2021年08月09日
クラウド型カメラ
- 業務負荷軽減
- カメラ映像
介護スタッフの強い味方
クラウド型カメラで向上する高齢者介護施設のサービス

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- 高齢者介護施設は慢性的なスタッフの人材不足、猫の手も借りたい状況
- クラウド型カメラの設置で見守りの“目”が増え、スタッフの業務負荷が軽減
- クラウドなら導入のハードルが低い。映像データはクラウドサーバーに保存される
超高齢社会に突入した日本では、高齢者のための介護施設がどんどん増えています。入居者は増加する一方で、介護施設の経営は慢性的な人手不足に悩まされています。
ギリギリの人数で運営していると対面や目視の対応に限界があり、サービスレベルを高めることが困難。新型コロナウイルス対応の昨今ではなおさらです。
そうした状況で、スタッフの負担を減らし、サービス向上につなげられるソリューションとしてクラウド型カメラが注目されています。
ここではある架空の高齢者介護施設を例に、クラウド型カメラの活用例を紹介します。
人材不足が続く高齢者介護施設、拡充はしたいが……
介護付き有料老人ホーム白つばきの里(仮称)で働く介護士のリーダー阿部山麗子(51歳・仮名)さんは、不安を抱えていました。新施設のオープンです。
入居希望者が増えたことから白つばきの里の運営会社は隣接する土地を購入して、増床で入居者増に対応しようとしています。何人かの介護スタッフが、新施設のオープニングスタッフとして異動することになり、阿部山さんは両施設の兼任になりました。
「新施設でリーダーを任されるのは誇らしいことだけど、今の入居者さんのお世話も並行して続けていくとなると負担が大きいわ」
阿部山さんは仲間のスタッフにこうこぼします。高齢者介護施設では人材不足が慢性化していて、求人募集しても思うようにスタッフが集まらないのです。その上、新型コロナウイルスの影響もあり、子どもがいるスタッフは休校などで思うようにシフトに入ってもらえません。経験豊富な阿部山さんは、新施設のリーダー介護士としてだけでなく、既存の施設にも目を配らなければならないのです。
オープンを間近に控え、阿部山さんの悩みは深まっていきます。
そんなとき、最近は厳しい顔つきが多くなった施設長の海本空彦(47歳・仮名)さんが、めずらしく明るい表情で阿部山さんに話しかけてきました。
「新施設のオープンで阿部山さんの負担がとても多くなることがずっと気にかかっていたんだ。それでこの間、うちの電話やインターネットなどを任せている会社の担当者に、オープン後のスタッフの負担増加の悩みを打ち明けたんだ。そうしたら、設置したカメラの映像をインターネット経由で見られるクラウド型カメラというのが役に立つかもしれないと言うんだよ。新施設にいる阿部山さんの手元で、今までの施設の様子も見られたら、だいぶ負担が軽くなるんじゃないかな」
海本さんの提案に、阿部山さんは「それは良さそうですね」と即答しました。隣の施設の様子をリアルタイムの映像で見られるという話を聞いて、負担が減りそうだと直感的に思ったのです。
タブレットからいつでも入居者の様子が見える
海本施設長は運営会社にクラウド型カメラの利用を提案し、会社も「そういう事情ならチャレンジしてみるといいよ」と導入を認めてくれました。
導入するのはクラウド型カメラのサービスで、インターネットの利用料のほか毎月の利用料とカメラのレンタル料だけで運用でき、手頃な費用で導入が可能です。会社としても設備投資がわずかであること、ランニングコストだけで効果の検証ができることなどから、すんなりと導入にゴーサインを出してくれたのです。
クラウド型カメラは、既存施設と新施設のエントランス、食堂、廊下など、共用部分にそれぞれ設置しました。録画した映像はクラウド上に保存されるため、パソコンやタブレット、スマホなどインターネットにつながる端末さえあれば、Webブラウザを通じてどこからでもリアルタイムのカメラ映像や、一定時間であればさかのぼった過去の録画映像を見られるのです。
阿部山さんの施設では、新旧両施設のスタッフ詰め所と施設長のパソコンでクラウド型カメラの映像を見られるようにしました。さらに、両施設でシフトに入る阿部山さんにはタブレットが用意され、Wi-Fi経由でいつでも両方の施設の映像を確認できるようにしてくれたのです。

新施設のオープン直前に、クラウド型カメラの設置工事が行われ運用が始まりました。
タブレットを手にした阿部山さん、「新施設に来ていても、元の施設の様子が手に取るように分かるわ。あ、○○さん、廊下の手すりにつかまって歩いているけど膝の調子が悪いのかしら」と様子をチェック。クラウド型カメラの映像を見てすぐに、スタッフへ指示を出せます。海本施設長も、自席から両施設の様子を常に確認でき、万一予期せぬ出来事が発生したとしてもこれまでより早い対応ができそうだと使い勝手に満足そうです。
リアルタイムでも録画でも映像が確認できる利便性
慌ただしく迎えた新施設のオープンからしばらくたち、新旧両施設とも落ち着きを見せてきました。ちょうど通りかかった阿部山さんに、海本施設長が尋ねます。
「お疲れさま。少し落ち着いてきたようだけれど、仕事はどう?」
阿部山さんは新施設オープンの不安から解放され、元の明るい笑顔に戻り、こう返しました。
「大変ですけれど、無理なく両方の施設の様子を見られていますよ。そう、施設長が提案してくれたカメラ、あれがあるのでタブレットから隣の施設の様子も確認できて、行ったり来たりする機会が減って助かっています。スタッフから質問があったときも、実際の映像を見ながら『ここをこうやって』とか『○○さんのこういう動きに気をつけて』とか、具体的に指示を出したり、答えたりできているんです。導入していただきありがとうございます」
目視や対面はもちろん大切ですが、クラウド型カメラがあることで入居者の状況を確認できる範囲がぐんと広がり、入居者を見守る目が増えます。スタッフの業務の効率化や作業負荷の軽減にもクラウド型カメラは貢献しているのです。さらに、入居者が廊下などで転倒してしまったようなときも、いち早く気付けるようになり、安全面の向上にも寄与しています。

クラウド型カメラとタブレットで入居者を見守る目が増えた
プライバシーの観点から、念のため入居者やその家族にはカメラ設置を説明してあります。映像は一定期間の記録が残る設定にしたため、スタッフと入居者の間の思い違いや入居者同士のトラブルといったちょっとした問題が起こったときにも、映像と音声で事後に状況を確認できるメリットも実感しています。当初、スタッフの中には「監視されているようで苦手」といった声もありましたが、今では皆が当たり前のようにカメラの映像を活用しています。
クラウド型カメラで介護施設の持続可能性を高める
クラウド型カメラは、一般的な専用の監視カメラシステムに比べて、導入のハードルが格段に低いことが特徴のサービスです。手頃な初期費用で小型のカメラを設置し、専用のコンソールなどを用意しなくてもWi-Fiとインターネットの環境があればパソコンやタブレットからすぐに映像を確認できます。

高齢者介護施設では、対面や目視が求められる業務が大半です。そうした業務を一部であっても、クラウド型カメラの映像をパソコンやタブレットで確認できるようにすれば、業務の効率化を進められます。根本的な人手不足の解消は簡単ではないだけに、こうした既存の業務を効率化するソリューションは、高齢者介護施設の持続可能性を高めることになります。ひいては利用者である高齢者の幸せな時間を生み出すことにもつながるでしょう。