VALUE VOICE vol.02 Chapter2

多摩美術大学情報デザイン学科・須永剛司 教授
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多摩美術大学情報デザイン学科
須永剛司 教授
『情報デザイン』分野の先駆者・研究者として、多摩美術大学情報デザイン学科で教鞭を取る須永剛司教授。
IT社会になりデザインはどう変わったのか。今、私たちの身の回りで起きていることをひも解きながら、その教育と研究の視点と、教授ご自信がITを使った授業をどう”デザイン”されているかもお聞きしました。
私たちの対話が「明日・渋谷・昼頃」という形になってしまっている
情報デザイン的見地から鑑みて、最先端の課題とは何か、携帯電話を例にとって教えてください。
須永

私たち情報デザイナーが、携帯電話をデザインすることを事例に考えてみましょうか。携帯電話はたしかに便利ですが、今の携帯はコミュニケーションの「質」という観点から見ると、すばらしい道具になっているとは思えないんです。まだまだ生まれたばかりの道具であって、完成形とはいえない。もっともっと進化できるいい道具なはずだと。単に「使いにくい」という問題があるとしたら、もちろんそれは情報デザイナーたちが解決すべき課題ですが、それ以前に、その技術は大きな社会的問題を私たちにもたらしていると私は考えています。
つまり、携帯電話を持った人間は、待ち合わせの仕方を変えてしまった。最近の会話を聞いていると、「じゃ明日、渋谷で、昼に」、それだけで誰も悩まずに別れていく。それで翌日渋谷に行ったら今度は携帯で「今、どこ?」となる。このたった5つのフレーズを結び合わせれば、すべて人が会える。私たちの関係がそういう対話で成立するようになってしまっているんです。

それは一見便利だけれども、そういう「約束」の形が渋谷での待ち合わせ以外の状況にも波及していないだろうか?そういうコミュニケーションの取り方が当たり前の世の中にしていっていいんだろうか、という疑問をもつ。
僕自身も、たとえば誰かと待ち合わせをして、電車でその場所へと向かいながら、行き先の詳しい住所と連絡先が全て大学のパソコンの中、その約束が紙でやりとりされてなかったことに気づいて途方に暮れるという経験があります。こういう状況は多くの人が体験していると思うし、困っているはずだ。でも、ほとんどの人は自分のミスだと考えていて、コミュニケーションの道具がもたらしている問題だと捉えている人は少ないと思う。私たちがITの落とし穴に入っちゃってるんです。そんな現状には大きなクエスチョンマークをつけなければいけないと思う。

コミュニケーションを取るための道具であるはずの電子メールや携帯電話が、私たちの情報活動を変革し、ところどころで小さなコミュニケーション不全を引き起こしているんですから。そこから、人間と携帯の知的関わり合いは、実は、人間と携帯とその向こう側にいる人間との関わり合いなんだということがわかる。今や私たちの仕事は、単に道具を使いやすくキレイにつくるということに、とどまってはいられない。今、情報デザインの専門が捉えなければならないのは“キレイな携帯電話”ではなくて“キレイな約束の仕方”。つまり、ソーシャルデザイン、つまり社会の中の情報の流れの設計に注目することなんです。

須永剛司(すなが たけし)

多摩美術大学美術学部情報デザイン学科教授。日本デザイン学会会員。日本認知科学会会員。ヒューマンインターフェース学会会員。多摩美術大学デザイン科立体デザイン専攻卒。筑波大学大学院芸術研究科修士修了、学術博士(筑波大学)。イリノイ工科大学研究員、スタンフォード大学客員教授を経て現在に至る。著書に『デザインが情報と出会った』(共書、「情報デザイン」グラフィック社)などがある。

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