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画像生成AIを活用したマーケティングにおける注意点について解説!

こんにちは!NTT東日本のトガワです。

生成AIブームが起きて約2年が経ち、AI技術の進化や発展のスピードは著しく、より皆さんの身近なものになってきています。文章を生成するだけでなく、画像や動画、音声なども生成することができ、仕事や日々の生活にも活用が進んでいくことでしょう。

仕事に関して言えば、マーケティングにおいて画像生成AIの活用が急速に普及していますが、その一方で著作権などの知的財産権等に関する問題も増えています。

この記事では、画像生成AIを使ったマーケティングにおける著作権の基本知識と具体的なガイドラインを紹介します。

各種生成AIの活用についてのご相談について、NTT東日本のDXアドバイザーがお応えします。お気軽にお問い合わせください。

1. 画像生成AIとは

画像生成AIとは、人工知能を用いて新しい画像を生成する技術です。機械学習の一分野である深層学習を利用して、既存の画像データから特徴を学習し、それらを組み合わせてオリジナルの画像を作り出します。

例えば、風景や人物、動物などの画像を入力して、それらを別のスタイルや雰囲気に変換したり、まったく新しい画像を生成したりすることが可能です。

では、マーケティング分野で画像生成AIを活用するメリットはどのようなものがあるのでしょうか。下記表にまとめてみました。

~マーケティング分野で画像生成AIを活用するメリット~

メリット 従来の方法 画像生成AI
時間の節約 プロのデザイナーが手作業で画像を作成するため、時間がかかる。 簡単な操作で高品質な画像を生成でき、修正や再作成の手間を削減
コストの削減 プロのデザイナーに依頼するため、作成費用および画像使用料が発生 比較的安価な料金で無制限に画像を生成でき、著作権の問題を回避するために画像の使用料を支払う必要もない。
創造性の拡大 デザイナーのスキルやセンスに依存するため、予想外の画像を生成することは難しい。 既存の画像データから予想できないような画像を生成でき、マーケティングコンテンツに斬新さや個性を加えることができる
また、画像生成AIの提供する多様な画像の中から、自分の目的に合ったものを選択することで、自分のセンスや感性を磨くことができる

これだけ見ると、画像生成AIは多くのメリットがあるため、すぐにでも活用しようと思われるかもしれません。

ただし、生成した画像が著作権侵害となる場合もあるため注意が必要です!

そこで、著作権について次のセクションで確認したいと思います。

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2. 著作権の基本知識

2-1. 著作権法とは

著作権法とはそもそもどういったものか、改めて調べてみました。

(目的)

第一条 この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。

著作者の権利を保護することだけでなく、著作物等の公正・円滑な利用によって文化の発展に寄与することも目的としており、双方のバランスを取ることが重要だと考えられています。

では、その著作権法が保護する著作物とは何かというと、

思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

引用:文化審議会 著作権分科会 法制度小委員会「AIと著作権に関する考え方について」

であり、これを4つのポイントに区切って著作物の判断をしていきます。

① 思想または感情を

② 創作的に

③ 表現したものであつて、

④ 文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの

上記①~④にすべて当てはまるものについては著作法の保護対象となるために、複製や公衆送信等の利用行為には原則として著作権者の許諾が必要となります。

上記①~④に含まれない下記については著作権法の保護対象に含まれないため、許諾なく自由に利用可能となります。

  • 単なるデータ(事実)
  • ありふれた表現
  • 表現でないアイデア(作風・画風)

2-2. 著作権を侵害したらどうなるか

著作権侵害をした場合、「差止請求(侵害行為の停止・予防措置の請求)」「損害賠償請求」「刑事罰※」を受ける可能性があります。

※10年以下の懲役、もしくは1000万円以下の罰金(法人は3億円以下の罰金)、またはその両方が課せられることもあります。

企業の場合には罰金の金額も大きく、企業イメージの低下にもつながりかねないため、著作権侵害となっていないか慎重に検討することが必要です。

2-3. 画像生成AIと著作権の関係

では、マーケティングにおいて画像生成AIと著作権の関係はどうなっているのでしょうか。

今回は、既存の画像生成AIサービスを利用して広告コンテンツを制作するとします。

この場合、生成した画像について著作権侵害になっていないか確認するポイントは2つとされています。(AI生成物でも、従来の著作権侵害判断方法と基本的には同様です。)

~著作権侵害になっていないか確認するポイント~

① 類似性がないか(他人の著作物と同一・類似していないか)

生成AIでは出力結果を完全にコントロールできない場合もあるため、類似性の確認においては既存の著作物に意図せず類似してしまう可能性に留意する必要があります。

② 依拠性がないか(他人の著作物を参考にして作成していないか)

AI生成物の依拠性判断においては生成AIの利用者の認識に関わらず、生成AIの開発・学習段階で当該著作物が学習されていれば通常は依拠性が認められることになりますので注意が必要です。

※一方、「学習用データに含まれる著作物の創作的表現の部分が利用されていないと法的に評価されるような場合は、依拠性が無いと判断されることもあり得る」と考えられることもあります。

上記の①②両方が認められる場合に著作権侵害になると従来の判例や裁判所では言われています。

各種生成AIの活用についてのご相談について、NTT東日本のDXアドバイザーがお応えします。お気軽にお問い合わせください。

3. 画像生成AIで著作権を侵害しないための対策

では画像生成AIを使う上でどのような対策をすればよいのでしょうか。

生成AIを利用するそれぞれの段階に沿って考えられる対策が分かれています。段階に応じて各対策を検討しましょう。

3-1. 画像生成AIサービスを選択する段階

  • 利用を考えている生成AIサービスの仕様や利用規約を確認し、学習データの内容や知的財産権の保護のためのフィルタリング措置の有無を確認すること。
  • 学習データに「著作権の許諾を得たもの」および「著作権の保護期間が過ぎたデータ」のみを使用した生成AIサービスを利用すること。
  • 許諾を得ていない、特化型(特定の作者、作品の学習、出力に特化している)生成AIの利用を避けること。

3-2. プロンプト(指示文)入力段階

  • 特定の著作物と関連づくような内容のプロンプトを入力しないこと。また、画像入力の場合も他人の著作物を入力しないこと。
    NG例)△△(アニメ名など)の○○(キャラクター名)が電柱を登っているイラストを作ってください。
  • 自ら創作した画像を読み込ませるなど、自分が著作権を有する著作物をプロンプトとして入力する。
  • 他人の著作物と類似した生成物が予想外に出力されないよう、可能な限り具体的なプロンプトを入力する。

3-3. AI生成物の利用段階

他人の著作物と類似・同一と考えられるAI生成物(またはそれを編集・加工したもの)については下記の対応を検討しましょう。

  • 利用すること自体を避ける
  • そのまま利用する場合は著作権者から許諾を得た上で利用する
  • 他人の著作物の創作的表現と同一・類似の部分について、類似しないように再度作成する

各種生成AIの活用についてのご相談について、NTT東日本のDXアドバイザーがお応えします。お気軽にお問い合わせください。

4. まとめ

画像生成AIによるマーケティングへの活用だけでなく、文章、動画、音声などさまざまなものが手軽に、誰でも生成できるようになっています。誰でも斬新なコンテンツ、個性的なコンテンツを増やしていけるという一方で、著作権法などを理解した上で活用していくことが大切です。

また、生成AIの技術進歩によっては著作権法を含む関係する法令の解釈も見直されていくと予想されます。生成AIの技術に注目しがちですが、関係する法令についても各々が適宜調べていくことが重要だと思われます。

※本記事は下記を参考にまとめています。

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