekですが、情報の機密性などの問題から2025年2月現在でも多くの安全保障上の懸念が指摘されています。一方でMicrosoft AzureやAWSといったメガプラットフォーマーの生成AI開発基盤上でのDeepSeekのモデルが提供開始されており、市場でのニーズの高さが窺われます。DeepSeekはChatGPTのような従来のLLMと比較して、非常に安価な開発費であることからAIの価格競争の火付け役となる可能性が指摘されています。2月現在も日々情報が更新されており、まだまだ注目は続きそうです。
日本では2月6日付でデジタル庁から「DeepSeek等の生成AIの業務利用に関する注意喚起」がなされています。
出典:デジタル社会推進会議幹事会事務局:DeepSeek 等の生成 AI の業務利用に関する注意喚起(事務連絡)
NTT東日本では、自治体向けの生成AIソリューションの導入支援を提供しています。生成AIソリューションの導入・運用にお悩みがある方は、ぜひ気軽にお問い合わせください。
2. 行政における生成AIの活用ニュース
一方で国内の行政機関では生成AIについてどのようなニュースがあったのでしょうか。
2-1. 2025年のデジタル庁の方向性
デジタル庁の「平デジタル大臣 2025年 年頭所感」によると、行政における生成AIのユースケースの発掘や実用化のための検証を進め、積極的にAIを活用する方針が示されています。同時に政府で生成AIを利活用するための共通ルールの整備を進め、AIに関する競争力強化と安全性確保について取り組む旨が述べられています。
本年も民間と共同しつつ、生成AIの利活用を推進していく方針であることが伺えます。
2-2. 京都市がAIチャットボットをリリース
京都府では、京都府税について、AIが自動応答を行うチャットボットサービスを2025年1月6日に開始しました。このチャットボットサービスは「来庁不要で24時間いつでも京都府税(自動車税、不動産所得税、個人事業税)について質問に答えてくれるサービス」として紹介されています。
出典:京都府税生成AIチャットボットサービスについて/京都府ホームページ
このような専門的な知識(この場合は、京都府税に関する知識)は一般的なデータで学習したAIは通常持ち合わせていません。そのため、京都府税に関連するデータをAIが参照しつつ問い合わせに応える「RAG」という仕組みを利用していると推察されます。
京都市の事例のように生成AIのチャットボットサービスへの組み込みは全国で事例が多くあります。
1. 川崎市の事例:川崎市AIチャットボットシステム
2. 戸田市の事例:AI総合案内サービス
3. 富山市の事例:観光案内用AIチャットボットサービス
生成AIのチャットボットサービスは頻繁に問われる内容に確度高く回答することが期待できるため、自治体職員の問い合わせ対応に係る負担を軽減するための現実的な解決策の一つと考えられそうです。
2-3. 教育分野での生成AIの取組み
1月中のニュースの中には、教育分野で生成AIに関連するニュースが複数ありました。
2-3-1. 都立高で「データサイエンス」などデジタル系科目の授業を選択可能に
東京都教育委員会によると、都立高校では各高校が独自に学習内容を決められる「学校認定科目」を利用して、生成AIやデータサイエンス、行動経済学など、デジタル技術に関連する科目を選択制で導入する方針を固めたとの報道がありました。
出典:読売新聞オンライン:都立高校に生成AI学ぶ科目導入へ…「データサイエンス」や「行動経済学」など選択制に
2-3-2. OpenAI-01が共通テストを解いてみた...結果は?
また、1月といえば共通テストが実施されるということで、受験生の方にとっては重要な月ですね。企業の検証結果によると、2025年の共通テストをOpenAI-o1に回答させてみたところ、91.3%の得点率だったそうです。同社の検証によると昨年は66.9%の正答率に留まり、本年の試験で大きく正解率が向上した結果となったようです。
出典:Note:【ついに9割!】共通テスト2025をChatGPTに解かせてみた
さまざまな問題に対応できる人工知能として、AGI(Artificial General Intelligence)という概念があります。このような検証結果を見ると、年々静かにAGIの登場が近づいてきているように感じます。
以上、行政に関連する1月の生成AIニュースのまとめでした。
NTT東日本では、自治体向けの生成AIソリューションの導入支援を提供しています。生成AIソリューションの導入・運用にお悩みがある方は、ぜひ気軽にお問い合わせください。
3. 自治体向け生成AIソリューションの導入ならNTT東日本にお任せください
NTT東日本では自治体向けに生成AIソリューションを提供しており、多くの実績があります。自治体の皆さまの課題を確認させていただき、コンサルティングから、導入〜運用まで幅広いソリューションをご提供します。支援内容には安心してご利用いただける生成AI環境提供や、生成AIの活用を促進するためのプロンプトのテンプレートなどが含まれています。その他、生成AIの活用コンサルティングやユースケースの創出の支援も行っています。
※自治体ではないお客さまもお気軽にご相談ください。
NTT東日本では、自治体向けの生成AIソリューションの導入支援を提供しています。生成AIソリューションの導入・運用にお悩みがある方は、ぜひ気軽にお問い合わせください。
4. まとめ
本コラムでは、2025年1月の生成AIに関するニュースを紹介しました。国外ではOpenAI o3-miniやGemini 2.0 Flashなどより高性能なモデルが続々とリリースされています。オープンソースモデルでもDeepSeekが従来よりも低いコストでのLLM開発の可能性を示し、LLM開発のトレンドが大きく変化する機運が高まっているように感じます。一方で国内行政機関では生成AIの活用事例の検証などがデジタル庁などでも進められており、行政の業務への適用が模索されています。行政における生成AIの具体例として、AIチャットボットへの組み込みは比較的効果の期待される事例として多くの自治体で開発・導入事例がみられます。2025年も生成AIの分野で話題を欠くことはなさそうです。
本コラムが生成AIの活用を推進する上で一助になれば幸いです。
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