テレワーク拡大で見えた課題 中小企業に戸惑い
情報セキュリティ、サポート...ニューノーマルに向けた新たな一歩

テレワークの活用が飛躍的に拡大している。新型コロナウイルス感染症対策として導入が加速し、従来は活用に慎重だった業種や企業にも採用が拡大。感染を防ぎつつ、事業を続けられる柔軟な働き方として根付き始めているが、先行事例の少なかった中小企業には戸惑いが残る。在宅時のパソコンなどIT機器の準備から情報セキュリティの確保、勤怠・労務管理まで幅広い課題にどう向き合うべきか。導入や運用の現場を取材した。

新型コロナウイルス感染症対策で窓口の問い合わせ件数約3倍に

「テレワークの環境を整えたいけれど、情報が多すぎてどこから手を付ければいいのか分からない」
「社内にITに詳しい人材がいないので、保守まで含めたサービスはないか」

3月に設置されたNTT東日本の「テレワーク相談窓口」には、問い合わせの電話が後を絶たない。担当するICTコンサルティングセンタの西室歩紀さんによると主に社員100人未満の比較的中小規模の企業の経営者や総務部門が、対応に苦慮して電話してくるケースが多いという。

窓口は感染症拡大の兆しを念頭に受け付けを開始し、4月には相談件数が前月比約3倍まで急増。内容は電話の転送や社内サーバへのアクセスなど一部業務を在宅で可能にすることから、勤怠・労務管理を含む環境全体の構築など多岐にわたる。

窓口ではテレワークに必要な環境を「データ」「電話」「(ビデオ会議を含む)コミュニケーション」「勤怠・労務管理」の4つに整理。「どの業務を在宅でも可能にしたいか、優先順位も確認しながら、要望に沿ったサービスを提案している」(西室さん)

当初は電話の転送など緊急措置的なサービスの問い合わせが多かったが、最近は新たな働き方の定着を見据え、セキュリティの担保など本格的なIT環境の整備に関心が移っているという。

テレワークの拡大で見えた課題
さまざまな業種で取組むニューノーマルに向けた新たな一歩とは!?

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人材不足の解消につながる在宅派遣

テレワークは中小企業が頭を悩ませる人材不足の解消にもつながる可能性がある。人材サービス大手アデコは6月、IT機器と人材をセットで提供する新サービス「テレワーク派遣」をスタートした。在宅勤務の障害になっているIT機器不足を受け、すぐに働ける環境づくりを含めて人材の活用を後押しする。

新型コロナ感染症拡大による出勤抑制などを受け、アデコが同社に登録し就業中の派遣社員を対象に実施したアンケート(実施期間:4月22~30日、回答数:6544件)によると、在宅勤務ができず“待機”状態の派遣社員は全体の25%に上った。待機状態で仕事ができない人の半分以上の理由として挙がったのが、IT機器不足だ。例えば、企業は急なテレワーク対応で在宅でも使えるノートパソコンの手配が間に合わず、一人暮らしの派遣社員を中心に自宅にインターネット接続環境がないなどの状況が明らかになった。アデコキャリア推進部の増山辰祐部長は、「この状況がいつまで続くか見通せないため、各企業においてはITの投資判断が難しい状況にあります。実際、IT機器も含めた人材派遣サービスを求める声も多数いただいていた」と語る。

アデコの増山部長

企業によっては個人端末の使用を許可するケースもあるが、ウイルス対策ソフトの定期的な更新など情報セキュリティの確保は難しい。

これに対し、テレワーク派遣は、NTT東日本が展開する、データをクラウド上に自動保存する”データレス”機能付きのノートパソコン「おまかせデータレスPC」を貸与。端末内にデータを保存せず、ウイルス対策ソフトのインストールも選べるため、在宅でも情報漏えいのリスクを抑えることができる。

