携帯電話・通信の仕組みと歴史

今や生活必需品となった携帯電話。毎日当たり前のように利用していますが、この携帯電話、どのようにして通信を実現しているのでしょうか?目に見えない無線を使うだけに、携帯電話のつながる仕組みは、案外知られていないのではないでしょうか。今回は、携帯電話の通信の仕組みと進化の歴史について紹介します。

実は有線の携帯電話!?

携帯電話の最大の利点は、「いつでも、どこでも通話できる」ことでしょう。これが実現できているのは、携帯電話に電話線がないから。電話線がないからこそ、どこへでも持ち歩いて、好きなときに通話することができるのです。とはいえ、もちろん、通話をしているのですから、電話線の役割をしているものがないわけではありません。携帯電話は、電波による「目に見えない電話線」を利用しているのです。目には見えなくとも、携帯電話のアンテナが立たない「圏外」表示を見て、「電波が届かないこと」を体感したことは、誰でも一度や二度はあるのではないでしょうか。このように「目に見えない電話線」を利用している携帯電話ですが、実は、通常の電話と同様、有線のネットワークが通話を支えていることをご存知でしたでしょうか?

たとえば、北海道に住んでいるAさんと沖縄に住んでいるBさんが、携帯電話で通話しているとします。この場合、Aさんの携帯電話とBさんの携帯電話はどのようにつながって通話しているのでしょうか?
ついイメージしがちなのが、Aさんの携帯電話から発せられた電波が、日本の上空を横断して、直接Bさんの携帯電話に届いて、通話しているというものではないでしょうか?なんといっても、携帯電話は電波を使っているのですから。
しかし、これは間違いです。

実際は、Aさんの携帯電話から発せられた電波は、すぐ近くにある「無線基地局」という大型のアンテナつきの無線通信装置に届くと、光ファイバーなどの有線ケーブルを伝って、さまざまな通信設備を経由します。そして、通話相手であるBさんの近くにある無線基地局までたどり着くと、再び電波となってBさんの携帯電話に届いて、通話が成り立っているのです。つまり、Aさんの携帯電話もBさんの携帯電話も、近くにある無線基地局までの間だけに無線が使われており、それ以外の部分は有線のケーブルでつながっているのです。AさんとBさんがお互いにひじょうに近い場所にいたとしても、互いの携帯電話が発する電波で直接つながっているわけではなく、やはり一番近い無線基地局を経由して通話します。そのため、災害などで有線の部分に障害が発生すると、携帯電話の通話にも支障が出るのです。

「携帯電話の仕組み」イメージ

もしも、北海道から沖縄まで直接電波で通信できる携帯電話にしようとしたら、それだけの大きな電波出力を行える装置が必要になるので、ものすごく重く大きな端末となってしまうでしょう。少なくともポケットに入れて持ち歩くことはできない、つまり「携帯できない携帯電話」になってしまいます。最寄の無線基地局から先は有線でつながる仕組みだからこそ、携帯電話は非常に軽く、小さくなったわけなのです。

小型化への進化

日本での携帯電話の原点は、1985年に日本電信電話公社から民営化したNTTがサービス開始した「ショルダーフォン」です。携帯電話といっても、現在のものとは比べものにならないほど大きく、重さが約3kgもありました。通常は自動車に搭載しておき、必要に応じて肩からショルダーバッグのようにベルトを掛けて持ち歩くというもので、現在の携帯電話とはかなり違うものでした。
では、「携帯電話」という名称はいつから使われるようになったのでしょう?
それは、1987年にNTTから発売された携帯電話専用機に始まり、重さは約900gに軽量化されてからでした。以降、さらに小型化・軽量化されて、普及の一途をたどっていきます。

移動しても切れないワケ

冒頭で、携帯電話の利点として「いつでも、どこでも通話できること」を紹介しました。しかし、それだけなら、公衆電話が広く設置されていれば、それほど不自由はなかったかもしれません。携帯電話ならではの利点、公衆電話ではかなわない魅力をより正確に表現するなら「移動しながら通話できること」でしょう。
ところで、携帯電話は、どうして移動しながら通話しても切れないのでしょうか?無線基地局がカバーするエリアは、広くても半径数十キロメートル、狭いところでは半径数メートル。自動車で移動しながら通話していると、すぐに接続していた無線基地局の範囲外に出てしまいます。ということは、たとえばAさんが自動車でBさんの住む沖縄に向かいながら通話していると、途中でたくさんの無線基地局を乗り換えながら通話を続けることになります。それでも通信が途切れたりしないのは、なぜでしょうか?

それは、携帯電話は常に近隣の無線基地局の電波強度を測定し続けていて、電波がある一定の強度以下になると、それまでの回線を切断して、より強度の強い別の回線に切り替えるようになっているためです。常に次の接続の準備を行っているので、利用者に意識させることなく、スムーズに切り替えることがでるのです。この仕組みは「ハンドオーバー」と呼ばれています。

「ハンドオーバー」イメージ

たとえてみれば、Aさんは自家用車でBさんのところへ向かっているのではなく、ヒッチハイクで次々に違う車に乗せてもらいながらBさんのところへ向かっているようなものです。近くを通りかかった車に乗せてもらって目的地へ進みながら、常に別の車の品定めをして、より条件の良い車があったらすぐにそちらに乗り換えるようなものです。人間の実際の行動としては、あまり見られない行動ですが、携帯電話では、このような仕組みのおかげで快適に通話できているのです。

今回のキーワード

無線基地局
携帯電話からの電波を受信したり発信したりする、無線装置及び無線装置を含む建造物のこと。無線基地局がカバーするエリアは「セル」と呼ばれており、携帯電話の英語表記である「Cellular Phone」(セルラーフォン)の語源となっている。
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参考資料

  • 日経BP社『携帯電話はなぜつながるのか』
  • 日経BPソフトプレス『体系的に学ぶ 携帯電話のしくみ 第2版』

筆者プロフィール

北野 美次(きたのみつぐ)
フリーランスのライター/エディター。IT系出版社でテニクニカル系の雑誌/書籍編集に携わったのちフリーランスとなり、現在に至る。ITの難しい概念をわかりやすく説明することを得意としており、執筆・編集からプログラミング、コンサルティングに至るまで幅広い分野で活動中。最も得意な分野はオープンソースで、現在は関数型プログラミング言語とNoSQLに興味をもつ。

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