VALUE VOICE

東京都港区立青山小学校 曽根 節子 校長

vol.33
東京都港区立青山小学校

曽根 節子 校長

学校改革の一環として、行政・地域や企業との連携によるICT活用の実証研究プロジェクトに参加し、今やICT先進校として脚光を浴びるまでになった青山小学校(東京都港区)。そのリーダーシップをとってきた曽根節子校長に、取り組み内容や成功の要因などを伺いました。

「教員同士が学び合ってもいい」という雰囲気づくりを

学校改革の一環としてICT活用に挑み、成果を挙げられたわけですが、取り組む上で重視したことを教えてください。

曽根

曽根 節子 校長 曽根 節子 校長

まず何より、教職員の理解を得ることが第一だと考えました。「行政が応援の手を差し伸べてくれていることを、子どもを変えるチャンスと受け止めてチャレンジしたい」と理解を求め、ICT活用の意義と期待される成果について周知しました。また、先ほど言ったようにPTAに反対の声もあったので、保護者全体会を開いてきちんと説明しました。その際、支援してくださる行政の教育委員会や、企業などの方々にもご臨席いただき、「連携して行うので安心だ」ということを強調しました。そうして保護者に支援のお願いをしたところ、ICT関連の仕事をしている方など協力者の人材リストもつくることもできました。

また、家庭や地域との信頼関係を固いものにするためには、地域行事などに積極的に参加し、教職員の顔と人間性を覚えてもらうことも大事だと考えました。私自身がそれを率先して実践し、成果も出ています。当初、ほとんど参加していなかった教職員も、今では必ず何らかの行事に顔を出すようになりました。そうして築かれた家庭や地域との信頼関係は、行政に何かを要請したりする際にも、後押ししてくれる大きな力になっています。

学校での実際的なICT活用に当たっては、どんな工夫をされましたか。

曽根

ICTスキルというものは、一度や二度、研修を受けたからといって身に付くものではありません。実際に使いながら教えてもらって初めて身に付くものです。そこで、「校内OJT体制」の一環として、毎日の会議の時間のうち週に一度、ICTに関して困っていることや覚えたいことを研修する時間を取ることにしました。スキルのある教員が自主的に講師になったり、外部から講師を呼んだりして行い、「できなくても恥ずかしくない」「教員同士が学び合ってもいい」という雰囲気づくりを大切にしてきました。私もまだまだ未熟ですから、若手教員を「師匠」と呼んで教えてもらっているんですよ。

また、外部講師をコーディネートするのは校長の役目と自覚し、私は人材情報を常にキャッチするようアンテナを張っています。知り合えた企業の方から情報を聞き出すなど積極的にアプローチして、機器の使い方やさまざまな教育コンテンツの紹介をしてもらう研修などの仲立ちをしています。

新しいものが入ってきても教育の目的は変わらない

これからICTを導入し活用しようとしている学校に対して、何を大切にすべきか、経験を踏まえたアドバイスをお願いします。

曽根

「ICTが整備されたらそれでよし、それでめでたし」ではなく、そのICTを使って子どもたちにどんな力をつけてあげようかと考えることが重要です。また、難しくてできないと拒否しては駄目。本校が実証したように、最初はできないのが当たり前なのだから、恥ずかしがっていないで学び合い高め合う、そういう雰囲気づくりをしていってほしいと思います。本校がICTを活用する上で一番大事にしているのは、「ICTは単なる道具なのだ」という意識です。その道具をいかに上手に子どもたちの学力向上のために使っていくか、子どもたちの豊かな心につなげていくか、を常に考えています。子どもたちのためにあれこれ考えるのはとても楽しい。そうした先生のワクワク感が、教育には何よりも大切なのではないでしょうか。

曽根 節子 校長

本校では、授業でICTの活用スキルを教えようと思っていません。スキルなんて、私がそうであるように、必ず少しずつ身に付くものです。それよりもICT を使ってどう自分の考えをまとめるか、どう相手に伝えるかを、“コミュニケーションする人間”として生かしていく方法を教えたい。つまり、ICTの持っている良さを子どもに伝えていきたいのです。そのためには、情報モラル教育も含めてきちんと教育できるよう、まず私たち教師自身がICTをどう活用し、何に気をつけながら使わなくてはならないかを学び、考えた上で、子どもに教えていく必要があると考えています。

青山小学校の場合、恵まれた外的条件をうまく生かしたのは、校長先生をはじめ皆さんのやる気だったように思います。他の学校でも、やる気さえあれば数年で変われるのでしょうか。

曽根

変われます。子どものためにどうしてあげたいかと考えるのが、教師の本質です。やる気があって、ICTのような素敵な宝物を目の前にすれば、「これを使ったら何ができるだろう」と興味・関心がわくはずです。使い方が分からなかったら、お互いに聞き合えばいい。教員がそういう柔軟な姿勢を持つことで、学ぶことを生涯楽しめる子どもが育つのではないでしょうか。だから、まず教員自身が、「ICTの勉強」を拒んだりせず、学ぶことを楽しんでほしい。古くて普遍的な良いものも大切にしながら、新しいものの良さを自在に取り入れて、子どもをどう生かしてあげるかを考える。新しいものが入ってきても、教育の目的は変わりません。

その結果、先生自身が「ICTを使えるようになった」と思えば、教壇に立つときの顔色が変わる。目がキラキラしてくる。その姿は、必ず子どもにも響きます。旧態依然として自信たっぷりに授業をするだけでは、子どもは、知識理解面ですごい先生だと思っても、それで終わりなんです。先生が自分を広げていくことで、子どもにも先生の良さが伝わっていく−−そういう考えに基づいて、数年間でもICTを使い続ければ、学校はきっと変わっていきます。

曽根 節子(そね せつこ)

東京都港区立青山小学校校長。
2007年4月から現職。校長歴4年目。

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