企業の情報セキュリティに対する懸念を解消するほか、派遣社員も派遣先への通勤時間を削減でき、業務上必要な機能を備えたパソコンで効率的に仕事をすることが可能だ。さらに、増山部長は、「故障時などにオフィスならばサポートを求められるが、離れた場所で働いていると相談できず1日業務に支障がでる恐れもある。『おまかせデータレスPC』はヘルプデスクが充実しており、初回設定などでは全国へ訪問対応も可能なので安心感がある」とサポート態勢を導入の理由に挙げる。

NTT東日本も「インターネット環境があればIT機器のみならず、アプリケーションやサポート、設定までオールインワンで提供するのがポイント」(ビジネス開発本部)と強調する。

テレワーク派遣が浸透すれば、企業にとってIT投資の抑制や、地方も含めた人材の活用などの効果が見込まれる。増山氏は「いまは一時的に人材が買い手市場になっているが、長期的にみると労働人口減少のトレンドは変わらない。これまで、東京など都市部では求められる労働力に地域の制限があったが、テレワークの浸透によって企業は全国から人材を募ることができる。例えば、十分な就業経験があるにも関わらず転居によって退職を余儀なくされたような人材を即戦力として全国から募る事も可能となる。働き手の視点では、勤務する場所を問わないので地方への移住者がでてくるなど地方創生につながる可能性もある」と期待を示した。

オンライン化で業務の効率化やビジネス改革が加速

派遣業界以外にも、テレワーク環境の整備が緊急措置にとどまらず、業務の効率化や新たなビジネス改革をもたらすケースは多い。

例えば、ある情報・通信業者は緊急事態宣言に併せ、会社に出社できないため、代表番号にかかってきた電話を転送する「ボイスワープ」の利用を開始した。だが、業務時間外にも着信があり、折り返し時に個人携帯の番号が通知されるうえ、通話料も個人負担になってしまうなどの問題が浮上。そこでNTT東日本の「テレワーク相談窓口」に相談し、オフィスの電話交換機や内線の機能をサーバから提供するサービス「ひかりクラウドPBX」への切り替えを提案された。

このサービスは社員個人のスマートフォンにインストールした専用アプリで、業務時間外の代表番号からの転送を管理できる。代表番号からの発信も可能なうえ、内線が使えるので在宅でも社員間の通話に料金がかからない。など、在宅勤務時の電話に関する課題の解決につながった。

結果、この情報・通信業者は「会社に営業担当者宛の電話が1日10件以上かかってくるが、外出が多いので社内から連絡する手間がかかっていた。「ひかりクラウドPBX」は内線で取り次げるので、業務が円滑になる」として、オフィスワーク時の課題を払拭できた。

また、感染症拡大を防ぎつつ、事業を継続する「ニューノーマル(新常態)」への対応を視野に、ビジネスの改革を進める企業も現れている。

ある建設業者は緊急事態宣言を契機に、テレワークに必要な環境のうちデータ、電話、コミュニケーションの整備に着手。建設現場や営業の仕事は外出先での作業や会議が多いため、「おまかせデータレスPC」「ひかりクラウドPBX」、ビデオ会議を含むクラウドサービス「Microsoft 365(Office 365)」を一気に導入した。

  • Microsoft 365、Office 365は、米国Microsoft Corporationの、米国及びその他の国における登録商標または商標です。

同社は「働き方改革が進んでいなかったが、この機会に東京オリンピック・パラリンピックに伴う出勤困難やBCP(事業継続計画)対策にも役立つ持続的な環境を整備できた」と手応えを語る。

従来は対面が中心だった営業職では、オンライン形式への移行も想定される。電話で約束を取り付け、書類を持参して対面する商談に代わり、提案から契約までオンライン上で完結することも、同社のように情報通信技術(ICT)の組み合わせで実現できる。

感染症拡大の「第2波」が懸念されるなか、テレワークやオンラインサービスの導入の意義はいっそう高まっている。危機対応を超え、ニューノーマルを生き抜く改革に取り組めるかどうか。企業や働く人一人一人の姿勢が問われている。

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