
ニューノーマル時代ではテレワークなど働き方が変わるとともに、オフィスに対する考え方も変わってくる。「スペースシェア」というコンセプトを前面に押し出して、シェアリングエコノミープラットフォームを運営し、2019年12月に東証マザーズに上場したスペースマーケット代表取締役社長の重松大輔氏が、「NTT東日本 Solution Forum 2021 ONLINE」で今起きている変化と今後の姿を語った。
あらゆるスペースを15分単位で貸し借りできる「スペースマーケット」と、働く場所に特化したスペースを貸し借りできる「スペースマーケットWORK」。2つのプラットフォームを提供し、スペースシェアを当たり前にしようと活動しているのがスペースマーケットだ。所有から共有へというシェアリングエコノミーの中でも“場所”のシェアに特化して事業を拡大してきた。
同社のビジネスモデルは貸したい場所を持っている「ホスト」と、何らかの目的のために場所を借りたいと考えている「ゲスト」をネット上でマッチングさせて手数料を得るというものだ。ホストは同社が提供するプラットフォームに情報を掲載し、それを検索したゲストが予約をして利用し、利用料を支払う。ホストはスペースマーケット への手数料を利用料を差し引いた利用料を受け取る。
スペースマーケットは、シェアリングエコノミープラットフォームの運営を手掛ける企業。「借りたい」人と「貸したい人」をマッチングさせる
2014年にスタートした「スペースマーケット」には、貸し切りで利用できるスペースが全国で1万4000件以上登録されている。個人の住宅から飲食店、スポーツ施設、スタジオ、結婚式場などがあり、城や寺社、無人島といったユニークなものまで登録されている。利用目的は会議やテレワーク、パーティーや撮影、スポーツなど様々である。
重松氏は「コロナ禍で伸びているのが、働くシーンに特化したスペースマーケットWORKです」と話す。貸し会議室から、テレワーク用に提供されているホテルの部屋、テレワークで空きスペースができたオフィスなどが登録されていて、テレワークやサテライトオフィスとしての利用が増加しているという。
重松氏は今起きているオフィスをめぐる環境の変化について、「5つのポイント」に着目して説明する。「まず在宅ワークのハード面の環境が整備されました。IT企業を中心に従業員向け手当が支給され、インターネット環境やオフィス家具など在宅ワークの環境整備が進みました」と重松氏。手当を毎月支給する企業や、オンライン飲み会やベビーシッターなどに対して補助金を支給する企業もある。
今起きているオフィスの変化
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2つ目はソフト面での在宅ワークの環境整備だ。社内の会議室で実施されていた打ち合わせや会議、研修、社員会などがオンラインにシフトし、それに対応した場所と設備に加えて、Web会議ツールや動画・映像配信のコンテンツやサービスが拡充されてきた。
3つ目がワークスペース市場への参入が増えていることだ。「働き方の変化をチャンスと見て異業種から参入する企業が増えて、市場の拡大とともに競争環境も激しくなっています」と重松氏は指摘する。
具体的には宿泊利用が減少したビジネスホテルやカプセルホテル、民泊施設などがテレワークプランを展開している。「最近では駅ナカに電話ボックスのようなテレワークスペースが急増しています」と重松氏は最新の動きを伝える。
4つ目の変化はオフィスの解約、縮小である。テレワークにシフトしたことで、オフィスで働く人が減り、オフィスを解約したり縮小したりして、効率的に利用しようという取り組みが進んでいる。
「オフィスをそのまま使う“居抜き物件”が増加しています。一方で、ターミナル駅にサテライトオフィスを設置する企業が増えています」(重松氏)
今後はテレワーク中心の働き方になり、それに合わせてオフィスに出社する人員削減やオフィスの解約/縮小が進むと重松氏は話す
5つ目は自社オフィス環境の変革である。重松氏は「ウィズコロナ時代に即した自社オフィスの整備が必要になってきます」と説明する。具体的にはソーシャルディスタンスを配慮した席の配置、換気設備や空調設備の刷新といったオフィス環境の整備、オフィスでの印刷の減少を追い風にしたペーパーレス化、万が一出社できなくなった場合などに備えたBCP(事業継続計画)対策だ。
前述したオフィスの変化は何を物語っているのか。重松氏は「これからのオフィスは必要なときに集まることができる目的フォーカスで利用されるとともに、どこでも仕事ができるように複数拠点に分散されます。求められているのはフレキシブルで多様な働き方の実現です」と考察する。
これまでも同社は新しいワークスタイルを提案してきた。自社オフィス以外のどこかほかの場所に集まって集中的にアイデア出しや議論を行うオフサイトミーティング、五輪を想定したテレワークやリモートワーク、短期滞在型のワーケーション、プロジェクトメンバーなどでの会議プラス懇親会などだ。
そして前述したように2020年8月には働くシーンに特化した「スペースマーケットWORK」を開始した。会議室、レンタルオフィス、テレワークスペースなど働く場所に特化したスペースが登録され、1時間以上から15分単位で利用することができる。「喫茶店ではセキュリティ的にも実施しずらい“オンラインミーティング”にも利用いただいています」と重松氏は語る。
さらに新たに開始したのがNTT東日本との連携サービス「スペースマーケットWORK Plus」である。貸し出しできるスペースにICT設備を完備したスペースサービスで、高速でセキュアな回線が用意され、入退室の方法が統一されている。「安定した通信環境で安心して仕事ができます。インフラとネットワークカメラが用意され、貸す側にとっても安心です」(重松氏)
スペースマーケットはNTT東日本と連携して「スペースマーケットWORK Plus」の提供を開始した。遊休不動産の利活用などが期待される
オフィスを縮小した企業の空きスペースをどう活用するかは、ウィズコロナ時代の社会の課題といえる。別の企業を空きスペースにマッチングさせたり、コワーキングスペースにしたり、様々な活用法が考えられる。コロナ以前は足りない一方だった都市スペースの有効活用が今求められている。
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