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行政における生成AIの活用事例とデータ分析ハンズオン!

本コラムでは行政機関における生成AIの活用事例と生成AIの基本について解説したのち、手元で実行しやすい生成AIを用いたデータ分析のハンズオンを紹介したいと思います。

1. 行政における生成AIの活用事例

2022年11月にリリースされたChatGPTの登場から早くも3年が経過し、多くのビジネスシーンで生成AIの利活用が進んでいます。生成AIの用途は、「調査」や「生成」といった抽象的な粒度から分類可能であり、業界・職種横断的にさまざまな活用方法が日夜登場しています。

特定のドメインの事例として、行政機関における生成AIの活用方法を検証したデジタル庁の事例を紹介します。

出典:2023年度 デジタル庁・行政における生成AIの適切な利活用に向けた技術検証を実施しました(デジタル庁)

資料からの抜粋になりますが、行政におけるユースケースとして以下が想定され、検証されています。詳しくは資料をご覧ください。

出典:行政における生成AIの適切な利活用に向けた技術検証の環境整備(PDF/15,949KB)(2024年5月17日更新)(デジタル庁)

行政機関に特徴的な多くの書類のラベリングや、検索、要約などへの活用。特定の情報に基づいた問い合わせ窓口や答弁時の解答集の作成などが列挙されていることがわかります。

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2. 生成AI活用のポイント

生成AIの利活用にあたり大きな課題を2つ紹介します。

1つ目の課題は「情報の正確性」です。生成AIは少なくない頻度で誤った情報を出力することがあります。この現象はハルシネーション(幻覚)と呼ばれ、特にAIが学習していない内容について回答を求めた際によく起こります。この現象は生成AIの中核をなす技術である、「大規模言語モデル(LLM)」に由来する問題です。

※LLMはパラメーター数が多く、大規模(L)な言語モデル(LM)という意味です。言語モデル(LM)は統計的な確率モデルであり、学習したデータを参考に、文字列から次に来る文字を予測して、次に来る確率が高い文字を出力することができます。これが生成AIの基本的な原理であり、ハルシネーションの原因とも言えます。

2つ目の課題は「リアルタイム性」です。生成AIは学習に用いたデータをもとに回答を生成するため、当然学習に用いられていない情報は知り得ず、正しく回答することはできません。※2025年2月現在、ChatGPTに学習しているデータの更新日について尋ねたところ、2024年6月と回答されました。

現在では、ChatGPT Searchのようなリアルタイムな検索機能が提供され、新しい情報を逐次内部的に検索した上で回答を生成することができるようになったため利用上の課題感はやや和らいだと言えそうです。

では「データ分析」の用途として生成AIを利用する上で注意するべき事項は何でしょうか?

まず「情報の正確性」です。データ分析では数値を取り扱うため、分析要件に応じた数値の精緻な取り扱いが重要になります。ハルシネーションの観点では分析の実行ごとに出力結果が微妙に異なるようでは安定的な分析運用に用いることはできません。そのため、分析の際にはプロンプトによって分析要件の細かい指定が重要と考えられます。

次に「分析結果の評価」です。生成AIの出力を専門家(この場合は分析者)が評価する流れを整えて、分析結果に対してチェックを欠かさないことが分析運用の観点では重要です。

また、コードなどが出力結果に含まれる場合、そのコードによって実行される処理の流れを把握することは運用者にとって果たすべき責任と言えるでしょう。

以上の2つが生成AIの利活用における全体的な課題です。

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3. 生成AIを用いた分析の実施例を紹介

それでは、手元で生成AIを実行してデータ分析を実施してみます。

実施する環境は、環境の準備の手軽さを考慮してエクセルになります。※エクセル上でCopilotを用いて実施します。実行する内容も、エクセル上で完結する内容を想定しています。

3-1. 分析内容の説明

今回使用するデータは、厚生労働省が発行する都道府県・年次別の人口データになります。

このデータを使用して東京都の人口の変遷を時系列で可視化して考察することを分析の目的として設定します。

1. 今回使用するデータは1935-2019年までの都道府県別の人口が記録されている。

2. エクセルを開き、リボンから「Copilot」を選択します。

3. エクセルの右側にCopilotのウインドウが表示されます。「自動保存を有効にする」を選択※エクセルを保存するストレージの選択が求められます。ここではOneDriveを選択しました。

