2026年7月1日お申し込み分よりフレッツ光、ひかり電話、光回線電話の各種オプションサービスなど基本工事費の設定があるサービスの基本工事費を改定いたします。別ウィンドウで開きます
2026年7月1日お申し込み分よりフレッツ光、ひかり電話、光回線電話の各種オプションサービスなど基本工事費の設定があるサービスの基本工事費を改定いたします。
【マイページ利用者さま限定】
あなたの声が、NTT東日本のオリジナル記事になる。

明日から使えるビジネスのヒント帖

powered by 日経BP Insight
NTT東日本の法人のお客さまマイページ会員さま限定で、ビジネスのヒントになるオリジナル記事を無料でご覧いただけます。
みなさまからご回答いただいた、自社の課題や興味関心分野に関するアンケートをもとに、経営・人材・マーケティング・業界のトレンドなど、実務に活かせる情報や、ビジネスパーソンや経営者のみなさまに向けた実践的なコンテンツをお届けします。
powered by 日経BP Insight
  • 従業員エンゲージメント

「組織への愛着を伴った働きがい」が人材を引き付ける

規模の大小を問わず、多くの企業で人材不足が深刻化しています。(独)労働政策研究・研修機構の雇用人員判断D.I.によると、2025年6月の見通しでは、人手不足の度合いを示す指数(マイナスの値が大きいほど深刻)が、中堅企業ではマイナス40%ポイント、中小企業でマイナス44%ポイントと発表されています。

2020年のコロナ禍以降、人手不足は悪化の一途を辿っており、NTT東日本の法人のお客さまマイページ利用者の中でも人材不足に悩んでいる方も多いかと思います。実際、マイページ利用者を対象としたアンケートでも、「人材確保」に関する記事に対する関心は非常に高く、多くの方が課題意識を持っていることがわかりました。

こうした中で注目されているのが、従業員の定着率や生産性の向上につながる「エンゲージメント」の強化です。エンゲージメントとは「組織への愛着を伴った働きがい」のことを指します。エンゲージメントを高めるためには何をすることが必要なのでしょうか。

これまで500社以上に対してエンゲージメント向上の取り組みを支援してきたヒューマンブレークスルー社長の志田貴史氏に、エンゲージメント向上へのアプローチについて聞きました。

  • #中小企業
  • #SOHO
  • #経営
  • #採用

人材不足を背景に、
高まるエンゲージメントへの関心

現在、多くの企業が人材不足に悩んでいます。こうした中で、「人」の重要性が改めて注目されています。

大企業を中心に、人的資本経営への関心が高まっています。一方、中小企業では人手不足による経営破綻という話も増えていますし、経営者からは「人繰りがつかない」といった声を聞くことも多い。企業規模を問わず、人材の獲得や定着率の向上といったテーマに対して、経営者はより真剣に向き合うようになってきたと感じます。

そうした中で、従業員エンゲージメントが注目されています。

エンゲージメント調査、その向上施策を実施する大企業は増えています。同様の調査を行う中小企業は少数ですが、エンゲージメントに対する関心は少しずつ高まっているように感じます。

従業員エンゲージメントとは何か。志田さんは経営者の方に対して、どのように説明していますか。

いろいろな定義がありうると思いますが、私は「組織への愛着を伴った働きがい」といっています。愛着だけでも、働きがいだけでもうまく機能しません。両方が揃うことによって、生産性向上や定着率向上、採用力強化を進めることができる。その先に、売上・利益の成長も期待できるでしょう。

労働力人口が減少傾向をたどる中で、人材不足は今後も続くと考えられます。人材をいかに惹きつけ、獲得するか。そして、入社した人材が働きがいを感じ、長く働けるような職場をいかに整備するかが企業の将来を左右します。かつての企業と従業員が「相互拘束」の関係にあったとすれば、現在は「相互選択」の時代。従業員に選ばれるような企業でなければ、将来の成長はあまり期待できないでしょう。

企業がエンゲージメント向上に取り組む上で、まず何を行うべきでしょうか。

まずは、現状を把握すること。従業員を対象にしたエンゲージメント調査です。調査によって課題を洗い出し、優先度をつけて対策を実施するのです。調査を実施する際には、コンサルティング会社などに相談するケースが多いのですが、中小企業ではややハードルが高いかもしれません。その場合、組織への愛着や働きがい、経営理念の浸透度などについて自社でアンケート調査を行ってもいい。おおよその傾向はつかめると思います。

<アンケート調査の質問例>

理念 会社の理念・方針に共感し、これらを意識し仕事ができているか?
上司のマネジメント 上司との関係は良好で、コミュニケーションも円滑か?
つながり 職場で承認されている実感を持ち、仕事ができているか?
自律 仕事の中で自分の考えや思いを発信できる機会はあるか?
成長 仕事を通じて自己成長を感じたり、将来の成長期待感があるか?