4. Copilotが使用できるようになりました。

3-2. 前処理の実施

まずデータを読み込み、データを使いやすいように整形します。

1. データの上部にファイルの説明があります。このままでは集計できないので行を削除します。

2. Copilotに削除するようにプロンプトを書いたところ「変更を加えることができない」旨が表示され、具体的な手順のみが表示されました。手順自体は正確でした。

3. 次に都道府県の名称の先頭についている数値を削除します。これもCopilotに削除するようにプロンプトを書いたところ、自動で修正はされず手順のみが示されました。

4. 次に表を転置します。上記と同様、Copilotに問い合わせたところ手順のみが示されました。

3-3. 集計の実施

次に、列同士の計算を行います。試しに、全国の人口のうち、東京の人口が占める割合を計算します。(東京の人口列を全国の人口列で割り算をします)

1. データの操作をCopilotに問い合わせたところ、具体的な数式と計算結果の列が表示されました。

2. 同時に「列の挿入」というボタンも表示され、選択するとAX列に自動で追加されました。

データの前処理段階においてCopilotに細かいデータの処理を問い合わせる場合は数式のみの提示でしたが、列の操作では操作の自動化を行えるようです。

3-4. グラフの作成

次に、東京都の人口の時系列グラフを作成します。

1. Copilotに「データの分析情報を表示する」というポップアップが自動で表示され、選択するとグラフの提案を作成してくれます。

2. 次に具体的に「年次別の東京都の人口のグラフを作成してください」という問い合わせを行うと、イメージ通りのグラフを自動で作成できました。

3. 上記の操作で集計表とグラフが貼り付けられた別シートが自動で作成されました。

また、特定の列同士の比較もCopilotを用いることでグラフの作成も込みで実行してくれました。一方で、軸が簡易的すぎる印象を受けます。実際には貼り付けたのち、修正を加える必要がありました。

3-5. 出力結果の成形と言語化

最後に出力結果のグラフの形を整え、考察を言語化できるかを検証します。

1. 前節で出力したグラフの形の修正は、自動処理はできませんでした。

2. Copilotでグラフの解説を求めたところ、読み取れない旨の内容が出力されました。

3. 一方で分析を直接指定して、解説を求めたところ問題なく実行されました。例えば、「東京の人口の変遷を分析して、傾向を考察してください。」という問い合わせをしたところ、外れ値を含めた考察が出力されました。

上記の検証からCopilotでは逐次作成したグラフについて、追加の説明は難しい印象を受けました。実施したい分析はグラフの種類から、詳細な考察の内容まで一度の入力で実行するのが良いと考えられます。

簡単ではありますがエクセルとCopilotを用いたデータ分析の実例を紹介しました。手軽に試せる機能がエクセルをはじめ、すでにMicrosoftには実装されていますので、Copilotのアイコンが表示されている方はぜひ試してみてください。

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4. 自治体向け生成AIソリューションの導入ならNTT東日本にお任せください

NTT東日本では自治体向けに生成AIソリューションを提供しております。自治体の皆さまの課題を確認させていただき、コンサルティングから、導入〜運用まで幅広いソリューションをご提供します。支援内容には安心してご利用いただける生成AI環境提供や、生成AIの活用を促進するためのプロンプトのテンプレートなどが含まれています。その他、生成AIの活用コンサルティングやユースケースの創出の支援も行っています。

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5. まとめ

本コラムでは、行政機関の生成AI活用について、デジタル庁の検証事例を紹介しました。行政機関では多くの書類のラベリングや、検索、要約などへの活用が検討されており、特定の情報に基づいた問い合わせ窓口や答弁時の解答集の作成などが提案されています。行政機関と生成AIの相性は非常に良く、多くの分野で活用が期待されています。

生成AIをデータ分析に活用するハンズオンとして、エクセルと生成AI(Copilot)を用いた分析の実例を紹介しました。

エクセルに実装されているCopilotに特徴的な傾向として以下が挙げられます。

  • セル単位のデータの編集や、転置はプロンプトから自動実行ができないようです
  • 列単位での集計などは、プロンプトから自動実行することができました
  • 会話形式より、一度で分析の問い合わせを行う方がより良い回答が期待できそうです

本コラムが生成AIの活用を推進する上で一助になれば幸いです。

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