重要なのは「経営理念、ビジョン、価値観・行動指針」

従業員エンゲージメント向上への施策として、特に重視すべきものはありますでしょうか。

経営理念の浸透です。自分たちの会社が何のためにあるのかという存在意義、パーパスと言い換えてもいい。存在意義が曖昧では、従業員も何のために働いているのかという理由を見失いがちです。働きがいを実感することも難しいでしょう。中小企業の場合、先代や先々代が創業した企業の後継者が経営を担っているケースも多い。創業時の理念が、時代の変化とともに古びてしまうこともあります。自社の存在意義、社会に対してどんな価値を提供したいのかを、改めて深く考えることをお勧めします。最近はパーパスを再定義する大企業も少なくありません。環境が変化し続けている以上、それはどんな企業にもありうることです。

新しい経営理念をつくったとしても、それを社内に浸透させるのは大変そうです。

従業員が日々の仕事と経営理念との間に距離を感じれば、その浸透は容易ではありません。そこで、自社が将来「ありたい姿」を示すビジョン、価値観・行動指針の策定が効果的です。理念とビジョン、価値観・行動指針を整合的にまとめ、言語化する。例えば、価値観・行動指針をつくる際に、従業員を巻き込み、その策定するプロセスに参加してもらうと効果的です。自分事という感覚が強まり、理念への理解度が増していきます。

理念浸透とエンゲージメント向上の関係を段階的に示したステップ図(全5段階)
理念浸透とエンゲージメント向上の関係を段階的に示したステップ図(全5段階)

経営理念のほか、重要なポイントがあれば教えてください。

1つは上司による部下のマネジメントです。古い価値観を大事にする上司と、その価値観についていけないと感じる部下という構図はよく見かけます。部下は上司の仕事ぶりをリスペクトしつつ、コミュニケーションや関係づくりの点では不満を持っている。そんなケースが少なくありません。ときには、上司のハラスメント的な言動が部下のエンゲージメントを低下させることもあります。部課長クラスの部下との接し方に、経営者は気を配る必要があります。もう1つは仕事内容そのものです。成長を実感できるかどうか、やりがいを持てるかどうかが重要です。

10%超だった離職率が
1%台になった企業も

エンゲージメントを高める上での注意点、あるいは落とし穴のようなものはありますか。

よく見かけるのは、エンゲージメント調査だけを実施して、その後は何もしないというケース。調査は課題を見つけ、それを改善するために行うもの。施策が伴わなければ意味がありませんし、アンケート調査に答えた従業員も不満を抱くでしょう。

給与アップや休暇の拡充などは重要な施策ですが、エンゲージメントを高める上での効果は高いとはいえません。本質的な施策は経営理念の浸透です。経営理念づくりに当たっては、従業員の納得を得られるようなものにするため、経営者は最大限のエネルギーを傾ける必要があります。

エンゲージメントを高めた成功事例についてご紹介ください。

従業員数十人の設備工事会社の例です。以前は離職率が10%を超え、主力メンバーである中堅社員や期待していた若手社員が次々に辞めてしまうという状態でした。対策として賃上げなどを行いましたが、あまり効果はなかったそうです。当社は相談を受けて、経営理念の見直し、ビジョンと価値観・行動指針の策定などを支援しました。例えば、理念を体現した従業員の表彰や人事評価制度の見直しも実施しました。様々な施策を組み合わせた結果、社内の雰囲気は明るくなり、1年で離職率は1%台にまで改善、業績も着実に向上しています。詳細は拙書『中小企業も実践できる従業員エンゲージメントの教科書』(中央経済社)で詳しく解説しています。

中小企業が手軽に始められるような施策があれば教えてください。

例えば、挨拶です。日常の挨拶ができている会社とそうでない会社ではエンゲージメントにも差が出ます。まずは、社長、リーダー層が挨拶を意識してみてはどうでしょうか。また、上司が部下などの報告を受けた後、「分かった」というだけでなく、「分かった。ありがとう」というクセをつけるだけでもポジティブな変化が生れます。褒め合う文化づくりも有効です。仕事をサポートしてもらった時や相談に乗ってもらった時などに感謝の意味を込めて「サンキューカード」を送り合う取り組みなども、エンゲージメント向上に役立つでしょう。こうした施策は、明日からでも実践できるはず。経営者にはぜひ第一歩を踏み出してもらいたい。そして、経営理念の浸透という本質にこだわり続けてもらいたいと思います。

株式会社ヒューマンブレークスルー 代表取締役
志田 貴史

1972年生まれ、福岡大学法学部卒業後、大手メーカーやコンサルで実績を重ね、2007年に株式会社ヒューマンブレークスルー設立。ES・エンゲージメント診断では10万人を超える働く人の声を分析、このデータを元にコンサルティング・講演・人材育成を展開、著書も多数。